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2022.04.20

「金麦女」から「あざと可愛い」まで。芸能界で輝いた歴代「いい女」たちを検証してみた【後編】

日本の芸能界にはいつの時代にも多くの人に支持される「いい女」(=憧れの女性像)たちがいました。その代表的な存在を紹介しながら、時代ごとの「いい女」像を探ります。その後編。

CREDIT :

文/井上真規子 写真協力/週刊女性

今の時代、「いい女」(=皆が憧れる理想の女性像)とはどんな女性を指すのでしょうか?  時代とともに世の中の価値観は大きく変化・多様化して、もはやひとつのイメージで「いい女」像を語ることは難しくなっている気がします。

そこで、世代ごとのトレンドをマーケティングや行動経済学の視点で研究している牛窪恵さんに、昭和から令和にいたるまで芸能界で活躍した「いい女」たちを通して、理想の女性像の変遷を解説していただきました。前編(こちら)に次いで、後編では21世紀に入ってからの「いい女」像を探っていきます。

男性たちの憧れを具現化した「金麦女」が誕生

2000年代に入って社会進出を目指す女性たちが増えた結果、現実を見据えた女性たちは恋愛と結婚は別物と気づき、玉の輿を目指す計算高い女性も社会的に許されるような状況が生まれます。一方で、キャリアを積もうとする女性の間では、結婚が女の幸せとは限らない、一人で過ごすことも幸せと考える、“おひとりさま”という女性像も生まれました。

「男性たちはというと、自分の父親のようにたった一人で家族を支えていくことを重荷に感じるようになり、共働きで金銭的にも支えてくれる女性を望むようになります。とはいえ、夢や憧れはまた別。本当は家で奥さんが自分の帰りを待っていてくれたら、との願望はもち続けていました」

こうした男性たちが憧れる女性像を、牛窪さんは「金麦女」と命名。2007年から放映されたビール「金麦」(サントリー)のCMで檀れいさんが演じた女性像で、ビールを飲みながら家でご飯を作って夫の帰りを待っている無邪気な女性が男性たちの心を掴みました。
▲ 檀れいさん。撮影/伊藤和幸
「檀さんはCMで、鍋に触ってアチっ!と驚くなど、ドジな一面を見せてくれます。外ではきれいなしっかり者のお姉さんとして振る舞っている奥さんが、家では自分にだけ裏の姿を見せてくれるというギャップ萌えが男ゴコロをくすぐったのです」

「金麦女」の人気は根強く、檀れいさんははなんと10年以上もの間、金麦キャラクターを演じ続けました。
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社会で活躍して自由を謳歌するシングルマザーがカッコいい!

女性が経済力を身につけるようになると、それまで経済的理由で我慢せざるを得なかった離婚を選択する女性が急増します。

「02年には離婚件数が約29万件にまで達し、ピークを迎えます。自らの経済力で自由を掴み、バリバリ働きながら子供を育てるシングルマザーがカッコいいとされる時代に。先に挙げた安室奈美恵さんや浜崎あゆみさんなどは、まさにこうした女性像を体現する存在です」

「03年にヒットしたのが、ドラマ『きみはペット』(TBS)。小雪さん演じる主人公が、松本潤さん演じる年下男性をペットとして家に住まわせるという設定に、ワクワクした女性たちも多かったはず」

05年に公開されてヒットを記録した映画『東京タワー』でも、黒木瞳さん演じる41歳のセレクトショップの女性経営者が、岡田准一さん演じる21歳の大学生と禁断の恋に落ちる、年上女性主導のラブストーリーが描かれました。
▲ 小雪さん。撮影/佐藤基広
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男を引きつける賢いモテカワ系女子

「90年代後半から2000年初頭にかけて、女子高生ブームが起こり、コギャルやガングロといったファッションスタイルが一大カルチャーとなります。女子高生たちの間には、何もしてくれない男なんていらない、女友達がいればそれで十分という価値観が浸透。男女平等を通り越して、完全に女性が主導で文化を作っていく時代になっていきます」

女性だけで集まって盛り上がろう! という“女子会ブーム”が巻き起こったのもこの頃。男性はますます恋愛や結婚に消極的になり、女性たちは自ら進んで相手探しをしなくてはならない状況に。

「いわゆる“婚活ブーム”が起こったのは08年。女性が積極的に結婚までたどり着く努力をする必要が出てきたわけですが、同時に露骨に女性からアピールしすぎるのも好ましくないという風潮が女性たちの間で生まれます」
▲ 石原さとみさん。撮影/齋藤周造
そこで、男たちが告白したくなるような、可愛いくても実は色っぽい女性像が“いい女”として憧れになっていきます。

「この頃から、石原さとみさん、深田恭子さん、綾瀬はるかさん、長澤まさみさんなど、色っぽさもある、モテカワ系女優が人気に。彼女たちの人気は根強く、現在まで長い間人気を集めています」
▲ 深田恭子さん。撮影/佐藤基広
▲ 綾瀬はるかさん。撮影/廣瀬靖士
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自分をさらけ出す、リアルな女性が求められるように

平成も終盤になると、インターネットの普及とともにSNSが浸透し、私生活や心情を不特定多数に発信して、プライベートをさらけ出すことが当たり前の時代になっていきます。

「きれいな表の部分だけを見せて取り繕う女性より、自分の裏側をきちんと晒していく女性の方が信用できて好感がもてると、みんなが思うようになっていきます。有名人たちもYouTubeやインスタグラムでスッピンを晒したり、半顔メイクを披露して、好感度を狙った素顔見せが流行しました」
▲ 長澤まさみさん。撮影/伊藤和幸
男性たちはこうした風潮のなかで、引き続き「金麦女」のように自分だけに秘密を見せてくれる女性に憧れつつも、自然体で取り繕わない女性が信用できるということに徐々に気づきはじめた、と牛窪さん。

「今年2022年、『金麦』がCMを含めて大リニューアルしたのも、ようやく男性たちにとっての“いい女像”が変わりはじめた証でもあったと思います」

女性たちの自立はさらに進み、バブル期までは結婚退職、05年頃まではキャリアを持っていても出産退職が一般的でしたが、現在は出産後も働いてキャリアを継続していくことが当たり前に。令和の時代となり、真の意味での男女平等が実現されつつあるのかもしれません。
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次世代を担うZ世代の“いい女”像って?

「2年前、現18〜27歳の134人に、憧れの人物について詳細なアンケート調査を行いました。身近な憧れの人は、男女ともにダントツで母親が多かったのですが、身近ではない憧れの人は、134人中2人(いずれも野球のイチロー選手と大谷翔平選手)しか重なった人がいませんでした。憧れの対象が非常に多様化していることがわかったのです」

海外のアーティストやセレブ、スポーツ選手などもSNSで日々情報発信しているため、遠い海の向こうにいる人物に対しても、身近な憧れを抱ける時代に。

「昭和や平成の頃のように、みんなが憧れる共通のスターというもの自体が生まれにくくなっています。社会が一丸となって共通の憧れやアイドルを応援する感覚は、ほぼ壊滅状態。一方で、特定のコミュニティで『推し』に思い入れる人が増え、バーチャルYouTuberなども登場し、Z世代(1990年後半〜2000年代半ば生まれ)の中には架空の存在に憧れを投影して、自分の妄想のなかで楽しむという人たちも増えているのです」
▲ 田中みな実さん。撮影/吉岡竜起
では、憧れが多様化する現代において、「いい女」とはどのような存在になっていくのでしょうか。

「SNSが普及した今、ファンの存在を無視することはできません。ファンとやりとりしながら、時代の要求に合わせて日々自分をアップデイトしていける女性が、“いい女”として人気を集めるのではないでしょうか。あざと可愛いと言われる田中みな実さんなどがいい例です」

アナウンサー時代は可愛い女性として人気を集め、モデルや女優に転身すると今度は色っぽさも出しつつ、計算している自分をさらけだして人間味も感じられる田中さんは、まさに新時代のアップデイトし続ける「いい女像」と言えるのかもしれません。

● 牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ)

世代・トレンド評論家。立教大学大学院修了、修士(MBA/経営管理学)。現在、同大学院・客員教授。1991年、日大芸術学部 映画学科(脚本)卒業後、大手出版社に入社。フリーライターを経て、2001年4月、マーケティングを中心に行うインフィニティを設立、同代表取締役。「おひとりさま(マーケット)」(05年)、「草食系(男子)」(09年)は新語・流行語大賞に最終ノミネート。近著は『若者たちのニューノーマル ―Z世代、コロナ禍を生きる』(日経BP)。

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