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2020.08.07

バブル時代の思い出が美しく蘇る!? レストラン「クラージュ」に若き女性シェフが

数々のレストランで伝説のサービスマンとしてその名を轟かせた相澤ジーノ氏のレストラン&バー「クラージュ」。華やかな夜の遊び場の雰囲気を纏った大人の社交場に若き女性シェフが着任しました。

CREDIT :

文/仲山今日子

もはや歴史のひと駒となってしまったバブル景気。とはいえ今となってみれば、当時はパワフルで、底抜けに明るくて、そして色気があったと懐かしむ声も少なくはないようです。そんな時代に、遊び慣れた男の一人であった相澤ジーノ氏が、大人の社交場として麻布十番に2018年にオープンしたレストラン&バーが「クラージュ」。
クラージュ
狭い路地を入って現れる黒塗りの壁と、クールなエントランスに続くドアを開ければ、赤と木目がアクセントになった、温かみがありつつも、スタイリッシュな空間が広がります。きっと、あの頃にタイムスリップしたようなワクワク感を感じられるはず。

相澤氏といえば、広尾のイタリアン「イル・テアトリーノ・ダ・サローネ」、劇場型レストラン「81」、小山薫堂氏率いる和食「下鴨茶寮」などで、マネージャーを務めた、伝説のサービスマン。「レストランは、笑顔になって帰っていただく場所」という氏の美意識を集約させたこの「クラージュ」、仲間と、あるいは1人でふらりと、も良いのだけれど、意中の彼女と訪れるのを強くオススメしたいところ。
クラージュ
「レストランって、いいオトコをよりカッコ良く、綺麗な女性をより美しく見せてくれる場所でしょう?」という相澤氏が、シチュエーションに応じたスマートなサービスで、さり気なく、あなたのエスコートがより輝く援護射撃をしてくれるハズ。相澤氏は基本、毎日お店にいるので、回を重ねると、まるで「ジーノさんチ」に行くような気分になってきちゃいます。

だからと言って、常連さんだけで盛り上がる店ではないのでご安心を。初めて足を踏み入れても、なぜか不思議な居心地の良さを感じられます。
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クラージュ

「娘のような」若き女性シェフが就任して料理が一新

そんなクラージュに、この8月から、新しく女性シェフが就任し、お料理が一新。相澤氏が「娘のような存在」という、古屋聖良(せいら)シェフ。

3年前に、マンダリンオリエンタルホテル東京で行われた、アジアNo.1レストラン「ガガン」の、ガガン・アナンドシェフのポップアップの際、予約しようとしたものの抽選に漏れてしまった古屋シェフは、どうしても料理が食べたいと、ガガンシェフに直接英語でメッセージを送り、直前キャンセルの席に滑り込んだそう。その際に相澤氏が同じテーブルだったのがとのそもそもの出会いなんだとか。

そんな行動力に相澤氏が惚れ込み、いつかは一緒に仕事を、と考えていたそうですが、実際の彼女は、件のエピソードが信じられないほど、とってもほんわかとした、何かの天然水のCMに出したいような爽やかさ。
相澤ジーノ 古屋聖良 クラージュ
▲古屋聖良シェフ(左)と相澤ジーノ氏。
大学卒業後、「手に職を」と考え、専門学校を経て学士会館内のフランス料理店へ。朝8時から夜の10時まで、という長時間労働、きっと音をあげる若者も少なくないだろう中で6年間勤め上げ、昨夏から、オーストラリアの有名店「Brae」へ。そのキャリア、さらには2016年の若手シェフの国際コンペティション「サンペレグリノ・ヤングシェフ」で予選を勝ち抜き、日本代表となったことからも、ただの控えめな女性でないことがわかって頂けるでしょうか。
このコンペティション、筆者も何度かアジア大会の決勝審査の場に立ち会ったことがあるのですが、制限時間の中で料理を作るだけでなく、審査員がランダムに会場内を回り、調理過程を視察・試食・質問、それが評価にも反映されるうえ、料理を提供する際には自分の料理を的確に表現する能力も必要とされ、審査員から入るコメントも非常にシビアという、側で見ているだけもなかなかに手に汗握る大会。

そんな経験を経ても、ふんわりとした優しさをまとった彼女は、きっと、内にしなやかな強さを秘めているのでしょう。
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全体の緻密なバランスが際立つ料理。特筆すべきは軽やかな食後感

クラージュ
▲茨城産鴨と黒トリュフのサンドイッチ
一皿目の「茨城産鴨と黒トリュフのサンドイッチ」は、手でいただく小さなサンドイッチ。コロナを受けてテイクアウトで販売を始めた天然酵母食パン、「クラージュ・ブレッド」が好評ですが、同じ生地の食パンを小さく焼き上げ、間に低温調理した鴨肉と、たっぷりと、香り高いオーストラリア産の黒トリュフを挟んで。
クラージュ 古屋聖良
▲広島かなわ水産の牡蠣
「広島かなわ水産の牡蠣」は、濃厚な味わいの牡蠣をバターソテーし、ゴボウの素揚げを乗せて。熱々の温度感もうれしい。
ドリンクは相澤氏のお任せでいただきましたが、この料理のペアリングは特に印象的でした。

ドンペリニョンの前醸造責任者、リシャール・ジェフロワ氏が作った日本酒、IWA。話題性抜群の一本を揃えているのも、さすがです。「牡蠣を3口噛んだらこちらを一口、という飲み方がオススメです」と相澤氏。きりりとした冷酒から、バターソテーした熱々の牡蠣の温度で米の複雑味が立ち上り、豊かな旨味も感じます。シャンパン醸造者が作る日本酒ですが、酸はそこまで強くありません。
クラージュ 古屋聖良
▲熊本産 赤ムツ
熊本の赤ムツは、フライパンで皮目を焼き付けてから、サラマンダーの下でじっくりと火を入れて。身に綺麗なナクレ(真珠色の層)ができる、丁寧な火入れです。すっきりとした赤ムツと、鯛、貝の「出汁」は、和な味でほっこり。下には同じ出汁で炊いた大根、上には生の大根の細切りとカイワレ大根という、同系の素材でミニマルにまとめています。
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クラージュ 古屋聖良
▲パスタ 紫蘇のジェノベーゼ
ポーションを選べるのがうれしい、シメのパスタはシソのジェノベーゼ。若い古屋シェフの感性が生きたこちらは、シソにオリーブオイル、胡桃、ほんの少しだけパルミジャーノという軽やかなソースに、上からたっぷりとシソの千切りを乗せ、コースの最後にふさわしい、さっぱりといただけるパスタに仕上がっていますよ。
全体的に、食材の持ち味を引き出した、素直にいただける料理で、ワインと合わせるとよりその魅力が引き立ちます。そして、特筆すべきは、食後感の軽やかさ。お腹はちょうど良くいっぱいなのに、翌日にもたれないのは、メインの肉にはしっかりとしたソースを合わせるのに対し、魚は出汁ベースの軽いソースにするなど、全体のバランスが緻密に考えられているから。これなら、カロリーを気にする彼女ともフルコースがしっかりと楽しめるのでは。
クラージュ 古屋聖良
▲鹿児島産天然真鯛と桃のタルタル 梶谷農園のハーブ
メニューは古屋シェフと相澤氏が話し合って決めているそうですが、どの料理もモダンなルックスながら、根底にあるどこか懐かしい味わいに、グッとハートを掴まれそう。お試し感覚でカジュアルに楽しめるランチや、毎週金曜日には、密を避けつつ、30歳以上のオトナ限定DJイベント「R30」も行われているから、チェックしてみて下さいね。

withコロナの時代は、「なんとなく人に会う」のではなくて、「どうしても会いたい人に会う」時代。「誰かと過ごす時間」の貴重さを知り、愛情を持って迎えてくれる、こんなレストランのありがたみが、一層心にしみそうです。

■クラージュ

住所/東京都港区麻布十番2-7-14 1F
営業時間/17:30~23:00(L.O.21:00)
定休日/日祝
HP/https://gg4a900.gorp.jp/
予約・お問合せ/TEL 050-3313-9628

● 仲山今日子(なかやま・きょうこ)

テレビ山梨・テレビ神奈川アナウンサーなどを経て、World Restaurant Awards審査員。現在、食と旅をテーマに日本とシンガポールの雑誌に日本語・英語で執筆中。趣味は秘境旅行、キリマンジャロ登頂など、訪れた国は50カ国以上。ワインエキスパート、日本酒唎酒師の資格取得。IG:kyokonakayamatv

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