2024.03.10
1機37億円のシミュレーターから年間3000本以上のワインの試飲まで、シンガポール航空が業界トップを走る納得の理由とは?
エアラインの格付けで何度も世界トップに輝くシンガポール航空。高評価の理由のひとつはワインのクオリティが高いから。その背景も含め、シンガポールにて地上での準備を取材。小国なのに業界最右翼でいる理由を探ってきました。
- CREDIT :
文・写真/大石智子
往路からワインを堪能あれ!
個人的にはモルディブやバリへのトランジットとして立ち寄る国でもあるシンガポール。というのも、基本はスターアライアンスに乗るため、そちらに加盟するシンガポール航空を優先したいから。たとえ乗り換えが10時間以上だとしても、シンガポールは空港から市街まで約25分なので、降りて遊ぶにも1泊休むにも気軽です。
抜かりない訓練が高評価を生む
1位 シンガポール航空
2位 カタール航空
3位 ANA
4位 エミレーツ航空
5位 JAL
まず訪れたのはスタッフのトレーニングセンター。訓練生たちが行き交うアトリウムには、1947年から現在に至るまでのシンガポール航空の軌跡を展示し、シンガポール建国の父、リー・クアンユー(1923-2015)の言葉も大きく記されていました。
「常識で考えたら私たちは航空会社をもつべきではない。国内便を運航するにはあまりにも小さい国で、(マレーシア航空との)分離後には国際便に乗り出した。あらゆる困難があっても、シンガポール航空は上手くやってきた。どのステージでも成功できたのは、能力の限界に挑んできたからだろう。私は日記をつけていない。でも、もし書くとしたら、シンガポール航空についてかなりの章を書けるだろう」
施設を歩き始めると、未来のキャビンクルーたちに出会いました。身を包むのは1968年から続くバティック染めの制服“サロンケバヤ”。ひとりひとりの寸法を測って作る制服は、その立ち姿をしなやかで美しいものとします。
最強のワイン・コンサルタントを揃えるエアライン
その結果、美味しいワインをフリーでいただけるので、上空でしっかり味わいましょう。以下3名のワイン・コンサルタントは精鋭揃いで、確かな実績をもちます。
オズ・クラーク 英国出身。フランス政府より「農事功労賞オフィシエ勲章」を授与されている。
マイケル・ヒル・スミス オーストラリア出身。同国初の「マスター・オブ・ワイン」の称号を獲得。
ジェニー・チョー・リー 香港出身。アジア人で初めて「マスター・オブ・ワイン」の称号を獲得。
ワイン・コンサルタントは毎年さまざまな地域のワイナリーを訪れ、小規模生産者とも関係を構築。これまで機内で調達できなかったワインも採用し、未知のワインと出会う楽しさを上空で教えてくれます。ソムリエバッジをつけたクルー“エア・ソムリエ”のいるフライトも多いので、出会ったらお気軽に問い合わせを。
また、地上と機内では味が変わるとよく言われますが、テイスティングは機内と同じ環境でも行われます。「気圧の低下や地上に比べて酸素が少ないことも影響しますが、機内の乾燥が感じ方を左右します。喉や鼻の中が乾燥していると、ワインの香りを通常より感じづらい。香りが消えるのが早いとも考えています」というのが、ワイン・コンサルタントの見解でした。
また、誰もが「このワインはファーストクラス!」と一致したのは、ブルゴーニュの銘醸「LOUIS JADOT」による2019年のピノ・ノワール。ファーストクラス以上になると短いステムのついたラリックのグラスで提供されるようになります。
空の上のレストランもこだわり満載
プレミアムエコノミークラスは焼鳥丼や豚丼(路線や時期によりメニュー変更あり)、ビジネスクラスは桜がテーマの懐石、ファーストクラスは京懐石を用意します。
機内で提供される食事はすべて調理から24時間以内に搬入されたもので、5℃に保ったものを再加熱して提供。作る人、運ぶ人、提供する人etc.さまざまな人の手を渡って届く温かな料理を上空で食べられるって、それだけでありがたいですよね。
最新ラウンジで出国間際にワインデートを!
特に「シルバークリスラウンジ」内のファーストクラス搭乗者限定エリア「ザ・プライベートルーム」の優雅さは世界最高峰。バーにはシンガポール航空の制服に描かれている花が咲き、それがラリック社製のクリスタルだから華やかさもひとしおです。
以上で現地リポートを終了。国際便のみの航空会社こその、グローバルな評価を意識した緻密なこだわりを目の当たりにしました。安全かつ優雅な空の旅を体験できるのは、抜かりない地上での仕事があってこそ。
シンガポール建国の父の言葉を裏切らず、誇りとも感じられるハイレベルなサービスは、今後も貫かれるでしょう。やっぱりシンガポール航空はエスコートするのに手堅いブランド。GWの南国方面のフライトとしても検討あれ。
■ シンガポール航空
● 大石智子(おおいし・ともこ)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、毎月海外に渡航。スペインと南米に行く頻度が高い。柴犬好き。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。