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2021.07.22

■高橋祥子(実業家・研究者)前編

時代をリードする経営者&研究者・高橋祥子「賛否両論が起こるのは、新しいことをやっている証拠と思って」

2013年、東京大学大学院在籍中に個人向けの遺伝子解析サービスを行う会社「ジーンクエスト」を立ち上げた高橋祥子さん。研究者と経営者の2足のわらじで日本初の事業を成功に導いてきた支えとなったのは生命の原理原則に則った「生命科学的思考」でした。

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文/牛丸由紀子 写真/トヨダリョウ

さまざまな困難や環境の変化が続く現代で、覚悟をもって社会と対峙している「カッコいい大人」たちをクローズアップしていく特集「大人の“カッコいい”を取り戻せ」。第3シリーズは「挑戦し続ける大人はカッコいい」をテーマに、果敢に挑戦を続ける方々にお話を伺います。

今回は京都大学卒業後に進んだ東京大学大学院で生命科学を研究し、2013年、大学院在籍中に個人向けの遺伝子解析サービスを行う会社「ジーンクエスト」を立ち上げた高橋祥子さん。日本で初めて体質や疾病リスクなどの大規模の遺伝子情報を調べてユーザーにフィードバックするサービスを展開し、さらに遺伝子データを企業や研究機関と活用することで、遺伝子研究の発展の一助を担っています。

経営者と研究者の2つの視点をもつ彼女の著書『ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考』(NewsPicksパブリッシング)では、「組織マネジメント」や「人生への向き合い方」を、自身が追求してきた「生命の仕組み」から解き明かし、話題に。

そんな高橋さんが、経営者として数々の批判や経営の難しさに立ち向かい、自分の意志を貫いて社会に貢献できるビジネスを突き進めたのはなぜなのか?  挑戦し続けるオトナの仕事・人生論から、真のカッコよさを紐解きます。

生命活動の素である遺伝子を、自ら乗りこなせ

── ジーンクエスト社が行っている遺伝子解析サービスは、個人向けのサービスのほか、蓄積したデータベースを活用して製薬企業や大学などとの共同研究も行っています。遺伝子解析はあらゆる分野に活用できるのでしょうか?

高橋 食の好みや体質、性格など私たちの生命活動すべてが、遺伝子に基づいています。遺伝子データは太りやすさやアルコール耐性、今後の疾病リスクを提示するなどの医療的な分野だけではなく、例えば食品の感受性や運動と遺伝子の関係など、「ゲノム×α」というような感じで、あらゆる領域で活かせるものなんです。

自分たちの行動が遺伝子に基づいて規定されているということは、なぜ不安を感じるのかとか、なぜ私は怒っているのかなどの行動も読み解くことができるので、解決策を探ることもできると思います。
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── 「生物は遺伝子の乗り物だ」とも言われますが、こちらが乗りこなせばいいと?

高橋 はい。例えば、人間は常に食料へのアクセスがあるとは限らない環境で進化してきたので、遺伝子的には健康水準よりも少し多くのカロリーを摂るように仕組まれているんです。現在は世界で10憶人以上の人が肥満や肥満に関する合併症で苦しんでいますが、そんな遺伝子の仕組みを知ったうえで、どうすべきかを考える。自らドライビングしてく姿勢が必要だと思うんです。

自分の軸で判断する、父の言葉が支えに

── 画期的な事業で、大学院生ながら経営の世界に飛び込んだ高橋さんですが、意外な事に子供の頃はコミュニケーションが苦手だったとお聞きしました。

高橋 子供の頃、一時期フランスに住んでいたんですが、クラスメイトの中で私ひとりだけ外国人という環境でした。その後日本に帰ってきたら、今度はクラスの中で私だけ帰国子女で、日本の小学校の同調圧力に本当に困ったんです。なぜトイレに一緒に行かなきゃいけないのかとか(笑)。でもそれをいやだと言えば、あの子はちょっと違うと言われてしまう。自分だけどこか疎外感がありました。
── そんな時、お父さまからかけられた言葉があったとか。

高橋 小学校高学年の時でしたが「他人のことは気にせず、自分が興味もつものや、自分の軸で考えて世界を作れ」と言われたんです。それで気持ちがずいぶんと楽になりました。その言葉は自分のお守りになって、メモに書いてずっと筆箱に入れていました。

私は中学時代、吹奏楽をやっていたんですが、コンクールで賞を取った時でも「そんなことで喜ばない方がいい」と言われるくらい、父は良くも悪くも「他人より自分で評価する」というタイプなんです(笑)。コンクールも「他人からの評価よりも、自分たちが納得いく演奏ができたかどうか。それを自分で判断しなさい」と。
▲ 大学院生時代の研究室
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── 大人になってからも、その言葉は支えになっていますか?

高橋 社会に出れば、世の中の仕事はほとんど他人の評価で決まるので、他人軸で考えるか自分軸で考えるのか、どちらか一方だけということはできないと思います。でも、最後にすべてそぎ落とした時には、自分の軸で判断できるようにしたいと思うのは、その言葉があってこそ。起業時に周囲からさまざまな評価や批判をされた時も、信念をもって乗り越えられたのも、その言葉のおかげかもしれません。

批判の多さとギャップの深さも次への糧

── 現在は遺伝子解析という言葉自体も一般的になりましたが、このサービスを発表された当時は反対や批判がそんなに大きかったのでしょうか?

高橋 日本初のサービスということもあり、本当に賛否両論が起こりました。医療領域との線引きのあいまいさや、一般の人が自分の遺伝子を知ることで心理的にも倫理的にもいろいろな問題が起きるんじゃないかとか。またもっと単純に、遺伝子を調べることがなんだか怖いという意見も。人のためになることを頑張って取り組んでいるだけなのに、なぜこんなに攻撃されるのかと、正直最初は悲しくなりました。

でも、賛否両論が起こるということは、新しいことをやっている証拠でもある。例えば、私がラーメン屋さんを始めても、誰も否定しないと思うんです。実は多様性があることは、生物学的に見ても種の生存の可能性が上がるんですね。そう考えれば、自分と違う人を否定することは意味がない、むしろ感謝しなきゃいけないなと思うようになったんです。

それからは反対している先生方にもひとりひとり会いに行き、一生懸命取り組みを説明し理解を得ていきました。
── そんな強い意思の中での起業でしたが、研究者から経営者へと立場の変化でいろいろなギャップに直面したそうですね。

高橋 研究の世界では何よりファクト(事実)重視なので、「私はこう考える」という主観はダメなんです。しかも研究結果というのは、第三者の誰もが再現できることが必要です。でも経営の世界ではファクトは当然大事でも、それ以上に過去の正解がこれからの正解とは限りません。他の会社では当てはまっても、この会社では当てはまらないことも多いわけです。

また、それってできるんですか? と聞かれた時、研究者なら可能性は30%だと言ってしまいます。でも経営者は、確かに今は30%しかないけれど、私がやるからには絶対やりますと言わなくてはいけない。経営者にとって一番大事なのは、結局自分がその事業をやり遂げたいと思うかどうかなんです。研究者的な思考からすれば、それってどうなの? って最初はびっくりしましたけど(笑)。

後編に続きます。

高橋祥子(たかはし・しょうこ)

1988年生まれ、大阪府出身。2010年京都大学農学部を卒業し、2013年6月東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程在籍中に、遺伝子解析の研究を推進し、正しい活用を広めることを目指す株式会社ジーンクエストを起業。2015年3月、博士課程修了。2018年4月株式会社ユーグレナ 執行役員バイオインフォマテクス事業担当に就任。著書に「ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考」(NewsPicks パブリッシング)他。
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