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2021.02.13

【ネット炎上】実は少数の意見、そして拡散しているのはマスメディアだと知るべし

社会的地位を失うなど【ネット炎上】の影響は絶大だ。だからこそ「炎上1件当たりに書き込んでいるネットユーザーはおよそ0.0015%」、「炎上を知る経路として最も多かったのはテレビのバラエティ番組(58.8%)」という分析結果を知っておくべきだろう。

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文/山口真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授)

記事提供/東洋経済ONLINE
ネットの普及は、誰でもオープンな場で情報発信することを可能とし、1億総メディア時代をもたらした。今では誰もがSNSでコミュニケーションをしている時代だ。私が以前Googleと実施した研究では、ネット上のクチコミには年間1.5兆円の消費押し上げ効果があることがわかった。1億総メディア時代は経済・ビジネスのあり方も大きく変えてきている。

しかしそれに伴い、「ネット炎上」という現象が頻発するようになった。ネット炎上とは、ある人や企業の行為・発言・書き込みに対して、ネット上で多数の批判や誹謗中傷が行われることを指す。デジタル・クライシス総合研究所の調査では、2020年の炎上発生件数は、年間およそ1400件だったようだ。1年は365日しかないので、1日当たり3回以上、どこかで誰かが燃えているのが現実といえる。
写真提供/shutterstock

「現役の炎上参加者」はネットユーザの0.5%

炎上は企業の株価にも影響を与える。慶應義塾大学教授の田中辰雄氏の研究によると、炎上の平均的な株価への影響は、マイナス0.7%であった。0.7%というと大きくなさそうであるが、航空機事故や化学爆発による株価の下落幅と同程度である。さらに大規模な炎上に限ると、5%程度の下落が見られたという。

炎上の影響はそれだけではない。ネット上で大量の誹謗中傷を浴びせかけられ、亡くなってしまった著名人は世界中に存在する。日本でも、2020年だけでそのような事件が複数回発生した。一般人が炎上することもあり、進学・結婚が取り消しになった人もいる。

拙著『正義を振りかざす「極端な人」の正体』は、炎上に参加する人たちの実態に、豊富な統計データ分析と事例分析で迫っている本である。

ひとたび炎上が起こると、社会全体がその人や企業を攻撃しているように見える。SNSは誹謗中傷であふれ、攻撃されている側からすると、まるで世界中が敵になったように見えていることだろう。

しかし、2014年に約2万人を対象としたアンケート調査データを分析した筆者らの研究の結果は、驚くべき炎上の実態を示した。なんと、過去1年以内に1度でも炎上に書き込んだことのある人―つまり「現役の炎上参加者」―は、ネットユーザーのわずか0.5%(200人に1人)しかいないことがわかったのである。

さらにこれを炎上1件当たりに換算すると、炎上1件当たりにネットユーザーのおよそ0.0015%が書き込んでいる計算になる。0.0015%という数字はほとんど見たことがないと思うが、これは大体約7万人に1人くらいの割合だ。

これだけ頻繁に発生している炎上について、たった0.0015%しか書き込んでいないとは驚きだ。しかしこの結果は、2016年に対象者を約4万人に増やして調査した際も、ほとんど変わらなかった。そして、ツイッターのテキスト分析からもおよそ一致した結果が得られている。

この結果は意外に感じるかもしれないが、炎上に参加するような「極端な人」が少ないことは、実は有識者の間では前から知られていたことでもある。例えば、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)の管理人であったひろゆき氏は、「2ちゃんねる上のほとんどの炎上事件の実行犯は5人以内であり、たった1人しかいない場合もある」と述べている。

また、ジャーナリストの上杉隆氏によると、自身のブログが炎上して700以上のコメントがついた際にIPアドレスを確認したところ、コメントしていたのはたった4人であったようである。
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同じ人が何度も、執拗に書き込む

さらに、「書き込んでいるのはごく少数」というだけではない。実は、そのごく少数の中のさらにごく一部の「超極端な人」が、炎上の大部分を占めているという事実もある。

例えば、サイエンスライターの片瀬久美子さんが、森友・加計問題に関する公文書開示について政府の説明責任についてTwitterで言及したところ、「娘に淫売を強要」などと根も葉もないデマで長期間にわたり中傷された事件がある。この事件で書き込んでいたとして裁判となった人物は、数百のアカウントを作成し、そのアカウントを駆使して次から次へと片瀬さんへの誹謗中傷やデマ流布を繰り返していたのだ。

2020年5月に亡くなったプロレスラーの木村花さんの事件でも、NHKと共にツイートを分析した結果、木村さんに10回以上リプライを送っている人は、投稿者の中で1.3%だったのに対し、投稿数では14.7%を占めていた。

このような現象は、かなり一般的に起こっている。私は、先述の2016年の調査の中で、現役の炎上参加者に対し、過去最も書き込みをした炎上案件でどれくらい書き込んだかを問うたことがある。

その結果、多くの炎上参加者は、1~3回という少数であった。イラッとして言及したのであろう。その一方で、ごく一部の人(3%)は、50回以上投稿していたのである。この回答結果について、グラフにしたものが図1だ。 
図1では、左から順にその投稿回数が多かった人を並べており、縦軸は最大投稿回数を、横軸はサンプルの中の割合を示している。例えば、炎上参加者の10%くらいの人は、炎上1件に対して最大10回以上投稿したことがあるということを示している。

これを見ると、一部50回以上投稿しているような人もいるものの、ほとんどが1回、2回などの投稿となっていることがわかる。気をつけていただきたいのは、これはあくまで「ごく少数の書き込んでいる人の中での分布」ということだ。実際には、書き込み回数0回の人が大量に存在する。

結局、ごくごく一部の大量に書き込んでいる人の意見が、あたかも社会の意見であるかのようにネット炎上では見えてしまっているのだ。
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マスメディアが炎上を拡散する

ただし、これをもって「炎上は些末な出来事」と考えるのは早計である。参加している人の数は少なくとも、炎上を知らない人はたった8%であり、10人に9人以上は炎上を知っていることが、先述の2014年調査からわかっている。そして、このようなごく少数の人の批判や誹謗中傷が世間に広く認知される要因の1つに、メディアの存在がある。

炎上のメカニズムを簡単に説明すると、最初SNS上で批判的な拡散が起こる。火種の発生だ。もちろんそこで拡散されていくが、多くの場合SNS上のシェアだけでは広がりは限定的である。しかしそれがネットメディアで取り上げられ、さらにマスメディアで取り上げられると、非常に大きな炎上となっていく。

実は、炎上とはネットの現象ではあるが、マスメディアが最も強い拡散機能を持っていることがわかっている。帝京大学准教授の吉野ヒロ子氏による分析の結果、炎上を知る経路として最も多かったのはテレビのバラエティ番組(58.8%)だったのだ。一方、ツイッターは23.2%にとどまっていた。

つまり、炎上とはネット上の現象にもかかわらず、実際にはマスメディアが最も広く拡散させて、炎上に参加するような一部の「極端な人」に情報を届けているということがいえる。さらに、マスメディアは、炎上したことを取り上げてより厳しく追及する役割も果たしている。

加えて、最近では「メディアが炎上を作り上げている」とも指摘される。どういうことか。国民的アニメであるサザエさんの事例を見てみよう。

2020年4月の『サザエさん』放送において、磯野家がGWにレジャーに行く計画を立てたり、動物園を訪れたりしたという内容が流れた。これに対し、「デイリースポーツ」が報じたところによると、「コロナで自粛の中、GWに出掛ける話なんてサザエさん不謹慎過ぎ!」などのツイートがされ、炎上したというのだ。

そしてこれが報じられると、今度は批判に対する批判の投稿が相次いだ。「フィクションまで自粛しろというのか」「世の中息苦しい」などの声が多く投稿され、著名人も苦言を呈した。

「不謹慎」と批判していたのは11人

しかし、東京大学准教授の鳥海不二夫氏がツイートを分析した結果、なんと、サザエさんが放送されてから最初にメディアで取り上げられるまでの数時間で、「不謹慎だ」と言って批判していた人は「たった11人」しかいなかったらしい。

たった11人の批判で炎上が発生し、さらにその炎上に対する批判がこれほど盛り上がるというのは、不可解な話だ。しかし現実にツイート数が急増していたことは、「ヤフー!リアルタイム検索」で見たツイート数推移からでも明らかである(図2)。
これを見ると、『サザエさん』放送時にはほとんど投稿されていなかった「サザエ 不謹慎」を含むツイートが、最初にメディアで報道されてから急増し、さらにその後インフルエンサーがそれらの記事に言及したことで、瞬く間に広まっていったことがわかる。

また、新型コロナウイルスの不安真っただ中の2020年4月7日、「#東京脱出」というハッシュタグが拡散されていると朝日新聞が報じたこともあった。当時は東京都で感染者が急増している時期で、緊急事態宣言が出されて外出が難しくなる東京を離れ、地方に脱出しようとする人がこのようなハッシュタグを拡散しているというわけだ。

しかしこれも鳥海氏が分析した結果、そのようなハッシュタグは、朝日新聞公式ツイッターが記事配信を通知するまでにたった28件しか投稿・拡散されていなかったのである。その一方で、記事配信以降たった1日で、なんと1万5000件以上の投稿・拡散があった。
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炎上の実態を知り、引いて見る

これらはマスメディアの事例であるが、「非実在型炎上」を積極的に生み出している新興のネットメディアも少なくない。そのようなメディアは、炎上でもない現象に「炎上」というタイトルをつけて記事を配信し、あおってPV数を稼ぐことで収入を得ているのである。

ネット炎上に参加する一部の「極端な人」が、近年ネットで大きな力をふるうようになったのは事実だ。しかし、このように時としてメディアが作り上げたような、幻想の「極端な人」による騒動も存在するのである。

繰り返しになるが、炎上の頻発する不寛容な社会は、一部の極端な人によって生み出されている。Twitter社の調査によると、無作為に抽出したツイート1000件の中で、ルール違反に当たる投稿はたったの1件だったようだ。大多数の人は便利なSNSを有効活用しているのである。

これ以上の社会の不寛容化を止めるために私たちができるのは、まず知ることだ。炎上に参加している人は実は全体から見ると少数であることを知る。さらに、ネットには「言いたいから言う」という能動的発信しかないため、極端で攻撃的な意見ほど投稿されやすいことがわかっている。

こういったことを知っておけば、自分が攻撃を受けてもいくばくか気持ちが楽になるだろう。そして何より、攻撃を受けている人がいたからといって、自分もそこに乗っかって攻撃をするのはやめよう。それは「世界中の人が攻撃している」のではなく、切り取られたごく一部の世界で、一部の人が攻撃しているだけなのだから。

『正義を振りかざす「極端な人」の正体』

SNSでの誹謗中傷、不謹慎狩り、自粛警察、悪質クレーマー…奴らは何者か? 「炎上はマスメディアが生み出す」「SNSは世論を反映しない」「炎上加担者はごく少数」など、データ分析から導き出された意外な真実。

著者/山口真一 光文社新書 本体760円+税
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334044954

当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です

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