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2021.11.20

【第14回】松本穂香(女優)

松本穂香「女優はいい意味で力を抜いて演じる方が健康的」

世のオヤジを代表して作家の樋口毅宏さんが今どきの才能溢れる女性に接近遭遇! その素顔に舌鋒鋭く迫る連載。第14回目のゲストは、女優の松本穂香さんです。映画、ドラマの他CMでも大活躍。この2年間で7本もの主演を務めたという、まさに売れっ子女優の素顔とは?

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写真/トヨダリョウ 文/井上真規子 スタイリスト/道端亜未 ヘアメイク/尾曲いずみ(STORM)

『さらば雑司が谷』『タモリ論』などの著書で知られる作家の樋口毅宏さんが、才能のある女性の魅力を掘り出す連載対談企画「樋口毅宏の手玉にとられたい!」。

今回お越しいただいたのは、いま映画から連ドラまで引っぱりだこの若手女優、松本穂香さん。2015年に『風に立つライオン』で長編映画デビューを果たしたのち、この2年間で7本もの主演を務めるまさに売れっ子。

監督たちから“唯一無二の存在感を放つ女優”と評される松本さんの素顔とは?  ヒロインとして出演した新作映画『ミュジコフィリア』の裏話とあわせて、樋口さんがお話を伺いました。

「『ミュジコフィリア』では、初挑戦のことがたくさんありました」(松本)

樋口毅宏(以下:樋口) お会いしたかったです! 本日はよろしくお願いします。

松本穂香(以下:松本) ありがとうございます。よろしくお願いします。

樋口 11月19日に、映画『ミュジコフィリア』が公開されます。松本さんは天性の音感と歌声をもつヒロイン・浪花 凪(なにわ・なぎ)役で、同じく天性の音楽の才能をもつ美大新入生の漆原 朔(井之脇 海さん)に想いを寄せる役どころ。松本さんは凪を演じるだけでなく、ギターも弾いて、主題歌も劇中のソプラノパートも歌ってと、とにかく大忙しでしたね。

松本 そうですね。初挑戦のことがたくさんありました。特にギターは経験がなかったので頑張って練習しました。
樋口 主題歌も初々しい声の感じがとても印象的でしたが、昨年リリースされた『守ってあげたい - from Old To The New』も、ストレートで伸びやかな歌声がすごく良くて驚きました。松本さんの歌を聞いて、原曲を歌う松任谷由実さんとはまた違った、こういう解釈もあるんだってとても新鮮に感じました。

松本 ありがとうございます! 自信は全然ないんですけど……(笑)。あの企画は、上手い下手に関係なく、あえて女優が歌うという企画だったので、とにかく一生懸命歌いました。
樋口 『ミュジコフィリア』の舞台になった京都は僕も2〜3年住んでいたことがあって、賀茂川の川べりとか、見ていてすごく懐かしかったです。劇中では関西弁を話されていましたが、松本さん自身も大阪出身ですよね。

松本 そうですね。映画の中でも、普段通りの大阪弁を話していました。

樋口 あれ、大阪弁だったんですね! 僕は関東の人間なんですが、大阪と京都、そのほかの地域の関西弁の違いがいまいち区別できなくて。やっぱり何年か住んでもわからないものだなと。
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松本 確かに、関西弁は難しいってよく聞きます。海くん(井之脇)演じる主人公の朔は京都出身の設定で、でも海くんは東京出身だから、現場で京都出身のスタッフさんに色々教わりながらやっていましたね。

樋口 方言を身につけるのは、やっぱり大変ですよね。松本さんは演じる時、標準語より関西弁の方が演じやすかったりしますか?

松本 家に帰ったら関西弁を話しますし、身近なのは確かに関西弁ですが、演じるうえでは正直あまり変わらないです。そんなに意識してないと思います。

樋口 バイリンガルが松本さんの強みだし、魅力だと思います!

「高校時代の演劇部の延長線上に、今がある感じです」(松本)

樋口 松本さんは高校時代にたまたま演劇部に入ったことが女優を目指すきっかけになったとか。もともと演技に興味はあったんですか?

松本 (女優に)憧れみたいなものはあったんですけど、自信があったわけでもなく。ただ、演技をしてみたら、それが結構褒められたりして。だんだん演じることの面白さを知っていったというか。だから何か大きなきっかけがあって目指したというより、演劇部の延長線上に今がある感じかもしれないですね。
樋口 それは、ものすごい延長戦(線でなく)ですね! 松本さんが出演する作品で僕が拝見したのは、『ひよっこ』、『この世界の片隅に』、『わたしは光をにぎってる』『おいしい家族』などなど。たくさんの現代劇に出ているかと思えば、『みをつくし料理帖』のような時代ものにも出ているし、『君は彼方』では声優もやられて、CMも出ていて、と本当に幅広い。そして、この2年間で主演をつとめた映画は7本! 松本さんはいつ寝ているんだろう? と驚きますが。
松本 ちゃんと寝てますよ!(笑)。でも先日、別の取材で2年で7本というのを聞いて、そんなに出ていたんだと自分でも驚きました。作品と作品の合間は短くても休みがあるので、体感としては同世代の人たちよりもお休みをいただいているくらいに思っていたんですが。

樋口 家に脚本が積み重なるようなことはないんですか?

松本 撮影は、極力重ならないようにしてもらっています。たまに仕方なくそうなってしまう時もありますが。

樋口 でも連続で演じるとなると、自分の中に前作のキャラクターが残ってしまって、次の作品に入る時に切り替えが大変だったりしませんか?

松本 それはあまりないんですけど、どちらかというと、寂しいと思いながら次の作品に入ることが多いかもしれないです。2カ月続いた撮影が終わって、毎日会っていた人たちと急に会わなくなれば、やっぱり寂しいですね。そういう時は「やらなくちゃいけないんだ」って気持ちを切り替えて、次の現場に臨むようにしています。
樋口 なるほど。俳優は役に入り込む憑依型の人もいれば、そうじゃない人もいると思いますが、松本さんは憑依型ではない?

松本 そうですね。自分の精神を切り詰めて役を演じる俳優さんも多いですが、私はそうならないようにしています。先輩の話に影響を受けている部分もありますが、いい意味で力を抜いて演じる方が健康的だし、自分のためにはいいのかなと思っています。

樋口 演じることの怖さを感じますか?

松本 ご本人がやりたくてやっているなら、いいと思うんです。でも、めちゃくちゃしんどい状態になってまでやるのはどうなのかなと。もちろん、しんどい思いをして頑張らなくちゃいけない時もあるんですけど、限度を超えないぐらいで頑張るのがいいかなと思います。

樋口 すごく地に足がついた考えだと思います。現場が終わったら、自分自身に戻る感覚とかはありますか?

松本 切り替えている感覚は、ほとんどないんです。でも、緊張状態がすぐに解けるわけではないので、夜中まで撮影がある日はすぐに寝れないこともありますね。そういう時は、ゆっくりお風呂に入ったりして、気持ちを落ち着かせるようにしています。

「松本さんがBL愛好家の腐女子役にすごくハマっていて感激しました」(樋口)

樋口 松本さんが出演した作品のなかで特に感銘を受けたのが、ドラマ『グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ』。僕は格闘技好きで、原作(板垣恵介作・漫画『グラップラー刃牙』)も愛読しているんです。

それもあって、主人公のBL愛好家腐女子役に松本さんがすごくハマっていて感激しました! あまりにも上手かったので、もしかして松本さんにもああいう要素があったりするのかな? と思ったり。

松本 ありがとうございます。でも、残念ながら私自身は特にBLが大好きというわけでもなく(笑)。演じた時は、腐女子というのはあまり意識せずに、熱量が高い部分を軸にしてやりました。
樋口 自分に要素がなくても演じられるものですか?

松本 もちろん、ある程度ないとできないとは思います。あとは、ない部分は想像力を膨らませながらやっています。

樋口 その話で言うと、数年前に亡くなられた大物俳優の松方弘樹さんは、自分の素でできる役か、まったく自分に要素がない役のどちらかしかやらないと決めていたそうです。もちろん若いうちに色々チャレンジされて、大御所になってから決めたことだと思いますが。

松本 自分の中にまったくない役の方が、演じている方としては楽しいかもしれないですね。

樋口 ちなみに、原作の漫画『グラップラー刃牙』は読んでみてどうでしたか?

松本 面白かったです!  長い間、色々な人に愛されているだけの理由がある作品だなと思いながら読みました。
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「ホラー映画が好きです。最近は『ミッドサマー』を見ました」(松本)

樋口 普段、映画は見ますか? 好きな作品があれば教えてください。

松本 映画は、この仕事を始めるようになってからよく観るようになりました。特にジブリ作品は好きで、家で観ることが多いんですけど。あとは、ジャンルだとホラーが好きです。最近は『ミッドサマー』を見ました。

樋口 あの映画は独特の世界観ですよね。もし、松本さんに『ミッドサマー』のオファーが来たら受けますか?

松本 どうだろう(笑)。面白いと思いますけど、けっこう飛び抜けた話だから迷いますね。

樋口 現代社会と通じないような田舎で起こるホラー、という意味では横溝正史の『八つ墓村』あたりが近いように思いますけど。それにしても一人でホラーを見るんですか? めっちゃ怖くないですか!?
松本 私、ホラーって怖いだけじゃなくて、コメディ要素もあると思っていて。なので、けっこう一人でも楽しめちゃいます。

樋口 確かに、怖さも突き抜けると笑うしかない時もありますよね。あと、好きな俳優さんがいたら教えてください。

松本 『パターソン』を見て、アダム・ドライバーはいい役者さんだなと思いました。それと映画監督で、役者もされているグザヴィエ・ドランも気になります。若いのに世界観があってすごいなと。

樋口 そうですか! 実は僕の2010年代のベスト映画も、グザヴィエ・ドランの『私はロランス』なんです。あれは本当に最高で、見ていて何度も泣きました。自分がゲイだったらさらにもっと号泣していたのだろうなと思ったぐらい(笑)。

松本 そうなんですね(笑)。
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「お仕事の話をしないでも仲良くなれるような人がいいなって思います」(松本)

樋口 過去のインタビューで「同業者に友達を作らない、嫉妬してしまう感情をもつのが嫌だから」というのを見て、松本さんは正直な人、負けず嫌いで芯が強い人だなって感じました。

松本 あえて作らないようにしているわけではないんですけど……。共演者と仲良くなる前に、2週間とか短い期間で現場が終わってしまう作品も多いので、実際のところそこまでいかないというか。でも、気が合う人がいれば友達になりたいです。特に、お仕事の話をしないでも仲良くなれるような人がいいなって思います。

樋口 となると撮影はある程度、しっかり期間があって打ち込める方がいいですか?

松本 どうだろう。むしろ短期間で凝縮して撮影するのに慣れてしまっているので、撮影期間が少し長いとゆとりがありすぎて、自分の気持ちを保つのが大変かもしれないです。
樋口 松本さんは、今後どんな女優になっていきたいですか?

松本 面白い役者、って言ってもらえるようになれたらうれしいですね。あとは、昨年ラジオパーソナリティも始めたんですが、そういう新しいことにもどんどん挑戦していきたいです。

樋口 TBSラジオの「新米記者・松本穂香です。」ですね。落ち着いて、聴きやすくお話していますね。これからも頑張ってください! 応援しています。今日はありがとうございました!

【対談を終えて】

かつて、見た目では判断できないルッキズムに抗う俳優たちがいた。彼ら彼女らは自分に付き纏うイメージと戦い、常に最前線に身を置いてきた。僕は松本さんに同様のものを感じた。イノセンスと芯の強さ。きっともっと「松本穂香」になっていくのだと思います。個人的にはナタリー・ポートマンの『ブラックスワン』や、イ・ウンジュの『スカーレット・レター』みたいな作品に出て、さらに飛躍してほしいかと。お話楽しかったです。ありがとうございました。

● 松本穂香 (まつもと・ほのか)

1997年2月5日、大阪府生まれ。2015年『風に立つライオン』で長編映画デビュー。その後、映画『青空エール』『にがくてあまい』などの出演を経て、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』で青天目澄子役を演じ、注目を浴びる。2019年公開『おいしい家族』で長編映画初主演。以降、『わたしは光をにぎっている』『酔うと化け物になる父がつらい』など、2021年までに7本の映画で主演を務める。2020年からTBSラジオ『新米記者・松本穂香です。』で、ラジオパーソナリティにも挑戦中。待機作に、ヒロインを務めた映画「桜のような僕の恋人」がNetflixにて3月24日全世界配信予定。
オフィシャルWEBサイト/FLaMme official website

● 樋口毅宏 (ひぐち・たけひろ)

1971年、東京都豊島区雑司が谷生まれ。出版社勤務の後、2009年『さらば雑司ケ谷』で作家デビュー。11年『民宿雪国』で第24回山本周五郎賞候補および第2回山田風太郎賞候補、12年『テロルのすべて』で第14回大藪春彦賞候補に。著書に『日本のセックス』『二十五の瞳』『愛される資格』『東京パパ友ラブストーリー』など。妻は弁護士でタレントの三輪記子さん。最新作は月刊『散歩の達人』で連載中の「失われた東京を求めて」をまとめたエッセイ集『大江千里と渡辺美里って結婚するんだとばかり思ってた』
公式twitter 

『ミュジコフィリア』

『神童』『マエストロ!』のさそうあきら氏原作の人気漫画を実写化した映画作品。京都の芸術大学に入学した主人公の漆原 朔(井之脇 海)が現代音楽に触れながら、個性豊かな大学の仲間たちや、ピアノ科の学生で朔に想いを寄せる凪(松本穂香)との出会いを通じ、閉じ込めてきた自らの才能を開花させていく青春群像劇。京都を舞台にした美しい映像も見どころのひとつ。監督は『時をかける少女』『人質の朗読会』などの谷口正晃。共演に井之脇 海、山崎育三郎、川添野愛、阿部進之介、石丸幹二ほか。11月19日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中。
HP/https://musicophilia-film.com/

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