2026.10.03
鈴鹿央士インタビュー。「自分は年齢を重ねてからのほうが、人間として面白くなる気がするんです」
甘い笑顔と確かな演技力を併せもち若い女性から熱烈な支持を得ている俳優、鈴鹿央士さん。現在公開中の映画『藁にもすがる獣たち』では1億円を巡る争奪戦に巻き込まれるYouTuber寛治を演じました。今作での役への向き合い方から、26歳の素顔、憧れる大人の姿まで、お話を伺いました。
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文/柳原真咲 写真/大靏円(昭和基地 ¥50) スタイリング/梶原浩敬 ヘアメイク/永瀬多壱(VANITÉS) 編集/鎌倉ひよこ、森本 泉(Web LEON)

公開中の映画『藁にもすがる獣たち』で、1億円を巡る争奪戦に巻き込まれるYouTuberの青年を演じた鈴鹿央士さん。甘い笑顔と確かな演技力を併せもち若い女性から熱烈な支持を得ている鈴鹿さんに、今作での役への向き合い方から、26歳の素顔、憧れる大人の姿まで、お話を伺いました。
祖母と暮らす弱小大学生YouTuber佐藤寛治は、なぜ“出所不明の1億円”に手を伸ばしたのか。欲望が交錯する本作で鈴鹿さんが役作りの軸に据えたのは、寛治の“普通の青年”としての感覚だったと言います。そんな役へのまなざしを入口に、ご自身の楽しみや、俳優としての現在地へ。飾らない言葉から、鈴鹿さんの考える大人の魅力が見えてきました。
善人とも悪人とも言い切れない、普通の青年を演じて
── 最初に脚本を読まれた時、どんなところに面白さを感じましたか。
鈴鹿央士さん(以下、鈴鹿) 原作(小説)とも、韓国で映画化されたものとも違う設定や展開があったので、「こういう変化になったんだ」と思いました。スピード感があり、いろいろな登場人物の物語が交差していく感じが面白くて、どんな作品になるんだろうとワクワクしました。
── 鈴鹿さんが演じた寛治は、大学生で、売れないYouTuber。Netflixシリーズ「喧嘩独学」に続いて、動画配信者の役ですね。
鈴鹿 個人的には、「またお金を持っていない配信者か」と思いました(笑)。でも、当たり前ですが、物語の中で起きることも違いますし。文字で見ると同じような設定でも、役としてはまったく違うなとも思いました。
── その中で、寛治の人物像をどう捉えていましたか。
鈴鹿 まず、優しさがある人だと思います。周りの登場人物と比べても、あまり悪の部分がない、普通の青年というか。

── “1億円に手を伸ばす”けれど、根っからの悪人ではないと。そんな寛治を理解するうえで、監督と相談したことはありますか。
鈴鹿 お金を手にしたあとも、寛治はYouTubeを続けるんです。それが気になって、監督に「なんで続けるんですかね」と聞いたら、「“YouTubeが好きだから本気で頑張っている”でいきましょう」と言っていただいて。そこで、寛治はお金だけで動く人ではないんだなとわかりました。あとは、1億円を見つけた時も、すぐには持ち帰らず、いったん(バイト先の)忘れ物コーナーに隠すんです。悪いことはしているけれど、善の部分も残っている。演じる時は、そんな寛治の一面を大切にしていました。
寛治が一番すがっていたのは、おばあちゃんだったんじゃないかな。
── 寛治を演じるうえでは、二人で暮らすおばあちゃんの存在も大きかったのでしょうか。
鈴鹿 そうですね。1億円を手にする時も、行動のもとにはおばあちゃんの存在があります。寛治が一番すがっていたのは、お金ではなくて、おばあちゃんだったんだと思っています。
── 自分の欲を満たすためというだけでなく、おばあちゃんと生きていくためにお金が必要だった。その切実さは、どう演じようと考えましたか。
鈴鹿 ちゃんと追い込まれないといけないなと思っていました。自分たちが生きていくためのお金がなくなって、1億円にすがる。そこまでの過程がちゃんとないといけないので、落ちるところまで落ちよう、追い込まれようと。

── 祖母役の風吹ジュンさんのお芝居から、寛治の感情が生まれることもありましたか。
鈴鹿 ありました。風吹さんが台本にない“おばあちゃんがやりそうなこと”をたくさんやってくださるんです。そうした行動を受けることで、おばあちゃんへの戸惑いが、寛治としてもよりリアルに感じられました。
── 風吹さんとは、役や芝居についてお話はされましたか?
鈴鹿 「おばあちゃんと寛治は、どのくらい二人で暮らしているんだろうね」という話をした記憶があります。お芝居について具体的に話すことはあまりなかったですが、二人のバックボーンについては、度々お話ししていました。
── 一緒に暮らしてきた時間も想像しながら、あの空気ができていったんですね。完成した映画は、どんなふうに楽しんでほしいですか。
鈴鹿 エンタメ映画なので、映画館でポップコーンを食べながら、リラックスして楽しんでもらいたいです。ハラハラする展開もありますが(笑)、テンポもいいので、気楽に味わってもらえたらうれしいです!
配信で聴ける時代に、レコードを選ぶ理由
── さて、映画ではお金が大きなテーマになっていますが、鈴鹿さんご自身が、ついお金をかけてしまうものはありますか。
鈴鹿 最近はレコードです。
── レコード! 渋い趣味ですね!
鈴鹿 本来、聴くだけだったら全然配信でいいんですけどね(笑)。でも、手に触れられるものでもあるし、音楽を聴くという行為に対して、一枚一枚、A面、B面、C面、D面と再生していく。その作業に良さがあるんです。

── 聴くまでのひと手間も、楽しみのひとつなんですね。レコードはお店で選ぶことが多いですか。
鈴鹿 なんとなく欲しいアルバムが頭の中にずっとあって、お店に行って見つけたら「ラッキー」と思いますし、ジャケ買いをすることもあります。
── 中にはプレミアがついて、少し高くなっている物もありそうですよね。最近買われたものはありますか?
鈴鹿 はい、買いました…! 山下達郎さんのアルバムを。すごく高かったです(笑)。
── レコードは、昔からの趣味なんですか。
鈴鹿 5、6年前くらいからですね。でも音楽自体は小さい頃から身近でした。父も母もCDをたくさん持っていて、実家にCDの棚があるんです。中高生の頃は、その棚から選んで、自分の机に持っていってラジオプレーヤーで音楽を流していたので、その名残があるんだと思います。
年齢を重ねた自分の顔を、見てみたい
── これから年齢を重ねていくことは、楽しみですか。それとも、不安のほうが大きいでしょうか。
鈴鹿 楽しみです。まず、童顔なので(笑)。

── 実年齢より若く見られることが多い?
鈴鹿 若く見られますし、「実際に会うと背が高いんですね」って、たぶん1500回くらい言われてきました(笑)。だから、年齢を重ねて、もう少し大人っぽい顔つきになった時、自分はどういう顔なんだろうと気になるんです。
年を重ねないと出ない雰囲気や人相ってあるじゃないですか。そこは楽しみですね。人間として味が出るというか、年齢を重ねてからのほうが面白くなる気がするので。
── 俳優としても経験を重ねていますが、主演を務めるなかで、現場への向き合い方に変化はありましたか。
鈴鹿 主演を経験して、1本の作品をつくるのは大変なことなんだなと改めて実感しました。出演する場面が少ない時は、毎日撮影に行くわけではないので、フレッシュな感じで現場に入れるんです。でも主演の方は、ほぼ毎日、撮影をしている。その体力や精神力をキープするって、大変なことだったんだなと思い知りました。
気づかせてくれる言葉を選べる人が、カッコいい
── 経験を重ねるなかで、ご自身が「大人になったな」と感じる瞬間はありますか。
鈴鹿 まだあまりないんですよね。最近も「人に何かを指摘したい時に、嫌な気持ちにさせずに伝えるには、どういう言葉で言ったらいいんだろう」と迷ったことがあって。結局、答えが見つからなくて言えなかったんです。その時に、「まだまだ大人じゃないな」と思ったばかりなので。
── では逆に、誰かに言われて、今も心に残っている言葉はありますか。
鈴鹿 デビュー作の時にスタッフさんから「作り手側の作品に対する愛情が強ければ強いほど、スクリーンから伝わるものなんだよ」と言われたことがあって。最初は、どういうことなんだろう、何が伝わるんだろうと思いました。愛情そのものが映るわけではないじゃないですか。

── 目に見えるものではないですもんね。
鈴鹿 でも、そういう視点で映画を観たり、自分がいいなと思った映画の現場について話を聞いたりすると、「すごくいい雰囲気だった」と聞くことがあって。そういうことかと。その時いただいた言葉は、今でも僕が俳優という仕事を続けるうえでの指針になっています。
── 受け取った時にはわからなくても、あとから気づかせてくれる言葉だったんですね。それでは最後に、鈴鹿さんがカッコいいと思う大人は、どんな人でしょう。
鈴鹿 僕が出会ってきたカッコいい大人たちは、そういうふうに、何かを気づかせてくれる言葉をくれるんです。直接的すぎず、遠回りすぎない、ちょうどいい塩梅で。なので、僕もいつか、そういう言葉を選んで、誰かに贈れる人になれたらいいなと思います。

● 鈴鹿央士(すずか・おうじ)
2000年1月11日生まれ、岡山県出身。2018年「MEN’S NON-NO」専属モデルオーディションでグランプリを獲得。映画『蜜蜂と遠雷』(19)で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞し、注目を集める。主な出演作に、ドラマ「ドラゴン桜」(21)、「silent」(22)、「君に届け」(23)、「嘘解きレトリック」(24)、映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』(24)、『花まんま』(25)など。2025年には『リア王』で初舞台を踏む。Netflixシリーズ「喧嘩独学」(26)、「リーガルビート -逆転の法廷-」では主演を務める。映画『ファーストボイス』が10月2日公開予定。

『藁にもすがる獣たち』
曽根圭介の同名小説を、城定秀夫監督と小林靖子脚本のタッグで映画化。大学生YouTuberの佐藤寛治(鈴鹿央士)は、アルバイト先のネットカフェで1億円入りのバッグを発見。祖母との暮らしに事情を抱える寛治は、思わずそれを持ち去ってしまう。一方、借金の返済に追われる不良警官・良介(成宮寛貴)や、保険金絡みの計画を企てる謎めいた悪女・し~な(森七菜)らも、それぞれの思惑で動き始める。接点のなかった人々の運命が、大金をきっかけに交錯。二転三転する争奪戦を描くサスペンス。共演に成宮寛貴、森七菜、MEGUMI、風吹ジュンら。
監督/城定秀夫 脚本/小林靖子、城定秀夫 原作/曽根圭介『藁にもすがる獣たち』(講談社文庫) 配給/東映
全国公開中
公式HP/https://warakemo-movie.com
©曽根圭介/講談社 ©2026「藁にもすがる獣たち」製作委員会
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