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2019.11.03

堀江貴文「結婚という制度に縛られなくていい」

かつて、とある女性と夫婦関係にあった実業家の堀江貴文氏。当時の経験を振り返って、「結婚はしなくてもいい」と考えるようになったという。その理由を新刊『捨て本』から一部抜粋、再構成して紹介します。

CREDIT :

文/堀江貴文(実業家)

記事提供/東洋経済ONLINE
僕は1999年に1度、結婚している。仕事がめちゃくちゃに忙しく、多くのトラブルを抱えすぎて、精神的にやや不安定に陥っていた。そんなとき当時付き合っていた女性が、うっかり妊娠してしまった。

結婚すれば少しは気持ちが安定するかもしれない、と淡い期待を持って、結婚した。子どもも生まれるので、同時に都内に家も買った。しかし……、結婚生活は、安定にはほど遠かった。

妻からは週末は子育てにフルで関わるようにプレッシャーをかけられた。どうしても外せない案件で週末に出かけようものなら、すごい勢いで非難された。夫の家事分担は、当然すぎるほど当然の役割だと思う。僕も基本的には賛成だが、2000年前後の僕の状況は、特殊すぎた。

かつての妻との「すれ違い」

ネットバブルの勢いも相まって事業は急拡大。海外展開や多数の事業をさばくのに、1分1秒を惜しんで駆け回っていた。そのへんの中小企業の資産価値の数十社分に匹敵する、巨額のお金を毎日のように取り扱い、緊張の糸は常時、張りつめていた。

せめて家に帰ったときぐらいは、ぐったり寝ていたいのに……。妻にはそんな僕が「怠慢」とか「責任逃れ」に見えていたのだ。

できちゃった婚に近いので、お互いの性格とか価値観をよく吟味せず、僕たちは一緒になった。そのせいで、結婚してからぶつかったり、後味の悪いケンカを繰り返すことが多かった。

彼女は「学資保険に入ってほしい」という派だった。まったく意味がわからない。ほかの著書などでさんざん述べているように、保険は無意味だと、どんなに説明しても聞き入れてくれなかった。

また彼女は「あなたの通帳を預かったほうがいいと思うの」と言った。それもバカげている。当時、僕が取り扱っているお金の額は、妻のような普通の若い女の子が扱えるような金額ではなかった。

通帳の預金額は、数十万円ぐらいだと思っていたのだろうか? 無理に決まっているでしょと言うと、「家族を信用できないの!?」とキレられた。

一事が万事そんな具合で、まともに話し合いができなかった。僕たちがもう少し大人で、相手をおもんぱかる余裕があれば、冷静に話し合えたのかもしれない。

だけど僕たちはまだ、20代半ばだった。若すぎるといえば若すぎた。仕事から家に帰るのが、本当に苦痛になった。ずっと体調がすぐれず、家への道を歩くたび、はぁ〜とため息をついていたのを覚えている。

仕事では、魅力的な人と出会う機会が多かった。夜の会席の場で、話の合う、頭のいい美女ともたくさん知り合った。たびたび、いい雰囲気になったのだが……連れて帰ったりできなかった。帰り際、女の子を寂しく見送るしかない。

妻帯者なので、当然といえば当然だ。けれど、結婚していたら、なんで自由に恋愛できないんだろう?と、疑問に思ってしまった。
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浮気なんてするもんじゃない

妻は、僕の浮気は許さないけど、外で遊んでくるのは許してくれていた。「したくなったら、外でお金を払ってやってきて」というスタンスだった。バレなければ浮気してもいいということかもしれない。周りには奥さんに気づかれず(気づかれているのかもしれないが)、うまいこと愛人とたくさん遊んでいる経営者もいた。

でも僕は、そういうのは面倒くさい。好きな人に対して一途とも言えるが、浮気がバレないように、身の回りや言動をケアする手間をかけるのが、すごく嫌なのだ。それこそ無駄な時間を取られてしまう。

話は飛ぶが、現在、僕はホテル暮らしをしている。仲良くなった女の子を部屋に招くのだが、彼女たちは「石けんが減っている」「クッキーの数が少ない」など、目ざといところに気づく。鬱陶しいな……と思う。

恋人の示す“差分”に敏感というか、総じて恋愛では女の子のほうが神経質だ。言い訳してなだめたり、あれこれご機嫌をとるのは、とても重労働だ。浮気なんか、するもんじゃない。

元妻の浮気観というか、女遊びに対する態度は、寛容といえば寛容だったのかもしれないが、「だったら、そもそも夫婦でいなくてもよくない?」という思いだった。

結局、結婚生活は2年ほどしか保てなかった。延期していた結婚式を、軽井沢で挙げた3カ月後に、僕たちは離婚した。できたばかりの家族を、僕は「捨てた」。人生最初で、最大に近いぐらい、大きな切り捨てだった。 

迷って悩んで、話し合った末の結論だ。どうしたって「捨てる」ことでしか解決できない、つらい案件だった。離婚までの手続きは、大変だった。一度は、生涯添い遂げようと決めた人間関係なのだ。同意して、はい終わり、というわけにはいかなかった。

僕の手がけているほかのビジネスと同じぐらい、頑張って、頑張り抜いて、やっときれいに別れられたという印象だ。家も売った。立地も建物もよかったので、買ったときのほぼ同額で売却できた。家に関しては、損はしなかった。

しかし……寂しかった。自分で「捨てる」と決めた以上、後悔はしなかった。でも、たまに残されていった家のモノのなかから、子どもの写真が出てきたり、子ども用の三輪車を処分するときなどは、ギュッと胸の奥が締めつけられた。
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結婚はしなくていい

一度の経験で、改めて強く思う。結婚なんてしなくていい。家族は「捨てるフォルダ」に入れて、問題ない存在だ。

少し専門的な話をしよう。日本での家族制度の起源を、ご存じだろうか? 18世紀のイギリスで起きた農業革命が、日本に波及した江戸時代にさかのぼる。

テクノロジーの進化による農業革命によって、人口は急速に増えていった。ところが、農地を維持していくためにはメンテナンスが必要だ。田んぼは1年も耕さないと、次の年には収穫できなくなってしまう。だから子孫に引き継いで、維持していかねばならない。

子どもが1人ならいいけれど、何人もできると問題だ。田んぼを分割相続していたら、農地が狭くなってしまう。それではいずれ人々が満たされるだけの収穫が得られなくなるだろう。

食糧供給のために安全な相続は、田んぼを分割せず、一子相伝の方法でなければならない。それが長男至上主義の因習の下地となり、養子縁組システムの確立を進めることになった。

長男は生まれた土地に縛られ、次男次女たちは豊かな家庭に丁稚奉公へ行き、別の家族の一員となる。そうやって、日本社会では長年、長子に土地を相続させ、途絶えないように田んぼを守り続けた。

長子を田んぼにひも付けることで、食糧供給は安定した。この安定が、みんなが飢え死にしない、日本社会の運営の基礎となる一夫一婦制を、強固にしていったのだ。

長子が結婚できずにあぶれてしまうと、土地の維持ができなくなり、子孫たち、ひいては社会が困ってしまう。それを防ぐための制度として、別れたり資産分割のしづらい、結婚制度が法整備化される運びとなった。

要は、結婚とは「田んぼを守るためのシステム」でしかない。田んぼ以外に食糧供給の生産分野をたくさん開発した現代人には、まったく無意味なものなのだ。
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子どもが欲しいのは財産ではない

別に僕は、生涯添い遂げるパートナーの存在を否定しているわけではない。

制度的に1対になる異性と契約して、その1対のなかでしか子どもを持つことが社会倫理的には許されず、正統な相続権がないというのは、もう古すぎでしょ?と言いたいのだ。

男も女も、結婚せずとも好きな人と恋愛しまくり、たくさん子どもをつくればいい。女は自由に男を渡り歩き、経済力のある男はたくさん女性を囲って、子どもたちに財産を好きなように分け与えればいいのだ。

子どもが欲しいのは、財産ではない。楽しく過ごしている親の姿であり、自分たちも同じように、楽しく好きなように生きていける未来なのだ。親から田んぼを受け継がされて、喜ぶ子どもがどれぐらいいるだろう? 江戸時代にもいたのかどうか、疑わしいものだ。

家族はいてもいい。家族がいちばん大事!というならそれでいいと思う。ただ、「捨ててはいけない」「捨てたら悪人だ」という思い込みは、間違っている。それは、江戸時代からの(歴史で考えれば、ごく最近のことだ)単なる洗脳であり、捨てても責められるいわれはないのだ。

良くも悪くも、あなたの持ち物は重くなってはいないか。大切にしていた「はず」のモノで、逆に心が押しつぶされそうになってはいないか。だから、ビジネスも人生も「捨てる」ことからはじめよう。「これから」を、病まないで生きるために。堀江貴文が満を持して贈る「捨てるため」の本。
著者/堀江貴文 徳間書店刊 本体1380円+税

当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です

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