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2021.06.24

現地からお届けします! 海治郎のパリコレ&ピッティ どす恋(こい)日記【2】

【パリコレ速報】キディルとタークという日本の新星について

2022年春夏シーズンの「パリ・メンズ・ファッションウィーク」の“今”をファッションジャーナリストの増田海治郎さんが日記形式でお届け。2回目はパリ初日に映像形式でコレクションを発表した日本の新星、キディル(KIDILL )とターク(TAAKK)です。

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文/増田海治郎

フランス政府は観光客の受け入れを表明し、特段の理由がなくてもフランスに入国できるようになりました。すぐさま思い立ってパリへ飛んだのは、ファッションジャーナリストの増田海治郎さん。2022年春夏シーズンのパリ・メンズ・ファッションウィークとピッティ・ウオモの話題を中心に、フランスとイタリアの今をリポートしていただきます。2回目はパリ初日に映像形式でコレクションを発表した日本の新星、キディル(KIDILL )とターク(TAAKK)。

今、世界でもっともパンクなブランド

6月22日、2022年春夏シーズンのパリ・メンズ・ファッションウィークが開幕しました。劇的に感染者数が減少している(フランスの21日の感染者数は1815人)とはいえ、公式スケジュールで参加する72ブランドのほとんどはデジタル(映像)での発表。フィジカルのプレゼンテーションやイベントも20ブランドほどで、観客を入れてのファッションショーは5ブランドのみです。

パリは6月20日から23時までだった外出制限と飲食店営業の規制がなくなり、体感的には日常生活が戻ってきているようにも感じますが、まだまだイベントごとは厳しいってことですね。
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2022年春夏キディルのルック

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キディルは末安弘明さんが2014年に立ち上げたブランドです。末安さんは1976年、福岡県生まれ。美容系専門学校を卒業後、ロンドンでヘアメイクアーティストとして活動していましたが、いつしか興味が服に移り、独学で服作りを始めました。前進の「ヒロ」(HIRO)から数えると20年近いキャリアを持つ中堅で、長らくアンダーグラウンドな世界のカリスマ的存在でした。

2020年春夏から非公式ながらパリに進出し、2021年秋冬からは公式スケジュールに昇格。今ではアップカマーとして世界的な注目を集めるようになっています。あのコム デ ギャルソンの川久保玲さんがその手腕を認め、ドーバーストリートマーケットの世界全店で売られていると言えば、その凄さが伝わるでしょうか? 

あくまで私見ですが、キディルは今、世界でもっともパンクなブランドだと思っています。表面的にも精神的にも。この人の自分を貫く信念とDIYの精神は、ちょっと他に思い当たらないほど独特です。

彼はパリコレデザイナーになった今も1人で服を作っています。渋谷の明治通り沿いにある旗艦店と京都店の販売スタッフを除けば、彼のアトリエには彼以外いません。デザインも生産管理も経営も、全て1人でこなしているのです。これは本当に驚異的なことで、1人でパリコレに辿りついたブランドは世界的に見ても前代未聞だと思います。
さて、2022年春夏コレクションの解説に移りましょう。まずは上記の動画をぜひ拝見してみてください。今シーズン彼が焦点を当てたのは、表現者が内に秘めた“純粋性”。彼はそれを“精神的パンク”という言葉で表現します。その代表的な例が、英国人グラフィックアーティストのトレヴァー・ブラウンとのコラボレーション。可愛さと毒の両面を持った不思議な少女の顔のグラフィックは、純粋さと不安と恐怖が入り混じったような不思議な表情をしています。

キディルはパリでの動画に先立って、東京・青山の草月会館でインスタレーション形式でコレクションを発表しています。動画はその前後に撮影・編集したもの。イサム・ノグチの作品の中を、裂けた唇のグラフィックのジャケットを着た男たちや、ピンクのドレスの上から束縛された少女たちが、まるで“ひとつの族”のように佇んでいます。

黒人のモデルが上を見上げ、恐怖の表情でそこからダッシュで逃げ始めました。その上の存在を確認した者は、彼と同じように一斉に逃げ出します。驚異の声を発した天上の者は、日本のノイズシーンの先駆者である“非常階段”のJUNKOさん。大音量で見ると隣人から通報される恐れがあるので、ボリュームは控え目をオススメします(笑)。末安さんは今回のコレクションに込めた意図を以下のように説明します。

「僕はトレヴァーの描く作品に、グロテスクとカワイイの価値観が同レベルで共生している事に魅了されてきました。残酷で被虐的にも見えますが、狂気性と純粋性とともに、純粋に少女を希求し続けることの正義さえ感じます。儚さや繊細さ、混沌や狂気は隣り合わせにあることを教えてくれるのです。」

キディルの服を着るにはパワーが必要です。とにかくそのデザインの強さは、オヤジさん世代にはちと厳しいかもしれません。でも、こんな強烈な服をデザインしている彼も40代中盤。オヤジさん世代のデザイナーが作るパンクな服をぜひ一度体感してみてください。
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イッセイ出身のデザイナーが作る繊細でナードな服

▲ 東京で事前に行われたタークのショーの様子。
お次はタークです。デザイナーの森川拓野さんは文化服装学院を卒業後、イッセイミヤケに入社。2012年にタークを立ち上げ、2020-21年秋冬からパリ・メンズ・ファッションウィークに参加しています。ブレイクまでやや時間はかかりましたが、ここ3シーズンでこれまで培ってきた技術とクリエーションが花開き、一気に世界的な注目株に上り詰めました。今年のLVMHプライズのセミ・ファイナリストに選出されたことは、その証左といえましょう。

彼のクリエーションの源泉には、その柔軟な発想を形にするテキスタイルの開発力があります。その象徴がジャケットがシャツに変化するジャケット。はっ!? と思うかもしれませんが、1枚のジャケットの上半分がジャケット生地で、下半分がシャツ生地になっているんです。1枚の生地で。結果的にこのジャケットは、無理なくパンツインできるというわけです。往年の玉置浩二のスペンサージャケットような雰囲気になりますが、このタックインジャケット(スーツ)は未来のスーツスタイルを予感させるような新しさに満ち溢れています。
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今シーズン、彼は大胆にも“地球とのコラボレーション” をテーマに掲げました。

「地球が生み出す造形や風景は、壮大で繊細で、そのひとつひとつは、まるで意図して造られたのではないかと錯覚してしまいます。地球をアーティストとするならば、彼は地球上で最も偉大で、最もクリエイティブな存在です。今シーズンは、愛すべき偉大なアーティストである、地球との共作に挑みました。」(森川さん)

私はパリで動画の発表の前に行われた東京のショーで現物を拝見していますが、素材の独自性と服じたいの力強さは、これまでよりひとつ上の段階に登ったと感じました。とくに素材に関してはトップメゾンに比肩しうるレベルだと思います。波打ち際と森林が美しく混ざり合い消えていく幻想的な風景を表現したリネンジャケット、花が溶け合ったようなタイダイのシルクシャツなどは、オヤジさん世代にもきっと響くと思います。こちらもぜひチェックしてみてください。
▲ 「Lutays」のジャン・バティスタさん。
初日のフィジカルの取材は、古き良き時代のフレンチスタイルを現代に再現する「Lutays」のジャン・バティスタさんのみ。台風みたいな通り雨に打たれてびしょ濡れになるというアクシデントはありましたが、ショールームでじっくり服を拝見し、ランチを含めてたっぷり2時間半、フレンチスタイルについて語り合いました。

その取材内容はLEON本誌かLEON.JPで後日、詳しく紹介させていただきます。それでは、また明日!

● 増田海治郎

1972年埼玉県出身。神奈川大学卒業後、雑誌編集者、繊維業界紙などを経て、2013年にフリーランスのファッションジャーナリストとして独立。メンズとウィメンズの両方に精通しており、モード、クラシコ・イタリア、ストリート、アメカジ、古着までをもカバーする。

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