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2019.01.15

シンガポールのサッカービジネスで成功し、新潟に凱旋した男の話し【vol.12】

シンガポールを拠点にアジアを巡るエンジェル投資家、加藤順彦ポールさん。この10年、東南アジアを中心に周る中で得た、投資の知識や処世術、そして関わるひととの熱いドラマを展開します。

CREDIT :

文/加藤順彦

不退転の気持ちでシンガポールに臨んだ男

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2008年6月。僕はそれまで16年営んでいた広告会社NIKKOを手放し、マレーシア隣の赤道直下の小国家へ移り住みました。シンガポールにいる日本人は3万5000人以上いますが、今も昔も企業からの駐在社員とその家族が90%以上ということは変わりません。そんな帰りの切符を持った方々に交じってシンガポールに不退転の決意で乗り込んできた……僕より10歳若い挑戦者を、共通の友人を通じて紹介されたのは翌2009年の秋でした。

その男、是永大輔さんは公募に挙手して社長に選ばれたと言うのです。つまり親会社アルビレックス新潟の社員が転勤で来たわけではない、ということ。聞けば日大藝術学部卒業後は横浜FCのオフィシャルライターになり、その後に携帯電話向けサッカーサイトの編集長も務めたという経歴。へぇ〜変わってるなぁ、と。クラブが始まった2004年から、社長に就く前年の2007年まで会社は毎年、何千万円相当のお金が出て破綻寸前のどん底の大赤字だったそう。ですが就任後1年でアルビレックス新潟シンガポールを単年黒字転換した御仁なのです。すごいやんか〜!

海外で堂々と戦える日本人を育成

僕に最も突き刺さったのは、いったい何のためにクラブをやるのかという問いに対する答えでした。彼はクラブの目的を「海外で堂々と戦う若い日本人の育成」と明確に定め、クラブ自体のスローガンを『The Reason~ここにある意味~』と置いていました。そのうえで選手、スタッフに対しても、その理由を問うことを突き付けていました。"みんなで存在意義をつくっていこう"というところからこのクラブを再構築している、というのです。

素晴らしい目的とスローガンの設定、更に社長就任から自ら手を動かしコスト管理を徹底、圧縮し、選手のサラリーも見直し、黒字化しようとしている様子に惹かれた僕は「なんか手伝いたい」と所望し、そのままクラブの“Executive Partner”の名刺を託してもらったのでした。
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日本にいるだけではわからないこと

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思い返せば初めて逢ったその日から「シンガポールではスポーツだけでは無理がある」と言っていました。社長就任直後から政府への申請などの行動を起こし、その努力が実って2011年にはクラブハウスに併設する形で会社直営のカジノを開業。これが大きく収益に貢献し、現在もクラブの収益の柱になっています。

並行してシンガポール、ジョホールバルやヤンゴンなどでスクールも行うなど多角的に事業を展開していきました。是永さんは「サッカーの世界では日本は東南アジア各国より優れているので、日本の選手がこちらに来ればガンガン活躍できるはず、日本に対するリスペクトもあるし、事業を拡大しやすい環境」と分析していました。また2015年からはスペインはバルセロナにおいては留学事業「バルセロナフットボールアカデミー」を開始。ここからも世界を巻きこんでいく若い人材を生みだしていく狙いです。

そう、日本にいるだけではわからないことがたくさんあるのです。選手として、日本人として、シンガポールに来た、東南アジア各国を周った、バルセロナに行ってみた、それぞれの場所で新しい発見があります。それをできるだけ若いうちに経験することで、価値観が変わるし視野も大きく広がると信じています。

シンガポールリーグで全タイトル制覇

僕は自身の活動として、日本の若き経営者に対し積極的に海外での起業に挑んでほしいと訴えてきました。そのうえで東南アジアにて日本人の起こす事業の資本と経営に参画を続けてきました。年を取れば取るほど固定観念が強くなるので発見は減ってしまうけど、若いうちに外に出て行けば素直な気持ちでいろいろと発見できるはず、といつも考えてきました。是永さんが日本のアスリートに対しどんどん海外に出ていってほしい、ときっかけを提供し続けてきた姿は、僕自身がシンガポールで10年間活動してきた“The Reason”と重なります。

さて是永さんの社長就任当時には毎年シンガポールリーグの最下位かブービーが定位置だったクラブは、たゆまぬ創意工夫の甲斐もあって、2016年からは3年連続の全タイトルを制覇するほどの強い体質へと生まれ変わりました。

一方でルーツである日本のアルビレックス新潟は2017年、16年ぶりにトップリーグからJ2への降格となりました。またJ1昇格をかけた2018年は蓋を開けたらまさかの大乱調。連敗が続いた8月末には下位を低迷し、下手するとJ3降格が迫る状況まで追い込まれていました。

さまざまな経緯があったこととは思いますが、是永さんから呼び出され2018年9月中頃にお茶した際の開口一番、「来季、アルビレックス新潟の社長になります。加藤さん、無報酬で取締役をやってください」と。聞けばお家の一大事。謹んでお請けすると共にほどなく新潟ビッグスワンに初見参。はじめて本場のアルビサポによる大歓声の洗礼を受けたのでした。
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アルビレックス新潟に正式に参画

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ご覧の通り、ばっちり胸にロゴが入ります。 もちろんしっかりとスポンサーフィーをお支払いしておりますYO♬
2018年末、12月20日の定時株主総会にて、是永さんの社長就任と共に、不肖加藤も株式会社アルビレックス新潟の取締役を拝命しました。翌日に実施された社長就任の所信会見がしっかり文字起こしされてるのがこちらです。 

微力ながら、知恵を絞り、クラブの発展に貢献したい所存です。また折角の機会なので、取締役になった自分への根性焼きも兼ねて、アルビレックス新潟シンガポールの2019年ユニフォームパートナーを「LENSMODE」にてお引き受けいたしました。写真は今季も契約更改となった山崎海秀選手です。
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● 加藤順彦ポール(事業家・LENSMODE PTE LTD)

ASEANで日本人の起業する事業に資本と経営の両面から参画するハンズオン型エンジェルを得意とする事業家。1967年生まれ。大阪府豊中市出身。関西学院大学在学中に株式会社リョーマの設立に参画。1992年、有限会社日広(現GMO NIKKO株式会社)を創業。2008年、NIKKOのGMOグループ傘下入りに伴い退任しシンガポールへ移住。2010年、シンガポール永住権取得。主な参画先にKAMARQ、AGRIBUDDY、ビットバンク、VoiStock等。近著『若者よ、アジアのウミガメとなれ 講演録』(ゴマブックス)。

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