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2021.04.22

日本を代表するフレンチの女性シェフが、めちゃスゴイ日本酒の「アテ」を作った!?

皆様ご存知、五感の総合芸術、日本酒「長谷川栄雅」のテイスティングルームが、この4月から、伊勢志摩食材を使った新しい食のペアリングをスタート。「海の幸クラッシック」と呼ばれる、ローカル・ガストロノミーの原点を受け継ぐ樋口料理長が生み出すのは?

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文/仲山今日子

伝統のフレンチと夕陽がVIPを魅了し続ける「シマカン」

今月、中井貴一主演でドラマ化される「華麗なる一族」。これまでも何度も映像化されている名作を、巨匠・山崎豊子が執筆したのが、志摩観光ホテル、通称「シマカン」です。なかでもホテルから望む鮮やかな夕陽は、文豪のインスピレーションの源にもなったとか。その物語性あふれるドラマティックな夕景を楽しみに、ぜひロマンを追い求める読者諸氏に訪れていただきたいところです。
▲ 志摩観光ホテル。館内の一番の夕陽スポットは、数々のVIPを魅了した英虞湾の夕陽を寝転んで眺められるテラスでしょう。ワイングラス片手に華麗なる一族ならぬ華麗なる一時(ひととき)を楽しめます。
さて、そんな夕陽のみならず、フランス料理に仕事でも関わっております筆者からしますと、このシマカンが、日本のフランス料理界に与えた影響は小さくありません。約40年前、フランスから輸入した食材を使うのがフランス料理だと信じられていた時代に、地元のアワビや伊勢海老を使ったフランス料理を打ち出し、「海の幸クラッシック」として、あのポール・ボキューズやトロワグロの絶賛を受けた、先々代の高橋忠之料理長。樋口宏江氏はその高橋氏に10年間師事し、その高い能力を見込まれた凄腕料理長なのです。

樋口氏は、日本全国から何世代にもわたって集まる食通のみならず、2016年の伊勢志摩サミットの際には首脳の食事も担当し、その味は、ドイツのメルケル首相が「おいしかった」とわざわざ声をかけにきたほどで、世界の美食を知るVIPのお墨付き。もちろん、筆者も去年滞在した際にいただきましたが、余分な要素を加えず、上品でありながらも、素材の力を真っ直ぐに出した、自然の力強さを感じる印象的な料理でした。

ちなみに2014年に就任した樋口氏は70年の歴史あるシマカンで初の「女性総料理長」。今世界で女性シェフ・女性料理人が注目されている中、日本を代表する女性シェフの一人です。そのお料理が、なんとこのたび東京で食べられるとのこと。ドラマティックな「華麗なる旅」へのプロローグとして、訪れないわけにはいきませんよね?
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フレンチ×日本酒、その相性とは?

そんな樋口氏の味が楽しめるのが、流行に敏感な諸兄なら、すでに一度は耳にされた事がおありでしょう、兵庫県姫路市で創業355年を数える蔵元、ヤヱガキ酒造が東京に作ったアンテナショップ「長谷川栄雅」。創業350年を機に、こだわり抜いて生み出したエクスクルーシヴラインの日本酒「長谷川栄雅」を楽しむためだけに、六本木の一等地に作ってしまったという、控えめにいってもかなりぶっ飛んでいらっしゃるテイスティングルームです。

一日5回×4人限定で、世界のベストレストラン50・日本評議委員長の中村孝則氏が選び抜いたトップシェフが監修した「アテ」(つまみのことですね)も一緒に提供し、極上のペアリングを楽しんでもらう、というのですから、生半可な心意気でないのは、お分かりいただけるかと。監修シェフは4カ月おきに変わり、この4月から7月末までの期間限定で楽しめるのが樋口氏のアテ、というわけ。

そんなこんなで、ちょうどオープン時の準備でいらしていた樋口氏にお話を伺うことに。
シマカンでは、地元三重の日本酒をペアリングコースの一部に組み込まれることもあるそうですが、こういったオール日本酒のペアリングは初めて、とのことですね。日本酒「長谷川栄雅」シリーズについて、どう思われたのでしょう?

樋口シェフ(以下、樋口)  長谷川栄雅のお酒は、全般に、とても澄み切ったピュアなお酒という印象。ですから「アテ」もなるべく邪魔をしないように、と考えました。

── なるほど、一皿目をいただいてみましょう。最初は、長谷川栄雅の中でも最高級ライン、「栄雅」純米大吟醸に合わせての「ガスエビのカクテル」ですね。塩も控えめで、ねっちりとしたガスエビの甘味が生きていますね。栄雅の澄んだ味わいが寄り添う、いいバランスですね。

樋口 地元尾鷲で獲れる今が旬のエビですが、足が早くて、つい最近まで地元でだけ食べられてきたのです。今回特別にご用意しました。
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── こちらは、普段はシマカンに行かないと食べられない味ですものね。次の愛農ポークも飼育頭数が少なくて、縁のある方にしか譲っていないという豚肉だとか。地元だからこそのネットワークで手に入る希少な食材ですね。こちらもとっても優しい味付け。

樋口 味付けは、1%の塩だけなんです。

── 合わせるのは、同じ栄雅でも、特別純米。やや旨味のボディ感が増して、豚肉の味わいにふくらみを持たせてくれて、良いマリアージュですね。でも、シェフとして、食材に味を加えすぎない、というのは、ある意味結構勇気のいることではないですか?

樋口 そうですね。この豚肉は、地元の農業高校の生徒さんが、まさに手塩にかけて育てた豚で、素材として十分なポテンシャルがあると考えました。日本酒も水と米というシンプルな食材でできていますから、塩だけで仕上げた方が、日本酒の魅力を引き立たせることができる、という判断です。
── 納得です。そして、次の食材が……真珠!

樋口 はい、真珠養殖の盛んな地域なので、出荷の際に出る貝柱を炊き込みご飯にしたりして食べるのです。なますのイメージで、人参とラディッシュ、そして甘く煮たみかんを合わせました。

── ほのかに甘い「長谷川」の純米大吟醸三割五分と合わせると、みかんの酸味が良いアクセントになりますね。真珠母貝の貝柱は、サステナブルでもありますし、真珠の美しさにあやかれるプラセボ効果があったりとか……(妄想)。

樋口 次にいきましょうか(笑)。白身魚の風干しです。風干しで水分を軽く抜くことで、旨味を凝縮させました。今日はこれから旬を迎えるイサキです。程よい脂なので、長谷川の純米大吟醸五割に合うかな、と。

── 同じ長谷川でも、五割はやや酸味があるので、優しい白身魚の旨味にいい輪郭を与えてくれますね。おぉ、次はフランス料理らしいアテですね、キッシュ!

樋口 はい、志摩特産のあおさを入れてみました。ヨード感のある海草類は、日本酒との相性もいいのです。

── 旨味がグッと加わった、長谷川の特別純米だからこそ、しっかりとキッシュのバターやアパレイユの卵のコクを受け止めてくれますね。素敵なペアリング、ありがとうございました!
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伝統と革新、伊勢志摩に根付く食の魅力

樋口氏が選んだ食材はどれも、伊勢志摩の魅力あふれる食材ばかり。「フランスで修業したい、と思ったことはないのです。その前に、この土地を理解したい、その思いが強かった」と語ります。産地に足しげく通い、生産者と語りあってきたからこそ、食材の力を信じて、引き算ができるのでしょう。

師と仰ぐ髙橋忠之氏は、2年前に亡くなりましたが、その教えは樋口氏の心の中で生きています。「髙橋料理長の口癖は『火を入れて新鮮、形を変えて自然』伊勢志摩の食材の味をまっすぐに伝える料理です。料理を作る時は、空から、『何やってるんだよ』って言われてないかしら、といつも思うのです」と樋口氏は朗らかに笑います。髙橋氏が伊勢海老やアワビを使った料理で、フランス料理に革命を起こしてから40年。食材の価値は、市場で取引される金額ではなく、地元の食文化をいかに深く反映しているか、という新たな価値観を提案した樋口氏。

こうして、ゲストが求める時代の価値観に適応しつつも、逆に守り続けたいものはなんでしょう。「今おじいさまに連れてきてもらっているお子様が、50年後に来てくださっても『この味だよね』と言っていただける料理。伝統を守ってきてくださった先輩方に、恥ずかしくない料理を作り続けることですね」。
この変化の時代において、守るべきものと変わり続けるもの。大地に根付き、しなやかにその枝を広げてゆく樋口氏の姿は、極上の山田錦を生み出す特A地区の一つの村全体から毎年米を全量買い取り、伝統の味を毎年洗練させて生み出し続ける、「長谷川栄雅」という日本酒、ひいてはヤヱガキ酒造のあり方とも重なるようにもみえました。

ちなみに、伊勢神宮に祀られている、天照大神は、ご存知のように太陽の神様。同時に、おいしいものがたくさんあるから、伊勢志摩の地にお座りになったといわれているそうで、食いしん坊な神様が選び抜いた、豊かな食材のある土地柄ともいえるのかも知れませんね。

さらには神道には、『神人共食』といって、神様と同じものをいただくことで、その御加護をいただく、という考えがあるとのこと。こんなご時世でもありますから、食いしん坊な太陽の神様のご利益をいただきに、ぜひ素敵な方と行かれてみては。

長谷川栄雅 六本木

住所/東京都港区六本木7-6-20 1F
営業時間/12:00~20:00
定休日/火曜日
URL/https://hasegawaeiga.com/
予約・問い合わせ/☎03-6804-1528

●料金/1名5000円。厳選された5種類の酒の肴と、5種類の「長谷川栄雅」の日本酒を提供。前日20:00までに要予約で1組4名まで(1日5組限定)。所用時間は約40分。今回のメニューは7月末まで。

● 樋口宏江(ひぐち・ひろえ)

1971年、三重県四日市市生まれ。1991年、大阪あべの辻フランス料理専門カレッジを卒業、志摩観光ホテルに入社。2008年、ベイスイート開業とともにフレンチレストラン「ラ・メール」のシェフに就任。2014年、都ホテル&リゾーツ唯一の女性総料理長として、志摩観光ホテル「クラシック」「ベイスイート」両館を統括する総料理長に就任。2016年、「G7伊勢志摩サミット2016」ワーキング・ディナーを担当。2017年、農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」ブロンズ賞を三重県初・女性初受賞。

● 仲山今日子(なかやま・きょうこ)

テレビ山梨・テレビ神奈川アナウンサーなどを経て、World Restaurant Awards審査員。現在、食と旅をテーマに日本とシンガポールの雑誌に日本語・英語で執筆中。趣味は秘境旅行、キリマンジャロ登頂など、訪れた国は50カ国以上。ワインエキスパート、日本酒唎酒師の資格取得。IG:kyokonakayamatv

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