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2022.11.20

開店1年でミシュラン一つ星を獲得した、「帝国ホテル 寅黒」に潜入!

その歴史的背景から開業以来、フランス料理中心の構成だった帝国ホテル 東京の直営レストランに初めての日本料理店として昨年11月にオープンした「帝国ホテル 寅黒」。開業1年にして早くもミシュランの一つ星を獲得です!

CREDIT :

文/長谷川あや

帝国ホテル 寅黒
2021年11月に開店した、帝国ホテル 東京に直営の日本料理店「帝国ホテル 寅黒(とらくろ)」(以下、「寅黒」)が、2022年11月に発表された『ミシュランガイド東京2023』において、一つ星に選出されました。

開店からわずか1年で星を獲得した、この「寅黒」、実は、ミシュラン三つ星に15年間輝き続ける「神楽坂 石かわ」を擁する石かわグループとのアライアンスによって誕生した店なのです。食いしん坊なら、どんな店なのか、どんな料理がいただけるのか気になるところですよね。いま注目の日本料理店「寅黒」をご紹介します!

帝国ホテルに直営日本料理店が誕生した経緯とは?

1890年の開業以来、国内外の賓客をもてなしてきたホテルと、ミシュラン三つ星の和食店がタッグを組んだ、「寅黒」。と書くと、なかなか緊張感あふれる組み合わせですが(笑)、心配はご無用。料理のメニューは、旬の食材をふんだんに用いた「おまかせコース」(3万3000円、税込・サ別)一択。明朗会計です。え、高級日本料理店に行き慣れていないから緊張する? それも大丈夫です。開業から今日まで、連綿とつながる帝国ホテルの一流のおもてなしに、安心して身を委ねちゃってください。

「それだけ歴史のあるホテルなのに、直営の日本料理店ってなかったの?」なんて声も聞こえてきそうですが、その疑問に答えるには、帝国ホテルそのものの歴史を少しだけ振り返る必要がありそうです。
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帝国ホテル 寅黒 香箱蟹の一皿
▲ 12月中旬頃までの提供を予定している、「香箱蟹の一皿」。
そもそも帝国ホテルは、1890年、時の外務大臣である井上馨の呼びかけに応じた渋沢栄一と大倉喜八郎らが中心となり、「日本の迎賓館」の役割を担って、鹿鳴館の隣の敷地に開業したホテルです。外交儀礼の公式料理は、その当時からフランス料理だったということもあり、同ホテル内のレストランは、開業以来、フランス料理中心の構成。

メインダイニングは、『ミシュランガイド東京』が初めて発表された2008年から16年連続で一つ星に選出されているフランス料理「レ セゾン」です。9月に逝去されたイギリスのエリザベス女王が、1975年の来日で、帝国ホテルで行われた午餐会に参加された際、女王のために創作され、名を冠することが許された「海老と舌平目のグラタン“エリザべス女王風”」は、フランス料理「ラ ブラスリー」でいただくことができます。
帝国ホテル 寅黒 淡麗な出汁が五臓六腑にしみわたります。
▲ 滋味深い出汁がきいた、椀物は、日本料理の影のメインディッシュとも言うべき存在。淡麗な出汁が五臓六腑にしみわたります。
で、2013年12月に、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあり、近年、「和食」の世界的な評価は右肩上がり。世界各国からの賓客をもてなす、日本を代表するホテルのひとつとして、和食を世界に紹介する、本格的な日本食レストランが必要だという機運も高まってきました。

そんなわけで、直営の日本料理店をオープンさせることになったものの、同ホテルには、日本料理に関するノウハウもなければ、人材もなかったわけです。そこで、「神楽坂 石かわ」をはじめ、7つのレストランを運営する石かわグループに協力を依頼することになったのです。
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“伝統と革新”の日本料理をコンセプトに若き精鋭調理責任者が着任

その「寅黒」の調理責任者に抜擢されたのは、1991年生まれの鷹見将志さんです。栃木県鹿沼市で2代続く日本料理店に生を受け、2011年に石かわグループに入社後、6年連続でミシュラン三つ星を獲得している「虎白」の2番手として勤務し、30歳の若さで「寅黒」を任せられることになりました。
帝国ホテル 寅黒 鷹見将志さん
▲ 調理責任者を務める、1991年生まれの鷹見将志さん。
「さぞやプレッシャーだったのでは?」と話を向けると、「やるぞ! と、前向きな気持ちのほうが大きかったですね。自分の1つ上の先輩はすでに(石かわグループの)『波濤』や『NK』を任されていたので、やっと自分の番が回ってきたと、うれしく思いました」。いやあ、最近の若者は頼もしいなあ。それじゃあずばり聞いちゃいます、鷹見さん、「寅黒」のコンセプトを教えてくださ~い。

「はい。“伝統と革新”の日本料理です」

これまた力強い答えが返ってきました。ちなみに、“伝統と革新”は、帝国ホテルが掲げるテーマでもあります。

では、そろそろ、その“伝統と革新”の日本料理をいただきに参りましょう。

「寅黒」は、帝国ホテルタワー館の地下1階のレストラン街にあるのですが、扉を開けた瞬間、そこはもう静謐な和の空間でした。エントランスには、金魚が泳ぐつくばいがあります。覗き込んでいると、スタッフから「この金魚たち、とても仲良しでいい子たちなんですよ」なんて、心温まる情報が(笑)。緊張感がほぐれます。
帝国ホテル 寅黒 エントランス 金魚
▲ エントランスを入ったところにあるつくばいには、金魚ちゃんたちがすいすいと泳いでいました。
数寄屋作りをベースにした婉然たるメインダイニングエリアには、一枚板のカウンター席と、テーブル席が配されていました。料理人の手業を眺めながら食事が楽しめるカウンターは日本料理店の醍醐味のひとつですが、LEON的には2部屋ある個室も推奨です。メインダイニングの手前に、ちょこんと設けられた個室はお忍び感満点で、「いや、別に忍んでないし」という2人にもムーディーな時間を演出してくれることでしょう。
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「寅黒」でいただいた驚きと感動に満ちた料理をご紹介

では、少し前のことになりますが、筆者がこの夏、「寅黒」でいただいた料理を抜粋し、ご紹介しましょう。
帝国ホテル 寅黒 毛蟹 賀茂茄子 生姜ジュレ
▲ 2022年7月にいただいた、先付「毛蟹 賀茂茄子 生姜ジュレ」。
先付の「毛蟹 賀茂茄子 生姜ジュレ」は、北海道の毛蟹と、とろとろに焚き上げた賀茂茄子を、生姜のジュレと合わせた、馥郁としながらも清涼感あふれる一皿。添えられた花穂紫蘇と一緒に口に含むと、さわやかな一陣の風が吹き抜けます。四季折々の素材を味わえ、出汁の絶大なる実力を感じられる和食ってやっぱりいいなあ。
帝国ホテル 寅黒 鮎塩春巻き
▲ 揚物「鮎塩春巻き」。この発想はなかった(笑)。パリパリの皮の中には、鮎のフレッシュな苦味が潜んでいました。
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帝国ホテル 寅黒 椀物の「焼穴子真丈 蓴菜 木の芽」
▲ 椀物の「焼穴子真丈 蓴菜 木の芽」。
帝国ホテル 寅黒 伊勢海老 新牛蒡
▲ 中皿「伊勢海老 新牛蒡」。
穴子を骨まで使い真丈にした椀物の「焼穴子真丈 蓴菜 木の芽」、さっと炙った伊勢海老を鰹出汁で炊き、提供する直前に揚げ、その伊勢海老の頭や殻から取った出汁の餡をまとわせた中皿の「伊勢海老 新牛蒡」は、自然を尊重する和食の真髄ともいえるクリエイション。サステナブル(持続可能)なホテルを目指す、帝国ホテルの思いともリンクします。
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目新しい食材も使いつつ、調理法は日本料理の王道

帝国ホテル 寅黒 のどぐろ 白アスパラ炭焼き 酢山椒
焼物の「のどぐろ 白アスパラ炭焼き 酢山椒」では、フランス産のホワイトアスパラを炭火焼にして、出汁醤油で炊き上げていました。日本料理としては目新しい食材を使いつつ、調理法は日本料理の王道。和食の基本に忠実に、新時代の料理を作っていこうという、若き調理責任者の意気込みをひしひしと感じます。秋には、ラム肉を使った料理も出していたそうです。
帝国ホテル 寅黒 帆立 キャビア 青柚子
▲ 冷物「帆立 キャビア 青柚子」。千葉県産の大ぶりの帆立の下には、ふんわりとした帆立のムースが敷かれています。ムースには、鰹から取った出汁と合わせた生クリームも使用されていて、まさに、“伝統と革新”を体現する逸品。オシェトラキャビアの存在感も抜群です!
冷物の「帆立 キャビア 青柚子」は、これぞ、“伝統と革新”を体現するような逸品でした。目を見張るほど大きな千葉県産の帆立は5年物。上にはオシェトラキャビアがあしらわれ、下には、ふんわりとした帆立のムースが敷かれています。ムースには、鰹から取った出汁と合わせた生クリームも使用しているそうです。
「キャビアや生クリーム、フカヒレといった、王道の日本料理ではあまり使わないような食材を、醤油で味付けしたり、削り鰹を加えたり、出汁で炊いたりなどして、和を表現したいと考えています」(鷹見さん)

目指しているのは、「ひと手間、ふた手間加えることで、驚きと感動を感じていただけるような料理構成」と鷹見さんは力を込めます。
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帝国ホテル 寅黒 すっぽん 冬瓜 木耳 スナップエンドウ
▲ 煮物「すっぽん 冬瓜 木耳 スナップエンドウ」。低温調理してから強火で炙ったというスッポンは弾力抜群!
帝国ホテル 寅黒 剣先烏賊と万願寺唐辛子ご飯
▲ 食事「剣先烏賊と万願寺唐辛子ご飯」。
食事の「剣先烏賊と万願寺唐辛子ご飯」は、鷹見さん自らがサーブしてくれました。炭焼きにして鰹出汁で炊いた剣先烏賊の炊き込みご飯は、細切りにした万願寺唐辛子と紫蘇、そして胡麻と合わせ、風味も旨みも最高潮! 有明産の海苔で味変すれば、もう延々に食べ続けていられそう(笑)。
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帝国ホテル流の新たな日本食空間を支えるのは美しく丁寧な接客

そうそう、大切なことを忘れていました。日本酒はもちろん、シャンパーニュや白と赤のワイン、焼酎などなど、お酒も充実しています。「寅黒 日本酒セット」(1万4300円、税込・サ別)、「寅黒 ワインセット」(1万5400円、税込・サ別)など、ソムリエとスタッフが吟味したペアリングも用意されていました。
今回、丁寧な接客で、もてなしてくれたスタッフは、「寅黒」に配属される前は、アフタヌーンティーが人気の「インペリアルラウンジ アクア」にいたそうです。ホテル内に日本料理のレストランができることを知らされ、そこを担当してほしいと言われた時は、「めちゃくちゃびっくりしました(笑)」。……でしょうね、お察しします。

「ホテルのスタッフは和食は初めてです。サービスのスタッフは1カ月間、調理のスタッフは3カ月間、石かわグループの店舗で研修しました。着物の着付けも一から学びました」

そう語る彼女の流麗な所作はうっとりするほど。そういった、帝国ホテルの伝統をベースにしたサービスを含め、さまざまな要素がすべて合わさって、「寅黒」という空間を作り上げているのでしょう。
帝国ホテル 寅黒 「器は料理の着物である」とは、希代の美食家・北大路魯山人の言葉
▲ 「器は料理の着物である」とは、希代の美食家・北大路魯山人の言葉ですが、料理の美味しさをより一層引き立てる器はもちろんのこと、旬の日本料理を五感で楽しめる創意工夫が随所にちりばめられています。
新しい季節の到来をいち早く感じ、過ぎ行く季節を惜しむ──。古くから季節の変化を慈しんできた日本人の心は和食にも反映されていて、「はしり」「旬」「名残」の3つにわけて、微細な季節や食材の味の変化を楽しんできました。

間もなく12月。「寅黒」は二度目の冬を迎えようとしています。今だけの味覚に出会いに、「寅黒」に出かけてみてはいかがでしょう? 鷹見さんの「伝統と革新」を表現する料理の進化を見守る生き証人に立候補するなら、今が絶好のタイミングなんじゃないかと。ミシュラン一つ星を獲得し、さらに勢い付いていることでしょう。
帝国ホテル 寅黒

帝国ホテル 寅黒

住所/東京都千代田区内幸町1-1-1 帝国ホテル 東京 タワー館 B1F
営業時間/17:00~22:00(最終入店20:30)
定休日/日曜・月曜・祝日
※月曜祝日の際は、前日曜は営業し、翌火曜が休みとなる
予約電話/03-3539-8224
おまかせ3万3000円~(サービス料15%別)
HP/https://www.imperialhotel.co.jp/j/tokyo/restaurant/imperialhotel_torakuro

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