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2021.03.28

飲食店のワインは小売り価格の何倍か知ってますか?

5000本以上のコレクションを持つ日本随一のワインコレクターで、多い時は月に3桁の金額をワインに費やす超愛好家だからこそわかる、真にスマートで男女問わずモテるワイン道ってどんなもの? ちょっとイタいワインおたくや面倒くさい半可通など、周囲の反面教師からも学ぶ、ワインのたしなみ方入門です。

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文・写真/吉川慎二 イラスト/Isaku Goto, オキモトシュウ(吉川慎二氏)

緊急事態宣言も一部解除、東京オリンピック・パラリンピックの開催も見えてきました。桜の開花とともに前向きな話題が多く、喜ばしいことです。今回も引き続き「お店でワインをセレクトする際のモテポイント」を一緒に考えていきましょう。

今回は最重要ポイントとも言うべきワインの「値段」の考察です。

モテるワイン道入門~ワインリストの値段はどう決まる?

前回、ワインリストの色々な形式をご紹介しました。

どんなパターンのリストにも共通する要素、それは値段です。え、そんなの当たり前だろうって? すみません……。しかし、この値段という要素をうまく分析できるかが、その日の食事の満足感に大きく影響を与えますのでご注意を。

「ワインリストの値段」って、一体どう決まるのでしょうか? 

まず、ワインの値段とは何なのか考えてみましょう。一部の例外を除き、ワインは生産者のワイナリーから出荷され、海外産であればインポーターを通して、小売店に到着。ネットやお店で消費者の目に触れることになります。

ここで、我々消費者がワインを買うときの価格を小売価格(R)とします。そして、皆さんが、お店でワインをオーダーした際に支払う値段(≒ワインリストの値段)(*1)をワインリスト価格(L)、お店の仕入れ値を原価(B)としましょう。

当然ですが、以下の式が成り立ちます。

原価(B) < 小売価格(R) < ワインリスト価格(L)

この式の意味は次のとおりです。
1. お店はこの世に数あるワインを試飲して、その中からセレクトしてワインリストを作成しています。そして、セラーで最適の状態で保管し、ソムリエがお客様の好みや料理に合ったワインを勧め抜栓・温度管理をして最適なグラスで提供。万が一ブショネ(*2)などの劣化ワインの場合は、交換、等などのサービスをします。当然これらはお店の通常の運営費に加え、さらなるコストを伴います。お店の粗利益(P)=(L)-(B)がこれらをカバーするに十分なものでないとお店が成り立ちません。

2. また、お店のワインの仕入先はインポーターから直接だったり、業務用卸の酒販店だったりしますが、当然ながら消費者が購入する価格よりも安いです。概ね、小売価格(R)の7割程度、つまり原価(B)=(R)x0.7でしょう。

3. 消費者の我々からすれば、家飲みなら小売価格(R)で飲めるワインを、ワインリスト価格(L)で飲むわけですから、その差額(L)-(R)に匹敵するだけの付加価値(V)がなければ割に合わないことになります。どこに付加価値を見出すかは人それぞれですが、大抵の人はお店の素敵な雰囲気や豪華な内装、入手困難なワインがオンリストされていること、絶妙な温度やグラスでのサービス、料理との素晴らしいマッチング、ソムリエの秀逸な知識・技量などを評価するのだと考えられます。
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さて、肝心のワインリスト価格(L) はどうなっているのでしょうか? 

お店のグレードやタイプ、個別のワインにもよりますが、概ね、ワインリスト価格(L)=原価(B)x2.5~4倍、即ち小売価格(R)x1.8~2.8倍程度に設定されていることが多いです。もっとも、個別要因として

・ 高級店は倍率高め、カジュアルな店は低め(高級店の方がお店の運営コストがかかるので)

・ ワインにこだわりのある店の方が、そうでない店より倍率が低め(ワインを熟知したお客様が多く、ワインの在庫回転率も高いから)

・ 安価なワインの方が高額ワインよりも倍率が高め(高価なワインは粗利率を低くしても粗利額は大きいから)

・ ブランド力が高く有名なワインの方が、そうでないマイナーなワインよりも倍率が高め(たくさんのオーダーが期待できるので。マイナーなワインで倍率を高くするとオーダーが入らず長期在庫化するリスクもある)

といった傾向がみられます。
ワイピとしてぜひ重点を置きたいのは、上で述べた付加価値(V)を最大化するワインをいかに選ぶか、というポイントです。お店に行った際にはぜひこの観点でワインをセレクトしてみてはいかがでしょうか?

もちろんワインの金額も頭に入れておかないとお財布がパンクしてしまいますが……その具体的な方法については次回からご紹介していきます。

(*1)

厳密に言うとワインリストの表示価格は消費税を含まず、かつサービス料加算前であることが多い。従って、最終的にはワインリストの価格にサービス料(お店によるが通常10-20%程度)が加算され、さらに消費税10%が加わることになるがここでは勘案しないものとする。

(*2)

ブショネ(bouchonée)とは汚染されたコルク栓により、ボトル内のワインの品質が劣化する現象のこと。主原因はコルクに潜んだ細菌と消毒に用いられる塩素によって生成されるTCA(トリクロロアニソール)という物質で、極低温度でも感知できる強烈な、カビや湿った段ボールのような不快な香りを発する。最近はスクリューキャップや合成コルクの使用、コルクメーカーなどの努力によって減少してきている。

連載過去記事はコチラ

● 吉川慎二 / Shinji Yoshikawa

1962年三重県生まれ。
東京大学法学部卒業後、三井住友銀行、メリルリンチ自己勘定投資部門のアジア太平洋地域統括本部長を経て、現在は投資家・経営コンサルタント。
2007年、日本ソムリエ協会のワインエキスパート資格を取得。12年にシニアワインエキスパートへ昇格し、同年に開催された第5回全日本ワインエキスパートコンクールで優勝。14年にはエキスパート資格者で初の日本ソムリエ協会理事に就任、2018年まで2期4年務めた。漫画「神の雫」に登場する吉岡慎一郎のモデルともいわれ、プロフィールイラストは「神の雫」作画のオキモトシュウ氏によるもの。

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