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2024.01.14

【第47回】 ラーメン界の師弟

ラーメンの進化は師弟のパスが美しく繋がれてこそ

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(LEON.JP)

2015年のワールドカップで日本が優勝候補の南アフリカを破ったことをきっかけに、ラグビーが大人気である。2019年には日本が開催地となった。私も豊田まで試合を観に出かけたほどだ。

ラグビーはルールが複雑なのだが、最もシンプルで大切なことは、ラグビーの楕円のボールを味方にパスする時、選手は後ろにボールを投げなくてはならない。自分より前に出ている選手にパスすると「スローフォワード」という反則を取られてしまう。
端的に言えば、ボールを持った選手の後ろで受け取り、受け取った選手はボールをパスしてくれた選手の前に進んでトライを目指すのだ。
私は、このルールを知った時、師匠と弟子の関係をそのまま表していると思い、ラグビーがますます好きになっていった。
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ラーメン 山本益博 LEON.JP 青空
▲ 「ミシュラン東京2024」で3年ぶりの3つ星となった鮨「青空(はるたか)」の高橋青空さん。
昨年暮れ「ミシュランガイド東京2024」が発刊され、3年ぶりに3つ星が誕生した。それが、銀座の鮨「青空(はるたか)」だった。主人の高橋青空さんは、銀座「すきやばし次郎」で12年修業し、その後独立して、今の地位を築いた。

職人はどこで学んだかがとても大切だが、いまや、青空さんが来年百歳になろうかという小野二郎さんの職人スピリットを見事に受け継いでいることを世間に認知してもらったようなもので、二郎さんからパスされたボールをノックオン(ボールを前に落とすこと)せず、トライ目指して前進している様はなんともカッコいい。
ラーメン 山本益博 LEON.JP  饗くろ㐂
▲ 浅草橋「饗 くろ㐂」の黒木さんと「特製醤油そば」。
ラーメン界に眼を転じると、ここにも「第2の青空」がいるのを実感する。一昨年秋、岐阜へ出かけた時、岐南町まで足を伸ばし「麺 㐂色(きいろ)」で食べると、主人分部さんの師匠、浅草橋「饗 くろ㐂」の黒木さんの顔が思い浮かんだほどだった。
ラーメン 山本益博 LEON.JP  㐂いろ
▲ 岐阜・岐南町「麺 㐂色」の「特製塩そば」。
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栃木県・小山の「卯月屋(うづきや)」もそうだった。「卯月屋」の主人・岸さんの修業先は、調布若葉町の「しば田」で、その「しば田」の味を忠実に再現したようなラーメンだった。
ラーメン 山本益博 LEON.JP しば田
▲ 調布若葉町「しば田」の主人と「醤油ラーメン」。

ラーメン 山本益博 LEON.JP  卯月屋
▲ 栃木県・小山「中華そば 卯月屋(うづきや)」の「醤油そば」。
現在、店はすでに閉店してしまったが、神保町「黒須」のラーメンは私の大のお気に入りだった。そこで修業された中込さんが高円寺に「中華蕎麦 一心」を開いて、ラーメンの味ばかりか、黒須さんの実直なスピリットまで受け継いでいるのを見ると、実に頼もしい。
ラーメン 山本益博 LEON.JP  黒須
▲ 今は閉店してしまった神保町「黒須」の黒須さんと「塩蕎麦」。
ラーメン 山本益博 LEON.JP 一心
▲ 高円寺「中華蕎麦 一心」の「塩蕎麦」。
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さらに青梅の「Ramen FeeL」の渡邊さんは、湯河原の超人気店「飯田商店」出身である。とても品格のあるラーメンをつくっていて、味の洗練度は「飯田商店」のラーメンに勝るとも劣らない。
ラーメン 山本益博 LEON.JP 飯田商店
▲ 湯河原「らぁ麺 飯田商店」飯田さんと「醤油ラーメン」。
ラーメン 山本益博 LEON.JP  Ramen Feel
▲ 青梅「Ramen FeeL」の「塩らぁ麺」。
ただし、誰もが修業先のオリジナリティ溢れるラーメンを超えられる域まではいってない。どの職人もその仕事ぶりは真面目で、几帳面で、熱心であることが、カウンター越しに伝わってくる。ぜひとも、自分にしか出せない味を目指して、簡潔にして、洗練を極めたラーメンを生み出すことを期待したい。
どの若い職人も、師匠から絶妙のパスでボールを受け取ったのだから、師匠より前に進む責務がある。ラーメンが進化するとは、まさにこのことだ。
山本益博 LEON.JP  ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

山本益博 YouTube  MASUHIROのうまいのなんの!

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日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
YouTube/MASUHIROのうまいのなんの!

「山本益博のラーメン革命!」、他の記事はこちらから!
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