プロサーファー・真木勇人「大海原に彼女とふたりきり……海デートのススメ」

夏の海、さて、何をする？ ドライブ＆海辺のレストランでは、場所を都会から海へ移しただけで、“ひと夏の思い出”と呼ぶには物足りない。せっかくならロマンティックかつドラマティックな“海”という舞台で、彼女と夏を満喫したいものです。

そこで、サーフィンはもとより、素潜り＆スピアフィッシング（魚突き）、SUPにボートと、海を上から下から、縦横無尽に遊び場とするプロサーファーの真木勇人さんから、その友人でビーチライターの古関千恵子さんに、大自然を相手に遊ぶ極意を聞き出してもらいました。

真木　僕の場合、サーフィンが好きだから、まずはサーフィンデート。女の子が初心者ならば、やさしい波の所を選ぶ。極力こわい思いをしないように、楽しんでもらえる場所選びを、気を付けるかな。

—— サーフィンの魅力って、どんなどころですか？

真木　海にいる気持ちよさだったり、爽快感だったり。それに、自然との一体感。ふたり同じ海に入って、同じ時間を共有して、それを感じるのがすごい、いいよね。たとえば同じ波にふたり一緒に乗ることもできるし。

古関　サーフィンのルールとして、1つの波に乗るのは1人だよね。それが連れの女の子だったら問題なしって、わけなのね。それ、憧れるな。あと、波に乗らなくても、沖で波を待っている時間、あれもいいよね。

真木　全然いいでしょ。女の子と一緒なら、なおさら。大海原にふたりきりって感じもするし。視界に人工物がなければ、なお気持ちいい。

古関　ふたりとも初心者だったら、地元のサーフショップでガイドをお願いするのがいい？

真木　そうだね。地元の人に聞くのが一番確か。その海を知っている人にしっかり聞いて、無理はしちゃいけない。

古関　無理とはちょっと違うかもしれないけど、男の人って、カッコイイとこ見せたいって思ったりしないかな？

真木　それは普段から鍛錬して、自分を磨いておかないと。見栄は絶対張っちゃいけない。海に入ったら、人間、丸裸にされるわけだから、ハッタリがきかない。自然は厳しいよね。

—— 男性はサーフィン経験者のほうがよさそうですね。

真木　海のことがわかっていたほうがいいよね。自信がなかったら、サーフショップにサポートしてもらうといい、実際、危ないからね。もしくは、彼女と一緒にサーフレッスンに参加するのもアリじゃない？

真木　SUP（スタンドアップパドルサーフィン）は浮力があるから、わりと簡単に乗れるよね。一緒にゆっくりとパドルを漕いで、海の上を散歩するって感じかな。

古関　SUPは初めての時も、意外と楽しめた。慣れるまでは、下しか見られなかったけどね。

真木　海を漕いで移動する点では、カヤックもいいかもね。

—— 沖縄で、SUPにおすすめの場所は？

真木　東シナ海側がキレイですよ。北谷とか、カデナの海、アラハビーチとか。サンセットに合わせれば、水平線に太陽が沈んでいくのを眺められる。逆に朝日だったら太平洋側。水平線からのサンライズ。沖縄は、SUPで夕日も朝日も海から眺められていいよね。

古関　一日のうちでも、太陽の角度で、時刻によっても海の色って変わるよね。

真木　ところで、SUPで釣りもできるって知ってた？ ロッドホルダーが付いているボードもある。

古関　SUPしながら、釣り糸を流してトローリングをする、的な？

真木　ボードに飲み物やランチを入れたクーラーボックスを乗せて、ビーチに上陸して、のんびりということもできる。

—— SUPでピクニックですね！

古関　ビールを積んでいったりしてね。ごきげんだね。でも初心者はボードに乗るのが精いっぱいだけど？ うっかり海に落として、ランチを台無しにしちゃったら……。

真木　それもまた、思い出ということで。

—— SUPのボードはレンタルできるんですか？

真木　貸している所はあるよ。うちの店にもSUPはあるけど、レンタルはやっていないな。

古関　え！ 勇人くん、お店やっているの!? 知らなかった!!

真木　うん。「oceans mercantile」というお店。僕はサーフィン、素潜りを教えたりしているよ。

—— 素潜りの魅力ってどんなところに？

真木　海に顔を付けるだけで、水面下には違う世界があるの。水面を境に上と下でまったく違う。浮遊感もあって、鳥になったように空を飛んでいる感じもある。彼女と一緒に泳いだら、最高に気持ちいいよね。

古関　水面下って、当たり前だけど、家もないし、車も走っていない。人工物が一切ない。地球のそのままの姿というか。初めて潜った時、陸以外にこんな世界があるんだって、びっくりした。素潜りなら、スキューバみたいな重装備もいらないし、気軽に非日常が体験できるよね。

真木　僕の場合、サーフィン仲間と素潜りを始めて、その延長で魚突き（スピアフィッシング）もやるようになって。

古関　え、魚突きって、沖縄は漁業権、大丈夫なの？

真木　手銛で、自分で魚を獲るぶんには、沖縄では大丈夫。うちのショップでも魚突きを教えているよ。ゲストには、自分で獲った魚を持ってもらっての記念撮影のあと、調理してくれるレストランがいくつかあるから、魚を渡して、食べておいでって。

—— どんな料理を作ってもらえるんですか？

真木　イタリアンの店ではカルパッチョやアクアパッツァ。寿司屋なら、にぎり。自分で蒸して、中華風にしたこともあるよ。

古関　話戻るけど、魚突きって、どうやるの？

真木　呼吸を整えて潜っていくわけ。海底に張り付いて、岩に隠れながら待って、魚がやってきたら打つ。追いかけたら、魚は逃げるから。待つの。岩に隠れた魚は穴から覗いて、打つ！

古関　海底で待つって。それって、普通の人にはできないよ。勇人くんだから、できるのでは？

—— 真木さんがガイドする時は、教えてくれるんですよね？

真木　どうやったらいいか、はちゃんと説明します。水深が浅い所なら、突けますよ。

古関　自分で獲った魚を食べるって、なんかサバイバー。なかなかできない体験だよね。ところで、勇人くん自身が海デートするとしたら、どんな感じ？

真木　僕の場合、海へ行ったら、テントを立てて、ドラム缶風呂をセットして、火で焚いている最中にサーフィンや素潜り。上がってきて、ドラム缶風呂入って、獲った魚をバーベキューかな。

—— サーフィンに素潜りにお風呂にバーベキュー、フルコースですね。

真木　ドラム缶風呂、本当に気持ちいいから！ 火で焚くお湯って全然違うの。

古関　そのフルコース、どこでやるの？

真木　沖縄本島なら、中部か、北部のやんばるかな。北部は魚がいっぱいいるし、水もキレイだからよく行くね。陸から見る海と、海から見る陸って、なんか景色が違うんだよね。

でも、サーフィンや素潜りとか、何かをしなくちゃってわけではなくて、ただビーチに寝っ転がってビールを飲んでいるだけでも、海は気持ちいいよね。

—— 海デートで男性が心すべきことは？

真木　最初にも言ったけど、見栄は絶対張っちゃいけない。海に入ったら、本当にハッタリがきかないから。

古関　ごまかせないから、男の人としては海へ誘うのは本気な証拠かも!?

真木　女の子が困った時に助けてあげられたら、惚れ直されるというか。吊り橋効果じゃないけど。でも、男側に自信がなかったら、ガイド付きとか、サポートを頼むといいよね。

—— 海デートで女性をエスコートする際のアドバイスを。

真木　とにかく、彼女をちゃんと見てあげなきゃいけない。危険な思いをさせてはいけないと思うし、守ってあげなきゃいけないよね。

—— 最後に、古関さんの海デートプランも教えてください。

古関　私は、勇人くんみたいにハードコア（笑）ではなくて、やさしいプランを紹介しますね。

初めてのSUPはバランスを取るのが難しいものです。慣れるまでは、周囲の景色を楽しむなんて、ほど遠い。パドルを手に「右にかいて、左にかいて」で、精一杯。足元とパドル周辺の海面しか、視界に入りません。

その点、初心者でも海を満喫できるのが「クリアSUP」。ボードが透明なので足の下の水中を見ることができます。懸命にパドルを漕ぎながらも、「あ、サンゴがきれい」、「お、ソラスズメダイだ！」と、水中の様子をウォッチングしながらの洋上散歩。

透明度が高い海ならば、深度を感じさせず、足のすぐ下に海底があるように見えることも。海の上に立っている、不思議な感覚が味わえます。しばらくしてパドルを操るのに慣れてくれば、こっちのもの。周囲の景色もあわせて楽しめば、感動も2倍に！

奄美諸島の沖永良部島の地下には、鍾乳洞が200とも300とも、迷路のように入り組んで走っていると言われています。

「沖永良部島ケイビング協会」の案内で連れていってもらった「リムストーンケイブ」、これがもう大感動！ 観光レベルではなく、冒険野郎たちを虜にしてきた本格派なのです。なのに、初心者向き。ウエットスーツの上につなぎを着て、頭にはヘルメットとライト、そしてグローブ。完全防備だから安心です。

洞窟内では、じゃぶじゃぶと地下河川を渡ったり、石の合間を腹ばいで抜けてそのまま水中へポチャンと飛び込んだり。頭の中ではインディ・ジョーンズのテーマ曲が鳴りっぱなしです。

鍾乳石の生まれ始めの細い「ストロー」、ストローが大きくなった「つらら石」、つらら石から落ちた雫が堆積した「石筍(せきじゅん)」、上のつらら石と下の石筍がつながった「石柱」など、鍾乳石にも種類がいろいろとあります。40センチほどの石筍で、なんと4000年モノ！　

そしてハイライトのリムストーンケイブが圧巻。演出のためにライトアップしてくれるのですが、まるで壮麗な地下宮殿のようです。しかも、コロナ禍ゆえの密を避けるために、洞窟は1組のみの貸し切りです。この光景をふたりだけで独占できるなんて、贅沢の極み！

これまでもジップラインは、体験したことはあります。眼下に木々を見下ろしながら、風を切って疾走。その気持ちいいこと！ ここでご紹介するのは、ジップラインでも海を渡っていく日本でここだけのもの。果たして、そのスピード感は？

器具（ハーネス）を装着して安全講習を受けてから高さ13mのデッキの上へ。遮るものがないので、高さがかなり感じられます。そしてスタッフの合図で滑走スタート！ 長さは250m。最初は砂浜、やがて海へと景色が変わります。遠くまで、水平線まで見えて、視界爽快！ ひゃっほ——！

と、叫んだところで、終点に到着。海の上の開放感、これは新しい感覚かも。

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