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2020.12.23

禁断の酒「アブサン」の楽しみ方、教えます

ヨーロッパで100年に渡り禁じられていた酒「アブサン」をご存知ですか? ピカソやゴッホ、ランボーなど多くのアーティストに愛された、禁断の味……その魅力を掘り下げます。

CREDIT :

文/秋山 都 写真/吉澤健太

▲ゴッホもこんなアブサンを飲んでいた⁉ 1800年代の貴重なアブサン(Bar Benfiddech所蔵)
アブサンはもともとスイスで生まれた薬草酒。19世紀のヨーロッパで大流行しましたが、「中毒になりやすい」「幻覚症状を生む」などの理由で、1910年代から、2011年まで100年もの長きにわたって禁止されていました。ゴッホが錯乱して自らの耳を切り落としたのも、アブサンの過剰摂取によるものではないかとされ、長らく人をダメにする酒のイメージで語られてきました。

いまは法制が変わり、日本にも輸入され、また国産のアブサンが生産されるなど、多くのファンがいることでも知られています。でも、そもそもアブサンとは何か? どうやって飲むのがおいしいの? 薬草酒コレクターとしても世界的に知られているバーテンダー鹿山博康さんに教えを乞いました。

鹿山さんの薬草園をたずねて

「アブサンについて取材、ですか? じゃあ、埼玉県○○市まで来てください」

鹿山さんのバー「Bar Benfiddich」は新宿にあるはずなのに、おかしいなぁと訝しく思いながらも出かけてみましたが、住所を頼りに着いた目的地は一面のキャベツ畑……それらしきものが見当たりません。
仕方なく、鹿山さんに電話してみました。

「いま、何が見えますか?」
「門のところにトラクターが停まっている民家が見えます」
「あ~、このあたり、みんなトラクター持ってるんですよね」
「……」

途方に暮れていたら、前方から農家の方が。道を訊いてみよう。
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と、思ったら、なんと鹿山さんご本人でした。鹿山さんは薬草酒好きがこうじて、自身が育った自宅の庭(というか広大な原っぱ?)の土地を活用し、薬草園にしているのだそうです。
▲今年で6年目に入り、すっかり生い茂ったジュニパーベリーの樹と。
ここにアブサンの秘密が隠されているのでしょうか。

「まずアブサンというのは薬草酒だっていうことはご存知ですよね? ニガヨモギ、アニス、フェンネルなどを使用しているんですが、そのレシピは数百種類もあってさまざまなんです。でも、なかでも重要なのがニガヨモギ。このニガヨモギの中のツヨンという成分が幻覚症状を引き起こすとされ、アブサンは長年禁止されてきたんですよね」

ということは、ここにその禁断の薬草、ニガヨモギが⁉

「いやいや、合法だし(笑)。ニガヨモギで幻覚を見ようとおもったら、相当量摂取しないとね。普通に食べたり飲んだりしてる量では安全だし、なにも起こりませんよ。」
▲秋に収穫を終えたため、新しい苗木が植えられているニガヨモギ畑にて。
収穫されたニガヨモギは、自宅でお兄さんが使用していた部屋で保存しています。夏はガンガンにエアコンをかけて乾燥させるそうですが、お兄さん、帰省したらびっくりするでしょうね……。
この日は小一時間ほど薬草園を歩きながら、ハーブや薬草を収穫。この後、お店でフレッシュなカクテルとして使用するのだそうです。
▲酸葉(すいば)、かきどおし、クロモジ(楠)などを収穫。
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◆Bar Benfiddich(東京・新宿)

さあ、摘んだばかりのハーブや薬草を抱えて出勤したのは、鹿山さんがオーナーバーテンダーを務めるバー「Bar Benfiddich」です。World's 50 Best BarsやAsia's 50 Best Barsにも例年ランクインしていることでも知られている名門バーは、このように評価されています。

「Hiroyasu Kayama's charming bar resembles an apothecary thanks to numerous herbal infusions and unusual potions that line the shelves. Clad in a white jacket, the bartender can often be found grinding roots, herbs and spices grown on his family's own plot of land, which add complexity to aromatic cocktails based on gin, whisky, absinthe and amaro. They are also used in homemade liqueurs – the bar is well-known for making its own version of Campari.」

バックバーに並ぶたくさんのハーブウォーターや珍しい薬草酒のせいか、鹿山博康さんの魅力的なバーは、まるで薬局のよう。純白のジャケットに身を包んだ鹿山さんは、自らの薬草園で育てたボタニカルの根っこ、ハーブ、スパイス類をすり鉢であたり、ジン、ウイスキー、アブサンをベースにしたアロマティックなカクテルに仕上げます。自家製のリキュールも使用し、ユニークなカンパリをつくることでも有名。(筆者によるテキトー訳)

▲フランスの骨董屋で手に入れたというアブサンファウンテン(左)。
麦わら帽を脱ぎ捨て、真っ白なジャケットに身を包んだ鹿山さんは、バーテンダーに変身! 
ではここから、改めてアブサンの楽しみ方について教えていただきましょう。

「まず、基本的な飲み方はアブサンファウンテンを使ったもの。ストレイナーに小さな角砂糖をのせ、水を一滴ずつ垂らしていくことで、アブサンが次第に白濁していく様を視覚的にも楽しめます」
▲アブサンファウンテン1600円
水を加えることで白濁するのはぺルノ(フランス)、ウゾ(ギリシャ)などほかの薬草酒と同じ。初夏の野原のような青い草の香りがして、口に含むとほんのり甘い……おいしいです。

「白濁するのはアニスやフェンネルに含まれる精油の成分、アネトールによるものです。甘く、清涼感のある香りは独特で、これがお好きという方も多いですね」

たしか、角砂糖に火をつける飲み方も見たことあります。

「あれはボヘミアンスタイルというのですが、2000年代になってからチェコのパリピが考案したもの。アブサンの伝統的な飲み方というわけではありません」

どんなタイミングで飲めばいいのでしょうか?

「いつでも(笑)。海外では、食欲を増進させてくれるとして食前に飲む方が多いでしょうか。でも、食後に飲むと消化が促進されるのか、胃腸がすっきりとするんですよ」
▲鹿山薬草園産のニガヨモギをカクテルに。
では、アブサンを使用したカクテルもご紹介いただきましょう。
▲この日収穫したカキドオシや酸葉(すいば)を使用したニガヨモギギムレット1800円
▲鹿山さんオリジナルのアブサンを使用した、ウイスキーベースのカクテル「サゼラック」1600円。
薬草酒好きが高じた鹿山さんは千葉のMitosaya薬草園蒸留所とコラボして、オリジナルのアブサン(上)を作ったのだとか。スイスとの国境付近にあるフランスの山間の町、ポンタルリエで行われるアブサンのお祭り「Absinthiades 2019」でも、初の国産アブサンとして出品。熱烈に歓迎されたそうです。

フレッシュなボタニカルにこだわり、とくにフェンネルは、オイリーさを感じるくらいぷっくりふくらんだ種を使うため、夏期の数日おきに種だけを収穫するという手間のかかる作業を行い、丁寧に造られたアブサン……飲んでみたいならBar Benfiddichへどうぞ。

Bar Benfiddich(バー ベンフィディック)

住所/東京都新宿区西新宿1-13-7 大和家ビル 9F
予約・問い合わせ/03-6258-0309
営業時間/18:00〜22:00
     *営業時間は変更の可能性があります。お店にお問い合せください。
定休/日曜・祝日
チャージ/なし

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