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2022.05.14

日本のCGアニメが世界コンテンツになるまで|神山健治×荒牧伸志インタビュー

Netflixで配信され、日本のみならず世界中で好評を博したアニメ『ULTRAMAN』と『攻殻機動隊 SAC_2045』。その続編となる『ULTRAMAN』シーズン2は現在Netflixにて全世界独占配信中され、『攻殻機動隊 SAC_2045』シーズン2もこの5月23日(月)より配信がスタートします。ここでは両作品の監督を務めた日本が誇るクリエイター・神山健治×荒牧伸志両氏に、3DCGの手法や日本アニメの未来について話を伺いました。

CREDIT :

文/Neko-Reset 写真/中西 学

高い評価を受ける日本アニメの現在地

▲ 強化スーツを装着して戦う、新時代の“ウルトラマン”。アニメ『ULTRAMAN』シーズン1(Netflixにて配信中)より。©円谷プロ ©Eiichi Shimizu,Tomohiro Shimoguchi ©ULTRAMAN製作委員会 https://anime.heros-ultraman.com/
日本を代表する特撮作品『ウルトラマン』。幼少期にリアルタイムや再放送で観ていたというLEON世代もいるのではないでしょうか。そんな日本のヒーローを、3DCGアニメ『ULTRAMAN』として世に送り出した神山健治×荒牧伸志両監督に、いまの日本アニメが世界でどう受け入れられているのか、3DCGアニメはどのような位置づけにあるのかを語ってもらいました。

日本のアニメ界が誇るダブル監督の作品には、『ULTRAMAN』の他にも『攻殻機動隊 SAC_2045』があり、国内外で高い評価を得ています。そんな日本アニメの現在地とは──?

●神山健治

1966年3月20日生まれ。埼玉県出身。アニメーション監督、脚本家、演出家。株式会社クラフター代表取締役共同CEO。高校時代よりアニメ制作を始め、2002年『ミニパト』で初監督を務める。代表作は『ULTRAMAN』シリーズ、『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズ、『東のエデン』など。

●荒牧伸治

1960年10月2日 生まれ。福岡県出身。アニメーション監督、メカニックデザイナー。2004年に監督を務めた『APPLESEED』では、モーションキャプチャーを導入した世界初の3Dライブアニメとして国内外のクリエイターに大きな影響を与える。現在、日本における3DCGアニメの第一人者として高い評価を受ける。

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海外では今も80年代の日本アニメが人気

▲ 荒牧伸治監督。
── 初めまして! 今回は大人も楽しめるアニメ作品の紹介ということで、両監督にインタビューさせていただきました。お二人は初代『ウルトラマン』(1966年放送)と同じ1960年代生まれで、これまでダブル監督として『ULTRAMAN』や『攻殻機動隊 SAC_2045』を手掛けられてきました。ですが、そもそもなぜタッグを組むようになったのか、そのきっかけから教えてください。

荒牧伸志(以下、荒牧) そもそもは僕がProduction I.Gの石川(光久)社長に「今度、フルCGで『攻殻機動隊』を作りませんか?」と打診されたことが始まりです。もともと『攻殻機動隊』が好きだったこともあり、同シリーズを手掛けた神山さんと一緒に作品を作りたいと思っていて……。それで、神山さんと一緒にできないか、石川社長に提案してみたんです。
 
神山健治(以下、神山) その話がすんなり通って、ダブル監督として『攻殻機動隊 SAC_2045』を共同制作することになったんです。そうしたらちょうど同じタイミングで「せっかくだから『ULTRAMAN』のフルCGもやってみないか?」というお話をいただいて。作品の公開は『ULTRAMAN』の方が先(2019年)になりましたが、『攻殻機動隊 SAC_2045』(2020年)、そしてそれぞれのシーズン2と、今も二人で監督を務めさせてもらっています。
▲ 全身義体のサイボーグ・草薙素子率いる公安9課が電脳犯罪に立ち向かう。2022年5月23日(月)よりNetflixで独占配信される『攻殻機動隊 SAC_2045』シーズン2より。©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会 https://www.ghostintheshell-sac2045.jp/
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── そうだったんですね。『攻殻機動隊 SAC_2045』も『ULTRAMAN』もシーズン1がNetflixで配信され、日本はもちろん世界中で多くのファンを獲得しました。実際のところ、日本のアニメ作品というのは海外ではどのような受け取られ方をしているのでしょうか?

荒牧 過去をさかのぼると、80年代の日本アニメは今と違って産業的ではなく、熱意を優先して作られていた印象があります。逆に言えば制作側がある程度好きなように作れた時代でもあったんです。そういった熱意やこだわりのようなものが海外で受け、徐々に広がっていったんだと思いますね。今でも海外では80年代の日本アニメが人気なんですよ。
▲ 神山健治監督。
神山 おそらくですが、当時の日本アニメが「エロ」と「バイオレンス」をストレートに表現していたのが衝撃的だったんじゃないでしょうか。これらの表現って、海外では、特にテレビではタブー視されているじゃないですか。

荒牧 確かににそうですね(笑)。

神山 アニメというと、昔はそれこそ「いけないもの」をコソコソ観るようなマイノリティの感覚だったんですが、時代が進むにつれて表現の幅も広がり、いわゆるアニメファンだけでなく視聴者の層も広がっていったという感覚があります。

荒牧 最近だとネットの反応でも伝わってきますよね。色々な言語で日本の作品について語ってくれている。でも僕が驚いたのは、それより以前、ネットが普及する前から海外にはコアな日本アニメファンがいたことです。映像に自分で字幕をつけてその作品を広めようと活動している人たちなんかもいて。ネット社会の急速な変化も世界的なアニメブームに繋がっているのかもしれませんが、その根底には、日本が今まで積み上げてきた漫画・アニメ文化の歴史やノウハウがあるんでしょうね。それに共感する人が世界にはたくさんいたと。
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Netflixにより世界で同時視聴されるようになった

▲ 本作の“ウルトラマン”もスペシウム光線を発射! アニメ『ULTRAMAN』シーズン1(Netflixで配信中)より。©円谷プロ ©Eiichi Shimizu,Tomohiro Shimoguchi ©ULTRAMAN製作委員会
── 先人たちが築き上げてきた日本アニメの歴史が世界に広がっていったんですね。

神山 でも、『ULTRAMAN』のシーズン1を制作していた頃は正直、「世界中の人々が視聴する」という認識があまりできていなかったんです。日本で公開した作品が海外に輸出されることはあっても、世界同時に放送されることはありませんでしたから。

それがNetflixだと世界中で一斉配信されるようになる。そうすると反応も世界中から届くようになって。そういった視聴者の変化は今ようやく意識できるようになってきました。

海外作品を観ていても、言葉が違う人々に楽しんでもらうために、あまりセリフに頼らず、動きや事象でストーリーを引っ張っていくものが多いですよね。だから今回の『ULTRAMAN』シーズン2を制作するにあたってはそういった“言葉に頼らない演出”をずいぶん心がけました。
▲ エースこと北斗星司(右)やベムラー(左)といった、往年のファンにもピンと来る名前のキャラクターが続々登場。アニメ『ULTRAMAN』シーズン2(Netflixにて4月14日より配信開始)より。©円谷プロ ©Eiichi Shimizu,Tomohiro Shimoguchi ©ULTRAMAN製作委員会2
── 「動き」で言うと、ウルトラマンの名を冠している以上、アクションシーンは大きな見どころになりそうですね。ちなみにお二人は今、フル3DCGで制作しておられますが、今後日本のアニメは3DCGが主流になっていくと考えていますか?

荒牧 もう既に、2Dか3DCGかの二者択一ではなくなってきていると思います。ジャンルと言うほどではないですが、どちらの手法も両立して語られるようになってきているのではないでしょうか。特に最近の若い人は、そこまで2Dか3DCGかを意識して作品を観ていない気もしますね。

神山 重要なのは、作風に合った手法を選ぶことですよね。その点においては、『ULTRAMAN』と3DCGは相性が良かったと思います。画面映えする派手なシーンは2D・3DCGどちらでも作り込めますが、3DCGのほうがより演出を突き詰めていけるんですね。2Dにない“すごさ”を3DCGに感じとってもらえるとしたら、そこがポイントかもしれません。

荒牧 最近では、キャラクターは2Dで描き、メカや背景などは3DCGで表現する、といったハイブリットな表現方法も定着してきていますよね。
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2Dと3DCGは、どちらもまだ進化の途中

▲ モーションキャプチャーによって3Dデータを取り込み、CG合成を行うスタジオ。
神山 3DCGの利点を上げるとたくさんありますが、現状では2D作品の方がウケがいいと感じることも多いです。2D作品の場合、「これ、全部人間が手で描いてるの!?」と、すごさが直感で伝わりやすい。対して3DCG作品は、「パソコンをちょっといじるだけで簡単に作れるんじゃないの?」「モーションアクターさんの演技をそのまま取り入れるだけだから、あんまり苦労はないんじゃない」と受け取られることもあります。そんなことはないんですけどね(笑)。

── CGの制作については直感ではなかなか分からないかもしれません。

荒牧 制作過程が見えないと、どうしても作る側の苦労は伝わりづらいですよね。2Dのアニメだと、自分で紙に描いてみることでいかに制作が難しいか実感ができますが、3DCGはなかなかそうはいきません。最近では、誰でも簡単に美少女の3DCGが作れるアプリなんかがリリースされているので、実際の苦労がもっと伝わりづらくなっているのでしょう。それでも現場は「2Dに負けないものを作りたい!」といった熱意にあふれています。その熱意が、視聴者に伝わればうれしいですけどね。

神山 視聴者もそうですが、制作する側でも、3DCGの技術的な進歩とは反対に、2Dに回帰する風潮もあります。実際に僕も制作をしていて「昔ながらの日本のアニメーターはすごかったんだな」と思い知らされることが多々ありますから。2Dも3DCGも、どちらもまだ進化の途中にあるのだと考えてます。
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人の動きを3Dで取り込む「モーションキャプチャー」とは?

── 両監督は実際の役者(モーションアクター)にセンサーをつけてその動きを3Dデータで取り込む「モーションキャプチャー」の手法を取られています。その利点を教えてください。

荒牧 利点はやっぱり、柔軟性です。モーションアクターさんが演技をしている現場で、「ここは、もう少しこうしたらどうかな?」や「この動きを追加してみよう」といった演出のアイデアをどんどん膨らませられるのがいいですね。撮影したシーンを見返してみて、「ここは別のアングルから撮ったほうがかっこいいかな」と思ったら、撮り直して修正もできますし。

神山 2D作品と違うのはそこでしょうね。2Dの作画より早く、より綿密な演出アプローチができる点がモーションキャプチャーの強みです。ただ同時に、「モーションアクターさんの動きをそのまま使っているだけでは?」と取られかねない、諸刃の剣の表現でもあるのですが。

荒牧 ひと昔前は3DCGが使われているだけで評価された時代もありましたが、時代も進み、3DCG作品もようやく中身(ストーリー)で勝負できるようになった、ということでしょうか。

神山 2D・3DCGに限らず、「面白い」と視聴者に思わせる作品は強いですよね。目指すべきは、そういった作品だと思っています。
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大人でも楽しめる『ULTRAMAN』

── この記事が公開されるタイミングでは、すでに『ULTRAMAN』シーズン2が配信されています。最後に、大人にこそ観てほしい場面や、往年の『ウルトラマン』ファンが楽しめるポイントがあれば教えてください。

荒牧 シーズン2の制作は思ったより時間がかかってしまったんですが、その分映像としてはかなり進化したものが見せられるんじゃないかと思っています。シーズン1をまだ観ていない方はNetflixで全話配信中ですので、シーズン1、2と一気に観てほしいですね。
▲ シーズン2のメインキャラクターを務めるタロウこと東光太郎。アニメ『ULTRAMAN』シーズン2(Netflixにて4月14日より配信開始)より。©円谷プロ ©Eiichi Shimizu,Tomohiro Shimoguchi ©ULTRAMAN製作委2
神山 「ウルトラマン」ファンには、ぜひとも新キャラクターの「タロウ」に注目してほしいです。文字通り炎のように燃える男で、彼が持つ正義感にも熱いものを感じていただけると思います。

荒牧 今回は6話分を使って、光太郎がどのようにして「タロウ」になっていくのかを描ききっています。強敵との対峙と合わせて2本立てのストーリーになっていますので、アクションシーンももちろんですがドラマパートも楽しんでいただけたらと思います。

神山 「ジャック」も「ゾフィー」もそうなんですが、既存のキャラクターをベースに新しい解釈を加えているので、『ウルトラマン』を知る世代には「なるほど、こう解釈するのか!」と驚いてもらえるのではないでしょうか。

荒牧 『ULTRAMAN』シーズン2はシーズン1に比べて全体的に大人っぽい雰囲気ではあるのですが、今回はヒーローが次々出てきますし、アクションシーンも増やしていますから、若い世代にもワクワクしてもらえるような展開になっています。年代を問わず、普遍的なかっこよさやエンターテインメント性を楽しんでもらえたらうれしいですね。

──ありがとうございました。5月23日(月)より配信がスタートする『攻殻機動隊 SAC_2045』シーズン2も楽しみにしています!
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アニメ『ULTRAMAN』シーズン2

累計300万部を超える大ヒットコミックス『ULTRAMAN』を3DCGでアニメ化。そのシーズン2が、ただいまNetflixで独占配信中です。伝説の「ウルトラ6兄弟」のイメージを継ぐ「六傑」(ULTRAMAN、SEVEN、ACE、ZOFFY、JACK、TARO)が集結し、 宇宙スケールの異星人の陰謀に立ち向かう展開に、ぜひ注目を。

https://anime.heros-ultraman.com/

アニメ『攻殻機動隊 SAC_2045』シーズン2

1989年、士郎正宗氏により発表されたコミック『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』を原作とした本作。物語の舞台は情報ネットワークとサイボーグ(義体)技術の発達により人々の意思が“電脳”に繋がれた近未来──その世界で全身義体のサイボーグ・草薙素子率いる攻性の組織、攻殻機動隊が電脳犯罪に立ち向かいます。Netflixシリーズ『攻殻機動隊 SAC_2045』シーズン1は、ただいまNetflixにて好評配信中。そして、待望のシーズン2は、同じくNetflixにて2022年5月23日(月)より全世界独占配信スタートです。

https://www.ghostintheshell-sac2045.jp/

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