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2025.06.22

小芝風花インタビュー。「自分の復讐は自分で遂行するという決意は揺るぎません」

韓国で大ヒットしたドラマ『私の夫と結婚して』の日本版で主役を務める小芝風花さん。夫と親友に裏切られ殺された末に10年前にタイムリープして生きなおし、ふたりに復讐を誓った主人公を、小芝さんがカッコいいと思った理由とは?

CREDIT :

文/浜野雪江 写真/ジェームズ・グレイ スタイリング/小川未久 ヘアメイク/青山佑綺子(BOND) 編集/森本 泉(Web LEON)

小芝風花 WebLEON LEON 私の夫と結婚して べらぼう 瀬川
放送中の大河ドラマ「べらぼう」(NHK)で吉原に生きた伝説の花魁に扮し、深みのある演技が絶賛された小芝風花さんが、アメリカやヨーロッパ、アジア各国で大ヒットを記録した韓国ドラマの日本版ドラマ『私の夫と結婚して』に佐藤健さんとW主演します。(6月27日からPrime Videoで世界同時独占配信)
小芝さんが演じるのは、夫と親友に裏切られて命を落とし、10年前にタイムリープして、人生を生き直すヒロイン・神戸美沙。二度目の人生でふたりへの復讐を誓い、果敢に実行する主人公を小芝さんはどのような思いで演じたのでしょう? 日本版の見どころと合わせて、仕事への思いや、もし人生を生き直せたらやりたいことなどを伺いました。
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20代前半までは周りを気にして自分の意見を言えなかった

── 今回、小芝さんが演じた美沙はお人好しで優しすぎるがゆえに、最初の人生では人を信じては裏切られ酷い目に遭います。小芝さんは人付き合いにおいて、美沙のように人を信じやすいほう? それとも信じることに慎重ですか?

小芝風花さん(以下、小芝) 基本的には信じやすいほうだと思います。占い師さんに「騙されやすいから気を付けて」と言われたこともありますし(笑)、誰かが軽い冗談のつもりで言った罪のないウソも鵜呑みにしちゃうタイプです。

ただ、最初の時点で、その人が信用できるかどうかを察知するセンサーは敏感なほうだと思います。出会って間もない段階で「……ん!? なんかヘン」と感じたのに、「いや、気のせい気のせい……」と直観を無視すると、たいてい最初に感じた違和感が当たって、「だからあの時そう感じたじゃない!」と思ったりするので。
── プライベートでは人見知りでもあるそうですね。交友関係も、広く多くより、狭く深めるタイプでしょうか。

小芝 もう少し若い時は、たくさんお友達が欲しくて無理して人に合わせるところもあったけれど、年齢を重ねるにつれて、今、周りにいてくれる人たちがいれば十分だなと思うようになりました。

それこそ1回目の人生の美沙のように自分を偽って人付き合いをするようなこともなく、一緒にいて楽しいとか、「好き!」って思える人を大事にしようと思える今は、精神的にもとても楽です。
── 1回目の人生の美沙は、理不尽に耐え、夫の友也(横山裕さん)と親友の麗奈(白石聖さん)の不倫にも気づきません。そんな美沙をもどかしく思う人もいるのではないでしょうか。

小芝 でも、美沙の気持ちもわかるんです。私も今は、“これおかしいな”って思うことを指摘したり、自分の意見もだいぶ言えるようになってきましたけど、10代の頃や20代前半までは、他人に何かを言われたらまず「自分が直さなきゃ」と思ったし、自分の意見を言いたくても、それを言うと周りにどう思われるかが気になったりしたので。

ましてや美沙の場合は、麗奈とは小学生の頃から“親友”と信じつつ、実際は支配されてきた関係性だし、家庭環境的にも、小さい頃からお母さんの顔色を窺うことで自分を守ってきたところがあったのかなと。不穏な空気を察知した時には、自分の感情を押し殺してでもニコニコして、その場の空気を平和に保とうとするクセが身についてしまっていたんだろうと思います。
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小芝風花 WebLEON LEON 私の夫と結婚して べらぼう 瀬川
── そんな美沙が、最悪の状況で亡くなったあと10年前の自分に戻り、友也と麗奈に復讐をする過程をどのような気持ちで演じましたか。

小芝 まず、死の間際で人生に後悔しか残らなかった美沙が、もう1度生き直すチャンスをもらえるという設定自体が物語としてとても面白いなと思いました。ただ、演じるうえでは、復讐のためとはいえ、自分のことを長い間見下し、死に追いやったふたりと仲がいいふりをするのはつらいし、苦しさを感じることも多かったです。

また、今回の物語では、過去に起こった出来事は二度目の人生でも起こるので、自分が災難を免れても、必ず誰かが身代わりになります。美沙はもともと優しい性格なので、誰かを犠牲にすることに葛藤があるし、計画がうまくいく確証もない中で復讐を進めるのは気持ちが強くなければできないこと。

私だったらふたりから離れて逃げるなぁ(笑)と思うけれど、美沙が敢えて茨の道を選び、自分を取り戻すために覚悟を決めて戦う姿をカッコいいとも思いました。

── やられたからやり返すというのも、決して痛快なだけではなかったのですね。

小芝 1回目の人生のシーンを撮っている時は、ふたりとも本当にひどいことを平気でするので、復讐されて当然だなと思うのですが、特に(夫の)友也くんに関しては、2回目の人生で少し不憫に思えてくるシーンもあります。
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韓国チームから外見の見え方に関して指摘されたのは新鮮でした

── 今回のドラマは日韓共同プロジェクトということで、監督やプロデューサーをはじめ、韓国の制作チームとの共同作業だったそうですが、やはりいつもの日本の現場とは違いがありましたか?

小芝 今回、作品に参加したいと思った一番の理由は、韓国のチームと一緒にお仕事ができることでした。海外のスタッフとのドラマ撮影は私も初めてで、日本語で話すようには意思疎通ができず、もっと言葉が理解できたらと悔しく思うことも含めて、色々学ばせていただきました。

演出面で印象的だったのは、ビジュアルに関する指摘です。私は撮影で自分の外見の見え方を意識したことがほとんどなくて、今回、「頬に力が入ってる。力が抜けた普段の方が綺麗だから、顔の筋肉をもう少し緩めて」などと言われたのは新鮮でした。

カメラのアングルも、韓国のチームは、どうやったら俳優がより美しく、スタイルよく映るかを徹底的に探るんです。自分はそれに慣れていないので、どんな顔をしたらいいんだろう!? と思うこともありましたが、無意識だった部分に光をあててもらい、そこは意識しないといけないところだったと改めて思いました。
小芝風花 WebLEON LEON 私の夫と結婚して べらぼう 瀬川
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── 脚本を担当されたのは日本の方ですね。

小芝 脚本も韓国版よりはコメディタッチだったりほっこりする部分が多く、クライマックスもシチュエーションが少し変わっています。争うシーンなど、激しいところは激しいのですが、つかみ合ったり髪の毛を引っ張ったりというのはなかったですね(笑)。

韓国版ではバトルシーンも見どころのひとつですが、それに関して現場の雑談で面白いことを聞きました。一説によると、女性が夫や恋人の浮気現場を目の当たりにした時に、うわーっ! と叫んだりつかみかかったりせずに、引いたり固まる人が多いのは日本人くらいなんですって (笑)。
── (笑)。小芝さんだったらどうすると思いますか?

小芝 私もたぶん息が止まって動けないと思います。今回の撮影でも、他の女優さんが修羅場のシーンでお芝居をしている時、監督から「もっと強く言って」と言われていたので、そのあたりは韓国と日本で感情の表し方に差があるのかもしれないですね。

── 俳優さん同士の雰囲気はどうでしたか? 美沙が2回目の人生で出会う上司の亘役の佐藤健さんとは、PR動画でも楽し気な様子でしたね。

小芝 佐藤さんとは初共演でしたが、作品に関する相談だけでなく不安も聞いていただいて、お兄さん的にとても頼りにしていました。話の面白い方で、何気ない会話もホントに楽しく、常にノリツッコミみたいな感じでず~っと笑ってました。
── 麗奈役の白石聖さんとは激しいバトルもありましたが。

小芝 やはり心がザワザワしました。麗奈は、1回目の人生でも2回目の人生でも変わらず美沙を支配しようとしますが、2回目の人生では美沙も支配されない自分に変わっていくので、麗奈に対する嫌味な言動やいけずな感じを、どの程度わかりやすく表現するかが結構難しくて。

どういう表現が効果的なのかはそのシーンによって違いますが、美沙と麗奈が本音の探り合いをしながら表面上は笑い合ってるシーンは、やっていて面白かったです。私自身はぶつかる前に撤退するタイプなので、想像を膨らませて、どういうふうに表現したらより面白くなるかを、よく聖ちゃんと話し合っていました。
── このドラマのように、もしもう一度人生をやり直すことができるとしたら、違う決断をしたいと思うことはありますか?

小芝 私はこのお仕事がすごく好きなので、変えたいというふうには今は思わないです。もし過去に戻れるなら、幼稚園生の自分に戻って英語を習いたいです! 私、学生の頃から英語が苦手で、英語の勉強を始めると脳が拒絶して眠くなっちゃうんです(笑)。

でも、今回の現場でも、英語ができればもう少しコミュニケーションがとれたと思うので、英語を耳から自然に吸収できる3、4歳ぐらいの年齢から学び直すのが理想です。
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小芝風花 WebLEON LEON 私の夫と結婚して べらぼう 瀬川
▲ ノースリーブトップス2万3100円、ハイネックインナー1万4300円、スカート2万4200円 /すべてPRANK PROJECT(PRANK PROJECT AOYAMA)
バングル7万5900円、ゴールドリング(右手)11万2200円、シルバーリング(左手)4万1800円/すべてe.m.(e.m. 青山店)

「べらぼう」の瀬川は脚本を何回読んでも泣けてきて……

── 今、ドラマ出演がひっきりなしで本当にお忙しいと思うのですが、頑張り続ける小芝さんの原動力はなんでしょう。

小芝 楽しい! と思える喜びが、今は一番の原動力です。お仕事も楽しいですし、楽しくなければ続いていない気がします。

もちろん、役や作品にやりがいが持てることも大事ですけど、それと同じくらい私が重視するのは現場の居心地です。接する人が良かったり、人と話していて楽しい現場なら、どんなにきついスケジュールでも頑張れるし、人間関係がうまくいってる現場はもう超ハッピー♪で、現場に行くのが楽しみになります。

だから、自分が主演をやらせていただく時は、なるべくいい雰囲気にしたいと思って、いろんな人とコミュニケーションを取るように心がけています。

今回の現場も、韓国チームの方はチャーミングな方が多くて、俳優がいいお芝居をすると、「すごくよかったよ!」ってジェスチャーを交えて熱く伝えてくださったり、監督も日本語をどんどん覚えて、撮影終盤では通訳さんを介さずに日本語で指示してくださることもありました。作品にも日本人スタッフにも丁寧に向き合おうとしてくださる姿勢がひしひしと伝わってきて、感謝しかなかったですね。
── 最近では、「べらぼう」で小芝さんが演じた花魁、五代目瀬川(花の井)の生きる姿に多くの人が胸打たれました。遊郭に生きる女性の複雑な内面を演じきったことは、ご自身にとってどんな経験になりましたか?

小芝 花の井は、私自身もホントに大好きな役でした。好きな人がいるにもかかわらず、お客さんをとらなきゃいけない苦しさや、大切な人たちのためならどんな困難も引き受ける姿は、脚本を何回読んでも泣けてきて……。最後の最後までカッコいい瀬川を書いてくださって、自分がこんなにも好き! って思える役をいただけたことに感謝の思いでいっぱいでした。

瀬川を演じた時は、彼女の内面の揺れに特にこだわって、感情の機微をものすごく意識しながら表現したのですが、ドラマが放送されるたびに、それを視聴者の方が細かく拾ってリアクションしてくださったんです。

こだわったらこだわっただけ、見てくださる方はしっかり受け取ってくださるというのを強く実感したので、どんな役をやる時も、これまで以上に妥協せず、その人物の感情の機微を丁寧に表現したいなと思いました。
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小芝風花 WebLEON LEON 私の夫と結婚して べらぼう 瀬川
▲ イヤーカフ各2万5300円/e.m.(e.m. 青山店)
── その思いが、今回の美沙役でも生きていますか。

小芝 そうですね。今回も、苦しいシーンや切ないシーンが結構多かったので。美沙の素敵なところは、自分を変えたいと願い、迷いながらも“本当の自分らしさ”を自分の力で見出す強さです。麗奈と友也に対する復讐についても、2回目の人生で何かと美沙を助けてくれる亘さんの存在に頼ろうとせず、自分の復讐だから自分で遂行するという決意は揺らぎません。

そして、復讐に向かうブレない決意はありながらも、本来の優しい性格ゆえに、さまざまな場面で自問自答を繰り返し、ふとした時に揺れる心と向き合います。そうして成長し、強くなっていく過程を丁寧に演じたいと思っていました。

韓国版のドラマを見た時、自分だったらここまでやれない! と思う激しさや大胆なところも作品の魅力だと思いましたが、今回の日本版では、日本人ならではの描写がたくさんあります。原作のウェブ小説や漫画、韓国版ドラマが好きな方も、また違った視点で見て楽しんでいただけたらうれしいですね。
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小芝風花 WebLEON LEON 私の夫と結婚して べらぼう 瀬川

小芝風花(こしば・ふうか)

1997年4月16日生まれ。大阪府出身。2011年「ガールズオーディション2011」でグランプリを獲得し、2012年にドラマ「息もできない夏」(フジテレビ系)で俳優デビュー。以来多くのドラマや映画で活躍。代表作に映画『魔女の宅急便』(14年)、NHK連続テレビ小説「あさが来た」(16年)、ドラマ「フェルマーの料理」(23年・TBS系)、「波よ聞いてくれ」(23年・TBS系)、「大奥」(24年・フジテレビ系)、「GO HOME~警視庁身元不明人相談室~」(24年・日本テレビ系)、映画『レディ加賀』(24年)。大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(25年・NHK)では、主人公の“蔦重”こと蔦屋重三郎の幼なじみで、“伝説”の遊女・花の井(五代目瀬川)役を演じて話題に。2025年7月期日曜劇場「19番目のカルテ」(TBS系)に滝野みずき役として出演予定。

小芝風花 WebLEON LEON 私の夫と結婚して べらぼう 瀬川

Amazon Originalドラマ『私の夫と結婚して』

優しすぎる性格の美沙(小芝風花)は、いつも周りの幸せを最優先する“脇役”の人生を送ってきた。夫(横山裕)と親友(白石聖)を信じ尽くし続けた末、ふたりの裏切りにより命を落としてしまう。しかし気が付くと、10年前の過去にタイムリープしていた。二度目の人生では、かつての「いい人の脇役」を捨て、自分の物語の“主役”として生きることを決意。復讐として、裏切り者である親友と夫を結婚させる計画を立て、ふたりを破滅に追い込もうとする。ところが、一度目の人生では言葉を交わすこともなかった仕事先の部長・亘(佐藤健)との出会いが美沙の心に思わぬ変化をもたらしていく……。
原作は、同名のNAVERウェブ小説。韓国で実写ドラマ化され世界中で熱狂的な支持を集めた。今回は、オスカー受賞映画『パラサイト 半地下の家族』を制作した韓国の大手エンタテインメント企業CJ ENMと、『愛の不時着』をはじめとする数々の国際的ヒット作を生み出してきた韓国屈指の制作会社スタジオドラゴンがタッグを組み、待望の日本ドラマ化が実現。脚本は、「1リットルの涙」などの大島里美、監督は『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』などで知られるアン・ギルホが務める。
6月27日より毎週金曜日2話ずつPrime Videoにて配信
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■ お問い合わせ

e.m. 青山店 03-6712-6797
PRANK PROJECT AOYAMA 03-6455-4550

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