2020.11.14

北野武は、「ユーチューバーの元祖」だった!?

一点突破のスペシャリストよりも、さまざまなことに対応できるジェネラリストのほうがユーチューバーに向いていると説く、関口ケント氏。ビートたけし=北野武さんが、ユーチューバーの元祖である理由とは?

CREDIT :

文/関口ケント(YouTubeアナリスト)

記事提供/東洋経済ONLINE
テレビ、映画、小説など多方面で活躍する北野武を「元祖ユーチューバー」と呼んでも過言ではない理由とは? 神田伯山、関暁夫、島田秀平などさまざまな人気タレントのYouTubeチャンネルの運営を担う関口ケント氏による『メディアシフト YouTubeが「テレビ」になる日』より一部抜粋・再構成してお届けする。
写真提供/週刊女性
テレビの寿命は、あと10年。

ユーチューブの世界を知れば知るほど、そして、もともとテレビ業界出身だからこそ、この考えは確信に変わってきています。なぜそう考えたかの理由を記す前に、まずはテレビとユーチューブの違いを今一度整理してみます。

芸能ニュースで、タレントや俳優のユーチューブチャンネル開設が報じられることが当たり前になってきた昨今。逆に、人気ユーチューバーがテレビのバラエティー番組やドラマに出演、というケースも増えています。ただ、どちらにも共通するのは、テレビでは人気なのにユーチューブは全然跳ねない……。ユーチューブでは人気なのにテレビではスベりがち……と、意外とハマらないケースが多いこと。それって、お互いが持ち味の生かし方、生かしどころをわかっていない、というのが大きな原因です。
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北野武こそ「ユーチューバーの元祖」である

芸能人とユーチューバーの脳みそで決定的に違うこと。それは「芸能人=出演者」と「ユーチューバー=出演者でもある」という点です。芸能人は、ドラマでもバラエティーでも、求められた〈自分のパート〉をどう表現するか、で捉えている人が多い。

でも、ユーチューバーの場合、〈監督〉〈ディレクター〉〈編成〉〈カメラマン〉〈音声〉……全部をやりながら、もちろん〈出演者〉も務め、どう見られているか、という部分にまで気を配る必要がある。つまり、ユーチューバーは一点突破のスペシャリストであることよりも、さまざまなことに対応できるジェネラリストのほうが向いている、と言い換えられます。

逆に考えれば、この「ジェネラリスト気質」がある芸能人、または一出演者であることに満足できない芸能人なら、ユーチューブの世界で跳ねる可能性は大きい。

さあそして、あまたいる芸能人でその代表格と言えば、ビートたけし=北野武さん。僕のなかで、ユーチューバーの元祖は、北野武さんなのです。

お笑いから映画の世界へと移り、はじめは一出演者だったけど、自分でつくることに挑戦したことがまずユーチューバー的。そして、監督、ディレクター、編集、カメラマン、音声……すべてのパートで自分の持ち味を出そうと欲ばり、一定の評価を得てまた新しいものに向かう。

芸人というレバレッジを利かせて映画をつくり、そこでもちゃんと自分らしいワガママな作品を発表するから映画人としても認められ、どんどん自分の新たな一面を増やしていく。特定分野のスペシャリストであることにこだわっていないのです。

一点突破でとがっている人はいずれ飽きられて終わりを迎えてしまうので、多方面なもの・ことに自分の興味の対象を広げられることがすごく大事になります。実際、テレビタレントや映画制作以外にも、絵を描いたり小説を書いたり、いろいろなことに挑戦して、それぞれで結果を出しています。
▲ 出典:『メディアシフト YouTubeが「テレビ」になる日』 
北野武さんってきっと、“面白い”で終わりたいんじゃなくて、自分の世界をつくりたい人。それはまさにユーチューバー的!

また、自分で自分のやることに責任を持つ、という点もユーチューバー的。実際、北野武さんはさまざまなことを自分で背負いますよね。たけし軍団を立ち上げ、独立事務所をつくり、自分の信念を貫き通すためならテレビに出られなくなってもしょうがない、と講談社『フライデー』編集部を襲撃したり……。
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炎上をプラスに変えていける強さ

さらに言えば、炎上もすべてプラスに変えていけるのもユーチューバー的。今の若い子たちがやっている「炎上系ユーチューブ」は、みんなたけしさんが過去に手がけた「お笑いウルトラクイズ」や「天才・たけしの元気が出るテレビ」「スーパージョッキー」「風雲! たけし城」といったお笑い番組がネタの原型なのです。クリエイティブで自分の城を築き上げ、純粋にクリエイティブと向き合って、納得できないことはやらない。

北野武さんがこれまでやってきたこと、そして生き様を振り返ると、今の若いユーチューバーに対して世代間ギャップがあって理解しづらいミドル層の方でも、グッと親近感が湧いてくることでしょう。

“元祖ユーチューバー”北野武さんが芸能界で天下を取ったように、今やトップ・ユーチューバーにもなると社会的な認知度も大きくなってきています。ユーチューバーでトップになることが目標ではなく、ユーチューバーとして手にした知名度を生かしてアーティストになったり、実業家になったりと、いろんな人が出てきている。

例えば、DJグループの「レペゼン地球」(チャンネル登録者数247万人)はユーチューブがきっかけで有名になり、今ではアーティストとしてZeppや幕張メッセを埋めるほどの人気ぶり。

また、テキ屋のくじを買い占めて当たりが出るか、といった体当たり企画で人気を呼んだヒカル君(チャンネル登録者数419万人)は、自分のブランドを立ち上げたり、宮迫博之さんのユーチューブチャンネルのプロデュースを始めたりと、多方面で活躍しています。

ユーチューバーにはいろいろと問題を起こす人もいるので、年配の方には「なんだ、最近の若いヤツらは」と思われがちですが、若い子たちの支持をバックボーンにしつつ、ユーチューブの世界にとどまる必要だってないのです。

かつてユーチューブは、スマホかパソコンで見るイメージのメディアでした。しかし今では、家のリビングの大画面で堂々と家族で見ている。最近のテレビのリモコンには、テレビのチャンネルと同列で、ユーチューブのボタンがついてくる時代。
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「1日5時間」ユーチューブを見る子どもたち

ユーチューバーという言葉が生まれて7、8年。ビジネスマインドを持ったユーチューバーも出てきているので、これからオールジャンルでいろんなことができる逸材がますます増えていくはずです。だからこそ、若い子たちは次々とユーチューバーに憧れ、そしてユーチューブに夢中になります。僕には今、8歳、5歳、2歳の3人の子どもがいますが、みんな家でテレビは1秒も見ていません。でも、ユーチューブはそれぞれ1日5時間近く見ている。

この状況、わが家が特別なわけではなく、こうした「テレビをまったく見ない層」は年々増加の一途です。そもそも、家にテレビがないのが若い世代では当たり前だったりします。

今の時代の子どもはやることが多くて忙しいから、自分の自由にできる時間に対してシビア。限られた時間で何をするか?となったら、自分の好きなものだけに没頭したい。

その意味でもユーチューブは最適なツールです。なぜなら、個々の視聴者が過去に見たものを分析して、次に見るべきものをオススメしてくれるわけですから。

『メディアシフト YouTubeが「テレビ」になる日』

プロデュースした「神田伯山ティービィー」がYouTubeチャンネルとして史上初めてギャラクシー賞を受賞した関口ケント氏。
テレビのADからスタートし、YouTubeチャンネルの制作で名を上げた業界注目のクリエイターが、「視聴メディア」の現状と未来を描きます。
レガシーメディアとYouTubeの関係はこれからどうなっていくのか? まさに時代を変えようとしている張本人による、広告業界も含めたメディア業界の変革・未来予想図です。
著者/関口ケント 宝島社刊 本体1500円+税
HP/tkj.jp/book/?cd=TD008985

当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です
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