2019.01.08
実は深刻な“跡継ぎ問題”について【vol.11】
シンガポールを拠点にアジアを巡るエンジェル投資家、加藤順彦ポールさん。この10年、東南アジアを中心に周る中で得た、投資の知識や処世術、そして関わるひととの熱いドラマを展開します。
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文/加藤順彦

日本企業に実は深刻な継承問題
で、僕は2015年度から関西学院大学、そして2016年度から関西大学にて「ガチンコ後継者ゼミ」の講師をやっています。毎年6月、シンガポールから飛行機で大阪を往復しています。
関西発、“ガチンコ後継者ゼミ”とは?
家業を継ぐべきか、継がざるべきか。難しい問題です。
でも!「家業は斜陽産業だ、将来性はない」、「親と同じ商売をするのがいやだ」と家業を継ぐ人生にモヤモヤしている人は、ぜひ履修してください。
あと「親の会社は順風満帆だ」と思っているキミも受講したほうがいい。
この講義、そんなキミならたぶん絶対オモシロい。
この講義の先生は家業を継いだ現役社長、受講生は実家が商売を営んでいる学生。
要するに先生も学生も「たまたま経営者の家に生まれてしまった人間シバリ」で行われる大学の授業です。
この講義では、先代から受け継いだ経営資源に、自分で探してきた何かを掛け算して、新しい価値を社会に生み出す「ベンチャー型事業承継」を実践しているアトツギベンチャー社長が先生としてやってきます。
僕は関西大学にて今年も講義を受け持たせていただきました。有り難いです。なぜ、まだ継ぐことも、継ぐということの意味すらわかっていない大学生たちに事業承継について伝えたいのか。それはこの時期こそ大事なのは「家業に向き合っておくこと」 だからと、僕自身がよく知っているからです。
そんななかで山野さんはこの活動を続けながら、別の年齢層を対象に事業承継を啓蒙する「アトツギU34」を始めました。同じく関西の、家業を継ぐのかどうかもまだ決めてもいないけど、継ぐかもしれない、継いだらどうなるのかな、とモヤモヤ考えているU34(34歳未満)の層を対象にしたこの活動にも、加藤は深く同調し、昨年はクリスマスのワークショップに登壇させてもらいました。これはかなりいい。
自分自身も“後継者問題”に悩んでいた

塾開講は未遂に終わりましたが、これを縁で繋いだリョーマ同僚の中谷チューヤさんはいま同社の代表取締役社長に就いています。が、それが30年のときを経て、それがいま山野さんによって実現しているやんか。すごいやんか。
さらに!山野さんは止まりません。今年2018年に入っては、遂に関西の枠を飛び出し、日本全国を対象にこの活動を「ベンチャー型事業承継」と銘打ち、僕が初めて関西学院で講義させてもらった時のお題(山野さん考案)である「後継者たる者、起業家のように後を継げ」を地で行こうという一般社団法人 ベンチャー型事業承継を6月に設立したのです。
あら!そう!! ということは、僕がここで腰が退けたらあかんでしょ。で、去る9月1日より、僕も弟分のようなビジネスパートナー奥村真也さんと共に事務局のメンバーとして加わりました。京都大学から最大手総合商社に入り、シンガポールでMBAをこの7月に取ったばかりの35歳の奥村さんはいわゆる「専従」の団体職員 です。ぱちぱち、おめでとう。そうそう、社団法人は始まったばかりではありますが嬉しいことに、10月には野村證券様と野村資産承継研究所様、12月には三井住友銀行様からの力強い協賛を得ることもできました。ありがとうございます。
紆余曲折を経て、自分も跡継ぎになる

● 加藤順彦ポール(事業家・LENSMODE PTE LTD)
ASEANで日本人の起業する事業に資本と経営の両面から参画するハンズオン型エンジェルを得意とする事業家。1967年生まれ。大阪府豊中市出身。関西学院大学在学中に株式会社リョーマの設立に参画。1992年、有限会社日広(現GMO NIKKO株式会社)を創業。2008年、NIKKOのGMOグループ傘下入りに伴い退任しシンガポールへ移住。2010年、シンガポール永住権取得。主な参画先にKAMARQ、AGRIBUDDY、ビットバンク、VoiStock等。近著『若者よ、アジアのウミガメとなれ 講演録』(ゴマブックス)。