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2021.07.10

80歳のレジェンド バーテンダーが最初の一杯にマティーニをおすすめする理由とは?

特別な雰囲気とカクテルが待つホテルのバー。食事の前に気分をほぐす一杯、または食事を終えてもう少し余韻を楽しみたい時、どんな風にバーを使って何をオーダーすればいいのでしょうか? 東京ステーションホテルのマスターバーテンダー、杉本 壽さんに伺いました。

CREDIT :

写真/福本和洋 文/小野アムスデン道子

完成1914年、国指定重要文化財という東京駅舎の中にある「東京ステーションホテル」のバーで、1958年の入社以来、ゲストに寄添っておもてなしをしてきたマスターバーテンダーの杉本 壽さん。そんなレジェンドにカクテルについて、またホテルのバーについて伺いました。
80歳の今も数日、「東京ステーションホテル」のバーカウンターでカクテルを創っている杉本さん(※)。今年、一流のホスピタリティを格付けしているトラベルガイド「フォーブス・トラベルガイド」による「ホテルエンプロイー・オブ・ザ・イヤー2021」に、日本のホテルとしても日本国籍のホテルスタッフとしても初めて選ばれました。

そんな杉本さんのカクテルの真髄ともいえる「マティーニ」と杉本さんが東京駅開業75周年を記念してホテルオリジナルカクテルとして創り出した「東京駅」をいただきながら、お話を聞きました。場所は、「東京ステーションホテル」のバー「オーク」。
(※現在「オーク」は東京都の要請に準じ、酒類は16:00~19:00、2名様まで、90分以内で提供。7月12日以降はホテルのHPをご確認ください)
▲ バー「オーク」
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彼女にはソフトにボンベイサファイア、自分はタンカレーで

── バーに来て、最初の一杯として飲むのにおすすめのカクテルは?

杉本 おすすめはドライジンにドライベルモットのカクテル「マティーニ」です。度数の高いお酒ですので食後にゆっくり楽しむのもいいのですが、このカクテルは食欲も進むので食前酒にも向いています。特に昔は、最初の一杯はビールではなくて、カクテルというのが大人の嗜みでした。

ポイントはジン。いろんな種類のジンがありますが、1964年にニューヨーク万博の「ワールドフェア」に参加した際、ドライな「タンカレー」があちらで流行ってたんですね。日本にはまだ入ってなくて、当時の日航ホテルのチーフと一緒に取り寄せました。まずは一杯どうぞ。

ミキシンググラスに氷をと水を入れて混ぜて、冷やしてから水を捨てます。氷の残ったミキシンググラスにジンとトライベルモットを入れて、ステア。マティーニグラスも氷で冷やし、デコレーションのオリーブを入れたところに丁寧にステアした出来たマティーニを注ぎます。最後にレモンの香りをのせて出来上がり。流れるような仕草で目の前にきりっと冷えたマティーニが出てきました。

── ドライだけど辛いという感じではなくて、身体に沁みて広がっていく感じです!  タンカレーのジンは味わい深いですね。

杉本 これはタンカレーでもプレミアムなナンバーテン(タンカレー ナンバーテン)を使っています。マティーニは、ジンによって微妙に味わいが変わります。蒸溜を4回するタンカレーは淡麗でドライ。ナンバーテンは、よりボタニカルで柑橘の深い味わいがしますね。ボンベイサファイアにすれば柔らかな感じ、ビーフィーターだと辛さが立ちますね。「彼女にはソフトにボンベイサファイア、自分はタンカレーで」とオーダーすると違いの分かる感じですね。
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バーは、約束もない男女が出会う場所かもしれません

── お客様は、どんな風にバーでカクテルを楽しんでいらっしゃいますか?

杉本  こちらのバーはお一人でいらっしゃる方も多いのですが、ここでお友達になられることも多いですよ。バーは、約束もない男女が出会う場所かもしれません。

そこで交わす会話が楽しかったりするわけです。長年、丸の内界隈にお勤めで、常連というお客様もいらっしゃる一方で、最近は一度ここに来てみたかったという若い方もいらっしゃるので。私が会話を繋ぐこともあります。隣の方が嗜んでいるお酒にご興味がありそうなお客様に、その場の空気を意識しながら「この方がお飲みになっているお酒はこのような味わいですが、お試しになりますか?」などです。

── 約束もなしに出会い、美味しいお酒を通じて知り合うって素敵ですね。また長く丸の内にいらっしゃる常連の方には、世代や立場を越えて興味深いお話が聞けそうです。ここはとても落ちついて、寛げる雰囲気ですし。

「東京ステーションホテル」は、JR東京駅丸の内南口改札を挟んで、左右のウィングに分かれていてバーも2つあります。訪れたバー「オーク」は、100年前の赤レンガがむき出しの壁、スーツケース型のテーブルと旅情を誘うオーセンティックなバー。もう一つの「バー&カフェ カメリア」は、戦後1951年に誕生し、杉本さんが最初に務め、オリジナルカクテル「東京駅」を生み出したバーです。
▲ カクテル「東京駅」
── それでは、カクテル「東京駅」をいただけますか? これはどんなカクテルでしょうか?

杉本 これもタンカレーのジンをベースに「スーズ」というハーブのリキュール、グレナデンシロップ(ざくろのシロップ)を合わせています。赤レンガ色は、東京駅の丸の内駅舎のイメージで。タンカレーの頭文字Tと、スーズの頭文字SでTokyo Station と掛け合わせてもいます。

── 深いですね。スーズの甘くて苦い味わいがとてもいいですね。

杉本 甘くて少しほろ苦い旅の思い出を味わっていただきたくて、創ったカクテルです。そんな旅のお話ででもお客様どうしで盛り上がっていただけるのではと思います。
▲ カクテル「1915」
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もう一つ、杉本さんが出してくれたのが東京ステーションホテル開業100 周年を記念したブルーのカクテル「1915」。つまり東京ステーションホテルの開業は、1915年(大正4年)。「この数字の意味って知ってる?」そんなトリビアも会話のアクセントになりそう。日本酒(純米大吟醸「大人の休日」)ベースでココナッツ・リキュール、ブル―キュラソー、スミレのリキュールを使い、美しい色合いと魅惑的な甘さ、そこに最後に絞ったライムが柔らかさを加えます。
終始、にこやかな杉本さんの優雅な手元に見とれ、ひとたびカクテルを口にすると美味しいというひと言では表現しきれない、なんとも言えない奥行を感じます。「この味わいは60年近く前に訪れたニューヨークにルーツがあるんですよ」というような話を、杉本さんと語りながら、いつの間にか隣の人とカウンターでカクテルの美味しさを分かちあっている。「東京ステーションホテル」のバーは、そんな素晴しいカクテルと人との出会いが待っている場所でした。

●杉本 壽(すぎもと・ひさし)

1958年に東京ステーションホテルに入社し、1959年「バー カメリア」に配属。以来、47年以上「バー カメリア」のバーテンダーとして多くのお客様を接客。ホテルのシグネチャーカクテル「東京駅」は、東京駅開業75周年記念に杉本氏が考案。現在もホテルで最も人気のカクテルとして親しまれている。2006年の東京ステーションホテル休館後はグループホテルのバーに在籍。その後、2012年の東京ステーションホテル再開業時に再びホテルに戻りバー「オーク」に着任。
※現在「オーク」は東京都の要請に準じ、酒類は16:00~19:00、2名様まで、90分以内で提供中。7月12日以降の詳しい情報はホテルのHPをご確認ください。
■東京ステーションホテル
HP/東京ステーションホテル【公式】|THE TOKYO STATION HOTEL

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