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2019.09.23

「画業50年“突破”記念 永井GO展」

み~んな夢中になった! 永井豪作品の過激さの秘密とは?

現在、上野の森美術館で開催されている永井豪の展覧会「画業50年“突破”記念 永井GO展」。オヤジ世代なら必ず経験してきたエロスとナンセンスとバイオレンスの永井ワールドが全開で、これはかなり楽しめますぞ。

CREDIT :

文/只野仁志

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▲会場の奥にはデビルマンが鎮座してお出迎え。
(c)1967-2019 Go Nagai/Dynamic Production.All Rights Reserved.
LEON世代のオヤジ様でマンガ家、永井豪さんのお世話にならなかった人はいないでしょう。ちょっとお年を召した方なら「ハレンチ学園」、その下の世代なら「マジンガーZ」に「デビルマン」。さらに「キューティーハニー」や「凄ノ王」「あばしり一家」なんてのもありましたね。

「ハレンチ学園」は当時、PTAから教育上よろしくない悪書として吊るし上げられ社会問題にまで発展。また「マジンガーZ」は人が乗って操縦する巨大ロボットアニメの嚆矢として、のちの「機動戦士ガンダム」や「エヴァンゲリオン」にも大きな影響を与えました。そして現代の「神曲」として壮大なカタストロフィを描いた「デビルマン」は昨年NETFLIXで新作アニメが世界に配信されるなど、今も傑作として評価され続けています。

それらのマンガに描かれたエロ、グロ、ナンセンスとバイオレンスの饗宴は、日本中の少年たちを夢中にさせ、ときに恍惚とさせたものです。
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「ハレンチ学園」は1968~69年、『週刊少年ジャンプ』で連載された。
(c)1967-2019 Go Nagai/Dynamic Production.All Rights Reserved.
さて、前置きが長くなりましたが、そんな日本のマンガ史に燦然と輝く足跡を残した偉大なマンガ家である永井豪さんの画業50年突破を記念した展覧会が、今、東京「上野の森美術館」で開催されているのです。

昨年秋の大阪展、今夏の石川展に続いて巡回してきた「画業50年“突破”記念 永井GO展」。永井さんの直筆原稿や原画を中心に、作品から派生した玩具などの立体物、未発表初公開のスケッチや絵コンテなどの秘蔵資料を含む約600点を展示し、無限ともいえるマンガ家、永井豪のイマジネーションの世界に迫ります。

「鬼・悪魔」「ロボット」「ギャグ」「魅力的なヒーロー・ヒロイン」など、ジャンル別に展示された原画の数々は実に精緻にして美しく、デッサンの正確さや迫力ある構図の妙など、ファンでなくとも感激必至でみどころは盛りだくさん。会期は29日日曜日まで。オヤジひとりでしっぽり思い出に浸るもよし、理解のありそうな彼女と楽しむもよし。とにかく急ぐべし!
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「マジンガーZ]は1972~73年、『週刊少年ジャンプ』で連載された。
(c)1967-2019 Go Nagai/Dynamic Production.All Rights Reserved.
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一番思い入れの強い作品は「デビルマン」

開催に先立って行われた永井さんの記者会見では、面白いエピソードを披露してくれたので、ここに一部、ご紹介いたします。

── 過激な作風で苦労したことは?

「デビューした当時というのは昔からの影響でいろんなものがダメダメと言われ、まずそれに疑問をもちました。ギャグマンガでデビューしたんですけど、ちょっと女の子に水着の格好をさせるとダメとか。そういうのが何故なんだろうというのが疑問で。自分の感覚がおかしいのか、あるいは世の中が少し固まっているんじゃないか。そんなことを思いました。

それが年月を越えていくたびに、どんどん世の中が変化していって僕の過激と言われた作品群が大して過激じゃなくて、かわいらしいもんだと理解していただけるようになったんじゃないかと。ただ、過激であることが自分のマンガ家としてのスタイルでもありますので、なんか過激なものを探そうと努力はしているんですけど(笑)。最近は世の中の方がよほど過激なもんで何やってもおとなしく見えてしまいます」(永井さん・以下同)
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永井豪さん。会場内に再現された永井さんの仕事場で。
(c)1967-2019 Go Nagai/Dynamic Production.All Rights Reserved.
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── 仕事をしていくうえでピンチはありましたか?

「僕はスタート当初から過激と思われていたためにいろんな人とぶつかることが多くて、各社の編集長とケンカしたり、それによって連載が止まったりとか、そういうのもたくさんありました。そのたびに、こっちがダメならあっち行こうとか、次から次へと作品を変えていったりとか、そういう風にしていました。

でも、雑誌が変わると編集の人の意見も変わってきたりするので、それによってそれまでの自分と違う作品を描くことが出来たりしたので、そういうピンチも結構いいんじゃないかなと思ってます。いろんなところを渡り歩く中で、僕自身は大雑誌だからとか、部数がどうのってどうでもいいこと。

どんな雑誌であっても、描くチャンスがあれば喜んで描くという性格なんで。自分がとにかく、それに対応していれば自分の中からいろんな新しいものが生まれていくに違いない。そんな風に思ってやってきました。ピンチであるけれどもピンチをチャンスに変えていたという感じです」
(c)1967-2019 Go Nagai/Dynamic Production.All Rights Reserved.
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── あえて一番思い入れの強い作品は?

「そうですね、やっぱり自分の中では『デビルマン』という作品でしょうか。そもそもギャグマンガしか描かしてもらえなくて、なんとしてもストーリー漫画を描きたくて、やっと描いては雑誌がなくなったりして。やっぱり自分はギャグに戻るしかないのかなと思っていたんですが。

そんな時に『デビルマン』でチャンスが生まれたので、この作品はなんとかいいものにしなければ、二度とストーリー漫画は描けないんじゃないかと、そういう切羽詰まった気持ちがありました。一方で、テレビとタイアップしていたために、テレビにも合わせなきゃいけない、雑誌にも合わせなきゃいけないということで、常にジレンマと闘いながらやった苦しさもありました。

テレビが終わってしまってマンガも終わりということで、急に話を完結しなければならなくなって。どうやって自分の思いを燃焼させようかと、より、ストーリーが過激になってしまったり。でも、結果的にそれが作品をいいものにしてくれたんじゃないかと思います。そういう意味では波乱万丈で、自分の中では重い作品になったかなと」
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◆ 画業50年“突破”記念 永井GO展

場所/上野の森美術館
住所/東京都台東区上野公園1-2
期間/開催中。~9月29日(日)まで
休館日/無休
開館時間/10:00-17:00
料金/一般・大学生 1600円、中高生 1000円、小学生以下 無料
URL/https://nagai50ten.com
TEL/ハローダイヤル 03-5777-8600

● 永井豪

1945年9月6日、石川県輪島市生まれ。幼少の頃からマンガ・映画・落語・冒険小説に親しみ、石森(現・石ノ森)章太郎氏のアシスタントを経て、1967年「目明しポリ吉」でデビュー。翌年「ハレンチ学園」が連載開始となり大ブームになる。以後、現在に至るまで、幅広いジャンルの作品を発表し続けている。代表作に「デビルマン」「マジンガーZ」「バイオレンスジャック」「キューティーハニー」等多数。2019年7月、フランス政府より芸術文化勲章「シュバリエ」を受勲。

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