2019.05.31
なぜ成功しているオトコは、あえて高価な服を選ばないのか
服が自分を表現するコミュニケーションツールであるのは、いうまでもないこと。ならば、雄の孔雀が美しい羽根を広げて求愛するように、人間の男も服装で自分の魅力、相手への愛や想いを伝えることができるのでしょうか 。もし伝えられるなら、それはどんな服装?
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文/福田 豊 写真/椙本裕子
着るだけで誰からもモテる服はない
服はあくまでコミュニケーションツール。男女の間においても、いつ何をどのように着こなすかという文脈のなかで最適な解を見つけられて、はじめて、それはアナタにとっての「モテる服」になるということ。
とりわけファッションに関心の高い男性が陥りやすいのが「自己満足なお洒落」。オラオラ感丸出しで「見て見て」と自己主張するばかりの服装では、相手に好感をもってもらえるはずもありません。
では、具体的に何をどう気遣い、どこに注意すれば、それが「モテる服」になるのでしょう。
その答えを探すべく、インタビューをお願いしたのが、髙橋みどりさん。
髙橋さんは、レディスはもちろん、メンズのファッションにも精通した、ファッション界ではつとに知られた方。彼女自身が女性の憧れの対象であり、パーソナルスタイリストとして企業トップなど多くの男性から頼りにされてもいる。つまり、大人の女性の代表であり、大人の男の服のスペシャリストでもあるという、ちょっと得がたい方なのです。
そこで、男の服のスペシャリストとして、男のどんな服装に魅力を感じるのか。女性に好感度の高い“愛を伝えられる服”とはどんな服装なのか、髙橋さんにお話を伺いました。

魅力的に見せる第一歩は正しいサイズ選びから
髙橋さんが、まず最初に気にするのが、サイズ感だと言います。
「サイズ選びがきちんとできていない男性がとても多いんです。スタイリングを依頼されて、サイズを教えてください、というと、某ブランドの何サイズだとか、バストがいくつでウエストがいくつとか……。でも、実際にお会いしにいくと、ほとんどの方が大きめのゆるいものを着ている。あるいは、そのブランドを着たいために、合わないサイズを選んでいたり。トレンドが細身だからと、無理に細くしちゃっていたりとか。まぁ、それは女性にも多いんですけどね」
そのため、髙橋さんは必ず採寸させてもらうのだそう。
「それでピッタリの服を選んで、本当にあなたが美しく見えるサイズはこれですよ、って。ピッタリのサイズを選ぶと、腕や脚が長く綺麗に見えたり。自分が短所と思っていたところも変えられる。5歳、10歳、若く見えたりもする。だからサイズ感は、とっても大切なんです」
その服、彼女とのバランスが取れていますか?
「仕事で大成功しているようなリーダーの男性には、普段はあまり高価だとひと目でわかるスーツや靴はやめてもらうんです。トップポジションの男性がごく普通の時に豪華だと、押し出しが強すぎて、恐い感じになっちゃいますから。だからブランドのわからない、でも上質で、手入れの行き届いている服装にしてもらう。すると周りと調和して、柔らかく親しみやすい感じになって、その男性の本来の魅力が伝わりやすくなる。そういう周囲とのバランス感が大切。日本ではよく『T.P.O.』といいますけど、要するに、場や目的に配慮した服選びが大切なんですね」

「どういう女性に会って、その女性とはどういう関係で、これからどうしていきたいのか。それも、ある意味で、T.P.O.といえますよね。ですからそういうことに配慮して、バランス感のある服選びをする。そうすれば、きっと気持ちの伝わる、魅力的な服装になるはずなんです」
服に少し優しい感じをプラスする
「たとえば、スーツはいつものネイビーだけど、ポケットチーフはピンクにしたり。ネクタイを少し明るい色にしたり。そんな、女性が恐いと感じず、話しかけやすくなるところをつくる。そうすると『あのひと、案外、可愛いかも』なんて女性の心が開いて、距離感が縮むんです」
「ここ何年かよく見かけるのが、すごくいいレストランに派手な服やお化粧の場違いな女の子を連れてきて、大きな声で『乾杯!』なんてやっている若くして成功した方々。良いレストランは本来大人の社交場。そこでは大人の男としての振る舞い、ルール、そして周りへの配慮が存在しているのに、そんな事もわからずに、雰囲気を壊して他のお客様に迷惑をかけている。当人にとっては大事なふたりの時間だとしても、彼女はそれで食事の時間を本当に楽しめるのでしょうか。少し気遣いのできる男性であれば、その女性にあった場所、自分たちが本当に楽しめるレストランを選ぶこともできるはず。そういう配慮が大切なんです」

「スーツならばルールがあるので着こなせても、カジュアルだと自由なので上手に着こなせない。クールビズが、よい例ですよね。もう10年以上も経つのに、お洒落なカジュアルになっていない。しかもカジュアル化がどんどん進んでしまって、崩れすぎてしまっている。そしてそれは基本を知らないから。欧米のようにファッションの基本がしっかりしていれば、お洒落な着崩しができる。でも、いまの日本ではファッション誌などでも正しい着こなしを紹介していないから、崩し方がわからない。歌舞伎の『型破り』は『型』ができているから『破る』ことができる。それと同じで、ファッションも基本ができていないと、着崩しができないんです」
いい店を見つけて行きつけにする
「まず大切なのが試着。最近はPCやスマホでポチって買ってしまう人がとても多いけれど、実際に着てみるとイメージと違ったとか、逆にダメだと思っていたのが着たら格好いいとか。そういう経験が大切。そんな手間や時間を惜しんで、お洒落になるとか、モテようというのは、無理でしょう」
「いいお店を見つけて、行きつけにする。そうして気の合う店員さんがついてくれるようになると、いろいろな相談ができる。いつもどんな服を買っているか、好き嫌いも知ってもらえるから、スタイリストのようなアドバイスもしてもらえる。そういう意見の訊ける他者がいることが大切。自分だけでは客観的な判断ができませんからね」

服は彼女と一緒に楽しむのがベスト
「欧米の男性は、ときには女性の引き立て役になったり、一緒に色のハーモニーを楽しんだり、そういうのがとても上手。また、ビジネスパートナーにも、明日の会食は僕はこういう服装でいくから、キミもジャケットを着てきてほしいとか。そういうことをきちんと話して、お互いを素敵に演出することも大切にします。日本の男性もパートナーともっと話すべき。一緒に出かけるときに、キミは何を着ていくの? ならば僕はこうしようかな、とか。そんなふうに一緒にファッションを楽しめれば、きっと魅力的に見える。モテると思うんです」
最初に述べたように、服はコミュニケーションツール。だからこそ服をうまく使うことで彼女との関係をより良くすることができるのです。
「ファッションの力で、仕事だって成功するかもしれない。恋愛だって上手くいくかもしれない。だから素敵なお洒落をして、愛を伝えてください。お洒落なレオン世代の男性が増えてきた昨今だからこそ、もう一度見直すことで、より素敵で魅力的な男性が増えてくれることを心から楽しみにしています」

● 髙橋みどり / Oens 代表 兼 イメージングディレクター
東京生まれ。テレビ朝日のファッションレポーターを経験後、ジュンアシダ、メルローズを経て、1990年のバーニーズ ニューヨークの日本進出にともないバーニーズ ジャパン宣伝部ジェネラルマネージャーに就任。その後、ジョルジオ アルマーニ ジャパン広報室長、2000年にエストネーションを立ち上げる。2005年、これまで支えてもらった、ひと・企業・ブランドを応援したいという思いからOens(オーエンズ)を創業。マーケティングやプロデュース、プロモーション、コンサルティング、セミナー講師、原稿執筆など、幅広いフィールドで活躍中。
■ 著書
『おしゃれ更年期なんて言わせない! 大人の「人モテ服」』(光文社)
『デキる男のお洒落の極意』(講談社)
『働く女のワードローブ Simple Chic & Basic おしゃれの教科書』(講談社)
『大人おしゃれのルール FASHION RULE BOOK』(講談社)
『アルマーニに学んだ仕事で輝くために大切なこと』(あさ出版)
オフィシャルブログ: http://www.midroom.com/
HP: http://www.oens.net/