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2023.05.05

肉食獣は肉食獣同士、相まみえよ。それが大人の恋のルールです

恋愛を巡る世間の状況が混沌とするなか、大人がすべき恋愛、してはいけない恋愛とは? カリスマ恋愛評論家として知られるおふたり、AV監督・作家の二村ヒトシさんと実業家でキャリア・婚活コンサルタントの川崎貴子さんが辛口対談です!

CREDIT :

文/木村千鶴 写真/椙本裕子 編集/森本 泉(LEON.JP)

LEON.JP 大人のいい恋 二村ヒトシ 川崎貴子
大人のいい恋について様々な視点から考えてきた今回の特集、マッチングアプリの隆盛や若者の恋愛離れ、過剰な不倫バッシングなど恋愛を巡る世間の状況は混沌としていますが、そんななかで、我々大人はどんな恋愛をすべきなのか? 逆に何をしてはいけないのか? 特集の締めとしてカリスマ恋愛評論家として知られ恋愛についての著作も多いおふたりに話を伺いました。AV監督・作家の二村ヒトシさんと実業家でキャリア・婚活コンサルタントの川崎貴子さんの辛口対談、開始です!
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恋愛は生身の人間対人間の土俵稽古。でも今は……

—— まず、大人の恋について語って頂く前に、最近の若者たちの恋愛事情について教えて頂けますか。川崎さんは女性のキャリアや結婚など、プライベートの支援を長く続けている中で若い人の恋愛相談にも乗っていらっしゃいます。二村さんもAV監督や作家としての活動の傍ら、若者たちと恋愛やセックスを語るオープンダイアローグ(対話イベント)をされています。

川崎貴子さん(以下、川崎) 婚活の相談に来る人たちや若者たちを見ていると、恋愛の仕方の基本を知らない人が増えていると感じます。男性がデートで行く最初の食事の店決めすら、提案もせずに女性に丸投げするという話もよく聞きます。草食系男子という言葉がありますが、今では動物ですらなくて、植物みたいになっている(笑)。

二村ヒトシさん(以下、二村) 僕もあちこちで若者の話を聞いているけれど、ただ単に最近の若いやつは根性がないなみたいな話ではなくて、どうやら構造的にそうなっている。原因として、親である大人たちの在り様も深く関係していると思っています。
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—— どういうことでしょう?

川崎 恋愛には3つの要素があると考えられているんですね。先ずは相手の存在を必要とすること。次に世話をしたくなる事、そして、夢中になって独占する事。このような気持ちの成分が発生すると言われているのですが、これって今、親が子供にやってしまっている事ですよね。

二村 親と子供の癒着によって恋愛に影響が出るのは、実は戦後ずっと起きていることで、特に夫婦関係の歪みからくるお母さんの寂しさが子供に向かうというのは、少なからずある話です。
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川崎 そして子供の方もそれを受け入れてしまう。親離れって、私達の頃は、自由を求めて子供の方から離れていったものですが、今の子はしません。その方が有利だから。家にいれば家事もやってもらえるし、SNS上では適度に自由にできる。今持ってるものを手放す、いわば損をするのが嫌なんですね。

二村 自分の時間やお金がなくなるならやめておこうという感覚が、恋愛にも及んでいるということです。

川崎 女性は女性で恋愛の練習をしないまま若い時代を過ぎ、なかったはずの結婚願望が40代目前で出てきて婚活を始めるも、男性との距離感が測れない人がいっぱいいる。男性は男性で恥をかきたくないし傷つきたくもない。恋愛は生身の人間対人間の土俵稽古みたいものです。ぶつかり合う前に練習不足のふたりが見合っているだけでは、恋愛は進まないですよね。
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恋愛はそれによって自分が変わることに意味がある 

—— 若い人たちは止むにやまれず恋愛に至るということはないのでしょうか。

二村 僕が話をしてる子たちは、彼氏・彼女がいる子も多いですよ。でも例えばすごく頭の良さそうな女の子が、ちょっとオタクっぽい一芸に秀でたような男の子と仲良くしていたりするケースが多い。これがイケメンでハイスペの男の子と付き合ってたら絶対病むんだろうなと思うんだけど、そっちにはいかない。傷つかないように恋愛している。

—— そもそも何のために恋愛するんだろうという話にもなりますが。

川崎 二村さんとはよく、恋愛によって承認欲求を満たしたり、時間をつぶしたりするのはもうダサいよね。恋愛はそれによって自分が変わるってことに意味があるんだよねって話をしていましたよね。
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二村 結局自分のことって自分ひとりじゃわからないんです。でも恋愛をすると、私ってこうされるのが嫌なんだとか、こうされるとうれしいんだ、自分の思い込みってこうだったんだとかがわかるわけです。

川崎 恋愛は相手がいる相対的なものだから。ケンカしてわかるとか、イライラしてわかるとか。感情が大きく動くのが恋愛ですからね。
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二村 それを知ることで自分が変わっていく。それで成長をするとは限らないんですよ。恋愛は成長するためにするものでもないし、そんなに成長するものでもないだろうって思っています。ただ言えるのは、いい方向に変われれば、ちょっと生きやすくはなります。人間って普通に生きているだけで生きづらいのが基本なので。対人関係も自分であるっていうことも、結構めんどくさいことじゃないですか。
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—— 大分哲学的な話になってきましたが(笑)。

二村 そもそも人間のテーマって自分を知ることだと思うんです。自分という謎を、死ぬまでに、まぁ解けないけれども解こうとする。そこでいろいろ気がつくんです。どんな生き方をしてきた人でも、金持ちでも貧乏人でも、健康な人も病気の人も、みんな公平に自分ってなんでこうなんだろうというのを考えて、最終的に自分のことが多少わかって死ねれば上出来。それが生きるということ。
人間には一人ひとり“心の穴”というものがあって、思い出したくないような子供の頃の経験が確実にその人の性格、自分ではコントロールできない感情や欲望のクセをつくっているわけです。心の穴はその人の魅力にも欠点にもなりうるんだけど、何よりもその人が自分でも気づかず心の底で求めているもの、欲望のみなもとのこと。だから、その穴の形を知ることが自分を知ることになるわけです。なんで俺はこういう時にイラっとしてしまうんだろう、なんで妻に怒鳴ってしまうんだろうとかね。

川崎 仕事などの人間関係でも自分に対する発見はありますが、それがもっと深堀され生々しくなるのが恋愛です。相手のことを大事だと思えば思うほど見たことない自分に出会ったりします。だから傷つくことにもなる。
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自分のインチキ自己肯定のために女性を利用してはいけない

二村 傷つかずに恋愛をやっていこうと思ったら、関係を深くせず、すぐに相手を取り替えればいい。そういう人が恋愛上手とか言われていますよね。でも、うまく傷つくことを回避している恋愛体質の女性とか、やり〇んの男性って、実は全然恋愛の大事なところ、面白いところを経験してないんです。

—— 恋愛工学的なものでパターン通りに女性を口説くとか、落とした人数を競うとか、そういうことですよね。

二村 そう、自分の心を相手に開かないで「こうすればセックスだけできて、傷つかないで済む」というパターンで女の子を口説いたところで、それで面白いのか? と。裸で向き合わない恋愛なんて何の意味もないんです。
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—— 傷つくことを恐れず対等に相手と向かい合う姿勢が大事だと。

二村 だから僕はLEONの読者たちが女性に好感を持ってもらうために、カッコいいオジサンを目指して、いわばモテオタクとなって一生懸命勉強するのってすごくいいと思う。男はオタクでいいんです。
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川崎 「モテオタク」の定義とは?(笑)

二村 LEONの読者はみんな女性が好きですよね。女好きの男性は女性を立ててくれるから、女性は気持ちいいと思います。でも女性に対して上から目線でモテようとするのは、モテオタクにあるまじき姿勢です。それはモテるためじゃなく、自分の承認欲求というか、自分のインチキな自己肯定のために女性を利用しているだけ。女性が好きじゃないなら恋愛なんてしなくてもいいんです。金を使って女性にモテようなんていうのは誰かを踏んづけた分だけ自分の背が高くなったと勘違いしているのと同じです。それじゃお互いに気持ちよくない!

川崎 そしてそれは女性にもバレますよね。自分勝手のひとりよがりですから、目的が既にコミュニケーションではない。ふたりで遊んでないから。例えば「若くて美人な女性何人と寝た」みたいな感覚って小学生のスタンプラリーみたいなものですよ。
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セックスとはいい大人が子供になって一緒に泥遊びすること 

二村 そんな関係でセックスしたって、せこい承認欲求が多少満たされるだけで、セックスそのものが気持ちいいわけがない。基本的にセックスというのは、対等なふたりが「この人の前だったら裸になっていい」と思える大人同士で子供になること。いい大人が一緒になって泥遊びをすることなんです。

川崎 ホント、いい大人がね(笑)。それでもやっぱり腕力的には女性の方が弱いから、相手と密室に入ってが安全かどうかの一つの指標として、相手がお金を持っているかとか、まともな服を着てまともな会社にいるかなどを見ているのはあると思います。

二村 何なら奥さんがいた方が、安全でまともな相手だという保証があると見なす場合もある。

川崎 セックスの相手かどうかは別として、既婚者には一定の安心感があるという女性は少なからずいます。誰かのお墨付きということでも。でもそれが金銭のやりとりを前提としたお付き合いとかになると……。
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—— 愛人とかパパ活とか?

二村 「私が裸になることに価値があるからそれなりの対価を」となると、男も女も歪んできます。家庭があるお金持ちにだってヤバくて危険なヤツはいっぱいいますからね。だからこそあまり年齢差のある恋愛は良くないんです。
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川崎 料理やお酒を楽しむのも一緒かもしれないですね。もちろんすべてが年齢では区切れないですけど、料理やワインの味の分かった人同士で食事に行く方が面白いと思えるのか、何も知らない女性相手にレクチャーして優越感に浸りたいのか。

二村 自分を知り、自分が変わっていくことを楽しむのが恋愛なんだから、大人は大人同士で恋愛するべきなんです。ロリコンがいけないのは、片方が子供だから。いい年をしたふたりが愚かになることがセックスなんだから、ものがわからない年齢の人に手を出したら絶対ダメ。それが倫理です。

川崎 私も肉食獣には肉食獣のルールがあると思うんですよ。ものを知らない新卒の女の子を口説くんじゃなくて、価値のわかる大人と向き合った方がいい。「すご~い! こんなお店初めてです~!」って言われるのに喜んでるようじゃ、大人の男としては相当ダサいです。そもそも初心者相手に「色々教えてあげるよ」なんて言ってたら自分の変化にはつながりませんから。
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二村 やっぱり対等な恋愛相手の方が、より自分の心の穴に気づきやすくしてくれる。お互いに傷つけ合うことになるかもしれないけれど、でも、そこで起きる傷つけ合いは自分の変化につながる本質的な作業なんだと思います。そういうことを知れる恋愛が、大人にとっての必要なあるべき恋愛なんじゃないかなと。

川崎 そういう恋愛を大人にはどんどんしてほしいですね。

※後編(こちら)に続きます。
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● 二村ヒトシ(にむら・ひとし)

1964年六本木生まれ。アダルトビデオ監督、作家。慶應義塾幼稚舎卒で慶應義塾大学文学部中退。監督作品として『美しい痴女の接吻とセックス』『ふたなりレズビアン』『女装美少年』など、ジェンダーを超える演出を数多く創案。現在は、 性や生のモヤモヤを考える読書会や哲学対話やオープン・ダイアローグを実践中。 著書に「すべてはモテるためである」、「なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか」(ともにイースト・プレス)、「淑女のはらわた  二村ヒトシ恋愛対談集」(洋泉社)、「深夜、生命線をそっと足す」(マガジンハウス)など。

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● 川崎貴子(かわさき・たかこ)

1972年生まれ。埼玉県出身。リントス株式会社代表取締役。「働く女性の成功、成長、幸せのサポート」を理念に、働く女性をサポートするためのコンサルティング業、教育事業、カウンセリングサービスを手掛ける。働く女性の結婚サイト「キャリ婚」の運営、婚活結社「魔女のサバト」主宰、婚活や仕事、家庭などの悩みに答えるメルマガ「川崎貴子のカウンセリングルーム」連載中。著書に「結婚したい女子のための ハンティング・レッスン」(総合法令出版)、「愛は技術  何度失敗しても女は幸せになれる」(KKベストセラーズ)、二村さんとの共著で「モテと非モテの境界線」(講談社)他多数。

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