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2021.12.18

【第15回】大原櫻子(女優・アーティスト)/前編

大原櫻子「褒められたら終わり。芸能界に染まらないようにと思ってきました」

世のオヤジを代表して作家の樋口毅宏さんが今どきの才能溢れる女性に接近遭遇! その素顔に舌鋒鋭く迫る連載。第15回目のゲストは、女優でアーティストの大原櫻子さんです。ドラマ、映画、舞台に加えて歌手としても大活躍。1月には主演舞台も控えた売れっ子の素顔とは?

CREDIT :

写真/トヨダリョウ 文/井上真規子 スタイリスト/米原佳奈 ヘアメイク/木内真奈美(OTIE)

松本穂香
さらば雑司が谷』『タモリ論』などの著書で知られる作家の樋口毅宏さんが、時代の先端で活躍する女性たちの素顔の魅力に迫る連載対談企画「樋口毅宏の手玉にとられたい!」。

今回お越しいただいたのは、映画や舞台、ドラマで役者として活躍しつつ、アーティストとしても積極的に活動を続ける大原櫻子さんです。鮮烈な映画デビューのお話から、舞台との向き合い方、本気すぎる役作りまで、樋口さんが深堀り!  来年1月7日からの公演で、大原さんが一人二役を演じる舞台『ミネオラ・ツインズ』についてもお話いただきました。

「芸能界に染まらないようにしようって思っていました」(大原)

樋口毅宏(以下:樋口) 初めまして。本日はよろしくお願いします。

大原櫻子(以下:大原) こちらこそよろしくお願いします。

樋口 さっそくですが、大原さんは、映画にドラマ、舞台、ミュージカル、そして歌もずっと歌ってヒット曲も出していらっしゃる。レコード大賞にも選ばれて、紅白も出て、武道館でライブも実現している。ここまで八面六臂な人って、本当にいないですよね!

大原 いえいえ、とんでもないです。確かにいろんな活動をしているんですが、ただ私の中では舞台も映画もドラマも歌も、表現としてすべて一直線上にあって、境目を作っていないんです。もちろん、現場としてはそれぞれ違う仕事ではあるんですけど。

樋口 たくさんの観衆の前で歌う高揚感は、役者さんにはないものですよね。そういう場で自分は特別なんだって思ったりしませんか?

大原 まったく思わないです!!  むしろそこまでお客様が盛り上がってくれるのが不思議なくらい。きゃ~! って歓声が聞こえると、逆に緊張しちゃう……(笑)。私自身、高揚感とかはまったく求めてなくて、歌でみんなが元気になってくれたらうれしいなって思いながらやってるだけで。
松本穂香×樋口毅宏
PAGE 2
樋口 そして、デビューの逸話もすごい!  大原さんは女子高生の時に、映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』のオーディションで5000人の中から主役のリコ役に選ばれたんですよね。ものすごい競争を勝ち抜かれました。さらに、映画の役柄そのままミュージシャンとしてもデビューされていて。

大原 ありがとうございます。

樋口 しかも、あの佐藤健さんの彼女役ですよ(笑)。主役であるリコがいきなり大抜擢されるというシンデレラストーリーは、大原さん自身の境遇ともすごく重なっていますね。自分で驚きませんでしたか?

大原 友達は驚いていましたね。でも、私自身は、どちらかというと、そういう事態を客観視していたところがあって、初心を忘れたくない、芸能界に染まらないようにしようって思っていました。大学に通ったのもそのためなんです。

樋口 仕事が忙しくなるなか、大学に通いながら芸能活動をされていたわけですよね。ものすごく大変だったのでは?

大原 そうですね。でも、友達が授業のノートを貸してくれたり、たくさんサポートしてくれて。大学と仕事を両立できたのは、友達のおかげなんです。本当にいい友達に恵まれたと思います。
樋口 それは、大原さんのお人柄がいいからですよ!  芸能界に染まりたくないと言うのは、普通の感覚を忘れたくないという?

大原 このお仕事って、物事の考え方が普通と違うことが多いじゃないですか。金銭感覚から、人に対する接し方まで。例えば水が飲みたかったら普通は自分で買いに行くものですけど、この仕事では「水ください」って当たり前に言えてしまう環境がある。そういう当たり前じゃないことが、当たり前になっていくのは怖いです。

樋口 とても地に足がついた考えですね、それは。

大原 あとは仕事で出会った役者さんの中にも、すごく人気があるけれど、普通に一緒に電車に乗ったり、普通の食事をしたりする人がいて。そういう姿を見ていて、すごく素敵だなと思ったんです。私もそうありたいですね。
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「歌うときに毎回楽曲の色を決めて、そこからアプローチする」(大原)

樋口 そういうバランス感覚的なものは、お父さまでナレーターの林田尚親さんから教わったものですか?

大原 父には、小さい頃から「褒められたら終わりだと思え」ってよく言われていました。昔から女優になりたいという夢があったので、日常生活の中でさり気なくですが、そういう考え方に対するアドバイスをもらっていましたね。

樋口 お父さまとは仲が良かったですか?

大原 仲は昔から良かったです。ただ私からすると、父は師匠のような存在だったのかも。喧嘩をすることはあっても反抗期はなかったですし、普通の親子関係とは少し違うかもしれないです。

樋口 師匠的な存在といえば、これまでにも数々のアーティスト、楽曲を手がけてこられたプロデューサーの亀田誠治さんもそういう存在だったのでは?
大原 亀田さんはどちらかというと、一緒に作品を作っていくパートナーだと思っています。亀田さんも私もフィーリングを大切にするので、楽曲を説明するのも理屈ではなく、「ふにゃふにゃした感じ」とか擬音を使って意思疎通するんです。

樋口 そうなんですね! イメージそのもの共有する感じですか。

大原 私はいつも歌う時に、楽曲の色を決めてアプローチするんです。亀田さんにも「今回の歌は何色ですか?」って聞いて、「黄色かな」って答えをもらうと見えてくる。この感覚はお芝居でも同じです。

樋口 すごい!  それを聞いて思い出しましたが、昔見た海外のドキュメントで、色を思い浮かべると匂いや味、音を同時に感じる人たちがいると。彼らは学会でも色物扱いされて否定されてきたけど、近年テクノロジーが進歩してその能力が証明されるようになったそうです。大原さん、まさにそれですよ!

大原 え~っ、そうなんですかね!? 
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「おうちで台本を読み込んで、ボロボロになっちゃいました」(大原)

樋口 ところで来年の1月から始まる舞台『ミネオラ・ツインズ』で、大原さんは双子の姉妹を一人二役で演じられますね。姉妹の性格はまったく違っていて、作品自体も社会問題や格差、フェミニズムなど要素がたくさん盛り込まれているので、すごく難しい役どころだと思います。八嶋智人さん、小泉今日子さんなど共演者たちも芸達者な役者さんばかりです。

大原 すごくやりがいのある作品だと思います。双子のマーナとマイラの17歳から50歳までを演じるんですが、自分の中に若い時のマーナの色、歳取ったマイラの色、という感じでそれぞれに色のイメージが浮かんでいて。それが正しいかどうかは稽古が始まって、演出家さんと話してみないとわからないんですけど(※取材時は稽古が始まる前)。色が決まると、声のトーンや演じ方がパ~って一気に浮かんできます。

樋口 やはりそれは立派な能力ですよ。今は本読みの段階ですか?

大原 そうですね。おうちで台本を読み込みすぎて、ボロボロになっちゃいました。舞台の時は、いつもいっぱい書き込むんです。終わる頃には台本の字が見えないぐらい(笑)。こんな感じです。(台本見せてくれる)
樋口毅宏
▲ サロペット/YUKI SHIMANE(参考商品)、ボールチューンネックレス6万1600円、丸型ピンキーリング8800円、型押しピンキーリング1万7600円/すべてe.m.(e.m表参道)、ニット(スタイリスト私物)
樋口 え、古本レベルじゃないですか……。小学校の6年間使った教科書でも、こんなに汚れないですよ!

大原 アハハ(笑)。稽古では、もう1冊の綺麗な方を使うつもりです。汚いって思われちゃいそうなんで。

樋口 っていうか、セリフの量も多すぎません?  これだけの台本叩き込みながら、今はドラマの撮影もあって、頭の中混乱してきませんか!?

大原 そう! 最初のセリフで、ここからここまであるんですよ!  1日1ページは必ず読もうと思ってやってるんですけど。演出家の藤田俊太郎さんが、セリフの多さで言ったら『ハムレット』『ミネオラ・ツインズ』だろうっておっしゃってました。

樋口 ハムレットを引き合いに出すレベル……。しかも一人二役ですしね。すごすぎる。

※後半に続きます。
松本穂香
松本穂香

● 大原櫻子 (おおはら・さくらこ)

1996年、東京都生まれ。日本大学藝術学部映画学科卒業。2013年、映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』全国ヒロインオーディションで5000人の中から抜擢され、スクリーン&CD同時デビューを果たす。2014年、女優として『日本映画批評家大賞 “新人賞”』、歌手として『第56回輝く!日本レコード大賞”新人賞"』を受賞。以降、歌手活動と並行して、数々のテレビドラマや舞台へ出演。代表作に映画『あの日のオルガン』(2019)、『犬部!』(2021)、ドラマ『なつぞら』(NHK)、『つまり好きって言いたいんだけど、』(テレビ東京)、舞台『メタルマクベス』、『怪人と探偵』ほか。さらに毎年のように全国を巡るコンサートツアーを実施。これまでに13枚のシングルと5枚のオリジナルアルバムを発売。
HP/SAKURAKO OHARA OFFICIAL SITE (oharasakurako.net)

樋口毅宏

● 樋口毅宏 (ひぐち・たけひろ)

1971年、東京都豊島区雑司が谷生まれ。出版社勤務の後、2009年『さらば雑司ケ谷』で作家デビュー。11年『民宿雪国』で第24回山本周五郎賞候補および第2回山田風太郎賞候補、12年『テロルのすべて』で第14回大藪春彦賞候補に。著書に『日本のセックス』『二十五の瞳』『愛される資格』『東京パパ友ラブストーリー』など。妻は弁護士でタレントの三輪記子さん。最新作は月刊『散歩の達人』で連載中の「失われた東京を求めて」をまとめたエッセイ集『大江千里と渡辺美里って結婚するんだとばかり思ってた』
公式twitter 

『ミネオラ・ツインズ~六場、四つの夢、(最低)六つのウィッグからなるコメディ~』

ピュリツァー賞受賞作家のポーラ・ヴォーゲルが、1999年にオフ・ブロードウェイで上演した作品。1950年代から1980年代の激動の時代に、女性たちが何を考え、何を体験してきたかを痛烈な風刺を込めて描いた、痛快で挑発的なダーク・コメディ。物語の舞台はニューヨーク郊外の小さな町ミネオラ。一卵性双生児のマーナとマイラ姉妹は、同じ容貌でありながら性格は似ても似つかず、お互いを遠ざけながら生きてきた。始まりは1950年代、核戦争の恐怖が日常生活にもはびこるアイゼンハワー政権下。保守的な女子高生マーナは「結婚こそ輝かしいゴール」として、すでにジムと婚約している。一方のマイラは「世間の常識なんかクソくらえ!」と考える反逆児。ある時、素行の悪いマイラを諭そうと、マーナに頼まれた婚約者ジムがマイラのもとへと向かうが……。演出/藤田俊太郎、出演/大原櫻子、八嶋智人、小泉今日子ほか。2022年1月7日~31日。スパイラルホール(東京・青山)。
HP/ミネオラ・ツインズ | シス・カンパニー | SIS company inc.

※掲載商品はすべて税込み価格です

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