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2020.09.13

【vol.08】人生初の着物を仕立てる/後編〜着物完成・着付け〜

街で着物を着ていると女性から“瞳のシャワー”を浴びるんです

いい大人になってお付き合いの幅も広がると、意外と和の素養が試される機会が多くなるものです。モテる男には和のたしなみも大切だと、最近ひしひし感じることが多いという小誌・石井編集長(46歳)が、最高峰の和文化体験を提供する「和塾」田中康嗣代表のもと、モテる旦那を目指す連載です。

CREDIT :

写真/トヨダリョウ 文/井上真規子

初めての着物を仕立てるというミッションのもと、「銀座もとじ」さんのご協力で遂行されてきた今回の企画、最終回はついに仕上がった着物を石井編集長がドヤ感たっぷりにお披露目。これまでご案内いただいた二代目の泉二啓太さんに加え、今回は泉二弘明社長にもお出ましいただき、男の粋な着付けと、モテる所作を伝授していただきました。着物が楽しくなる、目うろこテク満載のインタビューは必読ですよ!

待ちに待った、仕立てが完成!

前回の仮縫いから数週間を経て、「銀座もとじ」さんより、石井編集長の着物が仕上がったという連絡をいただき、三度、師匠の田中さんと銀座のお店を訪れました。

石井「ついに、仕立てた着物が上がってきたのですねっ!?」

啓太「はい。お待たせしました」

田中「石井さん、とうとうこの日が来たね! 」

石井「じゃあ、さっそく見せていただけますか」

啓太「はい、こちらになります。石井さんが気に入った網代柄の角帯も合わせてご用意してます!」
田中「わ~、いいじゃない! 着るのが楽しみだね」

石井「はいっ。これ、今日持って帰れるんですか?」

啓太「もちろんです」

田中「そういえば、家に着物箪笥(たんす)ってあるの?」

石井「も、もち、ないっす……」

田中「僕は着物ハンガーで、洋服と一緒にクローゼットにかけてます。着物はかかとまであるから、高さが必要なんだけど。洋服選びと同じ感覚で着物を手に取れるようになるのですごくいいです。箪笥に仕舞いこむと、結局着なくなっちゃう」
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石井「着物をワードローブの一つに入れておくってことですね。僕は、年間3回くらいはタキシードを着る機会があるんですけど、その時に着物をチョイスしようと考えてました」

田中「それはいいね! どんどん着てください。特別な一着になると“タンスの肥やし”になっちゃうから」

啓太「着物を畳む手間や、たとう紙(着物を包むための紙)を開ける手間も面倒だったりしますからね。それに着た後は、必ず汗を乾かすために着物ハンガーで干していただきたいので、そのままかけておけば楽ですね」

石井「なるほど」

啓太「袷(あわせ/裏地のある着物)だとヨレの原因になったりしますが、単衣(ひとえ/裏地のない着物)なら大丈夫です」

石井「着物ハンガーは、必須ですね。あと単衣は、秋口ぐらいまで着ていいんでしたっけ?」

啓太「暑がりの方だと、一年中単衣を着たいという方もいらっしゃいますよ」

【ポイント】

■単衣は通常6月~9月用だが暑いと思えば一年中着ても悪くはない

田中「あとは着付け。もとじさんで買うと、着付けもしてくれるんですよね?」

啓太「はい。いつでもやりますし、今日もお教えいたします」

石井「マジですか!! お願いしたいです。早く着たい!!」
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というわけで、着付けスタート!

啓太「まず、肌着と足袋をつけていただいて」
啓太「まず、肌着と足袋をつけていただいて」
石井「おりゃ〜!」
啓太「肌着を着たら次にもう一枚、着物用の下着、長襦袢(ながじゅばん)を着ていただきます。今回編集長は腰までの半襦袢ですね。まず両袖を持って両腕を左右にピンと張り、背中心(後ろ身頃の中央の縫い目)を合わせます。そして左右の衿先を前に持っていきます」
啓太「高さを揃えたら、下前(右)の衿先を左の腰骨に、上前(左)の衿先を右の腰骨に当てて腰紐を結びます」
田中「腰紐の巻く位置は、腰骨です。お腹を下から支えるような感じで」
啓太「長着も襦袢と同じ要領で着ていきます。両手でピンと左右に袖を張ってから左右の衿先を前で合わせて、上前、下前を合わせ、その上から腰に腰紐を巻きます」
田中「男の着物の重心はウエストじゃなくて、全部腰!」
石井「ふむふむ。腰で着るんですね」
田中「じゃあ、次は帯ですね」
啓太「角帯の締め方はいくつかありますが、今日は一番オーソドクスな貝の口で。慣れたら結び目を見ないで締めます(後ろ結び)が、難しいので前で見ながら締めて後ろへ回しても(前結び)OKです」

田中「後ろ結びができるとカッコいいよね。せっかくだから今日は後ろで習ったら?」

石井「押忍っ!」
※貝の口とは帯を結んだ折り目が二枚貝の口のように見えることからの呼称で、別名を男結びと言う。
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啓太「まず帯を締める前に腰紐で長着を留めておきます」
啓太「次に帯を端から30cmぐらい半分に折って、左の腰にあてます」
啓太「3周ほど腰骨に巻いて後ろで一回結びます」
啓太「そして、半分に折った「手」と余った右端をもう一回結んで完成です」
田中「結び目は、左と右が1対2ぐらいがバランスがいいです」
石井「これは難しいですっ(汗)!」

田中「まぁ、初めは仕方ないよ。やってるうちに段々うまくなるから(笑)」
啓太「帯をカッコ良く締めるには、前下がり後ろ上がり(横から見てお腹側は低く、背中側は高く)で締めるのがポイントです。仕上げに前帯の上に親指を入れて、ぐっと下げるとしっくりきます。あとは、前後のシワを脇にしごいて綺麗に伸ばすのも忘れずに」

田中「帯の前は上端がヘソにかからないようにするくらい(帯下が足の付け根に当たるくらい)がちょうどいい。帯にお腹を乗せるような感じです」

石井「なるほど」
啓太「この段階で股割りをしておくと、歩きやすくなります」

石井「おりゃおりゃ!」
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啓太「最後に羽織を羽織って、羽織紐をつけたら着付け完了です。羽織紐は直付けが粋ですね」
田中「羽織紐も房を上にしてカッコ良くね」

ついに着付けが完成!!

【ポイント】

■男の着物は、腰で着る
■肌着・足袋→襦袢→着物→帯の順で身につける
■帯は前下がり、後ろ上がりに締めるのが鉄則

着物を着ると、とにかくモテる!?

そこに、泉二弘明社長が登場!

石井「社長、来てくださったんですね!」

弘明社長「石井編集長、こんにちは!  着物の仕上がりはいかがでしょう?」

石井「とても気に入っています!  仮縫で細かく調整してもらって、着心地もすごくいいです」
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弘明社長「男性は胸が厚い人、お腹が出てる人、肩が盛り上がってる人など、体型が一人一人違うから同じ身長でも身丈が全然違ってくるんです。だから格好良く着こなしてもらうには、仮縫が必須なんです。例えば、帯から出る上前の衿先が長すぎたら野暮だし、短すぎると着崩れの原因になる。7〜8cmくらいがベストですが、そのバランスが大切ですよね」

石井「仮縫って、洋服業界でいうオーダーメイドですよね」
弘明社長「着物の業界では今まで仮縫しないのが常識でした。だから初めは、仕立屋さんの抵抗もありましたけどね。今の時代に着物を着る人って、本当にお洒落が好きな人なんです。だから、サイズはとても大切。それに着物は50万、100万するのに採寸で胴まわりと身長、手の長さだけ計って仕立てるって、おかしいでしょと」

石井「本当にそうですよね。洋服だったらオーダーメイドの金額ですね。それにしても、社長の着物のこなしはさすが。堂に入ったカッコ良さがありますね」
田中「やっぱり普段から着てらっしゃるから、それが所作ににじみ出てますよ。特に羽織のこなしはポイントです。羽裏をさり気なく見せつつ、カッコ良く脱ぐのが粋っていう」
弘明社長「脱ぎ方は自由だけど、私は腕を左右に伸ばして袖口を引っ張り、肩を落として脱いでます。羽裏もさり気なく見えて粋ですよね(笑)」
弘明社長「あと、座る時も衿が浮かないように裾をさばいて座るといいですよ」
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石井「こうっすか?(ドヤ!)」

弘明社長「慣れるまでは、失敗もあると思います(笑)。袂がお皿に浸かってしまったり、ドアノブに袖口が引っかかったり。私は着物の前に浴衣で慣らしてました。慣れてくると自然と所作が出ますし、何より体になじんで楽に感じるようになります」

田中「小津安二郎の映画とか見ると、お父さんは家に帰ると、スーツから着物に着替えるんですよ。今と逆でしょ。昔は着物ってリラックスウエアだった」
▲着崩れた時の対処法も弘明社長から伝授。対処法を知っているだけで、着姿にも自信がつく。
弘明社長「みんなそうでしたよね。着物を着ると帯が腰を支えてくれるから姿勢も良くなります。最近はコロナの影響もあり、2カ月くらい着物を着る機会が減って腰が痛くなりました。コルセットがわりなんでしょうね」

田中「着物は、やっぱり姿勢よく堂々と着こなすのがカッコいいよね」
▲前帯の上に親指を入れて、ぐっと下げると帯が前下がり後ろ上がりになる。
弘明社長「着物は帯の位置がすべてなんです。帯を前下がり、後ろ上がりで締めれば姿勢が自然と良くなってきます。そして股割りをして、堂々と歩くこと。着物を着ていると瞳のシャワーを浴びます。女性に『素敵ですね』と声をかけられることもあります。着物だからこそですね」

田中「僕なんか逆に迫力出すぎちゃってるせいか、怖がって誰も声かけてこないよ(笑)。道は空くけどね」

石井「田中さんは任侠のこなし目指してるから(笑)。瞳のシャワー!! ますます着物が着たくなってきました!!」

田中康嗣

「和塾」代表理事。大手広告代理店のコピーライターとして、数々の広告やブランディングに携わった後、和の魅力に目覚め、2004年にNPO法人「和塾」を設立。日本の伝統文化や芸術の発展的継承に寄与する様々な事業を行う。

和塾

豊穣で洗練された日本文化の中から、選りすぐりの最高峰の和文化体験を提供するのが和塾です。人間国宝など最高峰の講師陣を迎えた多様なお稽古を開催、また京都での国宝見学や四国での歌舞伎観劇などの塾生ツアー等、様々な催事を会員限定で実施しています。和塾でのブランド体験は、いかなるジャンルであれ、その位置づけは、常に「正統・本流・本格・本物」であり、そのレベルは、「高級で特別で一流」の存在。常に貴重で他に類のない得難い体験を提供します。

和塾HP
URL/http://www.wajuku.jp/
■和塾が取り組む支援事業はこちら
URL/https://www.wajuku.jp/日本の芸術文化を支える社会貢献活動

銀座もとじ

1979年創業。銀座に染と織の女性の着物専門店「銀座もとじ和織・和染・ぎゃらりー泉」と、日本発の男性の着物専門店「銀座もとじ 男のきもの」を構え、フォーマルからカジュアルまで、全国の作家・産地とともに現代の街並みに合う装いを提案。世界初の純国産・オスだけの蚕品種「プラチナボーイ」の絹糸による一本の糸からこだわったものづくりも行っている。
■「銀座もとじ 男のきもの」
住所/東京都中央区銀座 3-8-15
TEL/03-5524-7472
HP/https://www.motoji.co.jp/
◆銀座もとじ公式Instagram  https://www.instagram.com/ginza_motoji/
◆銀座もとじ公式Facebook  https://www.facebook.com/ginza.motoji/

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