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2025.12.15

ヘアメイクアップアーティスト:向後信行

カルチャーとコーディネート!? 独自すぎる時計選びに注目!

時計はオトナの必需品であり、自身の足跡を雄弁に物語る記念品でもあるのです。時計単体に飽き足らず、時代時代のカルチャーを巻き込み自家薬篭中のモノとする達人クリエーターは、一体どんな時計を愛用しているのでしょう?

BY :

文/長谷川 剛
CREDIT :

写真/高橋敬大(Table Rock) 編集/長谷川 剛(Table Rock Script)

時計選びの基準は、創造力を掻き立ててくれるかどうか

ヘアメイクアップアーティスト 向後信行
LEON本誌やWeb LEONのファッション撮影にて、ことあるごとにモデルのヘアメイクを担当していただく向後信行さん。もうこの道30年の大ベテランです。そんなヘアとメイクの大御所が、実は時計コレクターだったというのは意外?な事実。そこでご本人に事前リサーチしたところ、時計も好きだけど、その時代ごとにのめりこんだ、カルチャー込みで時計収集するのが自分流とのこと。

ということで今回は、時計に加え、まつわるアレコレをも深掘りする変則スタイルにてお届けします。ですが、よく考えると、これこそ“通”のあるべき姿かもしれません。まず初っぱなは、このトップクリエーターの“時計始め”からうかがってみました!
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雑誌や広告等のヘアメイクを数多く担当する業界のエキスパート。この写真で付けている時計はタイメックス。今回記事では触れていませんが、RRL製レザーストラップとの組み合わせがイタくお気に入りとのこと。
▲ 雑誌や広告等のヘアメイクを数多く担当する業界のエキスパート。この写真で付けた時計はタイメックス。今回記事では触れていませんが、RRL製レザーストラップとの組み合わせがイタくお気に入り。
向後さんの人生におけるベーシック時計は、オリエントのダイバータイプ。向後さんが高校卒業した18歳の時、一人暮らしを始める際に実家から持ちだした木製の古い道具箱に入っていたのだそう。

実はその道具箱は錺(かざり)職人であったお爺さんのものであり、そのなかにお父さんの遺品であるオリエント(画像左)がしまってあったと言います。

ですのでこちらの時計はカルチャーというより、どちらかと言うとファミリーのお話。しかし実に向後さんらしいこだわりとストーリーが詰まっています。
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左が向後さんのお父さんから引き継いだオリエントのキングダイバー。つい最近不調になってしまったとのことで、新たに右のキングマスターを購入。デイデイト式でありインナーベゼルが共通ポイントです。
▲ 左の時計が向後さんのお父さんから引き継いだ、オリエントのキングダイバー。つい最近不調になってしまったとのことで、新たに右のキングマスターを購入。そう、そしてこの写真に写る木箱こそ、お爺さんの道具箱。
「このキングダイバーは、父が大事に使っていたもの。ただし、僕の手に届いた時にはブレスレットが欠品状態でした。ですので、キングダイバーの復刻版がリリースされた時に、そのメタルブレスレットのみを購入して使えるように修復しました。

あまり裕福でなかった父は、恐らく背伸びをして手に入れたはずであり、だからこそ僕がしっかり引き継いでいこうと思っています。ですが、最近になり急に動かなくなってしまい……。

いろいろ修理に出してはみたものの、どうも故障箇所が意外な部分らしく、パーツが見つからないと言われました。どうしようもないので、新たにキングダイバーの後継に当たるキングマスター(画像右)を買い足すことに。もちろん父のキングダイバーは諦めてはいません。それが使えるように直るまで、こちらを代わりにしているということ。

キングダイバーキングマスターもレアなモデルではありませんが、日本製らしい実直な剛健さが気に入っています」
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その後、ヘアメイクの世界に入り、服装にもクリエイターらしいこだわりが本格化したと言う向後さん。1980年代当時はヒップホップカルチャーが世界を席巻し、自分もそのシーンにどっぷりハマったと振り返ります。
当時ハマっていたRUN D.M.C.のトレーナーを下に敷いています。ゴツ目のゴールドアクセサリーは今もって向後さんのお気に入り。
▲ 当時ハマっていたRUN D.M.C.のトレーナーを下に敷いて撮影。ゴツ目のゴールドアクセサリーやカザールのサングラスは、今もって向後さんのお気に入り。
「そもそもブラックカルチャーが好きでした。80年代に入って知ったRUN D.M.C.やL.L. COOL Jなどのヒップホップに傾倒し、当時は服装から小物までブラックテイストを中心にこだわりました。カザールなどのデコラティブなサングラスを掛け、派手めのゴールドリングや金のティースキャップを付けてクラブなどに出かけていたのです」
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トノーケースのジャガー・ルクルトは2針のドレスタイプ。ケースもブレスレットも18KYGです。繊細なゴールドチェーンはエレガントであり、向後さんいわく「和服ともマッチするんです」
▲ トノーケースのジャガー・ルクルトは2針のドレスタイプ。ケースもブレスレットも18KYGです。繊細なコマのゴールドブレスはエレガントであり、大人の装い全般に馴染むとのこと。
「ゴールドのジャガー・ルクルトは2000年頃の購入になりますが、選びの根底にあるのは黒人的なゴールドアクセの感覚。もちろん大人として本格時計を身に付けたいという願いもありました。

ただしこのルクルトに合わせるアクセサリーは、あの頃のブラック的なゴールドが今もって自分の流儀。

その他、最近では和服にもこのルクルトを合わせて自分なりに楽しんでいます。繊細で緻密な金無垢のブレスレットは、意外なほど着物にもマッチします」
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自分らしさを極めることで周囲も付いてくる

バイクへの熱の入れようもハンパではありません。ヘアメイク業の傍ら、英国単車専門のショップにてバイク整備のアルバイトをしていた過去もあるほど。こちらはレース用のグリップパーツを付けたベスパ。グリーンヘアとマッチしています。
▲ バイクへの熱の入れようもハンパでない向後さん。ヘアメイク業の傍ら、英国単車専門のショップにてバイク整備のアルバイトをしていた過去もあるほど。こちらはレース用のグリップパーツを付けたベスパ。グリーンヘアとマッチしています。
ボールドでゴールドな80年代を経て、次なる90年代では向後さんはシルバーの時代にシフトします。

いわゆる渋カジのトレンドと並んで一世を風靡した、ゴシックなシルバーアクセサリーにハマっていくのです。A&Gをはじめクロームハーツやビルウォールレザーなどが台頭するなか、向後さんはバンソンのレザーライダーズにブーツカットのジーンズ、そしてウェスコのエンジニアブーツを履き、仕上げとしてシルバーアクセをトッピングしていたと語ります。
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バンソンのライダーズを敷いて、思い出深いシルバーコレクションを撮影。めっちゃ90年代が甦ります。写真下方のウォレットチェーンはクロームハーツ。後のものはすべてAG。
▲ バンソンのライダーズを敷いて、思い出深いシルバーコレクションを撮影。めっちゃ90年代が甦ります。写真下方のウォレットチェーンはクロームハーツ。他のものはすべてA&G。
「その時代、よく仕事でスタイリストの青柳光則さんにお会いしていました。ある時、彼から『A&Gのカタログ制作でロサンゼルスに行くけど、向後くんの好きそうなの買ってきてあげるよ』と言ってくれたんです。そして後日渡されたのが、このA&Gのブレスレット付き時計カバー。渡米前に青柳さんにロレックスを託し、ビルドアップしてもらったものです。
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先輩である青柳さんが買ってきてくれたAGのカバー&ブレスレット。中にはロレックス オイスター パーペチュアル デイトジャストをセットしています。
▲ 先輩である青柳さんが買ってきてくれたA&Gのカバー&ブレスレット。中には「ロレックス オイスター パーペチュアル デイトジャスト」をセット。
当時、僕は伝説的なロックバンドともお仕事をしていました。そのヴォーカルの方に頼まれて、このA&Gのブレスを収録用に貸し出したことがあり、実はTVデビューも果しています(笑)。ゴシック系シルバーに関しては、チェーンやリングなどいろいろと所有していました。しかしその多くは、仲の良い後輩などに譲ってしまいましたね」

独自のセンサーのみを信じて収集を重ねる向後さん。なかにはユニークなレアモノも含まれます。その最たるコレクションが、ナイキのマイケル ジョーダン ゴルフ。これはちょうど1990年代中期、向後さんがゴルフにハマりだしたタイミングとほぼ同時期に、限定的に展開されたとされる珍しいシリーズです。
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向後さんがゴルフを始めるちょうど2000年代初期に、限定展開していたと思われるナイキの「マイケル ジョーダン ゴルフ」。Tシャツやショーツ、それにキャップやギアまで揃えています。
▲ 向後さんがゴルフを始めるちょうど1990年代中期に、ごく短い期間のみ展開していたと思われるナイキの「マイケル ジョーダン ゴルフ」。Tシャツやショーツ、それにキャップやギアまで揃えています。PING製のパターもかなり貴重。
「マイケル・ジョーダンはご存知のとおり、NBAの伝説的なプレーヤー。彼は現役時代からプロゴルファーへの転向が噂されるほどの大のゴルフ好き。そのことが関係しているかは不明ですが、ナイキから一時期、マイケル・ジョーダン ゴルフというシリーズがリリースされていました。

ゴルフグッズを揃えるなら、こういったモノが自分らしいと思い、色々と買い集めていくことに。長年ゴルフを趣味とする友人に聞いても、このシリーズの存在を知らない人が多く、PINGのOEM製であるパターなどは、今見せても珍しがられます(笑)。
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選ばれた顧客に配られていたノベルティと思われる「マイケル ジョーダン ゴルフ」のウォッチ。ゴルフボールを思わせるディンプルデザインがユニークです。ポップにしてスーパーレア。
▲ 「マイケル ジョーダン ゴルフ」のロゴが入ったウォッチは稼働品。ゴルフボールを思わせるディンプルデザインがユニークです。ポップにしてスーパーレア。
なかでも特にお気に入りが、恐らくノベルティと思われる個性派ウォッチ。廉価なクォーツ式であり、秒針がゴルフボールかつ分針がアイアンという、洒落の利いたデザインが実にイイ感じです(笑)」

今回この撮影を行った場所は、向後さんが手掛けるヘアサロンとはまた別の、完全プライベートなアトリエ。ヘアカット用のチェアや洗髪台なども備えられていますが、それ以上に膨大な向後さんのコレクションがひしめく趣味空間。
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向後信行(ヘアメイクアップアーティスト)
古着やバイクにフィギュアやレコード、ヘルメット、スーベニアなどなど、それらを見ても向後さんのこだわりが強く感じられるのです。

ただし向後さんは、どれに対しても単なる趣味レベルの収集では収まりません。実は向後さんはヘアメイクの他、アートディレクターやプロデューサー、それにスタイリング業もこなす、いわゆるマルチクリエーターでもあるのです。
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向後さんのプライベートアトリエは、まんま“向後ミュージアム”。トップクリエイターのフクザツな頭の中がそのまま具現化されたスペースです。ちなみにハンガーに無造作に掛かっているブルゾンは「TROOP L.L. COOL J」のもの。結構レア。
▲ 向後さんのプライベートアトリエは、まんま“向後ミュージアム”。トップクリエイターのフクザツな頭の中がそのまま具現化されたスペースです。ちなみにハンガーに無造作に掛かったブルゾンは「TROOP L.L. COOL J」のもの。ファン垂涎のヴィンテージ。
カルチャーやアイテムなど、さまざまな事物に没頭するのは、自分らしい作品をクリエイトすることに必要な、いわばインスピレーションの源泉となるから。

時計ももちろんその目線にて選ばれていることは言わずもがな。プライスの高低ではなく、その時計がどれだけ創造力を膨らませてくれるかどうか。それが一番大事だと語ります。
向後信行(ヘアメイクアップアーティスト)

● 向後信行(こうご・のぶゆき)

ヘアメイクアップアーティスト。1990年、日本美容専門学校専門科卒業後、「maniatis PARIS」、谷崎隆幸のアシスタントを経て1993年に独立。2006年目黒区の都立大エリアにヘアサロン「JANEiRO hair」をオープン。 2008年にマネージメント事務所「JANEiRO」を設立。雑誌、広告撮影に加え俳優やミュージシャン等のヘアメイクを手掛ける。その他、タレントプロデュースやアートディレクション業も並行して行う。

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