• TOP
  • LIFESTYLE
  • 完璧な美人よりもアンバランスな顔の美人が、より魅力的な理由とは?

2017.11.16

完璧な美人よりもアンバランスな顔の美人が、より魅力的な理由とは?

CATEGORIES :
文/石田雅彦(横浜市立大学・共同研究員)

視線の揺らぎが美人の魅力を一層強いものにする

上に示したのは、いずれも世界的に有名な美人女優(&モデル)たちの顔。でも、その目をじっと見つめていると、どこか奇妙な気分になってきませんか。何か「視線の揺らぎ」といった感覚。それは気のせいではないかもしれません。マリリン・モンロー、エリザベス・テイラー、クラウディア・シファー、この3人が共通にもつ視線の揺らぎ、それは「斜視」によるものだと言われています。そしてその「斜視」こそが、彼女たちの魅力を一層強いものにしているとも言えるのです。
出典(By Ian Smith, CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=12761331
あるいは元祖スーパーモデルとして知られるシンディ・クロフォード。彼女は口もとのほくろによって大スターになったと言われています。顔のバランスを崩すほくろが、より彼女を魅力的に見せていたのです。
さらに、顔にちょっとした傷のある男性のほうが、女性にとって一夜限りの相手として魅力的に感じられる、という研究(※1)もあります。これは男性の顔の傷が何らかのメリットある情報を女性に送っているのではないかと考えられていますが、傷が危険を顧みない男性的な魅力の象徴のようなものになっているとも考えられます。

人間の審美眼は左右対称について他の生物と違う

ところで、私たちは2つの点が並んでいると無意識にそれを「目」と認識します。スマイリーフェイスのニコニコマークを思い浮かべるとよくわかりますが、この2つの点、産まれて初めて見たり見られたりする「母親」の目の記憶を認識しているのです。
エディトリアル表記:  / Shutterstock.com
しかし、この2つの点が、少しでも左右上下にズレていたり、左右非対称にどちらかが大きかったらどうでしょう。目とは思えないのではないでしょうか。
2つの点に対する認識に限らず、顔の対称性というのは重要です。人間に限らず、オス・メスで相手を選択する種の生物の多くは、異性を選ぶ時になるべく左右対称の相手を探します。
これは、対称性や全体のバランス、肌の色つやなどを基準にし、寄生虫などに冒されていない健康な繁殖相手を選ぶためだと言われています。病気などで絶滅してしまわないよう、種を存続させていくためにはそのような行動が必要なのです(※2)。その結果、私たち人間も、まずは全体のバランスに目を向け、男性は眉が太くガッシリと、女性は線が細く優しげにといった性的な特徴ある顔を好むようです(※3)。
ところが、左右の対称性について言えば、研究によって我々人間の好悪の感情がさまざまであることが知られています(※4)。例えば下の顔画像をご覧ください。左はオリジナルの顔、右は顔半分をそのままコピーして水平反転し、貼り付けた顔ですが、どこか不気味に見えるのではないでしょうか。
左がオリジナルの顔、右が調整した左右対称の顔。不自然ではないように調整すれば「コピペ対称顔」の違和感はない。出典(Via:Gillan Rhodes, "The Evolutionary Psychology of Facial Beauty." Annual Review of Psychology, 2006)
実は、私たち人間は、左右対称についての審美眼がほかの生物と少し違うのです。古代ギリシャ人は美的観点から彫刻など多くの美術品を作りましたが、そこには非対称性(アシンメトリー、左右対称ではない)の要素を加味していました(※5)。
これはなぜでしょうか。冒頭で紹介した女優の視線(斜視)や傷のある男性のように、ある種の「揺らぎ」の要素を無意識にもたせようとしたのかもしれませんし、ちょっとした傷や欠落がより作品の魅力を増すと考えていたのかもしれません。パルテノン神殿も微細にみれば、完全な左右対称ではないのです。
パルテノン神殿

人間が「左右非対称」に魅力を感じる理由は

例えば「モナリザの視線」はどこにいても追いかけてくるように感じます。それには平面の絵画なので鼻や頬といった立体的な遮蔽物がないという理由もあれば、見る角度が変わっても同じ物と認識できる人間の「形の恒常性」が理由とも言われています。しかし、レオナルド・ダ・ヴィンチがアンバランスの効果を意図し、モナリザの表情や顔自体を非対称に描いたから、という説もあるのです。実際、微笑みを浮かべているモナリザの口元は左右対称ではなく、どこか謎めいたように片方の唇の端が微妙に上がっています。
私たちの顔も実際には微妙に左右非対称です。完全に左右対称の人はほとんどいません。また、モナリザのように何か表情を浮かべても、それは左右対称に表現されることはないのです。
物事には光と影、陰影があります。自然は常に揺らぎ、不均衡に移ろい、元素やDNAから天体や銀河にいたるまで、自然界はほとんどが左右非対称です。左右が違うのは、ごく自然なことなのです。私たちがアンバランスにこそ美や魅力を感じてしまうのは、そのせいなのかもしれません。
※1:Robert P.BurrissaHannah M.RowlandaAnthony C.Little, "Facial scarring enhances men’s attractiveness for short-term relationships." Personality and Individual Differences, Vol.46, Issue2, 213-217, 2009
※2:Randy Thornhill, Steven W. Gangestad, "Human Facial Beauty." Human Nature, Vol.4, Issue3, 237-269, 1993
※3:Masashi Komori, Satoru Kawamura, Shigekazu Ishihara, "Effect of averageness and sexual dimorphism on the judgment of facial attractiveness." Vision Research, Vol.49, Issue8, 862-869, 2009
※4:Gillan Rhodes, "The Evolutionary Psychology of Facial Beauty." Annual Review of Psychology, Vol.57, 199-226, 2006
※5:Antonio Fuente del Campo, "Beauty: Who Sets the Standards?" Aesthetic Surgery Journal, Vol.22, Issue3, 267-268, 2022

●石田雅彦

フリーランスライター。医科学修士(MMSc)、横浜市立大学・共同研究員。自然科学から社会科学まで多様な著述活動を行う。著書に『遺伝子・ゲノム最前線』(扶桑社、監修:和田昭允)、『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』(ポプラ社)、『おんな城主 井伊直虎』(アスペクト)など多数がある。

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

LEON.JPの最新ニュースをお届けします。

RECOMMEND FOR YOUおすすめの記事

    RELATED ARTICLES関連記事

    SERIES:連載

    READ MORE

    買えるLEON

      SPECIAL