デート時間はもっと曖昧でいい!? 駆け引き上手な「幻惑時計」

ふたりの間を引き裂くのは、いつだって無情な時間経過。どんな手を使っても、腕時計が示す時間は止まりません。であれば、その時刻をわからないようにすればどうでしょう？ それはふたりの時間を無限のものへと変えてしまう魔法なのです。

現代の時計は時分針で時刻を表示しますが、数百年前までは時針のみでした。あくせく動く必要がない時代ですから、時間の流れは曖昧で良かったのです。

現代の時計にその考え方を取り入れたのが針が１本の「ワンハンド」という機構。時分針の表示に慣れ親しんだ現代人が、瞬時に時間を読み取るのはまず不可能ですが、それこそがこの時計を愛する理由にもなります。

そもそも多忙なオヤジさんは時間に追われて過ごしていますが、デートの時くらい、そこから解放されたい。だからといって時計を付けないのは無粋です。その点ワンハンド時計には、クラシカルな魅力があるので、オヤジの知性を崩すこともない。品良く時間を幻惑させる時計なのです。

初代ブレゲが18世紀後期に製作していたワンハンドウォッチ「スースクリプション」を、現代的に進化させて腕時計に。オリジナルに合わせ、優美なブレゲ針や柔らかにカーブするグラン・フー エナメルのダイヤル、ムーブメントの設計も当時のスタイルを継承するなど、創業250周年を迎えたブレゲらしいエレガンスが詰まっています。

こちらは分針のみという変わり種のワンハンドで、6時位置のジャンピングアワーと組み合わせて時刻を表示。搭載ムーブメントは8日間のロングパワーリザーブを誇り、深い艶のあるダイヤルは黒のグラン・フー エナメル。静かに時を刻む時計ゆえ、吸い込まれるような美しさを楽しめます。

歯車の軸に針を取り付け、回転運動を利用して時刻を表示するのがアナログ式時計ですが、ありきたりで面白くない。そう考えた昔の時計師によって生まれた「機械式デジタル」機構は、針の代わりに回転ディスクを利用して時刻表示を行う仕組みです。

クロックや懐中時計の時代から製造されてきた歴史ある機構で、腕時計に導入されたのもかなり前のこと。時分針の位置で感覚的に時間を読むことはできませんが、どの位置に窓を作るか、そして窓をどうデザインするか、広々とした前面部をどう仕上げるかなど、表現の幅が広いため、個性的なモデルが多いのが特徴です。

針がないので時計には見えにくいので、むしろアクセサリーとして楽しむのが正解です。

外側のディスクが“時”、内側のディスクが“分”を表示。ふたつのディスクがゆっくりと回転しており、パリの郊外にあるヴィトン家の邸宅の装飾的なアラベスク模様などからインスピレーションを受けた小窓から時刻を確認します。時計前面は美しく磨き上げられており、ラグジュアリーメゾンらしい佇まいにまとめました。

1917年にデビューした傑作「タンク」のデザインコードを継承しつつ、ふたつのギシェ（小窓）で時刻表示。上側はジャンピングアワーで、下側が分表示のディスク。驚くべきはこのスタイルが1928年に生まれ、愛され続けていること。時計前面は縦方向のヘアラインで仕上げているので輝きは控えめ。

ダイヤル上の３つのデジタル表示は、上からアワー、ミニッツ、デイト。すべてがジャンピング式なので、最大で５枚のディスクを同時に動かす。そのパワーマネージメントの技術は驚異的。

ロックグラスを持つ無骨な腕元に女性の視線がいきがちです。針がない時計ならパッと見で相手に時間を感じさせません。