文/Team.A

「前提として、ゲストハウスやホステルは、投資が低くすむので、異業種が参入しやすい」というのは『月刊ホテル旅館』編集長の金澤達也さん。旅館やホテルほど法的な制約が厳しくなく、既存のビルを改修して作ることも可能。またシンプルな造りのドミトリーは、清掃やサービスの手間も少なくてすむといいます。
「そのぶん、最近のゲストハウスは、宿泊者同士の交流の場であるラウンジに力を入れる傾向にあります。ラウンジを広くし、外部の人も利用できるスタイリッシュなカフェやダイニングにしたり、イベントを行ったり。それで収益性も上がりますし、外食産業やデザイン会社の運営であれば、会社のイメージにアップも狙えます」(金澤さん)

「こうしたゲストハウスは宿泊費がやや高めなので、“1円でも安く泊まりたい”という人は利用しないでしょうね。ホテルや旅館ではできない交流や体験を期待してわざわざ泊まりに来る、そんな新しい客層も見えてきます」(金澤さん)
ゲストハウスやホステルを利用するのは、若くてお金のないバックパッカー−—。そんなイメージは、当てはまらない場所になっているようです。
花街、神楽坂の裏通りにできたUNPLANは大人のためのゲストハウス

こちらの1階はシックなカフェラウンジ。訪れたのは休日の午後、宿泊客か外部客か判別できませんが、かなり賑わっています。カフェ内のMacが据えられた大きなテーブルがレセプションで、チェックイン手続きは、ここで行います。オープン過ぎるレセプションには一瞬戸惑いますが、後々、宿から出入りする際に、ここにいるスタッフに声をかけやすいことに気づきます。

ラウンジに戻り、ウエルカムドリンクのコーヒーを飲んでから、神楽坂商店街へ。休日は歩行者天国で賑やか。お洒落なブックカフェ、和菓子店、イタリア食材店など、バラエティに富んだ店が並び、そぞろ歩いていて飽きません。ゲストハウスに戻り、シャワーを浴びてベッドへ。コンパクトだけど、暖かみのある間接照明や木目の室内は、リラックスでき、ゆっくり眠ることができました。



「旅先でいろんな人と交流したい、という気持ちは30代や40代でもあるはず。でも、そのくらいの年齢になると快適さも欲しくなる。そういう人のために、大人向けのゲストハウスをつくりたいと思ったんです」
そのために、ドミトリーはできるだけ個室感のある設計に。カフェラウンジは「無国籍」をテーマにして、どの国の人にも「ホームじゃないけど、アウェイでもない」感覚で、宿に戻った時にほっとしてもらえる空間を目指したのこと。
現在の宿泊客は外国人が8割。アメリカ人やオーストラリア人、台湾人、韓国人が多いそう。
「年齢層は高めです。スタイリストやカメラマンなど、クリエーターも結構いらっしゃいます」
日本人の客も、このホテルでどんどん交流を楽しんで欲しい、と福山さんは言います。
「いきなりお客さん同士、ではなくスタッフでもいい。外国人のスタッフが大半なので、神楽坂はもちろん、新宿・渋谷エリアも含め、彼ら目線で面白い場所を紹介してくれるでしょう」
◆ UNPLAN
住所/東京都新宿区天神町23-1
URL/https://unplan.jp
メール/booking@unplan.com
予約・お問い合わせ/☎03-6457-5171
●料金/ドミトリー4,500円~、プライベートルーム1室1万9,800円~
客室とドミトリーの両方を備えたWIRD HOTEL ASAKUSA

さらにこの日は、1階のカフェ&バー「ZAKBARAN」でイベントを開催中で、スタッフが浴衣で呼び込み中。年中お祭りのような浅草ですが、その“らしさ”を、ホテル自ら演出しようとしているのを感じます。イベントは、粋で個性的なグッズやフードを販売、オリジナルグッズが作れるワークショップも実施。台東区内や浅草の職人・アーティストも多く参加していました。





喫茶を出た後も、浅草は見る場所、飲む場所にこと欠きません。特に“泊まり”だと、時間を気にせず浅草の夜を満喫できます。その後ホテルに戻って、「デュクシアーナ(DUXIANA)」のベッドで爆睡。寝心地抜群で、目覚めも爽快です。

「街を楽しむ、という視点で多様な宿泊者が集り、自然発生的に交流が生まれていく場を目指して、あえてボーダレスにした」そうです。
実際にホテルで過ごしてみても、ホテルタイプの客か、ドミトリータイプの客か、一見では判断できませんでした。

今回は2つのゲストハウスを体験しましたが、「異業種からの柔軟な発想で、“泊まる+α”の魅力を提供する新タイプはまだ増えるでしょう」(前出・金澤さん)とのこと。
外国人観光客だけではなく、日本に住む我々にも、新しいホテルライフを楽しませてくれる存在になりそうです。

◆ WIRED HOTEL ASAKUSA
住所/東京都台東区浅草2-16-2 浅草九倶楽部
URL/http://wiredhotel.com/
メール/info@wiredhotel.com
予約・お問い合わせ/☎03-5830-7931
●料金/ドミトリー5,184円~、1万4,040円~(税・サ込み。季節により変動あり)