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2020.02.09

いま、世界のグルメがペルーを目指す理由とは?

ここ数年、世界のグルメトレンドを牽引するフ―ディーたちの間でペルー料理に熱い視線が注がれている。「世界のベストレストラン50」でもベストテンの常連となったペルー料理レストラン「セントラル」のヴィルヒリオシェフの料理を通じて、ペルー料理の人気の秘密に迫った。

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文/仲山今日子 写真/天方晴子

ペルーといえば、マチュピチュ、ナスカの地上絵と、これまで世界遺産が最大の目玉だった旅の目的に大きな異変が起きています。

それは、ペルー料理!
「あ! 知ってる、名物料理は魚のセビーチェと、ネズミの炭焼きでしょ?」
当たり!(でも厳密に言うとペルーで食べられているネズミ「クイ」は、モルモットの仲間です)。

なにはともあれ、そんな昔から食べられてきた伝統料理だけでなく、今、ペルーでは、独自の食材を使った洗練された高級料理が生まれ、注目を集めているのです。

その火付け役は、世界の美味を求めて旅するフーディーたち。彼らの食に対する探究心は飽くことを知らず、何カ月も前から行きたいレストランをリストアップして予約、時には数週間に及ぶ「フードツアー」のランチとディナーにはぎっしりと有名店が並びます。まさに美食のマラソンを駆け抜ける、胃袋のアスリートと言うべき彼らが、美食の街、パリやコペンハーゲン、東京に行くような感覚で訪れている場所。それが、ペルーの首都、リマなのです!
▲「セントラル」のヴィルヒリオ・マルティネスシェフ。
ブームの中心にいるのは、プロスケートボーダーから料理人に転身した!ヴィルヒリオ・マルティネスシェフ。首都・リマにある彼のレストラン「セントラル」は、フーディーたちがまずここの予約を取ってから飛行機を予約するという、まさに「この料理を食べるためにペルーに行く」デスティネーション・レストラン。現在、「世界のベストレストラン50」でも6位、「ラテンアメリカのベストレストラン50」では2位という結果からも、その人気のほどが見て取れるはずです。
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アンデスからアマゾンまで、大人の冒険心をくすぐる未知の味

ペルーといえば、7000メートル近いアンデスの山々からアマゾンのジャングルまで、多様な地形と気候が織りなす、豊かな生物多様性をもつ国。まさに食材の宝庫なのです。そんなペルー全土から採集してきた食材を、洗練された味とプレゼンテーションの料理に昇華させているのが、ヴィルヒリオシェフの魅力。

彼は月に一回、ペルー各地に飛び、地元の人の間で細々と育てられてきた希少な品種の作物や、今は失われてしまった伝統的な食材を採集するだけでなく、現地の人々と話し、口伝えで残っているだけのペルーの食文化を未来に残していくことに力を注いでいます。
2年前には、インカ時代の農業研究所でもあった、クスコのモライ遺跡に、食材のリサーチで得た情報を蓄積し、研究する「マテル・イニシアティバ」という調査機関を設立。そしてレストラン「ミル」も併設して、より深くペルーという土地を知り表現しようとしているのです。

世界の美食を知り尽くしたフーディーたちを魅了する要素の一つは、冒険心をくすぐられる、歴史と伝統に裏付けられた、未知の食材たちとその背景にある物語だったのです。

洗練されたプレゼンテーションでペルーの情景までも再現

ヴィルヒリオシェフの率いる「セントラル」の料理コンセプト、それは「標高にこだわってペルーの風土を表現する」ということ。同じ標高の食材を使い、その場所の景色までも再現し、味だけでなく見た目からも、ペルーにいるということを感じてもらえる料理作りを目指しているのです。

母がアーティストだったというヴィルヒリオシェフの美的感覚が生きた繊細なプレゼンテーションは、まさにファインダイニングと呼ぶのにふさわしいもの。

とはいえ、日本からペルーは直行便もなく、アメリカなどを経由した乗り継ぎを含めると飛行機で最短20時間余り。おいそれと気軽に行ける距離ではありません。
▲「クックジャパンプロジェクト」で開催されたヴィルヒリオシェフのポップアップレストランの様子。
そのヴィルヒリオシェフの料理がなんと東京で楽しめる機会を提供したのが「クックジャパンプロジェクト」。「サンパウ」をはじめとする数多くの飲食店を経営する株式会社グラナダが、10カ月間にわたり、世界各地のトップシェフ約30人を毎週招いて期間限定のポップアップレストランを行うという壮大なプロジェクト。ヴィルヒリオシェフは、去年6月に続いて今年1月末にも4日間のポップアップを行いました。
▲ヴィルヒリオシェフ(真ん中)を手伝うのは奥さんのピア・レオンシェフ(左)。
今回はヴィルヒリオシェフの妻でもあり、「セントラル」の2階で、同じ食材を使いながらも、より自由で気軽に楽しめる料理を提供する、「コイエ」のシェフでもある、ピア・レオンシェフも来日し、9皿のテイスティングコースを披露しました(プロジェクトは残念ながら1月末で会期が満了)。

日本の食材を使いながらも、一皿に必ず、自分たちのアイデンティティでもあるペルーの食材を使うようにしたというヴィルヒリオシェフ。広いリサーチと深い思考から生み出された一皿一皿は、「肉!焼いた!皿に乗せた!」という料理(それはそれでおいしいのですが)とはかけ離れたものでした。
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「見て、触れて、味わって」ペルーの豊かな食材と多様性

では食事の前に、シェフに、「セントラル」でもよく使う、代表的なペルーの食材についてちょっと聞いてみましょうか。

「例えば、アンデス地方はジャガイモの原産地。今知られているだけでも4000種類ものジャガイモがあります。それだけでなく、根菜と言えば、ユカ、オカ、オユコ、マカ……そうそう、雑穀のキヌアも忘れてはいけないですね。キヌアにも色々な種類があって……」
▲「ペルーには4000種ものジャガイモがあるんですよ」(ヴィルヒリオシェフ)
ちょ、ちょっと待って〜!ここで一旦整理すると、ユカ、オカ、オユコはどれも栄養価の高い芋類、そしてマカは世の男性たちの間では、滋養強壮剤としても知られていますよね。そうなんです、大量の必須アミノ酸やミネラルを含むペルー食材の多くは、世界のヴィーガン・ベジタリアンのレストランからも注目を集めているスーパーフードなのです。

さあ、それではいただきましょう!
▲「雲丹、カクトゥス、アチョーテ」(写真左)、「鴨、アヒアマリージョ、標高4000mの野菜」(写真右)
まずは「雲丹、カクトゥス、アチョーテ」と「鴨、アヒアマリージョ、標高4000mの野菜」から。左手の、日本の雲丹に合わせたサボテンのピュレには、ペルー産のパルミジャーノチーズが使われています。ペルー料理には、スペインのみならず、イタリアの食文化の影響も大きいのだそう。右は鴨肉のタルタルに、ペルーを代表するスパイスの一つ、黄色の唐辛子とオカのピュレをかけたもの。
▲「ホタテ、マカ、海藻」。下にはペルーの多様な地形を表現したイラストが置かれているのも、ペルーの景色を感じてほしいから。
次は「ホタテ、マカ、海藻」。特に日本のシーフードの質に感動したというヴィルヒリオシェフは、北海道のホタテにセヴィーチェで使われる調味料「タイガーミルク」を合わせて、ホタテの甘さが際立たせ、海ぶどうで海水のような味とみずみずしさ、食感のアクセントを加えます。

隣にはマカのエスプーマが。エスプーマを入れる器は本物のマカをくりぬいたもの。実際の食材をより知ってほしいという、ヴィルヒリオシェフの思いの現れです。
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▲「カニ、サルガッスム、沿岸の野菜」。日本のカニは「ペルーのカニよりも大きく、甘くて優しい味がする」と気に入っているのだとか。
「カニ、サルガッスム、沿岸の野菜」には、北海道産のタラバガニの身に、カニの殻から取ったゼリーをのせ、ペルーから持ってきたサルガッスムという海藻とイカスミのチップと、「沿岸で採れる野菜」のきゅうりを細切りにして飾っています。

添えられたイラストは、カニのゼリーに濃度をつけるために使った植物、「ユヨ」。「料理に使ったけれど、見えないから、少しでも知ってもらいたくて」とヴィルヒリオシェフ。
▲「かぼちゃ、アボカド、車海老」。鉄板のアボカドと海老のコンビネーション、温められたアボカドがまるでバターのようにとろけます。
「かぼちゃ、アボカド、車海老」は器にもペルー産の長細いかぼちゃを使い、その形を知ってもらえるように工夫されています。中には、かぼちゃの温かいエスプーマ、アボカドと、天ぷらなどに使われる小型の車海老の才巻海老。

日本とペルー、意外な共通項も!

▲「トウモロコシとアンデス山脈の穀物」。トウモロコシの皮から出汁を取るなど、食材を無駄なく使うのは日本の「Mottainai」精神にも繋がるものが。
「トウモロコシとアンデス山脈の穀物」は、クリーミーなトウモロコシのお粥に、紫トウモロコシのソース、スーパーフードとしても知られるアマランサスの仲間の穀物「キウイチャ」を散らしたもの。
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「かみふらの牛、ユカの根、オユコ」は、かみふらの牛(和牛)のサーロインに、とろりとしたユカの根のピュレとサクサクとしたオユコのスライスを乗せています。この肉のメインをピークに料理の提供温度が少しずつ上がってきて、次は冷たいお口直しのプレデザートにつながるという流れも、よく考えられています。
▲「カカオのバリエーション」。しっかりとカカオ豆を発酵させたとても深い味わいのチョコレートはクオリティもバッチリ。
最後は様々に調理したチョコレートのデザート。これらのチョコレートは、契約農家から送られてきたカカオ豆を、クスコにある支店の「ミル」で加工してチョコレートにしているのだとか。
ヴィルヒリオシェフは、世界の中で日本が自分にとって特別なのだと語ります。
「日本には懐石料理の文化があります。そこで育った日本の人々は、フォワグラやキャビアといった高価な食材だけでなく、一見質素に見える野菜に、それと同じ質の高い美味が存在すると知っています。そんな日本の人たちは、根菜や雑穀といった、ペルーの食材の本当の質を感じてもらえると思っています」

特に、最近はレシピを作らず、食材によりフォーカスした料理を作っているというシェフ。去年12月に出版したばかりの本「マテル」も、レシピではなく、ペルーの食材を、自然の中での美しい写真と共に紹介した「食材図鑑」のような趣の本です。

ひとつの食材に深く入り込み、理解しようとする考えは、日本の懐石料理にもつながるもの。また、聖なる大地という考え方は、日本の八百万の神という考え方とも重なります。話せば話すほど、日本とペルーの色々な共通項が見えてくる対話の時間でした。
▲左から、クックジャパンプロジェクトを率いるジェロームシェフ、ヴィルヒリオシェフ、グラナダの下山社長、食材の調達にも大活躍、ジェロームシェフの右腕の大瀧シェフ。

● 仲山今日子(なかやま・きょうこ)

テレビ山梨・テレビ神奈川アナウンサーなどを経て、World Restaurant Awards審査員。現在、食と旅をテーマに日本とシンガポールの雑誌に日本語・英語で執筆中。趣味は秘境旅行、キリマンジャロ登頂など、訪れた国は50カ国以上。ワインエキスパート、日本酒唎酒師の資格取得。IG:kyokonakayamatv

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