2020.01.28

いま、あえて腕時計に大金をはたく意味

スマホを見れば簡単に時間を確認できる現代において、なぜ少なくない男たちが高級腕時計に魅了されるのか? 腕時計のプロが出会った時計愛好家のエピソードから、腕時計を持つ意味を再考します。

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文/広田雅将(『クロノス日本版』編集長) 

ウェブなり雑誌を開くと、必ずと言っていいほど腕時計の話が出てくる。「今買うべき時計は○○」、「こんなコーディネートに似合う時計は○○」など。選ぶ理由は様々だが、つまるところ、みんな、出来が良くて格好いい時計が欲しいわけだ。

それが嵩じると、時計コレクターというものになる。5本や10本を持つのは当たり前、極端な人になると、使う用と保存用に2本ずつ買って、家自体を時計の保存庫にするような場合もある。時計を保管するためにマンションを買った、という時計コレクターは少なくない。

じゃあそういう人は、時計に熱狂して私生活を顧みないのかというと、むしろ逆である。大半は奥さんや彼女と上手くいっており、時計以外にもちゃんとお金を回している。もちろん仕事は順調で、聞くと、時計を買うことがモチベーションになっている、という。人として実に羨ましい限りだ。
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腕時計から広がる、豊かな生活の可能性

そんな彼らの多くは、時計趣味に出会えて良かったと語っている。生活が上手くいき、好きなものを買えているから、ではないらしい。

僕の知っているあるコレクターは、かなりの優良企業を経営している。部下にも恵まれ、金融機関の評判も良く、当然、取引先からの信頼も厚い。社会人としては文句なしだが、彼には不満があったらしい。取引先のことを考えれば好きな車を買えず、ゴルフに行くほどの時間はなく、たまの休みも家族サービス。となると、趣味は持てないし、お金の使い道もなくなってしまう。しかし、幸いにも彼は時計に出会った。
 
正直、出会うものが、時計である必要はなかったかもしれない。しかし、時計には他の趣味と違って、いくつかのメリットがある。自慢しようと思わない限り、いくら使ったかは詮索されないので、金融機関に文句を言われることもない。また、サイズが小さいのでどこにもでも持ち運びできる。つまり、時計を見せて欲しいと言われたら、どこでも持って行けるのである。

同じような趣味にはワインがある。しかし、飲みに行くには時間がかかるし、同好の士と語り合いたくても、スケジュールを合わせて、店を予約する必要がある。同じような趣味仲間を増やすのは難しいだろう。

くだんの彼は時計に出会い、それを介して様々な人と知り合うようになった。どんな人に会っているのかは知らないが、同じような金額の時計を買える人たちと集っていると考えれば、その集まりが大きな実りをもたらすことは容易に想像できる。「時計趣味はワインやゴルフよりも面白い」と語るコレクターがいるのも納得ではないか。

出来が良くてカッコいい時計が欲しい、に始まった時計趣味は、やがて、同じ趣味をもつ人たちと語り合いたいという欲求へと変わっていくわけだ。時計に限らず、趣味の醍醐味とはそんなものかもしれない。

ここで挙げた例は極端かもしれない。しかし筆者個人は、時計という趣味は、ワインやゴルフよりも可能性がある、と思っている。
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時計の魅力を実感できるモデルとは?

では、どんな時計を選べば、趣味として豊かに楽しんでいけるのか。答えは冒頭で挙げたとおり、「出来が良くて格好いい」だが、厳密に言うと、付け心地が良く、感触に優れ、そして文字盤の美しい時計となるだろう。

要は、そういう時計でないと、普段付けたくなくなってくるのだ。もちろん時計をいっぱい持つようになったら、あえてハズしとして、付け心地が悪かったり、作りの雑だったりする時計を買うのはアリだ。しかし、豊かに楽しみたいならば、まずは普通に良い時計を買った方がいい。しかも、あまり無理のない金額で選ぶといいだろう。

じゃあどんな時計が自分でも楽しめ、人との話のネタになるのか。おすすめを数点挙げたい。
定番の「レベルソ」にあって、さらに定番モデル。手巻きの傑作Cal.822を搭載する。ケース厚は7.5mmしかないため、装着感もかなり快適だ。加えて、ケースを反転させる感触は極めて気持ちがいい。「レベルソ・クラシック・ミディアムスリム」手巻き、SSケース(縦42.9×横25.5mm)、アリゲーターストラップ。68万8600円/ジャガー・ルクルト
ひとつは、ジャガー・ルクルトの「レベルソ」の手巻き、である。昔ギミックのあるオモチャで遊んだ人ならば、反転できるケースの精密な動きにはきっと魅せられるに違いない。
もうひとつは、クレドールの「叡智Ⅱ」だ。価格は途方もないが、きれいな文字盤と、ゆったり動く秒針、そして素晴らしいムーブメントの仕上げは、持ってうれしいし、人に自慢したくなる魅力に満ちている。
そして最後は、A.ランゲ&ゾーネの「ダトグラフ・アップ/ダウン」である。正直付け心地は、「レベルソ」や「叡智Ⅱ」には劣るものの、ムーブメントの仕上げとクロノグラフの繊細な操作感は秀逸だ。

実際のところ、こういう時計を持って、いきなり趣味が豊かになるかは分からない。しかし、もし気に入って長く使うことができれば、同じような趣味を持つ人たちと出会えるに違いない。そしてその中で、生涯語れるような友人を見つけることができれば、それこそ趣味冥利に尽きるのではないか。
※掲載商品はすべて税抜き価格です

■ お問い合わせ

A. ランゲ&ゾーネ 03-4461-8080
ジャガー・ルクルト 0120-79-1833
セイコーウオッチお客様相談室 0120-061-012

● 広田雅将(ひろた・まさゆき) 

1974年生まれ、大阪出身。時計専門誌『クロノス日本版』編集長。サラリーマンを経て2004年からフリーのジャーナリストとして活躍し、2016年より現職。関連誌含め連載を多数抱える。また、一般・時計メーカー・販売店向けなど、幅広い層に対して講演も行う。

高級腕時計専門誌クロノス日本版[webChronos]

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