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2020.07.24

アマン京都でいただく「琳派」にインスパイアされた贅沢な日本料理とは

昨年の開業以来、京の都で非日常を演出する特別な宿としてすでに高い評価を得ている「アマン京都」。そのメインダイニング「鷹庵」では、かつてこの地に居を構えた「琳派」の始祖、本阿弥光悦にちなんだ日本料理をローンチ。さてどんな工夫が凝らされた料理を楽しめるのだろう。

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文・写真/仲山今日子 写真協力/アマン京都

▲鷹庵は石門の外に位置する、離れのような作り。豊かな自然に彩られた空間に身を委ねるのも、とっておきの食の旅への前奏曲。
昨年11月、日本で3つめのアマンとして開業した「アマン京都」。悠久の歴史に根差した圧巻の日本的ラグジュアリーを実現しているこちらの宿では、4月オープンのメインダイニング「鷹庵」において、「琳派」にインスパイアされた日本料理をローンチ。心に染み渡る緑豊かな森の庭というロケーションも相まって、日常の憂さをきれいに忘れさせてくれる至高のグルメ旅となること間違いなしです。

かつて「琳派」の創始者、本阿弥光悦が居を構えた土地で

京都駅からタクシーで約30分、金閣寺のすぐ隣に佇むアマン京都。歴史を紐解くと、実はアマン京都が建つ鷹峯は、かつて「琳派」の創始者、本阿弥光悦が住み、多くの芸術家が生まれた、アートとも縁の深い場所。

アマン京都の敷地は元々、西陣織の織元で、考古学とペルーのマチュピチュ、そして石をこよなく愛する前オーナーが数十年の歳月をかけて作り上げた庭園。数トンもある丹波石を石畳や石垣に贅沢に使い、まるで古代の遺跡に迷い込んだようです。

更に約2万4000平方メートルの敷地に、わずか24室の客室、2棟のパビリオン棟と呼ばれるスイートのみということもあり、雨の後には静寂の中、石を伝わる水音がひそやかに響く、まさに自然の只中の静寂を感じるお籠り旅にもぴったりなロケーションです。
▲足を踏み入れると、カウンター11席、テーブル24席(うち6席の半個室が2室あり)、ケリー・ヒルらしい、スタイリッシュで開放感あふれる作り。
そしてこの豊かな物語を秘めた日本の美を、スタイリッシュに仕上げるのは、世界各国のアマンをデザインしてきた、ケリー・ヒル・アーキテクツ。「色は自然が与えてくれるもの」というケリー・ヒルの言葉が表すように、自然の色を引き立てる、ダークブラウンとベージュ、木目というミニマルな色使いとシンプルな直線美。

そんな歴史的な背景もあって、日本料理のメインダイニング「鷹庵」のコンセプトは「琳派」。時代を超えて愛され続ける光悦のスタイルにインスパイアされた料理をと考え出したのは、金沢のミシュラン2つ星レストラン「銭屋」の主人で、農林水産省の「日本食普及の親善大使」など、流暢な英語を駆使して世界で日本料理、そしてその背景にある日本文化の伝道師として活躍する、高木慎一朗氏。
▲「お客様に出す1秒前まで料理を進化させたい」という、高木氏。自然に抱かれたこの場所で「旬」を超えた、今この瞬間の「瞬」を表現してゆく。
急逝した父が金沢で創業した銭屋を継ぐために、大学を卒業してすぐ、京都吉兆で修業時代を過ごした氏にとって「京都は日本料理の総本山。洗練されたしきたりや様式美があります。その形を崩さずに、今の時代感を取り入れた料理を生み出したい」と語ります。その根底にあるのは「シンプルさ」。

元々、海山の自然に恵まれ、新鮮な食材が手に入る金沢の加賀料理は、素材を生かしたシンプルな料理が持ち味だそうです。

京都で料理を学び、金沢を起点に世界の美食家を相手に料理を作ってきた高木氏、実は高校時代にNYに留学し、150本の深紅の薔薇の花束とジェームズ・ボンドのセリフで、ブロンドのガールフレンドを射止めたという、なんともロマンティックな逸話の持ち主。シンプルでありながら、どこか色気と遊び心を感じる料理の数々をのぞいて行きましょう!

鱧、本鮪、黒鮑……それぞれの料理に驚きが用意されている

ショープレートは、琳派の意匠を受け継ぐ現代作家、中村卓夫氏の作。琳派らしい大胆な金彩使いと抽象化されたモチーフ、琳派独特の二曲一双の屏風を思わせるようなデザインです。

24個すべて形は異なり、どの面を使って盛り付けるのも自由。「器になることをやめた器」という銘もなかなかにロックです(その姿は後ほどお見せします)。
▲「先付 白芋茎 甘海老」一口甘海老をいただくと、昆布締めしてあるかのような、濃厚な旨味に圧倒されます。「じっくり寝かせてから、殻を剥いただけですよ」と、高木氏。
夏らしい波千鳥の輪島塗の椀で供される椀盛は、夏の京都の定番、鱧とじゅんさいですが、ここで高木氏は定番の梅肉ではなく、ピンクペッパーを一粒。果肉の甘酸っぱさ、柑橘を思わせるすっきりとした味わいのピンクペッパーは意外にすんなりと馴染み、ちょっと見ヤンキーっぽかった同級生が、話したら意外に知的な話題を連発、的なギャップに萌えそうです。
▲「椀盛 鱧 蓴菜」 意外性がありつつも、上品な鱧の味を最大限楽しめる、まさに素材を生かしたバランス。
そして、利尻昆布と本枯節でとったお出汁の清冽な味わい。通常一番出汁には仕上げに薄口醤油をほんの少し入れるのが常ですが、あえて塩だけで味付け。引き算で、主役の鱧の上品な味を最大限楽しめる塩梅です。
▲「造里 甘鯛 赤雲丹」 醤油ではなく、すだちのみで。甘鯛にごくわずかに塩をしただけ、甘鯛の品の良い脂、そして赤雲丹のとろりとした甘みとコクが楽しめます。
アバンギャルドなルックスに、これ、どうやって使うんでしょ?と思っていた、自らの存在を全否定する銘がついたロックな「器」(と呼んだら怒られそうです)が握り寿司の皿として再登場。
▲「箸休 鮪 水茄子」酢飯の米は京都南部・八幡市産のヒノヒカリ、米の甘みがしっかりと感じられます。
本鮪のヅケには芽ネギが添えられ、生の鮪が苦手な外国人でも美味しく食べられそう。また、水ナスの浅漬けを使った寿司は、ベジタリアンの方にも対応できるもの。

そして、特筆すべきはこちらのドリンクペアリング。ソムリエの今井亮介氏が選んだ、日本酒とワインを織り交ぜたアルコールペアリングでは、すっきりとした米酢の握り寿司に対して、赤酢の酒粕の香りを彷彿とさせる、「舞美人 山廃純米 SanQ」を合わせるなど、料理の味わいにふくらみと楽しさを加えてくれるものでした。
焼き物は旬の黒鮑、島根県産の約400gと大ぶりのもの。4〜5時間蒸してから、肝と一緒に酒と塩だけでじっくりと煮込み、表面をフライパンで香ばしく焼き上げた鮑のステーキ。
▲鮑を見せる高木氏。「出来立ての温度感も伝えたい」と語ります。
▲「焼物 黒鮑」酒と塩というシンプルな調味料に留め、肝から出る香りや旨味を身に戻すイメージで、鮑らしさを凝縮させた味わいに。
原型は、高木氏の亡父が1974年に生み出した料理です。世界で合計20ものミシュランの星を持つアラン・デュカス 氏とのコラボレーションの際に言われた「どこから来たのか分からなければ、どこに行くのかも分からない」という言葉が心に残っているという高木氏。

40年も前に食前酒にブルゴーニュの白ワインを出すなど、進取の気性に富んだ父が生み出した銭屋のひと皿で、自らの「来し方」を表現したと言えるでしょう。
▲「強肴 平井牛治部煮」高木氏も海外で披露するなど、思い入れの深い金沢の郷土料理である治部煮を、京都・丹波で平井氏が育てている黒毛和牛、平井牛で。

削ぎ落とすことでより本質に近づき、程よい遊び心も忘れない

江戸初期に活躍した本阿弥光悦と俵屋宗達を祖とする琳派は、そのスタイルを慕う人々のもとで自発的に受け継がれていきますが、代表作家の1人、尾形光琳が生み出した形のひとつに「光琳菊」があります。菊の花弁をひとつ一つ描くのではなく、菊の花のアウトラインを丸く描くことで、ふっくらとした菊の花をよりリアルに感じさせる技法です。

「削ぎ落とすことでより本質に近づき、程よい遊び心も忘れない」高木氏の料理の目指す方向性は、同時にそんな琳派のスタイルとも重なる気がします。

静かな味わいで始まり、後半に味わいのボリュームが上がるように組み立てられたコース構成は、食べ疲れない、オトナにうれしいバランス。
▲「毛蟹御飯」 季節の毛蟹を、その味噌と共にたっぷりと。盛り付けた後の仕上げには、軽やかな香りのサマートリュフを削りかけて。
実際にいただいてみて思い浮かんだのは、以前アラン・デュカス 氏に聞いた言葉。「魚や野菜を中心とした、低脂肪、低糖、低塩の料理は、地球環境にも、人の健康にも良いものだ」。実際に氏のパリのプラザ・アテネにある3つ星店では、塩分を控えた出汁や炊き込みご飯を思わせる料理が提供されていました。

ウィズコロナの新時代は、無駄を削ぎ落としたシンプルでヘルシーなライフスタイルが注目されそう。素材を活かし、最小限の塩分で味付けする高木シェフの引き算のスタイルは、鷹峯という土地のありようと、世界が注目する時代性の共通項を食でつなぎ、新たな時代に向けて提案しているようでもありました。

■鷹庵(たかあん)

住所/京都府京都市北区大北山鷲峯町1番 アマン京都内(宿泊者でなくても食事利用可)
営業時間/ランチ12:00〜15:00(L.O.13:00)、ディナー18:00〜22:00(L.O.20:00)
定休/なし
HP/https://www.takaan.jp/
完全予約制・お問い合わせ/TEL 075-496-1335

※ 昼/おまかせ 1万5000円(税・サ別)
  夜/おまかせ 3万円(税・サ別)
高木総料理長がカウンターに立つ日は限定されています。

● 仲山今日子(なかやま・きょうこ)

テレビ山梨・テレビ神奈川アナウンサーなどを経て、World Restaurant Awards審査員。現在、食と旅をテーマに日本とシンガポールの雑誌に日本語・英語で執筆中。趣味は秘境旅行、キリマンジャロ登頂など、訪れた国は50カ国以上。ワインエキスパート、日本酒唎酒師の資格取得。IG:kyokonakayamatv

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