2020.07.24
アマン京都でいただく「琳派」にインスパイアされた贅沢な日本料理とは
昨年の開業以来、京の都で非日常を演出する特別な宿としてすでに高い評価を得ている「アマン京都」。そのメインダイニング「鷹庵」では、かつてこの地に居を構えた「琳派」の始祖、本阿弥光悦にちなんだ日本料理をローンチ。さてどんな工夫が凝らされた料理を楽しめるのだろう。
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文・写真/仲山今日子 写真協力/アマン京都
かつて「琳派」の創始者、本阿弥光悦が居を構えた土地で
アマン京都の敷地は元々、西陣織の織元で、考古学とペルーのマチュピチュ、そして石をこよなく愛する前オーナーが数十年の歳月をかけて作り上げた庭園。数トンもある丹波石を石畳や石垣に贅沢に使い、まるで古代の遺跡に迷い込んだようです。
更に約2万4000平方メートルの敷地に、わずか24室の客室、2棟のパビリオン棟と呼ばれるスイートのみということもあり、雨の後には静寂の中、石を伝わる水音がひそやかに響く、まさに自然の只中の静寂を感じるお籠り旅にもぴったりなロケーションです。
そんな歴史的な背景もあって、日本料理のメインダイニング「鷹庵」のコンセプトは「琳派」。時代を超えて愛され続ける光悦のスタイルにインスパイアされた料理をと考え出したのは、金沢のミシュラン2つ星レストラン「銭屋」の主人で、農林水産省の「日本食普及の親善大使」など、流暢な英語を駆使して世界で日本料理、そしてその背景にある日本文化の伝道師として活躍する、高木慎一朗氏。
元々、海山の自然に恵まれ、新鮮な食材が手に入る金沢の加賀料理は、素材を生かしたシンプルな料理が持ち味だそうです。
京都で料理を学び、金沢を起点に世界の美食家を相手に料理を作ってきた高木氏、実は高校時代にNYに留学し、150本の深紅の薔薇の花束とジェームズ・ボンドのセリフで、ブロンドのガールフレンドを射止めたという、なんともロマンティックな逸話の持ち主。シンプルでありながら、どこか色気と遊び心を感じる料理の数々をのぞいて行きましょう!
鱧、本鮪、黒鮑……それぞれの料理に驚きが用意されている
24個すべて形は異なり、どの面を使って盛り付けるのも自由。「器になることをやめた器」という銘もなかなかにロックです(その姿は後ほどお見せします)。
そして、特筆すべきはこちらのドリンクペアリング。ソムリエの今井亮介氏が選んだ、日本酒とワインを織り交ぜたアルコールペアリングでは、すっきりとした米酢の握り寿司に対して、赤酢の酒粕の香りを彷彿とさせる、「舞美人 山廃純米 SanQ」を合わせるなど、料理の味わいにふくらみと楽しさを加えてくれるものでした。
40年も前に食前酒にブルゴーニュの白ワインを出すなど、進取の気性に富んだ父が生み出した銭屋のひと皿で、自らの「来し方」を表現したと言えるでしょう。
削ぎ落とすことでより本質に近づき、程よい遊び心も忘れない
「削ぎ落とすことでより本質に近づき、程よい遊び心も忘れない」高木氏の料理の目指す方向性は、同時にそんな琳派のスタイルとも重なる気がします。
静かな味わいで始まり、後半に味わいのボリュームが上がるように組み立てられたコース構成は、食べ疲れない、オトナにうれしいバランス。
ウィズコロナの新時代は、無駄を削ぎ落としたシンプルでヘルシーなライフスタイルが注目されそう。素材を活かし、最小限の塩分で味付けする高木シェフの引き算のスタイルは、鷹峯という土地のありようと、世界が注目する時代性の共通項を食でつなぎ、新たな時代に向けて提案しているようでもありました。
■鷹庵(たかあん)
住所/京都府京都市北区大北山鷲峯町1番 アマン京都内(宿泊者でなくても食事利用可)
営業時間/ランチ12:00〜15:00(L.O.13:00)、ディナー18:00〜22:00(L.O.20:00)
定休/なし
HP/https://www.takaan.jp/
完全予約制・お問い合わせ/TEL 075-496-1335
※ 昼/おまかせ 1万5000円(税・サ別)
夜/おまかせ 3万円(税・サ別)
高木総料理長がカウンターに立つ日は限定されています。
● 仲山今日子(なかやま・きょうこ)
テレビ山梨・テレビ神奈川アナウンサーなどを経て、World Restaurant Awards審査員。現在、食と旅をテーマに日本とシンガポールの雑誌に日本語・英語で執筆中。趣味は秘境旅行、キリマンジャロ登頂など、訪れた国は50カ国以上。ワインエキスパート、日本酒唎酒師の資格取得。IG:kyokonakayamatv