2018.09.04

知られざるオトナの遊び「KODO」に潜入

その人の肩書は志野流香道第21世家元継承者。なんと室町時代から脈々と続く香道の家に生まれた若宗匠、通称ワカは500年続いた香道を、現代の日本で、また世界でどうドライブしていくのか。ワカの私的な活動に密着!

CREDIT :

文/秋山 都 撮影/松井康一郎

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香道ってなんだっけ?

香道と聞いて、「ああ、アレね」と頷ける方、LEON.JP読者の半分いるかなぁ。茶道、華道はなんとなく知っている気がしていても、香道とは何か、説明できる人は少ないかもしれません。

ですので、最初にご説明を。香道とは、室町時代に足利義政や彼をとりまく時代のリーダー、志野宗信、三条西実隆によって体系化されたもの。これ、千利休が生まれる前ですので、実は茶道よりも歴史の古い芸道なのですね。

もちろん「香」は唐から渡り、平安時代でも貴族の生活には欠かせないものでした。よく知られているところでは十二単など衣類に焚きしめて使っていましたね。「こころときめきするもの よきたき物たきてひとりふしたる かしらあらひ化粧じて、かうばしうしみたるきぬなどきたる(心ときめくもの。上等のお香を炊いてひとりで寝ています。

髪を洗い、お化粧もして、いい香りのする着物を着てたりして…キャ♡)」と書いたのはかの清少納言。当時のデートは夜、男性が女性のところへ通って行われていたわけですが、平安時代は今のように電気もなく、暗いわけでして……顔もあまり見えないところに、香りがいかに重要な役割を果たすか、そこは現代に生きる私達でも想像できるムフフ♡ですね。
5種類の香を聞きわける「源氏香」の図。源氏物語など平安のカルチャーは香道の世界に今もいきいきと息づいている。
5種類の香を聞きわける「源氏香」の図。源氏物語など平安のカルチャーは香道の世界に今もいきいきと息づいている。
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香道、実際にはどうやるの?

さて、お茶席に招かれたら見よう見まねでお茶碗を頂戴し、2回まわして2、3口でズズ~ッと飲んで……なんとなく想像がつきますが、香道の世界では何がどのように行われているのか。

この日は志野流香道第21世家元継承者、蜂谷宗苾(はちやそうひつ)さん(通称ワカ)が親しい友人を集めて開催するKODO SALONにおじゃま。正式なお作法ではありませんが、香道のなんたるか、そのアウトラインだけ拝見してきました。
香りを嗅ぐのではなく、聞くのだというお話、この点は「香りを聞く?! 聞香をいざ初体験!」を参照いただくとして、香道の基本は香木の一片を香炉にくべ、埋めた炭団の熱でたちのぼる香りを聞き、楽しむという点にあります。
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この日は5つの香を聞きましたが、「ああいい香りだった」で終わるわけではなく、実はこれ、ゲーム仕立てになっています。

5つ廻ってくる香にひとつだけ異なる香が混ざっているのでそれを当てる、というものですが、これは、かの光源氏が空蝉(うつせみ、という女性)を口説き落とそうと通っているなか、人間違いをして(なにしろ前述の通り暗いので)情を交わしてしまった女性がいたという源氏物語「空蝉」の巻のエピソードをなぞらえたもの。

香を聞くだけではなく、平安の史実や物語にも造詣があってこそ楽しめるオトナのゲームなのですね。
この日使用した沈水香木は東南アジア原産の植物が数百年にわたって自らの中に樹脂を分泌し、蓄積したもの。つまりその香木が蓄えている香りはまさに平安や室町時代の空気と言えるのかもしれません。

つまり、その香を聞くとはまさにタイムトリップするようなもの。正式にお稽古するなら、書や古典などの教養も求められるという香道ですが、このようなカジュアルな聞香会ならとっつきやすいなぁ。
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ワカが語るKODOのこれから

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この日のKODO SALONを主催していたのは日本の伝統ある香道、志野流香道の第21世家元継承者である蜂谷宗苾さん。若宗匠であることから、友人からはワカと親しまれている43歳です。
蜂谷宗苾氏、1975年愛知県生まれ。生まれ育った環境によるものか、すばらしく鋭敏な鼻をもったワカは「20年前にご縁のあった女性でも香りをかげば思い出す」のだそう。
蜂谷宗苾氏、1975年愛知県生まれ。生まれ育った環境によるものか、すばらしく鋭敏な鼻をもったワカは「20年前にご縁のあった女性でも香りをかげば思い出す」のだそう。
室町時代より20代500年にわたり香道を継承してきた志野流の第20世家元蜂谷宗玄の嫡男として生まれ、幼い頃より祖父19世宗由の元で研鑽に励んだワカ。

香は常に自分の身近なところにあり、物心ついたころには自然と香を聞いていたというワカはフランスに留学するなどして見聞を広め、現在では全国数千人の門弟に指導するほか、インテリアとして使えるカジュアルなインセンスをプロデュースするなど、正式な香道だけにとらわれない香の楽しみを啓蒙しています。
親密な雰囲気のなかおこなわれるKODO SALON。
親密な雰囲気のなかおこなわれるKODO SALON。
人の五感の中でももっとも大脳に訴える力が強く、死ぬ間際まで残っているといわれる嗅覚を使ってこのように遊ぶのはなんとも言えず優雅な経験。美意識も鍛えられるまさに総合芸術なのだと感じました。

なにかお稽古ごとをやってみたいと思っているそこのアナタ、香道はいかがでしょう。まったくの余談ですが、香道をたしなんでいる人の8割が女性だそうですよ。

■ 志野流香道 松隠軒 本部事務局

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