2017.07.21
かの人の愛したホテル(後)~古川ロッパ、フィヨドール・イワノビッチ・シャリアピン
富士屋ホテルの全メニュー制覇!? 帝国ホテルのシャリアピンステーキはこうして生まれた。
- CREDIT :
文/川田 剛史



◆ 富士屋ホテル/箱根
なんと全メニューを制覇したあの喜劇人
エッセイは「箱根宮の下の富士屋ホテルは、われら食子にとって、忘れられない美味の国だった」との一文から始まり、戦前、戦中の回想や戦後の宿泊時の食事のエピソードを紹介。



ロッパは前菜や野菜に魚、肉、デザートなど全14種類の制覇に挑戦し、メニューまで丁寧に記録しています。しかも「わが糖尿病に栄光あれ」の一言とともにこれらをぺろりと平らげるあたりが、さすが大物喜劇人。
なにせ、数十年前の逸話ですから、当時と同じものはないだろうと思いきや、さまざまなメニューがいまも提供されていました。ここでその一部をご紹介。ただし、ロッパが食べた当時とレシピがまったく同じかどうかは不明ですので悪しからず。


◆ 富士屋ホテル
住所/神奈川県足柄下郡箱根町宮ノ下359
URL/www.fujiyahotel.jp/
予約・お問い合わせ/☎0460-82-2211
◆ 帝国ホテル 東京
シャリアピンステーキの由来をご存じ?

実はシャリアピンステーキの名前はロシアの声楽家に由来し、帝国ホテルで生まれました。1934年、日本公演で来日した声楽家 フィヨドール・イワノビッチ・シャリアピン氏は、帝国ホテルに滞在し、毎日館内のレストラン「ニューグリル」を利用していたのです。
ところが歯が痛くなり、好物のステーキが食べられない悲劇が彼を襲います。
「なにか柔らかい肉料理ができないか?」というシャリアピン氏の要望に応えたのが、当時の「ニューグリル」料理長であった筒井福夫氏。彼の生み出したステーキをシャリアピン氏は、いたく気に入り、よく注文していたそうです。

この話題は当時の総支配人、犬丸徹三氏の耳に届き、シャリアピン氏の許可の元、シャリアピンステーキと命名されて、正式なメニューの仲間入りを果たしたのです。
以来、80年以上に渡り、愛されてきたステーキは、もちろん現在も名物メニュー。残念ながら、「ニューグリル」は現存していませんが、本館地下1階にあるトラディショナルダイニング「ラ ブラスリー」でいただくことができます。

◆ 帝国ホテル 東京
住所/東京都千代田区内幸町1-1-1
URL/www.imperialhotel.co.jp
予約・お問い合わせ/☎03-3504-1111(代表)