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2019.06.14

思い通りに大人の会話ができる、気の利く「ひと言目」とは?

会話下手の悩みを抱えている人は少なくないだろう。ビジネスで、恋愛で、相手に思いを的確に伝える大人の会話をするにはどうしたらよいのか? 齋藤孝氏の新著『気の利く大人のひと言目』(東洋経済新報社)から探ってみた。

CREDIT :

文/印南 敦史

記事提供 / 東洋経済ONLINE
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「会話が続かない」「話が深まらない」「気持ちや考えがうまく伝わらない」など、「会話」に関する悩みを抱えている人は少なくないだろう。ビジネスパーソンである以上、必然的に「大人としての会話のスキル」が求められることになるわけだ。

とはいえ会話のスキルは、一朝一夕で身に付くようなものではない。だから悩みは解決しないのだが、しかしそれでも打つ手がないわけではないと、『気の利く大人のひと言目』(東洋経済新報社)の著者、齋藤孝氏は言う。

端的に言えば、気の利いた「ひと言目」をいくつかストックしておけば効果的だというのだ。
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会話というのは水の流れのようなものです。
沈黙は、その水の流れをせき止めてしまうのでよくありません。まずは勇気を持って水門を開くことが大切なのですが、このときダメなひと言目を選んでしまうと、会話はうまく流れてくれません。でも、気の利いたひと言で会話を始めることができれば、あとはさほど苦労しなくても、会話はスムーズに流れていきます。
会話がスムーズに流れれば、「この人は気が利いた人だな」とか、「間がもつ人だな」というよい印象が相手に刷り込まれます。
そういう意味では、大人としての会話の成否は、「ひと言目」に何を言うかである程度決まると言っても過言ではないのです。(「はじめに」より)

そこで本書では、大人の会話において重要なカギとなる「使えるひと言目」が紹介されている。特徴的なのは、実用性に重点が置かれている点である。
“「会話がつながる&深まる」ひと言目”
“「仕事力がアップする&できる人と思われる」ひと言目”
“「相手を褒める&その気にさせる」ひと言目”
“「伝えにくいことを上手に伝える」ひと言目”

と、シチュエーションや目的に合わせた構成になっており、例えば「『なるほど+たとえば』で会話に深みを持たせる」「『これでいいですか?』は『どちらがいいですか?』に言い換える」など、すぐに役立てられそうなメソッドが並んでいるのだ。

とはいっても、それらを有効活用するためには、きちんとした心構えが必要とされるだろう。そこで今回は、その点にフォーカスした最終章「『大人のひと言目』を使いこなす4つの心構え」に注目してみたい。
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■ 会話のコツ(1) 相手に興味をもっていることを示す

大人の会話において大切なのは、相手の話に興味をもっていることが、相手にきちんと伝わるようにすること。そのことの重要性を伝えるために、著者は「お見合いの席」でのあり方を例に挙げている。

もし、お見合いの席で相手に興味をもっていることが伝えられなかったとしたら、場合によっては「自分に関心がないのかもしれない」と誤解されたまま終わってしまう可能性もあるわけだ。
お見合いでは、限られた時間の中で、相手に興味や関心を持てるかどうかということがはかられます。そして、初対面のその場で会話がうまくいかなければ、その先はありません。
会話が苦手な人と生活するというのは、実はものすごくきついことなのです。なぜなら、カップルや夫婦というのは、会話が中心となって発展していく関係だからです。会話が生活の質を左右すると言っても過言ではありません。(156ページより)

お見合いの席では、「自分のことをわかってもらいたい」という気持ちが先行しがち。しかし、一方的に自己主張するのではなく、まずは相手に対して自分が関心をもっていることを示した方がうまくいくという。

それはお見合いに限らず、あらゆる人間関係に言えそうだ。
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相手の意識が向かっている先を察知する

しかし、だからといって根掘り葉掘り相手を質問攻めにするわけにもいかない。そこで著者は、「お互いの話ではない“ホットな話題”でつないでいく」ことを勧めている。そこで重要なのは、相手の意識の志向性を知ることだという。
人の意識には志向性があります。
これを主張したのは、オーストリアの哲学者フッサールという人ですが、意識というのはそこに何となくあるものではなく、必ず何かについての意識であり、その意識は常に何かに向かっているというものです。(157ページより)

確かに私たちは、何か行動しようという際には、そこへ意識を向けているものだ。飲み物を飲むときには飲み物に意識が向いており、思い出話をしているときは、過去の思い出を頭の中で思い描いている、という具合に。

つまり「ホットな話題でつないでいく」とは、こうした「意識の志向性」、すなわち相手の意識が向かっている先を察知しつつ、話題を展開していくというテクニックのこと。

両者の意識が同じ方向に向けば、「志向性の一致」が生じることになる。それこそが、話が盛り上がる秘訣だというのである。
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■ 会話のコツ(2) 意識の流れを感じて楽しむ

意識には志向性の他にもう1つ、「流れ」という特徴があります。
これは、ウィリアム・ジェームズというアメリカの心理学者が提唱した説ですが、彼は「意識の本質は流れである」とまで言っています。
これはどういうことかと言うと、意識は常に動いていて、その動きには流れがある、ということです。
普段の生活では「意識の流れ」などあまり感じないかも知れませんが、会話では顕著に表れます。わたしたちが普段何気なく使っている「会話の流れ」という言葉は、まさに会話しているときの意識の流れと言い換えてもいいものだからです。
会話では、流れを大事にすることがとても大切です。(160ページより)

流れを大事にするとは、「この会話はどこへ流れようとしているのか」と会話の流れの向かう先を意識するとともに、流れそのものをせき止めないようにするということ。

意識に流れがあることを知らないと、思いついたことを流れに関係なく会話に放り込んでしまうことになる。その結果、会話がぶつ切りになってしまうというのである。つまり、流れを分断してしまうのだ。
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相手に不快感を与えないために

人の話を遮って自分の話をしたり、話題を急に変えたりすると、そのたびに流れが切れてしまう。また、そうした“ぶつ切り会話”はとても疲れる。しかも相手からすれば、とても嫌な感じがするものでもあるだろう。だからこそ、会話の流れの底に意識の流れがあるということを意識しながら会話を進めていくべきだというのだ。

なお著者によれば、意識の流れを感じるコツは、「相手はこの会話で何を目指しているのか」というところを探ること。

例えば、相手がキャンプの話をしていたとしよう。その際、相手はその会話によって、自然と触れ合うことのすばらしさを伝えたいと思っているのだろうか、一緒にキャンプに行こうと誘おうとしているのだろうか、それとも自然環境の破壊を問題化しているのか。

このように、「相手の会話の着地点はどこなのか」ということを多少なりとも意識してみることが大切だということだ。

■ 会話のコツ(3) 添いつつずらす

会話がつながる、会話の間がもつということは、会話を楽しむうえでとても重要。途切れがち会話では、相手につまらない印象を与えてしまうからだ。では、どうすれば会話を長く続けていくことができるのだろう?

この疑問に対するポイントは、相手の言っていることに添いつつ、うまく話題をずらしていくこと。「添いつつずらす」という、大人のコミュニケーションにおいてはとても重要な能力なのだという。著者はこれを「会話の展開力」と呼んでいるそうだ。

もともとはちょっとした知人だったのに、何度か会話するうちに友達感覚が生まれ、親密な関係に発展するというケースは少なくない。会話を楽しむことができれば、最終的に相手との間に温かい空気が流れ、親愛関係が生まれるということである。

そういう相手とコミュニケーションするときには、まず相手からポロッと出たひと言を「それはいいですね」と、100%肯定して受け止めたほうがいい。そしてすかさず、「それならば、これもありますよね」というような感じで、受け取ったものを少し広げて提案してみることが大切だ。
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展開力のある人とない人の差

「それならこれもありますかね」といった感じで広げながら問いかけると、ほんの1時間であっても、いろいろなアイデアが出て、建設的な打ち合わせをすることができるというわけだ。
大人の会話では、自分の意見をどう言うかということも大事ですが、その場を展開させて、より有意義なものにしていく「会話の展開力」が大切です。
なかなか友人ができない。
クライアントの信頼が得られない。
いつも会話が盛り上がらない。
そのときは盛り上がったと思ったのに、関係が発展しない。
そうした経験の多い人は、「思いつつずらす」ことを意識した会話をするようにしてみてください。(164〜165ページより)

展開力のない人は、自分では盛り上がった話をしているつもりでも、実は自分勝手な話ばかりしている傾向があるのだとか。会話を振り返ったとき、「自分ばかり話していたな」と感じたら、その可能性は大。

一方、展開力がある人の会話は、発言の割合が相手も自分もほぼ同じになるという。当然ながら、相手も会話を楽しむからだ。
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■ 会話のコツ(4) 忖度力を身につける

いい飲み会の席には、必ず上手に盛り上げてくれる人がいるもの。周りの空気を読んで場を盛り上げたり、退屈そうな人同士をつなげたり、空いている皿を下げたり、飲み物を注文したり。

言われてからやるのではなく、みんなの気持ちを察してスムーズにこなしてしまう人である。
よく言う「気働きが利く」タイプの人ですが、このように他人の気持ちを推し量ることを「忖度」と言います。
最近、あまりいい印象を伴わなくなってしまった言葉ですが、もともとは相手の気持ちを推し量るという、日本人らしい思いやりを意味する言葉です。
そんな言葉の本義に戻れば、「忖度力」は、なによりあった方がいいですし、忖度力がある人とは会話も弾みます。(166ページより)

「相手はこの会話をどのような着地点に持っていきたいのか」「それにはなにが障害なのか」「自分はどこまでなら譲れるのか」など、ビジネスの場においては、そうした忖度力があるかないかで物事の進み方がまったく違ったものになるわけだ。

なお、会話の忖度力は差し向かいでの会話だけではなく、メールやSNSなどでも発揮されるものだという。
「もういい加減終わりにしたいのに、相手から疑問系のコメントが来るのでLINEの会話がやめられない」
「前のメールに書いておいたのに、同じことをまたメールで問い合わせてきた」

「何度もやんわりと都合が悪いことを伝えているのに、会いたくないと思っていることをわかってもらえない」
というように、空気の読めない会話はメールやSNSでも多く生じるものだからだ。確かに誰しも、こうした思いを抱いた経験はあるのではないだろうか。
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互いに配慮しながらやり取りを楽しむのが大人の会話

宴会なら、相手の忖度力に乗っかって楽をしてもいいかもしれない。だが、会話となるとそうもいかないものだ。相手がこちらの気持ちを察してくれたら、こちらも相手の気持ちを推し量ることが大切。お互いに思いやりをもつのが、大人の会話のマナーだというわけである。
口下手で悩んでいる人に対して、「正直であることがいちばん」だとアドバイスする人もいる。確かに正直であることは、人から信頼を得る際にも重要なポイントとなるはずだ、しかし、大人の会話において、正直は必ずしも美徳ではないと著者は指摘している。

すなわち相手を傷つけないためには、言葉を選ぶことも必要だという考え方。気の利いたひと言目によってまずは水を流し、あとは流れに身を任せつつも、相手を思いやった言葉でリアクションしていくのが望ましい。

互いに配慮し合いながら、言葉のやり取りを楽しむのが大人の会話。とりわけビジネスシーンにおいては、そのようなスタンスが重要な意味をもちそうだ。
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『気の利く大人のひと言目』

齋藤 孝 1960年静岡県生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士課程を経て現職。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞特別賞、2002年新語・流行語大賞ベスト10、草思社)等多数。本体1300円+税/東洋経済新報社

当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です
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