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2021.01.09

■林 伸次×二村ヒトシ

「大人は若い子の青春を奪うより、手ごわい女性にマジで惚れる恋をしなきゃ」

果たして、今どき「モテたい」なんて言ってるオヤジさんはイタいだけなのか? オヤジさんの恋愛に未来はあるのか? 日本一発信力のあるバーのマスター、林伸次さんとAV界の風雲児、二村ヒトシさんが大人の男の恋愛とセックスについて、とことん語り合いました。その前編です。

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写真/トヨダリョウ 構成・文/木村千鶴 撮影協力/bar bossa

▲ 二村ヒトシさん(左)と林伸次さん(右)
今回の特集「大人の“カッコいい”を取り戻せ」とは、ある意味、現代における新たな大人の条件を問う企画でもあるかと。そんな折、その名も『大人の条件』という本を上梓したのが本サイトの人気連載『美人はスーパーカーである』でお馴染み、日本一発信力のあるバーのマスター、林伸次さん。渋谷で24年にわたってさまざまなお客様と接して得た膨大なエピソードから紡ぎだされた「林語録」の数々は、時に優しく、時に辛辣でありながら、多くの人に気づきを与える説得力のある内容となっています。

しかし、こと恋愛とセックスに関するエピソードは、大人の男たちが、そもそも自らバーで語ることは少ないので、なかなか核心に迫るのが難しいテーマであることも事実。そこで、今回は、林さんの旧友・悪友にして、理論派AV監督・作家の二村ヒトシさんをお招きし、大人の男の恋愛とセックスについて忌憚なき本音を語ってもらおうということになりました。

二村さんはあらゆる常識、性別も立場も年齢も超えた個性的な作品づくりで知られ、極めて挑発&挑戦的な作品(内容は各自お調べくださいませ)を世に問い続けている、AV界の風雲児。しかも幼稚舎からの慶應ボーイという筋金入りのインテリで、社会学的、哲学的な視点からの恋愛論やセックス論など著書も多数。

では、ご登場いただきましょう。
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モテるとかモテないとか話題にすること自体がイケてない!?

「二村さん、ようこそbossaへ」

二村 「こんばんは。ご無沙汰しています。今日は、どれくらい悪い話をすれば良いですか? 僕は私生活がいたって真面目なので(笑)、悪い男性を肯定する話をする時は、そういうモードにギアを入れなきゃいけないんで……」

「またまたぁ(笑)。しかし二村さんは本当に凄いですよね。こんなにチームの空気が出来上がっているみたいな現場に入ってきたら、普通はやりにくいかと思うんですけど、あっという間に自分の空気にしちゃうから」
(※いつものLEONチームが現場には多数おりまして)

二村 「いや、どうなんですかね。こういう調子のいい人間だから、遭わなくてもいいトラブルに遭うんじゃないですか(笑)。ところで、ここはいつものbossaだけど今日の林さんはカウンターの中の林さんじゃなくて、LEONで美人に切り込んでる林さんなんですよね」

「そうそう、それなんです。ちゃんといろいろ聞いていきますよ(笑)」

二村 「それは油断ならないな〜」
「それでは早速本題に移りたいと思います。まずは、LEONらしく『モテ』の話から。僕の本にも書いたんですけど、今どきの若い人たちの間では、モテるとかモテないとか話題にすること自体がもう古いというか、イケてない、キモいと見られて叩かれるじゃないですか。特にTwitterはそうで。LEONさん的にはその記述が随分と気に障るみたいなんですけど(笑)。二村さんはどう思います?」

二村 「モテね~。それはそうですよね、世の中の流れ的には。でも、個人的な話をすると、僕自身はモテていないと死んじゃう生き物です」

「そうだと思ってました(笑)」

二村 「でもね、モテるって言っても誰にモテるのかが問題で。はたして僕ら世代のオヤジが若い女の人にモテて、意味ありますかね?」

「と言いますと?」

二村 「まず、林さんが本の中で仰っているように、既婚の中年男性が若い未婚の女性と関係するとなると、その女性の人生の、その期間を無駄に浪費させてしまいますよね」
(※林さんは前出『大人の条件』の中で、中年男性と若い未婚女性との不倫はほとんどが男の身勝手な自己肯定感のためであって、結果、若い女性の青春を奪うだけだと断罪しているんです)

「それは本当にそう思うんですよね。やっぱりオジさんのエゴで、若い彼女たちの青春の尊い時間を奪ってはいけないですよね」
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「モテたい」の動機は「愛されたい」というセコい承認欲求

二村 「ところでLEONの言いたいことは、若い女性を連れて歩いていないと、オジさんには価値がないってことですか?」

LEON 「いえいえ、決してそうではありません。女性から笑顔を引き出せるような男性は、結果、女性が放っておかないし、モテるでしょと」

二村 「まぁ、銀座ならそうだよね(笑)」

「それはそれで夜の経済を支えている気もしますが(笑)」

二村 「でも、今はそういうオジさんが『モテたい』とか言うのがキモいと思われてるんでしょ。いわゆるバブルの時代にブイブイ言わせてたような人たちは、当時『これが男の目指すべき、カッコいいモテ方だ、お金がある男の正しい遊び方だ』みたいなのを教えこまれて、それをずっと真面目にこなしてきた結果、今、この時代になって急に梯子を外されているという」

「外されてますよね。今、社会的地位のある人たちは、モテたくて頑張ってきたでしょうに、いつの間にか“今どきそんなことしてたら叩かれてしまう”ってことになってて。実際はそういうイケイケの男性が好きという女性も一定数いるんですけど、なんか一律ダメの烙印を押されてしまった。やはり、オヤジさんも時代に合わせたアップデイトが必要なんでしょうか?」
二村 「う~ん、僕が思うのは、アップデイトというよりも、今の時代、オヤジさんたちは、まず自分の『モテたい』という気持ちの奥に隠された動機、僕がいつも『心の穴』と呼んでるものですが、それが『愛されたい』というセコい承認欲求なんだってことに自覚的になった方がいいのじゃないかな」

「おお。二村さんの『心の穴理論』ですね。すべての恋愛や人間関係は自分の心の穴を埋めるためにやっているという」
(※二村さんの『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』に詳しく出ています)

二村 「そう。昭和から平成中期までの中年から初老の男性は、なにしろ世間のマジョリティであり“俺たちが社会を動かしているんだ”と世間の側も本人たちも思い込んでいたわけですよ。本当は自分の中にも『欠けているものを埋めたい』という欲求があるはずなのに、当時は世の中から守られていたから自覚する必要がなかった。ところが時代が変わってきて、今は誰も守ってくれなくなったオヤジたちがピンチになっている」
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「確かにあの時代は中年以上の男性が、経済でも家庭でも中心だったと思います」

二村 「でも、人間である以上、みんな誰もが寂しい。だけどあの時代は『仕事をしていて、偉そうにしている男性』だけが、それを感じなくてもよかったんです。お前らは寂しくないはずだと、会社や高度成長期の資本主義から言われていた」

「なるほど。当時のオヤジさんたちは自分の寂しさに気づかなくても済んでいた。でも今は違うと。自分が強くないことに気づけと」

二村 「そうですね。人って誰もが自分なりの依存性やマイノリティ性をもっている。開き直っちゃダメですけど、それがあるから人間なんだと気づいた方がいい。それは惨めなことじゃなくて、そのほうが、つまり『男と女』じゃなくて『人間と人間』で付き合えるし、結果、女性にもモテるよというわけです」

「う~ん、心の穴を自覚することで、男女ではなく、人間対人間の平等な関係を築いた方が女性ともうまく付き合えるということですね」

二村 「そうです。そういうこと」
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いい歳をしたふたりで楽しむためのセックスを目指すべき

「でもお互いの孤独を自覚して付き合うということなら、中年男性と若い女性の恋愛もアリになりませんか?」

二村 「そこは違うんです。先ほどの、中年男性が若い女性の青春を奪うのがいかんという話以外にも、あたりまえの話ですけど独身者が感じる孤独と、既婚者が家庭で感じている孤独とは質が違う。それが孤独の埋め合いだとしても対等じゃないんです」

「というと?」

二村 「若い女性は、言語化はできていないけれど、オヤジと違って自分の心の穴に敏感です。そういう子にオヤジは人生を語ったり、『わかるよ』とか口だけで言ったりしがちじゃないですか。偉そうにしている男は、確かに最初はそういう男が好きな女の子もいるんですが、セックスしちゃったあとに、あっという間にその相手の女の子から憎まれ始めますよ。偉そうな男って『偉そうにすることの依存症』なので、寝た女の子に人生とか愛とかってものを教えたがる。あれ、最悪です。彼女たちも最初はウンウンって聞いてくれるけど、やがて必ず憎まれます」
「憎まれますね~。僕もそういう関係を見ているけど、まず、突然そうなりますよ」

二村 「でしょ。やっぱりね、人間って自分の心の穴について、つべこべ言われたくないんだよね。とか言いながら僕も今、オヤジの『偉そうさ』を偉そうに分析してますけどね(笑)。ホントは他人の心の穴のことを分析しちゃいけないんですよ。自分で気づかないと」

「他人に言われるのは確かにそう、嫌ですね」

二村 「その人のもっているトラウマとか、親との関係とか、なぜ林 伸次が林 伸次になったかとか(笑)、noteの日記に書いておられる林さんと奥さまとの関係とかね、そんなこといちいち、わかったような顔して分析されたくないに決まってるじゃないですか」
(※林さんは吉田羊似の年上のうんとお洒落な奥様との日常をnoteでいろいろ書いているんです)

「僕のことはともかく(笑)。オヤジさんは女の子に教えたがるな、と」

二村 「はい、説教も良くないけど、それに加えて『みんな俺の話を聞け』みたいなことをするでしょう? 自分の話がしたいんだったら、まず自分のインチキ自己肯定を解かないと」

「インチキ自己肯定ですか(笑)」
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二村 「僕はオヤジさんが恋愛すること自体はオススメなんですよ。ただ、説教くさい上下関係がある恋愛じゃなくて、手ごわい相手にマジで恋をする。それをすると自分のことがわかるから。もちろん、権力を使って性関係を強いたり、好きになりすぎてストーカー化するのは絶対ダメ。そこはあくまで粋(イキ)にやっていただきたい」

「そうか。二村さん的にはオヤジさんも恋愛とセックスはした方がいい。ただ、相手を選ぶべきと」

二村 「恋愛はした方が、自分というものの謎は解けると思いますよ。男にとって恋愛っていうのは相手を得るためにするんじゃないんです。自分の至らなさを思い知るためにするんですよ。それがしたくない人はオナニーをしていたほうがいい。オナニーのほうが傷つかないし楽しいですよ」

「あ〜それだ!(笑)」

二村 「だからこそ、若い人じゃなくて同年輩の優秀な女性と、大いに恋愛するべきなんじゃないですか。お互いの人生を削り取り合うんじゃなく、いい歳をしたふたりで楽しむためのセックスを目指すべきなんです!」

「おお、力強いメッセージ!(笑)」
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悪いことをしてエロくなったおかげで、旦那さんと再開

「そういえば二村さんって、『丁寧な不倫』って言ってましたよね。同年輩の女性となると、当然そういった関係も入ってくるかと思いますが」

二村 「これは僕の悪い友人の話ですけど(笑)。ある人妻がね、旦那さんとセックスレスだった。それで、まあ縁があってその友人と仲良くなって、けっこう長く関係を続けていたんですけど、ある日突然、彼はふられたと。その人妻は人格的に素晴らしい人だったので、友人も人並みに落ち込んだわけですが、ふられたのは、どうやら旦那さんと関係が再開したかららしいんです。つまり浮気によって彼女は美しくなって、夫の性的興味を改めて惹くようになったんでしょう」

「セックスレスになると女性も辛い気持ちになるというのは聞きます。それで始まった関係なのかもしれませんが、その時って、友人男性の側には恋愛感情とか、好きって気持ちは生まれたんですか」

二村 「気持ちはめちゃめちゃあったけど、そういう関係なので遠慮して、好きだって言葉はなるべく言わなかったそうです。我慢していたわけですよ」

「それは、いい。なんか切なくていい」
二村 「でしょ(笑)。それで何年も我慢した挙句、その男はですね、ある時『本当は好き』って言ったそうです。そしたら、女性がめちゃくちゃ喜んだって」

「わあ〜、本当にそれ、大人の恋愛ですね〜」

二村 「でも、その女性は相当聡明な女性で、単にセックスレスなだけで旦那さんのことは愛していた。だから僕の友人と悪いことをしてエロくなったおかげで、旦那さんと再開した。だとしたら、それっていいことなんじゃないですか」

「そうですね、きれいになって、旦那さんともうまくいくようになったなら、全然いいんじゃないですか。そして二村さんがこの話にやけに詳しいことには言及しないでおきます(笑)」

二村 「友人が、よっぽど悔しかったらしくて、詳細に話してくれたんです(笑)」

【後編】(こちら)に続きます。

● 林 伸次 (はやし・しんじ)

1969年徳島県生まれ。早稲田大学中退。レコード屋、ブラジル料理屋、バー勤務を経て、1997年渋谷に「bar bossa」をオープン。2001年、ネット上でBOSSA RECORDSを開業。選曲CD、CD ライナー執筆等多数。cakesで連載中のエッセー「ワイングラスのむこう側」が大人気となりバーのマスターと作家の二足のわらじ生活に。近著に小説『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる』(幻冬舎)、『なぜ、あの飲食店にお客が集まるのか』(旭屋出版)など。最新刊はcakesの連載から大人論を抜粋してまとめた『大人の条件』(産業編集センター)。

● 二村ヒトシ (にむら・ひとし)

1964年六本木生まれ。アダルトビデオ監督、作家。慶應義塾幼稚舎卒で慶應義塾大学文学部中退。監督作品として『美しい痴女の接吻とセックス』『ふたなりレズビアン』『女装美少年』など、ジェンダーを超える演出を数多く創案。現在はソフトオンデマンド若手監督のエロ教育顧問も
務める。 著書に『すべてはモテるためである』、『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(ともにイースト・プレス)、『淑女のはらわた 二村ヒトシ恋愛対談集』(洋泉社)などがある。

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