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2021.10.11

スマホから生み出したアートで“遊園地”を作る。気鋭のアーティストCOIN PARKING DELIVERYの野望

活動歴2年ながら、名門ブランドからもコラボのラブコールが送られるCOIN PARKING DELIVERY。スマホを駆使して創作する次世代アーティストが作品に込める思いとは。

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写真/椙本裕子(YUKIMI STUDIO) 文/長谷川 剛 取材協力/小倉正裕(@oggyogubone)

スマホから生み出される次世代アート

アートがより自由により多様に広がりつつある今、スマホを駆使して創作する次世代アーティストも誕生しています。

COIN PARKING DELIVERY(コイン パーキング デリバリー)さんは、活動歴2年でありながら、すでにモンブランやカルバンクライン、ジョーダンといった名門ブランドからコラボレーションのラブコールがかかるほど。

そんな気鋭のアーティストの心の内はいかに? ディーゼル アート ギャラリーで開催中の個展「DIMENSION MEDIA(ディメンション メディア)」にて、お話を伺いました。
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「通学時間にスマホで絵を描き始めたのが活動のきっかけです」

── COIN PARKING DELIVERY(以下、コインパ)さんは、アーティスト活動を始めて2年とのことですが、そのきっかけは何だったのでしょう。

COIN PARKING DELIVERY(以下、CPD) これ、いろんなところで話しているエピソードではあるんですけど、元々は美容師を目指して上京しました。美容学校に電車通学している間にスマホを使って勉強をしていて、その余った時間でペイントアプリで絵を描くようになったのがきっかけです。それとアルバイトをするのが嫌で、この絵で稼ぐことはできないかと描いた絵をTシャツにプリントして売り始めたら一定の収入になって、そこからアート製作が徐々に本格化していきました。

── まったくの独学で人気を得ているのはスゴいです。本展示の作品の製作期間は約1年を擁したとのことですが、そのコンセプトは何ですか。

CPD 今回の個展「DIMENSION MEDIA(ディメンション メディア)」では日本の輸入文化をひとつのフックにしていて、日本的な平面表現と西洋的な立体表現を組み合わせた作品を展示しています。
▲ 立体作品「nextz」。海外の有名タブレット菓子を模した白井さんが1体を除いてすべて同じ方向を向いているのは世間体を表現しているのだとか。
── コインパさんの作品はそれぞれコンセプトが立っているのが特徴だと思いますが、会場内でひときわ目立つ「nextz」にはどんな意図が込められていますか。

CPD 「nextz」では、大量生産、大量消費、そして、世間体を気にする文化を表現しています。日本は無宗教ゆえにルールがなく、みんなが世間体に左右されています。しかも、新しいものが常に大量生産されることで古いものはどんどん排除され、街の景色も似たり寄ったり。

それは、常にアップデイトされている状態のようでもあり、思考停止のようでもあり……。海外の有名タブレット菓子のパッケージによく似た白井さん(※)たちは東京のビル群の比喩でもあり、また、中央の像はタブレットの代わりに旧型のスマホを吐き出しています。
※過去の象徴である恐竜と未来の象徴である宇宙人の要素を組み合わせたオリジナルキャラクター。様々な事情や障害を全て取り除き、自分の願望が生まれたその瞬間にすでにその願望を叶えている状態を体現した存在だそう。
── 一見奇妙に思えても、コインパさんの作品には必ず伝えたい内容があるんですね。
▲ 目のステッカーが大量に張られた「大衆認識図」。同じデザインの無数のステッカーは大衆的な認識を表現していて、それが集合体になると本質さえも覆い隠されてしまう、ということを伝えたいのだそう。
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「アートはともに未来を創りだすコミュニケーションツール」

── コインパさんは平面・立体を問わず幅広く製作をしていますが、その根底にあるものは何でしょうか。

CPD 常に客観性を意識し、アートワークを通して観客とのコミュニケーションをしたい。もちろん、僕の作品をポップで可愛いとだけ受け取る方も多くいるでしょうし、それもひとつの見方です。

でも今回、スマホやSNSをテーマに取り上げたのは、伝わりやすさを重視しているからなんです。お互いに身近で考えやすいテーマだからこそ、コミュニケーションが深まっていく。無理なく考えを巡らせられるから、知識や教養に発展し、未来に繋がっていく。そういったポテンシャルがアートにはあると考えています。
▲ 2つに区切られた会場内の中間の壁にはスマートフォンが設置され、もう1室の様子を撮影することができる。画面の中でSNSの中の世界を表現したかったそう。来場したお客さんは鑑賞者でありながらSNSの世界の住人でもある、そんな今の現実を端的に表している。
── 鑑賞者には作品を自分なりに解釈して欲しいと。コインパさんにとって、制作と鑑賞はキャッチボールのようなものなんですね。また、コインパさんはブランドとのコラボレーションにも積極的ですが、そのような制作で意識していることはありますか。

CPD 僕は、自身の立場を自分なりに理解しているつもりです。なので、コラボでは何が求められているのかを、まずはじっくり考えます。

多くのコラボ先は既存のイメージを変えたいと考えていることが多い。なので、そのイメージを壊していくことが僕の役目だと思っています。ただ、残念ながらすべてを破壊し尽くすほどのパワーは僕にはありません。壁に穴を開けてちょうど間取り一畳分を増やすぐらい。自分では、増築系アーティストだと思ってます(笑)
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「遊園地を作るのが今後の夢です」

▲ 日頃の欲をテーマにした「どっこいしょ!!」。自分の甘えや汚れからできる虫歯は欲の象徴であり、汚れを断ち切ろうとする白井さんを通して、欲との付き合い方を問いかけている。
── コインパさんは深い思考から製作を始めているように思ったのですが、一体どういった経験や事物からインスパイアを得ているのでしょう。

CPD 一般的には、作家に何かしら熱中できるものやコミットする対象があり、そこから創作を引き出していくパターンがあると思います。でも僕にはそれがなくて、一時期そのことでひどく落ち込んだこともありました。試行錯誤を繰り返した結果、自分が一番興味がもてることは、自分の人生だったと気付いたんです。

それを自覚してからは、自分に興味のままに週替わりのテーマを設けて、毎朝8時に起きて積極的に知識を取り入れるルーティンを始めました。その日課から得た知識を自分自身への興味として蓄え、それらを創作のベースになっています。

僕の興味は、短距離走者的なんです。僕の作品は “現在”という常に移り変わっていく事象をしっかり切り取ることをテーマとしているので、このインプットの仕方は合理的だと思っています。
── 今後、どういった活動をしていきたいですか。

CPD 僕はただ、みんなのための“遊園地”を作り上げたいと思って作ってるだけなんです。その空間にはいくつかのルールが当然必要で、だからこそ、制作にあたって自分なりにルールを設けて展示会を行なっているんです。

── 遊園地とは、具体的には?

CPD 現在という時代は、昔ほど輝いて見えないと僕は感じています。それはきっと、インターネットやスマホがこれほどまでに普及してしまったから。スマホを軽く操作するだけで、綺麗で刺激的な景色や情報が出てきてしまいます。だから、美しい自然に出掛けても感動できない。

逆にその現状を利用して、僕は既存のものから逸脱した遊園地を作ることで、もう一度輝きを取り戻せるのでは、と思っているんです。ただしオープンは限定3カ月のみ。人は既存のものにしか夢を見ないし、はかないからこそ夢は美しくなる。

── 作品で鑑賞者の記憶や既視感を揺さぶるということですね。

CPD だから僕は立体もドローイングも、そして動画までも区別せずに手掛けているんです。そしてやっぱり作品を通したコミュニケーションを重視しているから、あくまで大衆的に、活動を広げていきたいと今は思っています。

■ COIN PARKING DELIVERY(こいん ぱーきんぐ でりばりー)

美容師を目指して栃木県から上京。美容学校に在学中、通学の電車の中でスマートフォンで絵を描くことを思いつく。自身の作品をウエアに落とし込み販売したところ、多くの評価を得てアーティスト活動を本格化。2年間の活動のなかでモンブランやカルバンクライン、ポリスといった企業ブランドと次々コラボレーションを実施し注目を浴びる。“白井さん”“片山さん”など独自のキャラクターを絡ませたアートワークがひとつのシグネチャー。コインパーキング デリバリーの名は「C」から始まるスペルが好きだったから。

ディーゼル アート ギャラリー

ディーゼルがオススメする様々なジャンルのアーティストを世界中から招いて年4回のアート展を開催するギャラリー。アート作品やオリジナルグッズ、アーティスト関連グッズの販売も行なう。現在は、COIN PARKINGDELIVERYの個展「DIMENSION MEDIA(ディメンションメディア)」を2022年1月13日まで開催中。

住所/東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti B1階
開館時間/11:30〜20:00 (時短営業中※変更になる場合があります)
休館日 : 不定休
電話番号/03-6427-5955
URL/www.diesel.co.jp/art

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