2025.06.29

【第2回】

“元祖肉食系女子”が結婚しない理由とは

生き方や恋愛の価値観が変わりつつある現在、大人の女性たちはどんな恋愛をしているのか、大人の女性たちは何を求めているのかを、奥渋谷のバー「BAR BOSSA」のマスターにして作家の林 伸次さんが、バーテン仕込みの絶妙な話術で深掘りします。

CREDIT :

取材/林 伸次 写真/トヨダリョウ 文/木村千鶴 編集/岸澤美希(LEON.JP)

生き方や恋愛の価値観が変わりつつある現在、恋愛も結婚もしなくたっていいこの時代に、大人の女性たちはどんな恋愛をしているのか。大人の女性たちは何を求めているのか。

本連載「林 伸次のLove la Bossa」では、奥渋谷のバー「BAR BOSSA」のマスターにして作家の林 伸次さんが、バーテン仕込みの絶妙な話術で大人の女性の本音を深掘りします。第2回のゲストは、前回(こちら)に続いて、温子さん(60代)です。

前編では、元祖肉食系女子で昔からメンクイなところ、そして、海外生活でのお金持ちなクェート人とのおとぎ話のようなエピソードを聞かせていただきました。後編でも豊富な恋愛経験を語っていただきます!
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彼を追いかけてモロッコまで行きました

── 前回、海外で暮らす中でいろんな人と付き合ったと話されていましたが、他にはどんな人がいましたか。

「人生で一番影響を受けた人は、カナダで出会ったモロッコ人男性でした。彼は国際連合に職を求めていたんですが叶わず、一旦帰国するというので、私も追いかけてモロッコまで行きました」

── わあ、情熱的!

「彼はとても面白い人だったから。私は結婚がしたいわけじゃなかったんだけど、彼には『あなた、私と一緒にいる気がある?』って聞きに行ったの。

とはいえ彼は経済的に独立しているような状態でもなかったし、一緒にいたいって返事もなかったから、これはダメだなと思ってモロッコを後にして、そのままイギリスに行ったり、オランダに行ったり、ちょっと風来坊のような生活を送ったんですよ。

その後はもう帰国することに決めていたので、最後にモロッコに行って彼にさよならの挨拶をしたんです」
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── ああ、もう日本に帰るから会うことはなくなると。

「そう、二度と会うことはないだろうと。そうしたら今度彼が私を追っかけて日本に来ました」

── ええ〜! そうか、温子さんを失いたくなかったんですね。彼ってどんな人だったんですか。

「彼はちょっとボヘミアンな人で、学歴は高いんですが、自分の満足がいかない仕事には就きたくないみたいな感じだったかな。彼とは35歳くらいまで付き合っていました。日本には2年いて、その後は彼とビジネスをして、日本とモロッコを行ったり来たりの生活で」

── あ、ビジネスパートナーになったんですね。どんなお仕事を?
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私の価値観で生きていたいから、結婚はしたくない

「輸入商社です。モロッコには素晴らしいものがたくさんあるので、それを日本に輸入する会社を始めました。

でもね、お金もないし、始めたばかりの頃は大変でしたよ。最初は銀行からお金を借りるのに父に保証人になってもらいましたが、それでも親から一円の援助も受けなかった。

どうにかうまくいって、その後借金することもなく、20年間健全な経営ができました」

── それは本当にすごいことです。その彼とは5年付き合って、なぜお別れすることに?

「なんだっけ、あ、彼が結婚しようって言い出したんだ。それで別れたんだった」

── 結婚するのは嫌なんですか?

「嫌です」
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── 理由を詳しく聞いてもいいですか。

「結婚すると相手の家族がもれなくついてくるでしょう? 個々の家族が嫌だって意味じゃなくて、家族性がついてくる。

私は私の価値観で生きていたい。人が多くなると単純にいろんな人の価値観を尊重しなければいけなくなるから、あれが嫌なの」

── 自由に動けなくなったり、何かの判断をする時に誰かの価値観に合わせなきゃいけなくなったりと、人生が制約されるのが嫌なんですね。

「そう、会いたい時に会いに行くならいいんだけど、正月だから会わなければならないとかね、そういうのも嫌」

── そうか。それはなんとなく理解できます。
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裸で抱き合ってるだけでお互いを信頼する感情が出てくる。その方がはるかに大きい意味がある

── 温子さんは海外の人とお付き合いされることが多かったとのことですが、彼らのどんなところがいいんですか。優しいとか、温かみがあるとか?

「別に優しくもないですよ。見た目が好きなんですよ(笑)」

── セックスはどうですか?

「あ〜、モロッコ人の彼には色々教わりましたね。でもテクニックなんて関係ないよ(笑)」

── そうなんですか? 男性はみんな気にしていて、セックスが上手くなりたいと思っているんです。

「かわいそうに、そんなこと気にしなくていいのにね。女性にとってはセックスって挿入じゃないもん。裸で抱き合ってるだけでお互いを信頼する感情が出てくるとか、そういうことの方がはるかに大きい意味があるから」

── じゃあ上手じゃなくても、一日中抱き合って布団の中にいるだけでもいいんですか?
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「それでも女の人を満足させることはできると、私は思いますよ。何秒持たないといけないとか、バカみたいなことにすごく一生懸命になってるけど、そんなことって大して重要じゃないと思う。

人間って高感度な生き物だから、そんなことよりも自分が大切にされていると思いたいとか、そういう感情の方が大きいはずです。

だから言葉も大事。愛してるとか、君のどんなところが素敵だと思ってるとか、そういうことも含めてね」

── 言葉で伝えるのが苦手な日本人男性は多いですよね。

「そうですよね。でも、何でもしてもらったらありがとうとか、感謝の言葉は伝えた方がいいですよ。あとは相手のこんなところが好きって常に伝える、それはした方がいいんじゃないかな」
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そいつはホテルのカウンターで請求書をツーッと滑らせてきました

── 温子さんはその後、日本人男性とお付き合いすることはなかったんですか。

「いえ、お付き合いした日本人男性がいましたが、彼は本当にお金がなかった。私のお誕生日に彼が『ホテルを予約したからそこで一緒にゆっくりしよう』って言ってくれたんですが、そこで誕生日を一日過ごすなんて絶対に嫌だと思うようなホテルだったんです。

なので、悪いと思ったんですが『素晴らしい庭園があるホテルに伝手があって、安く泊まれるからそこにしない?』と言って予約をし直して、代金の7割をあらかじめ支払い、当日は残りの金額だけ伝えてくださいと根回ししておいて」

── わあ〜優しい! 彼の顔を潰さずに、でも自分も嫌な思いをしない誕生日にしようと手を尽くしたんですね。

「そう、それなのにね、会計のカウンターでそいつは請求書を私にスーッと滑らせてきたんです。本当にあったまにきましたよ(笑)!」

── うわあ〜すごいな! ジゴロみたいな男ですね。どんな仕事をしている人だったんですか。
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「あのね、政治家だったの。でもバツイチで、養育費が大変だとか、付き合いでお金をすごく使うから、全然お金がないとか言ってましたね。私は自由になるお金があるわけだし、デート代は100%私が払ってました」

── そういう事情が……。お金については「まぁいいや」と思ってたんですか。

「お金がないこと自体を嫌だと思ったこともないけど、それにしても誕生日のことは最低だと思いませんか? 人生で1回ぐらい、私に見栄を張れよと思いました」

── なんだか本当に……お金がないって言えないまま当日を迎えちゃったんでしょうか。

「でも日常茶飯事ですから(笑)。彼が電話をしてきて『今日時間ができたからお誘いはしたいんだけど、お金がないんです』って言うんだもん。私が払うからいいわよって言うのがいつものこと。

友達には『あんた、ダメンズ好きだね〜』って言われるんですけど、そういうわけじゃないんだけどね。たまたまですよ(笑)」
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“自分の人生の主人公”として生きている

── そうか〜。すると逆に、本当に素敵だった男性、思い出に残っている人は?

「モロッコ人の彼ですね。彼からは学ぶことがたくさんありました。今でもすごく覚えているのは『人生はムービーだから。自分が主人公で、しかも自分を演じなきゃいけない。そういう風にして生きていかないと人生は無駄になる』という言葉です。それが私の中に大きく残っていて、特に年を取れば取るほど、その時に言われた言葉が響きました。

私、50歳の時に会社を売却して、母の介護に専念したんです。それが10年続いたのですが、その時はお洒落もしなければ外にもほとんど出なかった。

60歳を過ぎて母を見送って、これからはひとりで好きなように生きていくとなった時、彼の言葉が蘇りました。

年齢は一切関係ない。今は好きなようにお洒落して、お金も自分にかけて、毎月海外に行っているんですよ。次はエチオピアに行くつもり。

昨年エジプトに行った時に、コプト派キリスト教に興味を持ったので。エチオピアにはコプト派キリスト教の寺院がいっぱいあるんですよね。たくさん勉強してから実際に現地に行って、『はぁーっ、すごい』ってなるのが好き。

その好奇心が今一番強いんです。死ぬまでに全世界見ることをミッションにして、今は自分の人生の主人公として生きています」
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── ご自身の人生を生きていて、本当に素敵です。現在恋愛はしていますか。

「もう本当に恋愛には興味がなくなりました。そのミッションの方が大事。ヒョンビンみたいな人が目の前に現れたら、考えちゃうかもしれませんけど(笑)」

── やっぱりイケメンか〜(笑)。今日は貴重なお話をありがとうございました!

【林さんから〆のひと言】

アラブのお金持ちとの恋って、ドラマの中だけのお話だと思っていたら、現実にこんな風にあるんですね。
これを読んでくれている人たちも、元気が出るお話でした、ありがとうございました。

■ bar bossa(バール ボッサ)

ワインを中心に手料理のおいしいおつまみや季節のチーズなどを取り揃えたバー。 BGMは静かなボサノヴァ。
住所/東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
営業時間/月〜土 19:00〜24:00
定休日/日・祝
問い合わせ/TEL 03-5458-4185

● 林 伸次(はやし・しんじ)

1969年徳島県生まれ。早稲田大学中退。レコード屋、ブラジル料理屋、バー勤務を経て、1997年渋谷に「bar bossa」をオープン。2001年、ネット上でBOSSA RECORDSを開業。選曲CD、CDライナー執筆等多数。cakesで連載中のエッセイ「ワイングラスのむこう側」が大人気となりバーのマスターと作家の二足のわらじ生活に。小説『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる』(幻冬舎)、『世界はひとりの、一度きりの人生の集まりにすぎない。』(‎幻冬舎)、『恋愛は時代遅れだというけれど、それでも今日も悩みはつきない』(Pヴァイン)、最新刊は『30歳になってもお互い独身だったら結婚しようか』(三笠書房)。

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