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2022.05.17

焼鳥の達人が斬る! 空前の焼鳥ブームとは何か

仕事帰りに軽く一杯、焼鳥でもつまんで……とサラリーマンの味方であった焼鳥は『ミシュランガイド』掲載を機にどんどん高級化。‟焼鳥デート”もすっかり定番となった。コース1万円以上の高級焼鳥店が開店するなか、焼鳥の高級化はどこまで進む? トリタツの愛称で知られる愛好家団体「焼鳥達人の会」青木照和会長に聞いた。

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文/小寺慶子  写真/上田佳代子

この10年で驚くべき進化を遂げた日本の焼鳥。『ミシュランガイド東京』2010年度版に焼鳥店が初掲載されて以来、提供スタイルの多様化や高級化がどんどん進み、いまは全国的に空前の“焼鳥バブル”が巻き起こっている。数か月先まで予約で埋まる店もめずらしくなく、「デートで焼鳥」はいまやすっかり定番に。大衆から高級まで幅広い焼鳥店の食べ歩きをライフワークとし、イベントなどを通じて焼鳥文化の発展に貢献してきた『焼鳥達人の会』(通称トリタツ)の会長、青木照和氏が考える日本の焼鳥の今と、これから。そして注目店はどこか? 会長が愛してやまない、紹介制の焼鳥店「中村屋」(東京・学芸大学)で話を聞いた。
▲ 「焼鳥達人の会」イベントでは有名店の焼鳥が気軽に味わえる。手前は「鳥しき」池川氏。

「情報交換したり、気の合う仲間とつながるコミュニティが作りたかった」

今、焼鳥の人気がまさに飛ぶ鳥を落とす勢い状態ですが、青木さんが焼鳥に注目されたきっかけはなんですか?
「僕はもともとレコード会社に在籍していて、主にライブや音楽イベントの制作に携わっていたのですが、その頃から焼鳥が大好きで、いろいろな焼鳥店に行っていたんです。焼鳥の奥深さに目覚めたのは2005年くらい。白金の『酉玉』*¹で、焼鳥ってこんなに美味しかったのか、とすごい衝撃を受けました。部位の種類や空間づくりも含めて、いわゆる“昔ながら”とは違う新時代の焼鳥が出てきたことに感動したのを覚えています。その後、やはり音楽業界の仲間と『焼鳥達人の会』を立ち上げ、新木場のスタジオコースト(現在閉業)で初めてイベントを開催したのが2014年。焼鳥に特化した野外フェスは日本初だったので、反響もとても大きかったです。

▲ 出店者、スタッフ一同おそろいのトリタツTシャツを着て記念写真。
イベントをやろうと思ったのは、『鳥しき』*²の池川義輝さんから、『僕ら、焼鳥の職人は横のつながりがあんまりないんです』という話を聞いたから。業界全体を盛り上げるためにも、情報交換をしたり、気の合う仲間とつながるコミュニティーがあることはとても大切。焼鳥の仕事をする人と焼鳥好きな人がひとつになって、その素晴らしさを語り合いながら世の中に拡げていく場所をつくろうと思ったのが始まりです」
*1 希少部位を提供することで知られる白金の焼鳥店。東京都港区白金6-22-19
*2 予約困難な人気焼鳥店。店主の池川氏は『プロフェッショナル~仕事の流儀』(NHK)に出演したことでも知られる。東京都品川区上大崎2-14-12
▲ 「中村屋」(学芸大学)にて、店主と談笑する「焼鳥達人の会」会長、青木照和氏。「お酒をゆっくり飲みながら中村くんと焼鳥の話をするのもこの店に来る楽しみ。焼酎にくわしいお客さんを連れてくると中村くんも嬉しそうなので、楽しく飲める人を誘いたいお店です」
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そのイベントが大成功して、2019年まで毎年、開催されたんですね。

「2020年以降はコロナでイベントをやること自体が難しくなってしまって。2019年もイベント前日に台風が来て、中止にするかすごく悩んだんですが、参加してくれたお店の後押しがあって、無事に開催することができました。ありがたいことに年々、参加店が増えて最初は5店舗くらいだったのが、50店舗以上になった。トリタツは利益追及をする集まりではなく、あくまで焼鳥の素晴らしさをみんなでシェアすることが目的なのですが、お客さんがたくさん来てくださることで、焼鳥がどれだけ愛されていて注目を集めているかを体感できたのはうれしかったです」
▲ 「中村屋」でおまかせの最初に登場する焼き野菜。店主の中村さんが厳選した焼酎を飲みながら、野菜をつまんで鶏が焼けるのを待つのも一興。

成熟期を迎えた焼き鳥界でいま注目されるのは?

トリタツの青木さんといえば、焼鳥職人も一目を置く存在ですが、今の焼鳥を語るうえで欠かせないキーワードはありますか?

「僕らはただ、焼鳥文化の発展を願うファンで、すごいのは日々切磋琢磨されている職人の皆さんです。大衆のソウルフードとして愛されて来た日本の焼鳥は、焼鳥の地位向上を目指して試行錯誤をしてきた店や職人の努力のおかげで、今の成熟期を迎えています。そのなかで次の世代を育てて、さらに日本の焼鳥を盛り上げていこうという考えを持つ店や人にはシンパシーを感じますね。

最近オープンした店だと、銀座の『焼鳥ひら野』*³を運営するMUGENグループ。代表の内山正宏さんは、自身のグループとして初の焼き鳥業態を始めるにあたって若手を育成する店を作りたいとおっしゃっていました。それで『鳥善 瀬尾』で18年働いた大ベテランの平野郁侍さんを迎えて、おまかせコース8800円の店を作った。平野さんの技術の高さは言わずもがななので、彼の背中を見ながら若い職人が育つといいなと思っています。

焼鳥の仕事は一朝一夕ではなし得ない、スーパーど根性の世界。仕込みも大変だし、なり手は多くないけれど、池川さんが海外進出をしたり、いまの焼鳥業界はすごく夢があります。次世代の職人の存在は、焼鳥という食文化がさらに発展するために不可欠なんです」
*3 2022年2月にオープンした注目店。東京都中央区銀座8-12-15 全国燃料会館 1F
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▲ 切り置きをせず、開店してから肉をさばき串に打つのが「中村屋」のスタイル。鶏は宮崎県から直送される霧島鶏を使用。
焼鳥の高級化が進み、おまかせコースが8000円と聞いても驚かないようになってきました。料理の内容も個性豊かな店が増えてきましたね?

「それぞれにやり方や哲学があるから、それが店の個性につながっているんだと思うんですけれど、ここ(「中村屋」)も面白いですよ(笑)。自分の店と相性のいいお客さんに来て欲しいという思いもあって、紹介制というスタイルで営業しています。予約客の人数に合わせて、開店してから鶏をさばいて串に打って焼く異色の店です。お店もカウンター6席だけでワンオペだから、行く時は中村くんに時間も心も委ねる気持ちで。以前、酒瓶と一緒に寝ていると話していたくらいの焼酎の変態で、ざっかけない雰囲気の店から想像できないくらい個性のかたまり(笑)。焼鳥にもお酒にも、自分流で徹底して向き合うという愛の深さを感じます」
▲ 鶏をさばいて串打ちをし、いよいよ焼きに。「焼鳥店というからには、しっかりと火を入れて焼くのが自分のスタイルです」と中村さん。
たしかに独特の空気感がある気がします(笑)。この焼鳥を食べるために学芸大学に来る方も多いそうですね。

「焼鳥店が町に人を呼べることを証明したのが、梅ヶ丘の『やきとりshira』*⁴。ここは最初におまかせ5本を注文して、追加で串をお願いするスタイル。初めて行ったときの衝撃がすさまじく、僕も何度も通わせてもらっています。メインであつかう淡海地鶏と天城軍鶏の焼きが本当に見事で、評判を聞いて地元以外からもたくさんのお客さんや同業者が来る。Shiraに行くために初めて小田急線に乗りました、という人も少なくないそうです(笑)。そういうふうに求心力のあるお店は町を盛り上げる起爆剤になりますし、今後は都心よりちょっと離れたところに店を構える人も増えていくと思います」
*4 遠方からここを目指して訪れる人も多い、住宅街の気鋭店。東京都世田谷区梅丘1-22-1 Y’sステート B1F
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▲ 学芸大学の駅から近い路地に店を構える「中村屋」。カウンター6席のみで、中村さんがひとりで店を切り盛りする。初回は紹介者とともに2日前までに予約を。
焼鳥の美味しさは、やっぱり食材と焼きの技術が決め手になるのですか?

「もちろん、それも大切だけれど、自分の焼きのスタイルや目指す方向に合った鶏をいかに見つけるかだと思います。ブロイラーをめちゃくちゃ旨く焼ける職人がいたらそれは素晴らしいし、そこに理由があるなら熱源が炭であることにこだわる必要はないと僕は思います。外苑前の『いろ鳥』*⁵の張ヶ谷栄司さんは、炭火と電気グリラーを使い分けていて、部位によって仕上げに炭の香りをまとわせたり、熱源の使いかたをすごく研究している。その“ハイブリッド焼き”に、長年焼鳥と向き合ってきた職人ならではの経験値の高さを感じます。

最近は関西の人気店が東京に進出するという流れもあって、焼鳥の輪がどんどん広がり、いいグルーヴ感が生まれている。SUSHIやTEMPURA、RAMENと並んで世界共通の食文化としてYAKITORIがさらに飛躍することを願っていますし、そのタイミングはまさに今だと思っています。今年の秋にはコロナで延期になっていた『焼鳥達人の会ファイナル』を東京と大阪で開催する予定。そこであらためて、焼鳥を愛する多くのひとたちが集えることを、すごく楽しみにしています」

*5 炭と電気グリラーを併用する“ハイブリッド焼き”で食べ手を魅了。和食と焼鳥を織り交ぜたコースは1万円~。東京都港区南青山3-2-6 セントラル第5青山1F1A

炭火串焼き 中村屋

住所/東京都目黒区鷹番3-15-18
電話/非公開
営業時間/17:00~23:00
休/不定休 
※支払いは現金のみ

●焼鳥と焼酎をこよなく愛する店主が営む紹介制の焼鳥店。丸鶏からさばくので焼き上がりまでに時間がかかることもあるが、お酒を飲みながらゆっくりと待つのも楽しい。焼酎のほかクラフトビールやワインも。



青木照和

1959年横浜生まれ。レコード会社勤務を経て、1995年に音楽全般の企画制作を行う「アハバ クリエィティヴパーティー」を設立。前職時代から焼鳥を食べ歩き、現在も週3日で焼鳥店へ足を運ぶ。「焼鳥達人の会」会長として、イベント企画や企業とのコラボレーションを推進。

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