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2018.07.04

フランス人から見た日本人の恋愛事情は、なぜ不自由に映るのか

恋愛発祥の地にして恋愛先進国ともうたわれるフランス。その恋愛観は日本人のオトナの恋愛を考えるうえでもとても参考になるのです。日・仏両国の恋愛事情に詳しいジャーナリストのドラ・トーザンさんに話を伺いました。

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文/木村千鶴

今回は大人の恋愛特集ですが、日本では長らく“恋愛は若者の特権”とされてきたように思います。歴史的にみれば、戦後、自由な恋愛が世間に広まるにつれ、恋愛結婚が増え、恋愛のハッピーエンドが結婚であるという図式が普通になっていきました。世間ではいまだに、結婚を目標としない恋愛は認めないという考えが多勢ではないでしょうか。でも、そうした認識が大人の恋愛を非常に不自由にしているようにも思うのです。

そもそも「恋愛」という言葉が今日の意味で辞書に登場したのは明治20年のこと。フランス語の「amour(アムール)」の訳語として「恋愛」が充てられたのが最初と言われています。つまり、「恋愛」はフランスから入ってきた文化とも言えます。それまではなかった西洋式の「恋愛」を日本人は日本の文化に合わせて発展させてきたともいえるのですが、ここにきて何か大きな閉塞感が漂うような……。

そこで恋愛大国とも言われるフランスの恋愛事情について、日本、フランス、双方の文化に詳しく『フランス式いつでもどこでも自分らしく』『フランス人は年をとるほど美しい』の著書もあるジャーナリストのドラ・トーザンさんにお話を伺いました。
写真:Visual Press Agency/アフロ

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言葉はアートで遊びのひとつ 

気持ちは言葉にして言わなければ伝わりません

ドラさんは日本とフランスで「恋愛」についてもっとも大きな違いのひとつは「言葉」の問題だと言います。

「フランスでは昔から愛を言葉で表現することをとても大切にしています。その理由のひとつは、気持ちは伝えることが大切だということ。人は気持ちを伝え合わないと不安になるでしょ。今何を思っているのか、あなたが自分にとってどれだけ大切か、言葉にして言わなければ伝わらない。せっかく言語をもっているのだから、使わなければ、というのがフランス人の感覚です」(ドラさん、以下同)

日本では昔から「鳴かぬ蛍が身を焦がす」と言うように口に出さないほうが、より思いが強いという文化があります。以心伝心、阿吽の呼吸なんていうのもそうですね。でも、世界の主流はわかりえないことを前提にしたコミュニケーション。むしろ「言わなくてもわかるだろ」は時代遅れの感覚になりつつあるのかもしれません。

「日本人男性はジュテーム(愛してます)が苦手だし、語彙も少ないですね。でも1度言い始めると習慣になってちゃんと言うようになるのよね。慣れるのも大切かもしれないですよ(笑)」

そしてフランス人が言葉を大切にするのには他にも理由が。

「フランスでは言葉自体がアートであり、遊びのひとつになっているということもあります。日常生活の中にポエムを入れるのは、フランス人が好んでする愛の表現のひとつです。毎日じゃないけど、冷蔵庫の上に“今日の君は特別ステキ!”なんてメッセージが貼ってあることも。ちょっとした遊び心で、小さなラブレターをたまに送り合うことは、ふたりが仲良くいられる秘訣ですね」

もちろん日本人も言葉遊びは好きですが、その場合も直接的な表現ではないことがほとんど。フランス人のようにストレートな表現は苦手。そんな場合は……。

「お互いをふたりだけのニックネームで呼び合うことは是非お勧めしたいですね。日本でもふたりきりの時には人前とは違う呼び方をしている人、案外いるんじゃないかしら。ちょっとしたことをふたりの楽しみにして、コミュニケーションのひとつにすると、会話が増えて相談しやすい雰囲気が生まれるかもしれません」

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日本では結婚に相応しい相手としか恋愛できない⁉

日本人の恋愛は結婚に縛られて不自由に思えます

ではそんな日本人の恋愛模様をドラさんはどのように感じているのか。日本では恋愛と結婚が密接に絡んでいて、それが恋愛にも影響を与えているのではないかとドラさんは言います。

「とにかく結婚のプレッシャーが強いのか、恋愛が不自由に感じます。フランスではもうちょっと自由に恋愛を楽しんでいます。だから、恋愛を望んでいる若い女の子が“もう5年恋をしていない”と言うような話はあまり聞かないですね。たとえ日本で言う結婚適齢期というような年齢であったとしても、“この人は結婚に相応しい相手なのか、ちゃんと責任をとってくれるのか”という考えをもたずに恋愛ができますから」

なぜかといえば、フランス人は恋愛と結婚を別物と考えているから。そして結婚という制度をあまり重視していないから。

「フランス人は結婚自体にあまり興味がないですね。女性も自立している人が多いから、妊娠も避妊も自分の気持ち次第。日本では何歳までに結婚して、何歳までに子どもをつくって、どれくらい貯金して……と、プレッシャーが大きすぎますね。気持ちのままに恋愛する雰囲気があまりない。まるで我慢大会のよう」
そんな日本人がドラさんには不自由と映るようです。

「ただ、フランスではそういった我慢がないから、離婚率も高いですね(笑)。でも、アムールがないのに一緒にいる方が不自然じゃないかしら。別れても、子どもがいればそれは家族には違いないから」

日本のセックスレス問題にもひとこと。

「気持ちがなくなったら別れるのが自然なフランスでは、セックスレスはあまりないことです。セックスやスキンシップは体にも精神的にもとても良いものだし、アムールがあってしないのは寂しいですよね」
ドラ・トーザンさん。日本に住むようになったのは20年以上前。現在はパリと東京・神楽坂を行き来しながら、フランスと日本の懸け橋として日仏のさまざまなメディアを通して活動。

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自分たちで勝ち取ってきた制度 

フランスの法律は社会変化に合わせて動く

実に合理的というほかありません。彼らにとって恋愛はお互いが自立していて初めてできるもの。自立した者同士が愛し合い恋愛になる。一緒に暮らすことが合理的だと思えば一緒に暮らす。けれど結婚は別。フランスでは事実婚が圧倒的に多いのは皆さんもご存知だと思います。そして、そういう個人の自立と自由を助ける国のシステムが日本より発達していることも大きいようです。

「フランスと日本の大きな違いは、社会変化に合わせ、法律が動くところです。人のために法律がある感じ。たとえば子どもの教育に関しては、どんな国籍、婚外子であっても同じ教育が受けられるシステムが整っているから、女性は安心して子どもが産めるんです。だから結婚にはさほど興味がない。いろんな形があって、でもそれは当たり前だし、苦しさがないのです」

さすがフランス。いい国ですねと言いたいところですが……。

「でも、それは国民の力で“制度”を勝ち取ってきたから、というのも大きいかもしれませんね。日本は自分のことより、グループが上手くことを優先するという”和“を重んじる習慣がある。もちろん、みんなの幸せを願うことは大切で素晴らしい感覚です。けれど、個人が幸せにならなければみんなの幸せなんて訪れないですよね。もっと自分を大切に、わがままになってもいいと思います」

国が作ったシステムをありがたく受けとって安住するのか、自分たちが必要とするシステムを自ら勝ちとっていくのか、もはや国民性の根幹に関わる問題です。その感覚の違いが「恋愛」でも大きな違いを生み出しているようです。

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何歳になっても恋愛を楽しむのがフランス人

年齢に関係なく恋愛を楽しむのは当たり前のこと

そして恋愛が年齢に縛られるものではないというのもフランス人の信念のようです。

「年齢についての考えは、ドラは強くもっていますよ。これは何十年も前から同じ気持ちね。誰が何歳かなんていちいちこだわるのはやめた方が良いんじゃないかしら。私は年齢をポジティブに捉えているから、年を重ねる度に美しくなるし、自信も出てくるものだと思っています。年上、年下、アラフォーだのってこだわっても仕方ない。何歳だって恋愛を楽しむし、それは当たり前のことなのではないでしょうか」

フランス式のコミュニケーションのあり方は、常にまっすぐで正直、裏表のないものでした。制度も環境も日本とは大きく違うので、すべてフランス式が良いとは言うつもりはありません。それでも、人と人がお互いを尊重しあい、理解しようとして言葉を尽くして真剣勝負するような恋愛は、少なくとも大人でなければできないものです。我々日本人が、これからもっと素敵な恋愛をたくさんしていくうえで、彼らの恋愛観は大きな刺激とヒントを与えてくれるように思います。

● Dora Tauzin(ドラ・トーザン)

エッセイスト・国際ジャーナリスト。フランス・ パリ生まれの生粋のパリジェンヌ。ソルボンヌ大学、パリ政治学院卒業。国連本部広報部に勤務ののち、NHKテレビ『フランス語会話』 に出演。日本とフランスの架け橋として、新聞・雑誌への執筆、テレビ・ラジオのコメンテーター、講演会など多方面で活躍。著書に『好きなことだけで生きる』『 フランス人は年をとるほど美しい』(以上、大和書房)、『パリジェンヌ流 美しい人生の秘密』(宝島社)、『フランス人は「ママより女」』 (小学館)、『愛される男の自分革命』(徳間書店)『フランス式いつでもどこでも自分らしく』などがある。2015年、レジオン・ドヌール勲章を受章。

公式ホームページ:http://www.doratauzin.net/
Facebook:https://www.facebook.com/dora.tauzin.official/

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