2020.05.28

VOL.04「不倫という文字はない??」

慰謝料関係のふたり

人気放送作家にして戦略的PRコンサルタントでもある野呂エイシロウさんが、長い業界生活の中で見聞きし、あるいは遭遇した、恋するオヤジさんたちの愛すべき艶話をこっそり披露する連載です。

CREDIT :

文/野呂エイシロウ イラスト/早乙女道春、林田秀一

人気放送作家にして戦略的PRコンサルタントでもある野呂エイシロウさんが、世の恋するオヤジさんたちの愛すべき艶話をこっそり披露する連載。今回のテーマは……。

■Theme04「不倫という文字はない??」

「300万円貸してくれないか?」と男友達からメッセンジャーが届いた。「クルマでも買うのか?」と送ったら「慰謝料の支払いだ」と返ってきた。「離婚でもするのか?」と言ったら「いや、その逆」と彼。とりあえず話を聞いてからと会うことに。

「これを見てくれ」とL版よりもひと回り大きい写真を見せられた。そこには雪降るなか、ロマンティックにも傘もささずにキスをしている男女の写真が印刷されていた。思わず「いい写真じゃん」と言ったら「俺だ」とハイボールをすすりながら彼は言った。すかさず「なんかの自慢なのか?」と聞いたら「ほかにもある」と2枚の写真を茶封筒から取り出した。手をつないで雪道を歩くふたり。もう1枚はホテルに入っていくふたりの写真だ。「興信所の仕業だ」と彼はハイボールのおかわりを注文。

聞けば、写真の美人も既婚者で、その夫が興信所に依頼してこの写真が撮られたと言うのだ。それで妻と別れて慰謝料を払え!と内容証明が送られてきたと言うのだ。払わない場合は、そのまま裁判になると言う。となると、彼の妻に隠し通すことも不可能となってしまう。とりあえず100万円を彼に貸すことにした。

先日、彼と蕎麦屋で落ち合ったら、かたわらには例の写真に写っていた彼女がいた。あの一件から数年が経っている。聞けばカネは払ったが、関係は続いていると言う。「また痛い目にあうぞ」と警告をしたら「この間、偶然にも彼女の夫と仕事で会っちゃって名刺交換しちゃって……」と笑っていた。相変わらず懲りないらしい。いったいどんな顔をして慰謝料関係のふたりは名刺交換をしたのだろうか?

野呂エイシロウ

『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で放送作家デビュー。気さくな人柄と豊富な知識、そして巧みな話術にファンも多い。現在は戦略的PRコンサルタント業務など、多忙を極める。

2020年2月号より

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