2021.07.10
1枚15万円! 「葉っぱアート」に心癒されてみませんか?
小さな葉っぱに緻密な切り絵を施す、‟リト@葉っぱ切り絵”というアーティストをご存知だろうか? サラリーマン生活では怒られっぱなしの発達障害による偏った集中力やこだわりを活かすために選んだ道は、アート作品をSNSへ投稿し続けることだった。
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リト@葉っぱ切り絵(葉っぱ切り絵アーティスト)
展示されている作品はすべて、葉っぱでできたアート。小さなリアルの葉っぱ1枚1枚に、緻密で精巧な切り絵が施されている。リト@葉っぱ切り絵というアーティストの手によるものだ。驚くのは、彼がこの葉っぱ切り絵を始めたのは、2020年のことで、それ以前はサラリーマンだったということだ。なぜ会社勤めをやめてアートの道に入ったのか、なぜ「葉っぱ切り絵」だったのか、初の作品集『葉っぱ切り絵コレクション いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』を上梓したばかりのリトさんに語ってもらった。

怒られっぱなしの会社員だった
大学を出て就職したフードサービス関連の会社には7年間勤め、その後2回転職。けれどその間、上司にはずっと怒られっぱなしでした。自分では真面目に仕事をしているつもりでも、他の人とリズムが噛み合わないのです。

たしかに子どもの頃に母に「要領が悪いんだから」と言われたことはありましたが、学生の頃まではとくに目立った問題がなかったので、いったい自分に何が起きているんだろう、と途方に暮れるばかりでした。
同じように困っている人がいるのではないかと調べていて出合ったのが「ADHD(注意欠陥・多動症)」という言葉です。ADHDの特性と言われる項目をチェックしていくと、ほとんどが自分に当てはまる。
病院に行くとやはりADHDの診断。発達障害の診断を受けて感じたのは、ショックではなく、むしろ安堵でした。これでやっと怒られっぱなしの生活から脱出できる、と退職しました。

自分の「弱み」で勝負できる場所へ
自分自身がマイナスのスタートになってしまう場所では、プラスを生み出せないのは当然です。かといってもう30代。ここから新たなスキルを身につけて一人前になるのは時間がかかりすぎるし、資金もない。では、自分が最初から持っているもので勝負できる場所に、身を移せばいいのではないか。
自分自身がすでに持っているもの。それはコンプレックスです。ADHDの特性である「過剰な集中力」や「こだわりすぎる」という性質。
“普通”の会社員として生きていくにはデメリットでしかなったこの「弱み」を「強み」に変えられる場所で生きていこう。
そう考えて思い浮かんだのが、アートの道でした。「ひとつのことに集中すると、周りの声も聞こえなくなるくらい没頭しすぎてしまう」という性質は、会社員としては「弱み」でしたが、アート制作には「強み」として生かせるはずだ、という確信があったのです。
生活していかなければいけないけれど、お金も学歴も技術もコネもない。まったくゼロの僕が、アートの道で仕事を見つける方法として選んだのはSNSへの投稿です。いわば就職活動です。「毎日1作品投稿する」と決めて、ボールペンイラストからスクラッチアート、粘土絵付けといろいろチャレンジしてみました。切り絵も、そんな試行錯誤のひとつでした。

ところが、「なかなか悪くない作品ができた」と思って投稿してみて気づいたのですが、切り絵世界は、レベルの高い作品が数限りなく溢れているレッドオーシャンでした。一生懸命時間をかけて制作しても、同じような作品が溢れているSNSではあっという間に埋もれて、まったく注目してもらえないのです。
「これだ!」葉っぱアートに出合った瞬間
「これだ!」と閃いた僕は、翌日には近所の公園で葉っぱを探し、なんとか完成させた葉っぱ切り絵作品第1号を投稿しました。

5月には、念願の作品集も出すことができ、ありがたいことに、多くの企業からのお仕事もいただけるようになりました。ようやく自分の「弱み」を「強み」に変えられる場所を見つけることができたのだと思います。
もちろん最初からうまくいっていたわけではありません。葉っぱ切り絵を始めた当初は、それほど反応がなく、「どうしてだろう」と日々模索していました。
自分が好きな恐竜や不思議な生き物、ウルトラマンといったキャラクターをモチーフにした作品を作ることが多かったのですが、今思い返せば裏には、その切り絵の細かい技術を称賛してもらいたい、という気持ちがあったのだと思います。

そこから、自分の技術を見てもらおうとするのではなく、見てくれる人が幸せな気持ちになれる作品を作ろう、と考えを転換したのです。それに、技術だったらこれから葉っぱ切り絵を始めて僕の上をいく人も出てくるかもしれない。それ以外のところで勝負しなければ、という思いもありました。

そのストーリーに「感動しました」「元気が出ました」「涙が出ました」というコメントがもらえるようになっていきました。これは、単に切り絵の技術を見てもらおう、と思っていたときにはなかった反応でした。
「才能」より「継続」
さらに、時間をかけるのは、じつは作品のタイトルつけです。できれば状況を説明してしまうタイトルではなく、見た人が、葉っぱの上の物語に想像を膨らませる余地を残したタイトルをつけたい。
なかなか思いつかなくて、2時間くらいかかる日もあります。ようやく思いついたタイトルをつけてSNSに投稿すると、深夜近くになってしまう日も。そして翌日になったらまた下絵描き……という繰り返しです。
何もないゼロだった僕が、今こうしてコンプレックスを「得意」に変えて仕事ができている理由。それは何よりも「才能」より「継続」なのだと思うのです。

リトさん
ADHDの中でも「多動」の性質がなかったため、大人になるまで自分が発達障害であることに気づかなかったという。(撮影:嶋田礼奈)
Instagram @lito_leafart
Twitter @lito_leafart
『葉っぱ切り絵コレクション いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』
★「1枚の葉っぱの上に広がる温かい物語に心癒される」と、世界各国のメディアが絶賛!
★「スッキリ」「ヒルナンデス」(日本テレビ)、「サンデー・ジャポン」「アッコにおまかせ」(TBS)など、TVで話題沸騰!
★個展では作品が即完売! 葉っぱ切り絵アーティスト初の作品集
★見て、読んで、幸せな気持ちになれる1冊
空に透かして撮影された葉っぱ切り絵。その精巧さに驚かされるのですが、それだけでなく、見る人の心を揺さぶり、想像力を喚起する物語が、小さな1枚の葉っぱの上に広がっている……。それが、リトさんの葉っぱ切り絵です。
ほぼ毎日SNSで作品を発表するたびに、リトさんのもとには「優しい世界に癒されます」「見るだけで幸せな気持ちになれます」「明日も頑張ろうという気持ちになります」など、多くのコメントが寄せられます。
落ち込んいるとき。心がモヤモヤするとき。さみしいとき。1枚1枚が絵本作品のような葉っぱ切り絵作品集は、ページをめくるたびに、そこに自分だけの物語を見つけられるはずです。
89作品収録。SNS投稿時はタイトルだけだった作品にもすべて、ストーリーを書き下ろし。
リト流・葉っぱ切り絵のメソッドも収録。
リト@葉っぱ切り絵著 講談社 1430円
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