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2019.09.13

彼女に教えてあげたい【月に関する10のトリビア】

彼女と月見はいいけれど、さて、何を話します? 黙って月を見ているだけじゃ間がもちませんよ! というわけで月に関するトリビアを六本木天文クラブの泉水朋寛さんに教えてもらいました。

CREDIT :

文/木村千鶴

夜空に浮かぶ月
ようやく激しい残暑も峠を越え、少しずつ秋の気配を感じるようになってきた今日この頃。空気が澄んでくるとともに、夜空に浮かぶ月の姿もくっきりと輝きを増してきました。

さて、今年の中秋の名月の日(旧暦の8月15日)は9月13日で、満月の日である9月14日の前日です。そこで十五夜の晩に、ぜひ彼女に教えてあげたい、月に関する10のトリビアを、六本木天文クラブなどで活動されている、「星のソムリエ®」の資格をもつ泉水朋寛さんに伝授していただきましたよ。

【1】 秋の月は、なぜきれいに見えるの?

中秋の名月の名の通り、秋空に浮かぶ満月はとてもきれいです。それにはいくつかの科学的な理由があります。夏の満月は、月の軌道の関係で低い位置にあります。すると、空気中のチリや地上の光の影響を受けやすくなり、水蒸気の量が多いこともあって、満月は少しぼやけて見えがちです。
冬は湿度が低く空気が澄んでいますが、満月は高い位置にあるので若干見えにくくなります。それに、何といっても寒いですよね。春は「朧月夜」と言われるように、空気中のチリや花粉が多く、かすんで見えることが多くなります。そんなわけで月(特に満月)を見るのに最適なのは秋、なんですね。

【2】 地球から“月の裏側”が見えない理由は?

地球から見る月は、いつも「ウサギ」の模様がある表側しか見えません。これは、月の自転周期と公転周期が27.3日でピッタリ一致しているからです。
この一致は偶然ではなく、月の構造に原因があると考えられています。月の重心(重さの中心)が表側に偏っていて、その方向が引力の強い地球側に向いて安定しているからです。この向きからずれたとしても、月と地球との間に働く引力によって月の自転速度が調整されるので、公転周期と同じになるのです。
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月

【3】 月の暗い部分が、なぜ「海」と呼ばれるの?

月には多数の「海」が存在します。表側だけを見ても、嵐の大洋・湿りの海・雲の海・雨の海・晴れの海・静の海・豊かの海……。月の暗い部分を「海(マーレ、mare)」と名付けたのは紀元1世紀ごろ のギリシャ人だそうです。
 白い部分を「高地(テラ、terrae)」と呼んだことから、月にも地球と同様に陸と海があると考えた場合に「暗いほうが海だろう」という発想に至ったのではないでしょうか。 月の海は、地下のマグマが上昇して冷えて固まった玄武岩だということが、アポロ計画で地球にもち帰られた岩石試料からわかりました。黒くみえるのは2価の鉄によるものです。

【4】 月の温度はどのくらい? 表と裏で温度は違うの?

地球の表面を囲う大気には実にさまざまな役割があるということは皆さんご存知の通り。熱の平準化もそのひとつですが、大気の存在しない月では、昼夜、影と日なたの寒暖の差が激しく、赤道部分では昼(日なた)は110℃、夜(影)は-170℃にもなるそうです。

表と裏というのは地球からの観点ですが、これは太陽から見ることとは無関係ですから(太陽から見た表は昼で裏は夜)、“地球から見た”表と裏の温度差はないでしょう。ちなみに月の自転周期は 27.3日なので、昼と夜はそれぞれ約 14日間続くことになります。アポロの月着陸時にもこの温度差に気を配って早朝の時間が選ばれたそう。早朝は温度が低いというところは地球と同じぐらいなのだそうです。

【5】 月で水が見つかったって知ってた?

この8月に「月の北極や南極に水の氷が見つかった」というニュースが発表されました。実はこれまでに何度も「見つかった」と 言われてきているので、目新しさはあまりありませんが、今までよりも“確実性が高い”という話ではあります。

この観測では、月の表面の深さ数ミリメートル以内のところに水の氷が存在するとしているので、将来の月探査や月滞在時にも利用できる水源になるかもしれませんね。そして特筆すべき点は、 この観測を行ったのが2008年にインド宇宙研究機関が打ち上げた月探査衛星「チャンドラヤーン1号(Chandrayaan-1)」だということです。つまりインドでも月探査機を打ち上げているんですね。これはあまり知られていないことではないでしょうか。
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月から見た地球

【6】 月の地下には巨大な空洞があるって本当?

1年前になりますが、日本の研究チームが月の地下に巨大な空洞があることを発見しています。2009年に日本の月探査機「かぐや」が撮影した画像データから、月の表側にあるマリウス丘に通常のクレーターとは異なる縦孔が発見され、地下空洞が開いたものだろうという仮説が立てられました。

さらに、NASAの月探査機「ルナー・リコナサンス・オービター」のカメラによる観測で縦孔の底に数十m以上の空間が広がっていることが確認されています。地下は、微隕石の衝突や強い放射線といった月面の厳しい環境から機器や人を守り、温度が比較的安定しているなどの利点から、将来の月面基地建設地の候補としても注目されています。

【7】 月はどうやって誕生したの?

月は地球と同様、約45億年前に誕生したとされています。月の誕生について、考えられている説は4つ。地球の一部が分離して月になった「親子分裂説」。他の場所で誕生していた月を地球が引き寄せ捉えた、捕獲説、太陽系が生まれたときにすでに一緒に誕生していた「双子説」。そして最も有力と言われているのが、地球が誕生して間もない頃に、火星くらいの大きさの星が地球にぶつかり、砕け散った星の残骸と、衝突によってえぐられた地球の表層物質が長い時間をかけて集積し、月が作られたという「巨大衝突(ジャイアント・インパクト)説」です。
月には、その化学組成が地球のマントル部分と似ている、平均密度が地球に比べ低い、などの特徴がありますが、前述した「双子説」「親子分裂説」「捕獲説」ではこれらを矛盾なく説明することができません。「巨大衝突説」ではこれらの特徴の多くを説明することができ、月がどのように誕生したのかを説明するものとしては、最も有力だと考えられています。
月と地球の比較

【8】 衛星としては大きすぎる月。将来落ちてこない!?

他の惑星に属する衛星に比べて、大きすぎると言われる月。太陽系最大の衛星、ガニメデの質量は木星の1万3千分の1。対する月は地球の8分の1です。とても大きいですよね。ですが力学的に安定しているので、少なくとも現在予想可能な範囲の未来には、まったく危険はないでしょう。何かが起こるとすれば「未発見の大型天体が月に衝突してその破片が降ってくる……」といった可能性くらいでしょうが、それは「月が危険」なわけではなく「その大型天体の方が危険」ですね(笑)。
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【9】 月のクレーターが一番はっきり観測できるのはいつ?

美しい満月を見るために、望遠鏡を使って観測するという機会はありますよね。でも実は、欠けた月の方がクレーターはよく見えます。正しく言うと「クレーターの立体感は、欠けた月のほうが感じやすい(とくに欠け際のところ)」ということですね。地球から見て横から光が当たっている状態になるので、影ができるからです。
人の顔や凹凸のある壁などの立体感も、正面から光を当てるよりも斜めから光を当てて影を作ったほうがわかりやすいのと同じです。

【10】 月に移住するという未来はやってくるの?

太古の人類が海を渡ったり山や砂漠を越えたりしたのは、生活地や食料を求めてといった実用面が大きかったのはもちろんですが、見果てぬ地への憧れや好奇心もあったと思います。人類が月や火星を目指すのも、それと同じようなこと。いずれはきっと移住するようになるでしょう。ただし、一般の人が大勢長期的に滞在できるようになるのは、数百年くらい先の話になるかもしれません。
まずは資源採掘や研究という点で短期的にでも居住するとした場合、(水や酸素を別として)最も重要なのは隕石や放射線の対策ではないでしょうか。地球と異なり大気がほとんどないため、これらがブロックされないからです。前述した地下空洞は、隕石などを防いでくれることから拠点に適しているでしょう。 そして移住するレベルで大人数が暮らすとなれば、いつでも地球を見ることができる月の表側は裏よりもずっと人気だろうと思っています。
泉水朋寛(せんすい・ともひろ)

● 泉水朋寛(せんすい・ともひろ)

1975年岡山県生まれ。京都大学理学部卒、東京大学大学院理学系研究科天文学専攻修士課程修了。㈱アストロアーツ勤務。2005年より1年間ニュージーランドにて星空ガイド。2008年に「星のソムリエ®みたか」に認定される。

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