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2023.07.09

【第35回】ワンタン&ワンタン麺

思い出すと食べたくなるワンタン麺、どこが最高峰?

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(LEON.JP)

埼玉 ラーメン 山本益博 LEON.JP
JR中央線「西荻窪」駅で降り、我が家へ向かう前、ラーメンを食べるために立ち寄るのは、駅からすぐのところにある「支那そば いしはら」である。注文するのは決まって「ミックスワンタン麺」。海老と豚肉のわんたんが2つずつ入った「わんたんめん」で、醤油味ベースの郷愁派中華そばである。実は、麺なしの「スープワンタン」(海老2、肉3)もあるのだが、お腹が空いているとどうしても「ミックスワンタン麺」になってしまう。

食べ始める時に、いつも迷う。そばから行くか、わんたんから食べるか。わんたんの皮がとろけないうちに食べたいが、そばも延びないうちにつるっといきたい。
「支那そば いしはら」の「ワンタン麺(ミックス)」。
▲ 「支那そば いしはら」の「ワンタン麺(ミックス)」。
 「支那そば いしはら」の「スープワンタン」
▲  「支那そば いしはら」の「スープワンタン」。
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西荻窪なら「はつね」「ワンタンメン」も捨てがたい。「はつね」は「タンメン」、「もやしそば」が人気だが、注文を受けるたびに包んでつくってわんたんを茹でる「ワンタンメン」も誠実な味がする。
「はつね」の「ワンタンメン」。
▲ 「はつね」の「ワンタンメン」。
「郷愁派」のラーメン専門店のワンタンメンで忘れてはならないのが、銀座の「共楽」。先日、久しぶりに出かけ麺なしの「わんたん」を楽しんできた。わんたんがなんと11個も入っている!
 「共楽」の「わんたん麺」。
▲ 「共楽」の「わんたん」。
記憶をたどって、わんたんの入った美味しいラーメンを思い出してみると、目黒の「麺や 維新」、糀谷の「中華ソバ ちゃるめ」、亀戸の「ふじさき」が出色で、単なる添え物ではなく、皮も餡も美味しい、わんたんの確かな存在感がある。どちらも醤油味のスープである。
「維新」の「わんたん麺」。
▲ 「維新」の「わんたん麺」。
「中華ソバ ちゃるめ」の「ワンタン中華ソバ」。
▲ 「中華ソバ ちゃるめ」の「ワンタン中華ソバ」。
「中華ソバ ちゃるめ」の「中華ソバ別皿ワンタン」。
▲ 「中華ソバ ちゃるめ」の「中華ソバ別皿ワンタン」。
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ただ、わんたんはどちらかと言うと、醤油味より塩味のスープのほうが、わんたんが美味しく感じられるのはなぜだろう。それを実感させてくれるのが、池尻大橋の「八雲」と本郷3丁目の「中華蕎麦 にし乃」である。

「八雲」にはメニューに「スープワンタン」があって、わんたんのみ存分に楽しめる。わんたんが先か、そばが先か迷うこともない。
「八雲」の「スープワンタン」。
▲ 「八雲」の「スープワンタン」。
「にし乃」ならば「山椒塩そば」「別皿ワンタン」という手がある。塩そばのスープをいただき、わんたんを食べる。塩味のスープとわんたんの相性が格別で、山椒が素敵なアクセントを添えてくれる。
「中華蕎麦 にし乃」の「山椒塩そば」。
▲ 「中華蕎麦 にし乃」の「山椒塩そば」。
「中華蕎麦 にし乃」の「別皿わんたん」。
▲ 「中華蕎麦 にし乃」の「別皿わんたん」。
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食べ進むうちに、思い出すことがあった。横浜・中華街「清風楼」「上ワンタン」である。かつて「週刊現代」の連載「うまいの、なんの!」(1998年)で取り上げた。昭和20年(1945年)頃から中華街で営業を始め、シューマイが人気メニューなのだが、「上ワンタン」がシューマイに負けじと素晴らしい。
「清風楼」の「上ワンタン」。
▲ 「清風楼」の「上ワンタン」。
清湯スープにわんたんが丼一杯泳いでいる。当時の記事には次のように書いた。

「横浜、中華街は、いまやすっかり観光名所と化し、平日でも人の波は絶えず、どこの店の前にも人の列が出来ている。その中にあって、昔と変わらぬ味を保ち、いや、それ以上の美味しさを楽しませてくれる一軒が『清風楼』である。『清風楼』といえば、まず名前が挙がるのが“シウマイ”だが、それに並ぶ知る人ぞ知る一品が”上ワンタン“。澄みきったスープの中に、雲呑がそれこそ数えきれないほどゴロゴロと入っている。トロリとする皮に肉がわずかに入っている雲呑ではなく、肉が透けて見えるほどの薄皮に練り肉がくるまっている。雲を呑むというより、龍を呑む、そんな感じである。

口に含むと、まずツルンと薄皮が溶け、歯ごたえ十分の練り肉が姿を現す、噛めばジューシーな肉の味がこぼれ出す。これが化学調味料に頼らぬ、練り肉の滋味に溢れたもの。ここへ淡いスープを流し込むと、まるで竜宮城へでも誘われたみたいになる」

「清風楼」 「上ワンタン」には歯ごたえ十分の練り肉がたっぷり。
▲ 「上ワンタン」には歯ごたえ十分の練り肉がたっぷり。
改めて読み返しているとたまらなくなり、横浜・中華街に出かけ、久しぶりに「上ワンタン」に再会した。ラーメン専門店で、この「上ワンタン」をお手本にするところは出てこないだろうか?

支那そばいしはら TEL /03-3395-8450
はつね TEL/03-3333-8501
共楽 TEL/03-3541-7686
麵や 維新 HP/https://ishin-ramen.co.jp
中華ソバ  ちゃるめ Twitter
八雲 TEL/03-6303-3663
中華蕎麦 にし乃 Twitter
清風楼 HP/https://www.chinatown.or.jp



山本益博 LEON.JP  ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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