2025.06.28
馬場ふみかインタビュー。「人生それぞれ。自分の幸せは他人に左右されたくない」
10代で芸能界入りし、グラビア、ファッションモデル、そして女優の階段を着実に駆け上ってきた馬場ふみかさん。7月4日より公開の映画『愛されなくても別に』に出演したエピソードをはじめ、理想のデートからカッコいいと思う大人像まで、30歳を迎えたばかりの馬場さんの前向きな素顔に迫ります。
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文/飯田帆乃香 写真/北浦敦子 スタイリング/藥澤真澄 ヘアメイク/北原果 編集/鎌倉ひよこ

他人と自分を比べて劣等感を持つことはまったくない
馬場ふみかさん(以下、馬場) もちろん生きていると大変なことはたくさんあるけれど、私は自分が不幸だとは思わないタイプです。でも、不幸中毒を理解することはできます。日常でよく見かける「いかに自分が忙しいか」みたいな会話をみんなでしている場面と似ている気がするので。
── そうやって自己承認欲求を満たしたい人は多いと思います。他人の生活が手に取る様に見えるSNSの発展により、劣等感を抱えてしまう傾向も強くなってきました。
馬場 「この人はリッチな生活をしているのに自分は……」とみじめな気持になるとキリがないですよね。それが向上心に繋がるなら素晴らしいけど、他人の、しかも見ず知らずの人の何かによって自分の価値がブレるのはもったいない。SNSはエンタメとして楽しむのがいちばんじゃないかな。

馬場 まったくないです。幸せな人生だと思って生きています。もちろん身近にカッコいいなと思う人はたくさんいますけど、その人なりの苦労もあるはずで。人生それぞれだから、自分の幸せを他人で左右させるより、自分の中で幸せになる方法を考えるほうが絶対に手っ取り早い!
── 確かに、隣の芝生ばかり見ている暇があったら自分の芝生を青々と育てたいですね。ちなみに、馬場さんにとって最高に幸せだと思う瞬間は?
馬場 次の日のことを考えず食事をしている時。しょっぱいおかずやごはんを満足いくまで食べると、翌朝顔がパンパンにむくんで撮影に影響するので、普段はセーブしています。といってもここ数年、どんどん食欲が増えていて。この前は北海道でジンギスカンを食べている時、ライスをおかわりしてしまいました(笑)。
馬場 逆に、今までの過度な食事制限で瘦せづらくなってしまったんです。最近はちゃんと食べて運動するという健康の原点回帰をして、ピラティスやジムに通いながらわんぱくに食べています(笑)。

馬場 脚本が手元に届いてから撮影に入るまでの手順を座学で学びました。とにかく現場に出て自力で頑張る、みたいな仕事のやり方をしていたので、今回教えていただいたメソッドを他の作品にも生かしたいです。
馬場 「言われてみたら気になるかも!」という無意識の仕草を、私の過去の出演作品からコーチが見つけてくれました。例えば、話しながらうなずく癖。なんとなくリズムを取って台詞を言っている感覚はあったけど、今後は意識して控えるきっかけになりました。あと、脚本にはない雅(自身の役柄)の生活を体現するレッスンも。家を出る前の母とのシーンを演じてみることで、雅が陽彩(ひいろ)に過去を語る本編の撮影がスムーズにできました。
── 毒親に苦労を強いられながらも自分で人生を切り開く雅。このキャラクター性をどのように捉えて演じましたか?
馬場 雅は一見するとドライでそっけないけど、内面に優しさを持っている可愛らしい人。映画版でははっきり描かれていませんが、彼女は高校時代に親元を離れ、高卒認定を取って大学に入ります。自分で選択して前に進む力強い女性です。そんな中、自分と普通に接してくれる陽彩と出会うことで大きな影響を受けます。自分を“ただの人間”として認めてくれる存在に救われていく。この作品はわりと順撮りだったので、雅と陽彩のようにちょっとずつ私と(南)沙良ちゃんの距離も縮まっていきました。その関係性が役にも反映されて映像に現れていると思います。

馬場 どんなイメージを持たれているかわからないけど、公に出ている自分と素の自分は全然違うと思います。これは偽っているわけではなく、仕事で接する人とプライベートで接し方が自然と変わる感覚。たぶん私は、みなさんが思っている以上に雑な性格です。例えば雨の日、ちょっとくらい濡れても全然平気。小雨程度なら傘をささずに外出しちゃいます。
── そんなカラッとした自然体なところも馬場さんの魅力だと思います。劇中ではピンクやブルーの髪色も印象的ですが、普段からカラフルなヘアカラーは楽しむ派ですか?
馬場 はい。ひとつの作品が終わって次の撮影まで少しでも時間が空いたらカラーするのが楽しみです。それこそピンクとかブルーは、監督の井樫さんが私の髪色を見て役に反映してくれたらしいです。ポスターにもある金髪は、根元が少し伸びて黒い状態に。雅のキャラクター性が濃くなると思ってクランクインの一カ月前に染めました。

馬場 「外見は一番外側にある内面のファッション」と言われるように、衣装合わせの時に監督やプロデューサーの方々、スタイリストさんが考えた衣装を見て役を理解する瞬間は多々あります。今回は井樫さんとふたりでごはんに行って私も意見交換。「雅はどういう服を着ると思う?」と話し合い、女っぽく見られたくないという気持ちが表れるように、ダボッと大きめのシルエットの服を多めに取り入れました。
── 雅をはじめ親に悩まされる大学生3人が登場する本作。出演して感じたことを教えてください。
馬場 生きている環境は本人にしかわかり得ません。良かれと思った言動が相手からしたら不快なことかもしれない。誰が正しくて誰が悪いということではなく、いろんな環境で生きている人がいる事実を心に留めて、接し方、言葉の選び方をちゃんと考えて生きようと改めて感じました。

肩ひじ張らない居酒屋デートが好き
馬場 それは難しい質問ですね。でも、冷えた白ワインかな。暑い日に飲んだら絶対美味しい♡
馬場 かしこまった席だと緊張して変な力が入ってしまいます。そういうお店は特別な日にとっておいて、普段のデートならカジュアルなお店でリラックスしたいです。
── 和洋中で選ぶとしたら?
馬場 和が好きです。静かなカウンターのお料理屋さんだと話し声に気を使うので、居酒屋くらい気楽なところがいいですね。和じゃなくてもバルとか、ほどよく賑わいを感じられるお店だと会話が盛り上がりそうです。
── お店は提案されたい派or自分で決めたい派?
馬場 普段から自分でお店を選ぶことはあまりないです。仲良しの友達が美味しいお店探しが得意なので、大量にある“行きたいお店リスト”から提案してもらっています。おかげで美味しい食事ができてありがたいです。

馬場 あとはお酒を持ち寄って友人宅で飲むことが多いです。だから外食時に美味しかったお酒を買って家にストック。今はCHILL GREENという麦焼酎と、静岡の伊豆で出会ったニューサマーオレンジのお酒を取り寄せたので、早くみんなで飲みたいです。
── ひとり飲みをすることはありますか?
馬場 あります! 行きつけのお店で常連の方たちとお話ししたり、最近はひとり回転寿司で飲んだりもしています。自宅ではサクッと缶ビールを選びがちです。
── Web LEONには「料理初心者男子でもデキる・モテる簡単レシピ」という連載がありまして。馬場さんが喜んでくれる手料理を教えてください!
馬場 作っていただけたら何でもうれしいし、喜んで食べます! でもこの前の友人宅で、手際よくパスタを作れる男性はいいなと思った出来事がありました。仲良しの夫婦が集まって旦那さんたちが料理をしてくれる傍ら、女性たちはただ飲んで食べるという素敵な会。その時にパスタを作るのが上手な男性がいて、みんなで「おっ!」となりました。

馬場 ここ2年ほど、親友に誘われたのがきっかけで女子バスケットボールのWリーグを観戦しています。私はバスケ経験がなくて最初はルールもわからない状態。ゴールが決まったら加算されるくらいしか知りませんでした。それが観ているうちに理解できるようになるのが面白くて。観戦中は余計なことを考えないのでリフレッシュできます!
── 頭がクリアになるスポーツ観戦の趣味はマネしたいです。最後に、馬場さんにとってカッコいい大人とは?
馬場 人生を楽しんでいる人。私のお母さんは60歳を過ぎているけど、一カ月の半分は仕事をしながら、もう半分は推し活に全力を注いでいます。仕事は美容関係で、最近は東京までメイクの新しい技術を学びにきています。地元の新潟で50~60代向けのメイクレッスンを開講したいと言っていました。いくつになってもフットワークが軽くて、驚くほどハッピーに生きている母。そういう人に魅力を感じます。

● 馬場ふみか(ばば・ふみか)
1995年6月21日生まれ、新潟県出身。2014年、映画『パズル』で俳優デビュー。2015から2023年までファッション誌『non-no』の専属モデルを務めながら数多くの映像作品に出演。2022年公開の映画『恋は光』で第44回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞し、名実ともに実力派俳優の歩みを進める。近年は『アリスさんちの囲炉裏端』や『コーポ・ア・コーポ』など主演作も続く。現在、Leminoオリジナルの本格裏社会ドラマ「飛鳥クリニックは今日も雨」が配信中。ほか、インナーブランド「misora」のクリエイティブ・ディレクターを務める。
公式SNS/Instargram

『愛されなくても別に』
宮田陽彩(南沙良)は大学に通い、それ以外のほとんどの時間を家事とコンビニのアルバイトに費やしていた。その理由は、浪費家の母に替わって学費と家計を稼ぐため。遊ぶ時間も、金もなければ、友達もいない大学生活を送っていたある日、同級生の江永雅(馬場ふみか)の父親が殺人犯だという噂を聞き、接点を持ち始める。他人と普通の関係を築けないと思っていた陽彩と雅が出会い、ふたりの人生に変化が生まれる。原作は2021年に第42回吉川英治文学新人賞を受賞した武田綾乃による同名小説。29歳の新鋭監督・井樫彩が実写映画として若者たちの苦しみを瑞々しく、力強く描く。
出演/南沙良、馬場ふみか、本⽥望結、基俊介 (IMP.)、伊島空、池津祥子、河井青葉 ほか。
配給/カルチュア・パブリッシャーズ
7月4日(金)公開
公式HP/https://aisare-betsuni.com/
Ⓒ武田綾乃/講談社 Ⓒ2025 映画「愛されなくても別に」製作委員会