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2023.11.03

小泉孝太郎が語った「名家の長男」を生き抜く覚悟と苦労とは?

日本におけるメガネ産業の礎を築いた増永五左衛門とその家族の物語を描いた映画『おしょりん』に出演した小泉孝太郎さん。名家の長男として私財を投じて奮闘した五左衛門は政治家の家の長男として生まれた自身とも通じるものがあったのでしょうか。

CREDIT :

文/鳥海美奈子 写真/福本和洋 スタイリング/北村彩子 ヘアメイク/石川武史(PATIONN) 編集/森本 泉(LEON.JP)

小泉孝太郎(こいずみ・こうたろう)
日本で生産されるメガネのうち、実に95%のシェアを持つ福井県。明治時代にそのメガネ産業をゼロから立ち上げた兄弟と、彼らを支え続けた女性の情熱と愛の物語を描いた映画『おしょりん』が公開になります。小泉孝太郎さんが演じたのは、メガネ産業を根づかせるために私財を投じて奮闘する庄屋の長男・増永五左衛門です。政治家の家に生まれた長男として、役に通じるものがあるのでしょうか? 
── 小泉さん演じる五左衛門は、冬は雪に閉ざされる村の農閑期のために新たなメガネづくりという地場産業を興そうとします。五左衛門という人物をどんなふうに感じましたか?

小泉孝太郎さん(以下、小泉) 五左衛門さんは本当に偉大な方ですね。メガネをつくれば目の悪い人や不自由な人たちも救われる。そう考えて世のため、人のため、地域のために尽くします。私利私欲がまったくない人物なので、そこは大切に、純粋に演じようと心がけました。

── 政治家の家に生まれた小泉さんですが、人々のために尽力する五左衛門を理解しやすいところはありましたか。

小泉 いやいや、五左衛門さんは政治家とはもう全然、違いますね。政治家のほうがずっと腹黒いですよ(笑)。五左衛門さんを政治家と比べるのは申し訳ないというか、逆に失礼です(笑)。資産をなげうって人々のために産業を興そうと、人生を賭ける人間なんて本当に稀ですよね。それだけ彼にはすごい情熱があったし、そこに人々もついていった。福井の方たちにとっては誇りや思い入れのある物語ですから、それを神奈川県民の僕が演じていいのかという戸惑いはありましたけれど。背負うものがたくさんあったので、その面ではすごくプレッシャーを感じましたね。
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小泉孝太郎(こいずみ・こうたろう)
── ちなみに、小泉さんはメガネはお好きなのでしょうか。

小泉 僕、視力がすごくいいんですよ(笑)。だから、かけるのは伊達メガネかサングラスだけなんです。薄く色の入ったサングラスは、クルマを運転する時にかけています。でも今回の映画で福井の多くの方たちと出会えたことは僕にとって大きな財産になったので、今後のメガネライフはもちろん、今回の物語で描かれた福井の増永眼鏡をメインに使います!

── 監督の児玉宜久さんは『西部警察Ⅱ』『あぶない刑事(デカ)』など警察やアクションものが得意な方ですが、今回は切った張ったの全然ない人間ドラマでした。

小泉 確かに児玉監督はアクションのイメージが強いのですが、それらの作品の中でも、ずっと人間をきちんと見てきた方だと思います。この映画では自分の妻役の北乃きいちゃんと、弟役の森崎ウィン君との家族の関係も大切なテーマですが、監督は3人の関係も丁寧に描いてくださいました。現場に立った時、ふたりが明治時代のまさにそれぞれの役柄を体現してそこにいてくれたので、自分がしっかりと3人のバランスを保てればうまくいくなという確信がありました。このシーンで兄は弟に対してこういう気持ちでいたいとか、妻にはこういう気持ちでいてほしいとか、そういう心情もすごく理解しやすかった。このチームでなければ、決して成立しない現場でしたね。
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小泉孝太郎(こいずみ・こうたろう)
── チームと言えば、小泉さんは高校時代、野球部に所属して甲子園を目指し、そこでチームワークの大切さを学んだと言っていましたね。

小泉 ワンフォーオール、オールフォーワンという言葉が僕は好きで。五左衛門さんの生きた明治時代にはこの言葉はなかったと思いますが、そういう精神があったからこそ多くの挫折と困難の末、みなが人生をかけて眼鏡づくりに邁進できたのではないでしょうか。ひとりでも欠けていたり、あのチームや組織がなければ、きっと途中で挫折していたのではないかと思います。それだけ奇跡的な出会いや繋がりがあったんでしょうね。

── 小泉さんは、プライベートでは人を引っ張っていくタイプですか。

小泉 僕自身は、人を引っ張っていこうと思ったことはないですね。例えドラマで主演をやったとしても、そういう感じはないです。どちらかというとみんなとうまくいくためにはどうしたらいいかと考えます。決して自分が、自分がというタイプでもないですし。反対に共演者やスタッフの方に対しても、変な緊張感を与えないほうに対してエネルギーを使います。

それは、自分の家庭環境が大きいと思います。政治家の家というのは大きなチームなんですよ。地元では何千人という方たちが父を応援してくださって、事務所にも何人ものスタッフや秘書がいて、政治家というひとりの人間を支えるのを見てきましたから。こんなふうに気遣いができるんだと、秘書やスタッフの方から学ぶことも多かったんです。それがこの芸能界という世界でも役立っていると思います。
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小泉孝太郎(こいずみ・こうたろう)
── 名家の長男という意味では、今回の役柄と共通項がありますね。

小泉 明治時代は、長男が家を継ぐというのがあたり前ですし、宿命だったでしょうね。自由に生きたいなどという時代ではない。いまの僕らの感覚とはまったく違いますよね。

── 小泉家はそういうプレッシャーはなかった、と?

小泉 うちはなかったから、僕はいまここにいられるんです(笑)。父は「政治家にはならなくていい」「政治家は苦しいぞ」と言っていました。父自身も実は政治家にはなりたくなくて、でも長男だから継がざるを得なかった。父はその悔しさや苦しみというのを味わっていたから、息子である僕に同じ思いをさせたくない、職業選択の自由を与えてあげたいと思ってくれていたんです。
── 父親というのは、小泉さんにとってどんな存在ですか。父の背中を乗り越えよう、というような意識はありますか。

小泉 若い時は、父というのは乗り越えるものだと思っていたんです。大きい存在である父を、乗り越えなければならない、と。でも芸能界で本気で自分なりの挑戦をした結果わかったのは、大切なのは自分になることなんだ、ということ。父親は父親、自分は自分で、むしろ自分になることのほうが大変なんですね。それはもし父と同じ職業を選んだとしても同じだと思います。僕は自分が生きていく場所はここだ、小泉孝太郎の人生はここなんだ、と見つけられたことで、すべてのプレッシャーから解放されたんです。

── それはいつぐらいに見つけられたのでしょう?

小泉 もちろんすぐに出来たことではなくて、20代、30代、40代と少しずつ自信がついてきた。特に僕の場合は、芸能界に入った時は、父はまだ現職の総理大臣だったんです。“芸能人・小泉孝太郎”と総理の息子というのを同時に生きていかなければいけなかった。当時はいつも警察が周囲にいて、不審なことがあればすぐに連絡が来るし、自分の身もどうなるかわからない。一時は自分が20代を無事に生き抜けられるだろうかと思ったこともありました。

その後、父が総理を退任したことで少し楽になって、初めて“芸能人・小泉孝太郎”という自分の仕事に集中できるようになっていきました。その芸能界の世界で、僕は役者だけやれればいいと思っていたけれど、幸運なことに情報番組やバラエティのMCもさせていただくことができた。そうやっていろいろな仕事をして、いろいろな人と出会えたことで、親の重圧から解放されて、自分はやっぱり芸能界でやっていこうと思えたんです。45歳になったいま、僕が生きていく世界はここだ、とはっきりと言うことができます。
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小泉孝太郎(こいずみ・こうたろう)
── 最後に、小泉さんにとって”カッコいい大人”像を教えてください。

小泉 いまを生きている人ですね。男女に関わらず、過去を生きたり、未来を生きている人とはなるべく交わりたくないです。「バブルの頃は……」とか「若かった頃は……」と言われても、あの時代は二度とこないし、僕はいまここにいる、目の前のあなたと話しているんですよ、と思いますし。自分も、過去を振り返って「あの頃がよかったなぁ」とは、口が裂けても言いたくないです。いまを受け入れて、いまの自分を生きている人が一番カッコいいと思います。
小泉孝太郎(こいずみ・こうたろう)

● 小泉孝太郎(こいずみ・こうたろう)

1978年7月10日生まれ、神奈川県出身。02年、ドラマ「初体験」でデビュー以来、ドラマ・バラエティ番組を中心に活躍する。03年、『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』で映画デビューを果たし、以来、同シリーズの最終章『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(12)のほか、スピンオフ『交渉人 真下正義』(05)などに出演。現在、TX「よじごじDays」のMCを務めるなど、俳優活動の他にも幅広く活躍中。

おしょりん

■ 『おしょりん』

日本製メガネの95%を生産する福井県の立役者となった兄弟を主人公とした、藤岡陽子の同名小説を映画化。明治時代の福井県の豪雪地帯で収入の道がなくなる冬の間、村を支えるためにいちからメガネづくりに挑んだ兄弟と村の職人たち、彼らを支える家族の物語が描かれる。監督/児玉宜久。出演は北乃きい、森崎ウィン、かたせ梨乃、小泉孝太郎ほか。
11月3日(金・祝) 角川シネマ有楽町ほか全国公開
配給:KADOKAWA ©「おしょりん」制作委員会
HP/映画『おしょりん』公式サイト (kadokawa.co.jp)

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