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2020.12.27

三浦彰の「ラーメンはファッションだ!」

市ヶ谷「ドゥエ イタリアン」のイタリア~ンなラーメン

長年ファッション業界紙で編集長を務めてきた三浦彰さんが、ファッションと同じくらい、いや、ファッション以上に愛しているのがラーメン。その偏愛を語ります。

CREDIT :

文/三浦 彰  写真/秋山 都  

▲「ドゥエイタリアン」の看板メニュー「らぁ麺生ハムフロマージュ」(1180円)。
ファッションの話だが、日本におけるファッション受容は、まず1960年代後半のフランスのオートクチュール・ブランドのライセンス展開から始まった。「ウンガロ」や「カルダン」などがその先駆けだった。そうしたフレンチ・エレガンスが支配的だった日本のファッション消費が大きく変わったのは、1980年代のインポートブームだ。

実は、これはイタリアンブームにほかならなかった。1985年のプラザ合意で、日本は円高を容認して、雪崩のようにインポート品が流入してきた。ファッションでは、「アルマーニ」「ヴェルサーチェ」を両雄にしたイタリアンブランドが市場を席捲した。特にメンズ市場は、イタリアンテーラード一色になった。

「日本人はなんでこんなにイタリアが好きなのだろう?」と思わずにはいられないほどだった。その原因として日本人とイタリア人の体型的な近似が挙げられた。

そしてファッションと同時に空前のイタメシブームが到来した。何よりも麺と米が重要な食材であるイタリア料理が日本人にフィットしたのだ。1980年代、雨後のタケノコのようにイタリアン・リストランテやトラットリア、オステリアが日本中にオープンした。私見だが、日本のイタリアンは、本場イタリアよりも旨いのでないだろうかと最近思う。知り合いのイタリア人に聞いても同じ意見が少なくない。
▲イタリアンレストラン経営からラーメンに身を転じた、シェフの石塚和生氏。
ちょっと、前置きが長くなったが、今回訪れた市ヶ谷の「ドゥエ イタリアン」は2002年にオープンし、イタリアン・ラーメンという新ジャンを開拓した記念すべき店である。

石塚和生氏(1960年生まれ)は、40年のイタリアレストラン経営を捨ててラーメンの世界に入った。イタリアンの店は6軒あり年商も5億円ほどあったというからそれなりに成功していたはずだが、転身の原因になったのが、「ラーメンの鬼」の異名を持つ故佐野実(1951年~2014年)が講師だったTBSのTV番組「がちんこ!ラーメン道」の3期生(2002年末)として出演したことだったという。

ラーメンの魅力に覚醒してしまったのだ。石塚の恩師ともいうべき佐野実は、まさにラーメンに生きた男だった。山岸一雄(東池袋・大勝軒)、山田拓美(三田・ラーメン二郎)とともにラーメン三大偉人に数えられる人物だが、その話はまた別の機会にしよう。
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▲「ドゥエイタリアン」(東京都千代田区九段南4-7-17杉喜ビル)
さて、市ヶ谷駅から靖国通りを九段方面に歩いて5分ほどすると、右側に「ドゥエ イタリアン」の赤と白でカラーリングされた入口が見えてくる。店のインテリアは赤一色!  この赤が、もうまさにイタリアの赤なのである。「フェラーリ」の赤、ファッションなら「ヴァレンティノ」の赤である!  フランスファッションには絶対にない赤である。もう入口だけで、気分はすっかりイタリアンなムードになってくる。
さあ、注文である。何と言ってもこの店で最高の人気を誇る「らぁ麺生ハムフロマージュ」(1180円)を食べなくてはならないだろう。この店の女子率は、ラーメン店としては異例の高さ(80%以上)を誇っているのだが、その原因になっているのがこの「らぁ麺生ハムフロマージュ」である。イタリアンならフロマージュではなくて、フォルマッジヨだろうなんて野暮なことは言いっこなし(笑)。
▲「らぁ麺生ハムフロマージュ」には「美人玄米」なるごはんが添えられてくるので、残ったスープにごはんを入れ、リゾットのようにも楽しめる。
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白い楕円形の器に盛られて料理が到着。しばらくその色彩にうっとりする。生ハムのピンクが両サイドにあって、黄金色のスープの中央に乳白色のフロマージュが浮かび、緑にネギが手前でバランスをとっている。

まず生ハム2切は耳のように丼(楕円形の白い器である)の両淵にかけられている。犬の耳のようでなかなかにユーモラスだ。チャーシューと違って加熱してはいけないという気づかいだろう。

そして黄金色のスープ!  これは鶏から取ったスープをベースに、鶏油(ちーゆ)を巧みに合わせたあっさりなのに滋味深いスープ。そして上質のオリーブオイルの香りも漂う。そして麺は中細。普通の国産小麦に、パスタを作る時に使うセモリナ粉が混じっているような香りがするのは気のせいだろうか。いい香りの麺だ。のど越しもいい。
▲お好みでオリジナル「幸せの黄色い胡椒」(オレンジ風味)をかけて召し上がれ。
そして、中央に鎮座するのが、クリーム状になったチーズ(フロマージュ)だ。これを溶かして、麺に絡めて食べる。なんともイタリアンなのである。ヴィノ・ロッソ(赤ワイン)が欲しくなる。しばらく食べ進んで、生ハムを食す。これもやはり赤ワインによく合う。

ラーメンを食べながらワインを飲むなんて考えもしなかったが、最高のマッチングだ。こういう生きる喜びを歌い上げる感じは、ずばり「ドルチェ&ガッバーナ」の享楽的なファッションを思わせる。「ん~ん、イタリア~ン」。贅沢を言わせてもらえば、これにトリュフをかけたら、まさに天上的な味だろうなあ。
▲「具だくさん塩らぁ麺」(1280円)
この店では、もう一杯ラーメンを食べた。「具だくさん塩らぁ麺」と呼ばれる実にオーソドックスな塩ラーメンである。鶏のスープと鶏油(ちーゆ)の絶妙な掛け合わせが際立つ。これに先ほどの麺。何も奇をてらったところのない素晴らしいバランスの塩ラーメンである。

そして味玉、穂先メンマ、小松菜、チャーシュー5枚が載っている。特筆したいのは、チャーシューである。低温調理されたと思われるが実にしっとりととろける味わい。これほどのチャーシューは食べたことがない。これは肉の扱いをちゃんと会得した料理人の技である。チャーシュー麺は滅多に食べないが、これだけでも食べ続けたいぐらい。
▲サイドメニューの「モッツァレラチーズとバジルの水餃子」(580円)
とにかく2杯の「麺料理」を満喫した。実はモッツァレラチーズとバジルの水餃子なんていうイタリアンな料理もいただいておりました。もう、ワインが進んで困る、困る(笑)。  

● 三浦 彰(みうら・あきら)

ジャーナリスト。福島市生まれ。慶應義塾大学卒業後、野村證券を経て、1982年WWDジャパンに入社。同紙編集長、編集委員を務めた後、2020年9月に退職。現在は和光大学で教鞭をとる。

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