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2020.05.31

生ビールの「生」とはいったい何のことか?

「生ビール」はお店でしか飲めないという大誤解

日本人が大好きな「生ビール」。「とりあえず生」は日常の風景になっています。ところで、「生ビール」ってどんなビールのことかご存知でしょうか? 瓶や缶に入ったビールではなく、お店のタップや樽から直接注がれるビールのことを「生ビール」と思っている人も多いかもしれませんが、実は違うのです。

CREDIT :

文/岩田リョウコ(文筆業・イラストレーター)

写真:shutterstock
記事提供/東洋経済ONLINE
ZoomやLINEを駆使したオンライン飲み会がはやっています。距離は離れていても友人たちと“顔を合わせて”飲むお酒は楽しいものです。一方、居酒屋やバーでの飲み会ができず「生ビールが恋しい……」なんて嘆きをSNSでよく目にします。

ところが、「生ビール」はコンビニやスーパーでカンタンに手に入るのです。拙著『エンジョイ! クラフトビール 人生最高の一杯を求めて』でも詳しく解説していますが、ビールの「生」とはどんなものかを紹介していきたいと思います。

新鮮だから「生」ビールは間違い

日本人が大好きな「生ビール」。「とりあえず生」は日常の風景になっています。しかしながらコロナ禍の現在では外で飲む機会が激減。「生ビール」を飲むことができず肩を落としている方も多いと思います。

ところで、みなさん「生ビール」ってどんなビールのことを言うのかご存知でしょうか? 新鮮な響きなので、瓶や缶に入ったビールではなく、お店のタップや樽からジョッキやグラスに直接注がれるビールのことを「生ビール」と思っている人も多いかもしれませんが、実は違います。

「生」は新鮮さのことではないんです。そしてなんと家飲みでも、「生ビール」は飲めるのです。では生ビールの「生」っていったい何のことなんでしょう? 

生の意味を探るには、まずビールの醸造工程を知る必要があります。ビールをつくるのに必要な原料は4つ。水、モルト(麦芽)、ホップ(アサ科のつる性多年草)、そして酵母(イースト)です。
まず麦を発芽させてから焙燥して、芽を取り除きます。モルトの焙燥温度によってビールの色が変わってきます。高温で深煎りすると濃い色のビール、低温で浅煎りすると淡い色のビールが出来上がります。

その後は粉砕です。モルトを粗挽きにしてからお湯に浸して「マッシング(糖化)」というプロセスに入ります。モルトにはもともと糖がほとんどないので、マッシングすることで酵素がモルトのデンプンを糖に変えてくれます。ビールにアルコールと炭酸を発生させるために糖はなくてはならないものです。
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次の工程は?

お湯と混ざったモルトはいわゆるお粥のような状態。それを濾して麦汁だけを取り出す作業を「スパージング」と言います。この工程で最初に出てきた麦汁こそが、1番搾り麦汁です。紅茶のティーバックと同じで、最初は濃く出ますが、濾す回数を重ねると麦汁もだんだん薄くなっていきます。
次は麦汁を煮込む作業です。まだここではただの甘い麦汁なので、苦味をつけるためにホップを投入します。煮込むのは、ホップの苦味を十分に浸透させるため、また殺菌のためです。煮込みが終わると次は発酵です。発酵ステージに行く前に一気に麦汁を冷やしてから、発酵タンクへと移動させます。冷やすのは菌の増殖を防ぐためです。発酵で酵母を使うため、ほかの菌の影響がないようにしなくてはいけないのです。

マッシングで出た糖を酵母が食べます。酵母が糖を食べると、アルコールと炭酸ガスが発生します。こうしてやっとビールの最終形態に近づいていくのです。発酵期間はビールのスタイルにもよりますが、ラガーで10日、エールで5日間ほどです。発酵が終わったビールは熟成・貯蔵して寝かせます。
そしてここでやっと「生ビール」と「生ではないビール」の分かれ道がやってきます。糖を食べてお腹いっぱいになった酵母は沈殿しています。その酵母を取り除く工程で、熱で酵母の働きを抑える熱処理法と、濾過で取り除く、または酵母をそのまま残しておく無濾過という非熱処理法があります。

熱処理を行っていないほうを「生ビール」と呼びます。熱を加えていない「生」ということです。クラフトビールは瓶の中でさらに二次発酵を行うため、無濾過で酵母をそのままにしているものも多いです。
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クラフトビールもオススメ

すべての工程を終えたビールは缶、瓶、樽などに詰められて、われわれの元へやってきます。ですので、お店でタップから注がれるビールでも、コンビニで家飲み用に購入したビールでも「生ビール」を選ぶことができる……のですが、実を言うと、日本では「生ビール」が主流で「熱処理ビール」のほうが少ないのです。

「キリンクラシックラガー」「サッポロラガービール」などの熱処理ビール以外は、「生ビール」ということになります。
キンキンに冷えたジョッキで飲むビールを「生ビール」だと思っていた方も多いと思いますが、そうではないことをわかっていただけたと思います。
とはいえ、家飲みのビールに飽きてしまったという方もいるかもしれません。そんな方には、クラフトビールがおすすめです。

スーパーやコンビニでも気軽に無濾過の「生クラフトビール」を飲むことができますし、いまはクラフトビールのブルワリーがテイクアウトをしていたり、家飲み用にオンライン販売を行っているので、家にいながらさまざまな種類のビールを楽しむことができます(参考:『家飲みをちょっと格上げする「ビール」の選び方』)。

ビールの種類は実に150種類以上。自宅でいろいろな「生ビール」にチャレンジしてみてください。

『エンジョイ! クラフトビール 人生最高の一杯を求めて』

飲み慣れたいつものビールから飛び出して、今まで飲んだことのないスタイルのクラフトビールを飲んでみよう。舌が踊るようなお気に入りのビールやスタイルが見つかるはず。著者/スコット・マーフィー、岩田リョウコ。KADOKAWA刊。本体1500円+税
https://www.kadokawa.co.jp/product/321902002143/

当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です
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