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2021.11.27

村治佳織の人生を輝かせる秘訣「心って1秒で変えられると思う。1秒で明るくも、暗くもなれる」

日本を代表するクラシック・ギタリスト、村治佳織さん。15歳でのCDデビュー以来、世界を舞台に活躍。大病を患った30代と、そこからの復活を経て再び充実した演奏活動を続ける40代のいま、日々、思うこととは? 12月1日にリリースされるベストアルバムの話とともに伺いました。

CREDIT :

文/浜野雪江 写真/富井昌弘

15歳でのデビュー以来、日本を代表するクラシック・ギタリストとして活躍を続ける村治佳織さん。長いキャリアを経て、心に染み入る深い音色で多くのファンを魅了しています。

高校生ギタリストとして脚光を浴びた10代の頃から日本と海外を行き来し、忙しくも充実した日々を送ってきた村治さんも、30代での大病を機に、活動のしかたをシフトチェンジ。新しいスタイルの中でしなやかに年齢を重ねてきましたが、40代を迎えた今、何を大切に日々を送っているのでしょうか。

12月1日にリリースするベストアルバム『ミュージック・ギフト・トゥ』のことや、今のご自分のこと。そして、ポジティブに生きるコツまで、ざっくばらんにお話しいただきました。

大人ぶらない大人たちを素敵だと思った10代のころ

── このたびはLEON.JPにご登場いただきありがとうございます。実は村治さんが2年前に出された初の書下ろしエッセイ『いつのまにか、ギターと』はウチの会社で作らせていただいたのですよね。

村治 そうなんです。ユニークな編集者さんがいろいろ引き出してくださって。おかげさまで、言葉の世界で思いを伝えるという初めての体験も、とても楽しくやりきることができました。

── 部署は違いますが、何かご縁を感じます(笑)。

村治 私もLEONさんからもお声がけいただいてうれしかったです。読者の皆さんは、私と同世代か、少しお兄さんですよね。

── はい。まさにそういう大人たちが、仕事だけでなく、趣味やお洒落などを通じて人生をどう楽しんでいくか、“大人としてどう豊かに生きていくか”というのがLEON.JPのテーマなのです。10代の頃から大人の中で過ごしてきた村治さんは、いろんな大人を見て感じることも多かったと思うのですが。
村治 確かに、今振り返ると、14、15歳で常に20代、30代、40代の大人の方に囲まれているのが日常でした。そんななかで私が子供の頃、素敵な大人だなぁと思ったのは、大人ぶらない方たちでしたね。10代の私に対しても目線を等しく、同レベルに立って意見してくれたりする時に、私は感動していたんです。

私もそういう大人でありたいと思うので、例えば若い人と対峙した時に、「自分の時代はこうだった」みたいな話をするより、今の自分が何を考えているかを、上から目線ではなく語れるように自然になっているかなとは思います。
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── ご自身も、大人になるにつれて変化した部分はありますか。

村治 35歳の時に、大病で演奏活動を休養せざるを得なくなったんです。それまでの私は、2年先までコンサートスケジュールが入っている状況がデビュー以来、十数年間続いていて。一つひとつのお仕事はすべて前向きにやっていたのですが、一つ終わると余韻を楽しむことなく次に向かうというマインドだったんですね。

それが、3年間の休養を経て活動を再開する際には、終わった後の余韻までも楽しむことで一つの事を完結するようなスケジュールを組んでいきたいなと思うようになって。一つひとつをじっくり味わうことで、自分の中での残り方も深くなりますし、いいコンサートのためには自分が毎日楽しくできているのが一番なので、練習の時間はもちろんのこと、すべての過程において、その瞬間瞬間を大事にできるようになりました。
── 日常を楽しくするために、どんなことをしているのですか?

村治 例えば、私はおいしいコーヒー1杯でけっこういい気持ちになるので(笑)、この町のここ、みたいなカフェをいくつか見つけておくんです。だから街歩きはホントによくしていますし、そういう方法を日々見つけて工夫していますね。

あと、大人になるにつれての変化といえば、体はどんどん変化していくわけで。10代20代は艶やかになっていく時期でしたけど、30代40代以降は誰もがエイジングしていきますよね。鏡を見ると、「あれっ!?こんなとこにシワがある」とかあるじゃないですか(笑)。

── あります、あります。どう受け止めればいいんでしょう(笑)。

村治 受け入れざるを得ないので、見た目の変化に抗うよりも、心を変えていくしかないですよね。「これも年輪だ」とか、「このシワを美しいと感じない男性は、その人が未熟なんだ」とか(笑)。これぞ心の訓練で、これまで以上に心が試されるんだな~なんて思いながら毎日過ごしています。

クラシックギターのメロディを人生と重ね合わせて生きる力にしてほしい

── 12月1日にはベストアルバム『ミュージック・ギフト・トゥ』をリリースされます。映画音楽を中心に、誰もが知る耳慣れた曲が揃っていますね。

村治 きっと、知らないメロディがひとつもない、という感じですよね。コロナ禍で動けないなか、今しかできないベスト盤を作ろうということで、本当に人々に愛されて、人の癒しにも力にもなるものがいいなと思って、このアルバムを作りました。
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── 選曲はどのようにされたのですか。

村治 近年、自分がコンサートでよく弾いてる曲が自然と集まりました。なぜ弾くかっていうと自分が好きだからなんですけど、これらの曲を弾くと、お客様が喜んでくださるのが空気として伝わってくるんです。とても集中して聴いてくださって、そのあとの拍手も大きい。そんな曲たちばかりです。

── タイトルに「愛」のつく曲が多く入っていますね。

村治 愛は、人の人生における永遠のテーマのひとつだと思うし、愛にあふれた一枚になったと思います。タイトルは、このアルバム自体を贈り物にして、楽しんでいただけたらいいなという気持ちもこめて『ミュージック・ギフト・トゥ』としました。トゥ(to)のあとに、お友達やご家族の名前を書き込んでいただいて、そのままお渡ししてほしいですね。

── LEON世代の読者たちにはどんな風に聴いてほしいですか?

村治  「LEON」の読者の皆さんも、全身で感じる刺激的な音楽がささる時期もあったと思うのですが、今後はそれプラス、静かに耳を傾けることもいいなと思える世代になってくるかなと思うんです。そういう時に、クラシックギターというのは余韻が美しい楽器なので、さまざまなメロディをご自分の人生と重ね合わせて、生きる力にしていただければうれしいです。

── 読者の中には、若い頃、バンドを組んでいた人も多いようです。

村治 そういう方には、クラシックギターのナイロン弦の温かい響きもおすすめしたいですね。バンドはみんなとやる楽しさがあるのに対し、クラシックギターは楽器と自分が一対一で、なんでも話を聞いてくれる友達がひとり見つかった、みたいな感じ。未経験の方でも、30分のレッスンを3回やれば両手で弾けるようになります。

── 中年のおじさんでも大丈夫ですかね?

村治 大丈夫ですよ! いきなりFとかのコード弾きはしなくていいです。単音で、きれいな音を出そうと思ってつまびいてる時間も楽しいと思うので。これからは、聴く楽しさに加えて、弾く楽しさも皆さんに感じていただけたらなと思います。
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衣装協力:ADELLY

“言霊”ってあると思う。いい言葉をイメージすることが大事

── 村治さんご自身は、これからの40代をどう過ごしていきたいですか。

村治 30歳になった時、30代は仕事でもプライベートでもいろんなことができるなぁと思って、「優雅なる闘い」というテーマを考えたんです。闘いというのは勝ち負けじゃなく、自分を貫いていく闘いです。でもあまりギスギスしたくないから、優雅なるってつけたんですけど、結果的に大病しちゃったし、言葉って怖いなと思ったんですよね。

だから40代の今は、「豊饒の時代」って思いながら生きています。で、50代は「黄金」にしようかなと思ってるんですけど。私は“言霊”ってあると思うので、いい言葉をイメージしていると、言葉がそこへ連れてってくれるような気がします。

── “豊饒”を生きるうえで、今どんなことを大切にしていますか。

村治 私の場合は、がむしゃらに目標を立ててやるより、来たものに対して柔軟に飛び込めるよう自分のお皿を大きくしておきたいと思うので、常に動けたり、感動できたりする柔らかな心を大事にすることですかね。

あと、この歳になって、疲れた時に、やっと、ぼ~っとできるようになりました。10代、20代の頃は、午前中、ベッドの上でゴロゴロすることに罪悪感があったんです。でも今は、 何も生み出さない無為の時間があってもいいやと思えるようになりました。大人になりましたね(笑)。ただ、毎日基礎練習をしないと筋力は下がってくるので、そこはコツコツ頑張っています。

── あらためて、ご自身にとってギターはどんな存在ですか。

村治 道具であって道具でない、同士みたいなもので、絶対的信頼感があります。自分を輝かせてもくれるし、常に高めなきゃって気持ちにもさせてくれるし、弾く音によって邪悪なものから遠ざけてくれるものでもあります。ギターという楽器への信頼感がものすごいので、それと同じような信頼感を人と築き続けるのはなかなか大変なんです(笑)。何も言わずに、ここで待っていてくれる存在っていいですよね。

── 本当に心強い存在なんですね。

村治 そうですね。演奏を通して、人様にもそういういい気持ちをもっていただけたらいいなぁと思うんです。加えて、今後は、ギターを友達にしてもらえるような楽しい提案もしていけたらなと思っています。
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── 「何事もいい方向から見る」という村治さんの姿勢はとても素敵ですが、そんなふうに考え方をポジティブに転換させるコツはありますか。

村治 心って、変えようと思えば1秒で変えられると思うんです。1秒で明るくもなれるし、暗くもなれる。なので私は、身に起きるさまざまなことも、事実として一回は受け入れたうえで、自分にとってワクワクできる言葉や考えが浮かんでくるのを待ったり、他の人からヒントをもらって、明るい方向に転換しています。

それと、心が疲れている時は、身体が疲れてることも多いので、そんな時は何も考えずにぼ~っとしたり、身体を横たわらせて休むようにしています。そういう心身のコントロールは、仕事への向き合い方や、人生をどう楽しむかにもつながっていく気がしますね。

●村治佳織(むらじ・かおり)

1978年、東京都生まれ。クラシック・ギタリスト。幼少の頃より数々のコンクールで優勝を果たし、15歳でCDデビュー。フランス留学から帰国後、積極的なソロ活動を展開。2003年、英国の名門レーベル・DECCAと日本人初の長期専属契約を結ぶ。出光音楽賞、村松賞、ホテルオークラ音楽賞、ベストドレッサー賞、ブルガリアウローラアワードなど数多くの賞を受賞。2018年9月にリリースしたアルバム『シネマ』で日本ゴールドディスク大賞を受賞するなど、精力的な音楽活動の傍ら、テレビ番組やラジオ番組ナビゲーターなどのメディア出演も多い。著書に『いつのまにか、ギターと』(主婦と生活社刊)ほか。
オフィシャルHP/http://www.officemuraji.com/

『ミュージック・ギフト・トゥ』

日本を代表するクラシック・ギタリストの一人、村治佳織の 7年振りのベストアルバム。近年公演でよく弾くレパートリーを中心に、ポピュラー楽曲、映画音楽やクラシックの名曲など人気レパートリーを 村治佳織本人が選曲。コロナ禍を耐え忍んでいるすべての人に、音楽で癒しやエールを送りたいという気持ち を込めて選曲された楽曲は、「ムーン・リバー」「愛のロマンス」「イエスタデイ」「戦場のメリークリスマス」「主よ、人の望みの喜びよ」など、ジャンルを超えて愛される珠玉の名曲ぞろいです。このベストアルバムのために新録音したミュージカル《キャッツ》の「メモリー」も特別収録。12月1日発売。3080円(税込)。

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